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2024年9月の読書メーターまとめ

佐倉
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感想・レビュー
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ナイス
481ナイス

9/19/49/79/109/139/169/199/229/259/28226650227928229206230484231762233040234318ページ数694698702706710714718冊数読書ページ数読書冊数
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2024年9月に読んだ本
24

2024年9月のお気に入り登録
3

  • まめけん。
  • れどれ
  • マル

2024年9月のお気に入られ登録
3

  • まめけん。
  • .
  • マル

2024年9月にナイスが最も多かった感想・レビュー

佐倉
ネタバレ切れてしまった繋がり、切れてしまうかも知れない繋がり、誰にも見えなくなってしまった繋がり…と今回のテーマはサブタイの通り『繋がりの時』。これまで読んだエピソードは”爽やかに終わったけどしこりが残る“だったのがなぜだか今回は“心にしこりは残るのに爽やかだ”と逆の印象になった気がする。それにしてもプロローグの叙述トリックは見事に引っ掛かった。「もう何十年もこの仕事を続けてきたかのようだ」にあれ?となりつつスルーしたが……まさか智恵子さんの方とは。次巻はまた田中敏雄が登場。こちらの因縁はどう決着がつくのか。
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2024年9月にナイスが最も多かったつぶやき

佐倉

神話100本ノック中。神話とは秩序以前のもの。現在の秩序を説明するための論理…であるために混沌とした展開や物語も多く存在する。芋を核とするインドネシアのハイヌウェレ型神話と同型の物語がエジプト、ギリシャ、日本にあるのが興味深い。芋を砕いて栽培する=ハイヌウェレのような残酷な神話になるというのは必然だが、穀物を栽培する文化圏でも神の死体を切断して撒く方向に行くのはなぜなのか。

佐倉
2024/09/25 23:21

この本ではあまり触れてないけどヴィツェルの世界神話学説をちゃんと勉強したいなぁ。翻訳か全く無いけどゴンドワナ神話とローラシア神話の結節点として日本神話を読むことも出来るし、日本人がどうしてあのような物語を持ったのかを考察するのに有力な視点と思うのだが。

が「ナイス!」と言っています。

2024年9月の感想・レビュー一覧
24

佐倉
学問的・実際的なものもあれば自分にはについていけないほどスピリチュアルな論説もあったが、著者の一人である諸富氏の(トランパーソナル学会は)“アカデミックとスピリチュアルの「狭間」にあるがゆえに果たせる役割がある”という信念に感じ入るところがあったので通読した。『瞑想と心理療法』『バイロン・ケイティ・ワーク』『グループセラピー』など心にある問題を治療ではなく受け止めるような方向の話が印象に残る。一番興味が湧いたのは『森田療法』に書かれる根岸症例。一昔前の健康法程度に思っていたが、森田氏の人生観に惹かれた。
佐倉
2024/09/30 17:40

「死は恐れざるを得ない」「欲望は諦めることができない」という過度に道徳的でなくポジティブでもない点を軸に治療を行っていたという森田氏。紆余曲折の末に心身の平衡を取り戻した青年の「私は何物をも得なかったようです。全快したとは思われませんが、別に悲しくも心配でもありません」という言葉に「これが全快です。何ものをも得なかったのが、大きな賜であります。何ものをも得なかったために、君は大きな力を得ました」という一幕はなんだか小説のワンシーンのようですらある。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
下巻では大峰山や羽黒山で修験道の修行に実際に参加したり里や山における憑祈祷の現場に赴き霊媒から話を聞くといったフィールドワークがメイン。福島県のはやま祭りとノリワラ、護法飛びと護法実といった里の祭りにおけるシャーマンを見ていく『里の託宣』が印象に残った。はやま祭りの例ではノリワラ本人から儀式時の感覚を聞き取ったり、外部から巫女を呼んだせいでいまいちに終わった時の記録も書いているのが面白い。著者は一般論や普遍性に寄らず”その一回”の儀式の記録に注力している雰囲気があり、おかげで儀式の様子を想像しやすい。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
1950年代に来日した英国人学者による日本シャーマニズムの解説と実例を著述した一冊。上巻では憑き物、古代のシャーマンの復元、苦行、イタコなどについて語られる。著者が実際に出会った人物との会話が引用され、宗教者や呪術が戦後日本でどのように運用されていたのかが見えてくる。興味深かったのは第7章で近代以降の新宗教の沿革を書く中でトランスを起こした女性教祖と教団の躍進の際に現れる熱心な男性信者の関係を序盤から話題にしていた古代から中世にかけての憑坐と審神者の関係と対置的なものとする仮説を建てるところ。
佐倉
2024/09/28 17:19

現在も定説かは分からないが、サンスクリット語のサマナ=沙門がシャーマンと語源を同じくしているという話は興味深い。サンスクリット語の根は実に深い。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
文体は論理的で読み易い、のに書かれてる内容が支離滅裂で気持ち悪いホラー作品。『牛家』は特殊清掃人の主人公がゴミ屋敷に入り込む。2日かけて掃除をしようとするが2日目に行ってみると1日目に逆戻りしていて……1日目のゴミ屋敷の描写や主人公の奥さんの状況など「うげー」って感じなのに2日目から支離滅裂さにアクセルが掛かってくる。炊飯器と便器の入れ替わり、丸焼きの赤子、幽霊の幽霊、牛と飼育員。なぜ牛なのかはある迷宮に準えてのものか。『瓶人』もそうだがそこはかとない、家族というものへの不信感が伺える。
佐倉
2024/09/27 14:19

『瓶人』は父はゾンビ化し母には捨てられた息子を主役にしたストーリー。何だか収まるところに収まったっぽい雰囲気を醸し出して終わったが愛、家族、生と死が捻転しまくった最後が気持ち悪いポイント。表紙を見て「サイケだなー」と購入したが期待通りの気持ち悪い作品たちだった。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
世界各地の神を役割や属性ごとに分類し紹介する一冊。度々引用される比較神話学者デュメジルの三機能説(1.主権・2.戦闘・3.豊穣)に興味が出てきた。またイザナギ・イザナミの黄泉比良坂と共通点の多いポリネシア神話のタネとヒナの問答、ソーマに代表される知恵を与える酒を盗む鳥の関係、神の死体から食物が生まれるハイヌウェレ型神話が種芋を切り刻んで植える文化圏からの産物、ロキやスサノオ、ヘルメスのようなトリックスターのイタズラがたまたま秩序を形成するキッカケとなるという話などもっと勉強したくなる話がたくさんあった。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
ひと昔前の日本文化論の常連トピックだった”ブルーノ・タウトによる桂離宮の発見”について述べる一冊。果たしてタウトによって発見されたと言えるのか?タウトの評は正しく理解されているか?この発見とされるものはモダニズム建築家による作為が混ざっているのではないか?そもそもタウトやモダニズム建築家の発見以前に十分に評価されていたのでは?そういう観点で桂離宮神話を解体していく。昭和初期に質実・質素な作りと評された桂離宮はそれ以前においては装飾や技巧を凝らした建築・庭園とされていたという。評価の逆転はどこで起きたのか。
佐倉
2024/09/25 01:02

執筆のきっかけが面白い。著者が最初に桂離宮を訪れた際、「構成のすっきりしたシンプルな建築」として感じていた。しかし装飾的な面がクローズアップされた評論などを読んだのちにみるとそういうものとして見えてくる。自由な目で芸術を鑑賞しているようで実は界隈の評価や潮流に流されている。「当時の私は、桂離宮に、いったい何を見ていたのだろう」……そこから「この権力はいかに形成されたのか」「誤解を要請したメカニズム」を解き明かそうとするのはとても学問的で面白いものだと感じた。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
余命半年の娘の希望に応えて南の島へ連れていく男、しかしそこでガン細胞を抑制する可能性のあるホヤと出会う『希望ホヤ』、絶滅した植物の押し花から検出される放射線、調べていくうちに身体障害を持ちながら苦学を重ねた半井幸吉という人物の半生にたどり着く『冬至草』、データ捏造をする科学者との対話を描く『アブサルティに関する評伝』、殺人犯・立てこもり犯の精神鑑定を行った人物が心の袋小路へ迷い込む『ALICE』…レポート的な出来事やデータの羅列によって進んでいく作品が魅力的。まるで事実として紙の中から浸出してくるような。
佐倉
2024/09/24 13:41

『平成3年5月2日,…』は再読。大学の頃にゼミで課題になって読んだことがあった。初読の時は一瞬、本当にあったことのように思っていた記憶が。現在、ホラー界隈でモキュメンタリーが流行しているが、この形式は過去から現在にかけて豊富な蓄積があるのかも知れない。ホラー界隈だと背筋氏などは謙遜気味に「一発ネタ」ということもあるが形式が持つパワーや面白さは無視できないと思う。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
玄関に立つ血塗れの女、障子越しに現れる女の影、神田川沿いに立つ女…鈴子と孝冬が幽霊を祓う中、燈火教と繋がりのある鴻八千代が二人に接触し始める。慈善事業を推し進め、幽霊に寄り添う感じの良い婦人…しかし八千代は「なぜ淡路の君で祓って差し上げないの?」と言ってくる。孝冬と記者の五十嵐が鴻と燈火教について調べを進めるとこの2つが没交渉になっめいることや別の事件を追う中で“松印”を自称した自称華族の男がいたこと、鴻心霊研究会に勤める多幡が見つけた鴻と孝冬に似た青年が写る写真…情報がどんどん出てきて続きが気になる。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
『あなたを連れてゆく』宮部みゆきは田舎の親戚の家に預けられた少年の幽霊譚。本筋から外れたスピンオフっぽい雰囲気だが霊能者三人の物語はどこかで読めるのだろうか。『龍狩人に祝福を』新名智はまさかのゲームブック。支持に従ってファンタジーを遊ぶ中、辻褄の合わない文章や似つかわしくないワードが現れはじめ…何周かしたが、支持に従うだけではたどり着けない頁も何個か。捲りながらチラリと見える“辿り着けない頁”にワクワクさせられながら読んだ。
佐倉
2024/09/21 13:51

『月は空洞〜』芦花公園はラジオから流れるレプティリアン話とおじいちゃんの語る河童と、少年の出会った超常的な青年とがぐにゃぐにゃと絡み合う一編。芦花作品の気持ち悪さ全開という感じで素晴らしかった。『函』内藤了は今回の中で怖さでは一番に感じた。突然相続した家と土地。現地に行ってみると荒れ地になっており解体業者の知り合いは「ヤバい」と慄き不動産業者も相次いで買取を拒否する。その土地の正体は…『湯の中の顔』三津田信三はバーで知り合った校正者から聞いた怪談という形式。田中貢太郎の『竈の中の顔』も読みたくなる。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
琵琶法師たちを専ら平家物語を語る芸能者としてイメージしていたが、平家成立以前から琵琶を持つ盲僧は土地祓いや荒神祓いを職能とする民間宗教者だった。彼らが唱えた地神経には五郎王子譚など陰陽道と共通する要素もあるという。耕作や井戸掘り、建築など土地開発を行う際、大地は堅牢地神(地母)によって守護されているため祀らなければならない。そのための儀式を行う役割が琵琶法師にはあり、その延長として平家の怨霊を鎮める役割を期待されたという流れがあるよう。また朝鮮半島にも地神経を用いる読経や盲覡といった宗教者がいたという。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
加害者が裁かれるまで死者は現世に縛られる…ある事件を機に視えるようになりそれに気がついた印藤検事、それに先立って視えるようになった深夜弁護士が事件の真相を追っていく幽霊の存在を前提にした特殊設定法律ミステリ。幽霊がいるならどんなに辻褄があっても事件はまだ解決していない…というシチュエーションが面白かった。冷静に現行の法律に従って検事として事件に向き合う印藤の態度も作者が作者だけにプロフェッショナルみを感じて好感が持てる。ストーカー、冤罪、殺人が絡み合う事件の展開も冷静でありながらスリリングだった。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
ネタバレ幽霊に出会おうとするシマくんに惹かれて京王線沿いの心霊スポットを回っていく琴葉。全体的に何かがしっくりこない気持ち悪さがある一冊。琴葉の家族構成がシマくんと一緒、肝心な時にシマくんが姿を消すこと、怖い話は苦手と言いながらミステリやホラーを読んでいたことがあるという話など、シマくんは最初から存在しなかった派。エピソードでは家の模型に取り込まれ認識がジャックされる『仙川』、存在しえない個室トイレの幽霊が顕れる『桜上水』、美味しそうな焼肉の描写とラストのチラシの一文が良い味出してる『明大前』が面白かった。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
中国料理を軸に近代史を見ていく一冊。清末、民国、人民共和国と近代中国と料理の関係を見る第一部、世界各国で華僑・華人によって伝播した中国料理の受容のされかたを見ていく第二部、三部、日本における中国料理を見る四部に分かれている。潮州の粿条→タイのパッタイ、福建の麵料理→マレーシアのホッケンミーや長崎ちゃんぽん、中国には無いが世界に広がったチャプスイなど、現地化され時に国民料理となるケースや、ユダヤ系アメリカ人やソ連崩壊後のブルガリアなどで意外な形で人々のアイデンティティや世界観と交わっていく様子が興味深い。
佐倉
2024/09/17 14:21

世界各地に広まっただけあって様々な俗説があるわけだが、それらにも言及がある。回転テーブル日本発祥説は完全に信じ切っていたが、つぶさに見ていくと英国で開発されたテーブルを中国人医師が衛星対策として取り入れるように進言し上海で広まって…という流れらしい。逆にフォーチュンクッキーが辻占煎餅という日本の宴会料理が発祥の可能性が高いのは全く知らなかった。あと天津飯について。1919年に中国産卵の関税撤廃→上海産卵と天津産卵が日本で多く使われていた…とすると天津飯の由来は天津産卵を使った中華風料理ということになる。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
『落ちない魔球と鳥』→『眠らない刑事と犬』→『名のない毒液と花』→『飛べない雄蜂の嘘』→『笑わない少女の死』→『消えない硝子の星』。冴えない野球部員と釣りをしている老人のニシキモ、二人の前に「死んでくれない?」と喋るヨウムが現れ…最初に選んだ一篇だけで十分に濃厚な短編だったが、50年ぶりの殺人事件、ペット探偵とその過去が気になり、となると吉岡と吉岡里香は関係者か…と、物語が連鎖して次が気になり一気読みしてしまった。これ関係あるの?と思った書き出しから前に読んだ人物の過去や未来が描かれていき惹き込まれる。
佐倉
2024/09/15 17:30

理想の順番、こうなったら厭だなとなる順番、あえて収録順に…とか自分が読まなかったルートを考えてみるのも面白そう。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
地図をどう読むか、どう読めるか。おそらく地図が大好きな著者からひとつひとつ手解きを受けていくような一冊。正直、目的地に付くだけならグーグルマップで事足るのだが、二次元の地図から三次元、四次元的な情報を読み取れる、それ自体が表現となる…という著者の言葉はとても楽しそう。小学校は都心は60~80m四方、地方は100~150m四方、総合スーパーは80~120、東京ドームは217~…と目安となる施設の大きさが参考になる。地図サイトも大きさを比べられる地図蔵や引用が楽そうなオープンストリートマップと色々ある様子。
佐倉
2024/09/10 21:57

p27のこの目的ならこのネット地図!みたいな図は今後調べ物をする時に参照しそう。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
怪奇あり奇想ありホラーありのSFアンソロ。自転の関係で過去に行ってからすぐさま現代に戻る同じ時間にしか行けないタイムマシンを手に入れた男が世界線移動を繰り返す『地球に磔にされた男』中田永一、閉鎖された空間…あるものは宇宙と言いあるものは地球の施設といい、登場人物すべての言動が相矛盾しとれがいったい正しいのか、緊迫感と共に描かれる『笑う宇宙』中原涼、大正期の軍医が発見した凍死寸前の記憶喪失の女性。特殊な低体温症の病態を観察しながら彼女の過去、軍医の葛藤が記録として散文的に描かれる『雪女』石黒達昌が面白かった
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
続日本紀や今昔物語集では時間について昼夜朝暮という表現が見られるという。昼は人間が管理できる時間。しかし夕方から夜には鬼や神が示現し始め、朝にはその結果を目の当たりにさせられる…そんな古代人の時間感覚を今昔物語集を中心に分析していく。記録される怪異には音や匂いが多い、常陸国風土記の神に献じられる布を暗闇の中で織る儀式がある、鬼や盗賊は夜に活動するが、武士もまた夜に活動できる存在として奇異な目で見られていた(明尊僧正を送る語)、盗賊のみならず貴族や一般人も京都に入る際は夜を待つなど面白い話が多くあった。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
現代の観光業界において巡礼はどのように扱われるのか、参加者がどの領域に価値を置いているのか。西国三十三箇所と四国八十八箇所のツアー参加者によるアンケートから、経験価値の定量化を試みる研究。銀行に勤務する人物が観光業界への提言のため大学で研究した結果の論文であるため非常に専門的で一般読者には敷居が高い。が、現代日本における巡礼参加者の傾向と場所による違いの記録という点では貴重。観光における真正性(オーソリティ)の重視、という観点に興味が出てきたのでより初学者向きな観光学や観光民俗学の本を読んでみたくなった。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
言葉の組み合わせの違和感から物語を展開させる、日常の中の違和感をキャッチする、客観描写と主観描写の組み合わせ、家を出て駅まで行く道を誰かに見せることを想定して文章化する『言葉によるデッサン』のトレーニング……無意識にやっていたこともあれば考えたこともないものもあり、色々参考になった。特に第五講『キャラクターを立てる』で新本格への批評として言われたという「人間を描けていない」について、小説は「人間を描くもの」だが現実の人間ではなく物語のために編集された「キャラクターを描く」ものという考え方は興味深かった。
佐倉
2024/09/07 00:54

第四章『文章力を鍛える』では過去にされた「小説を書くために何冊読めばいいの?」という質問に対して「何冊でも読めばいいのに」「読むことを目的のための負担と考えている。違います」という答え。楽しいと思える小説、自分が手を出さないジャンルの本を「自分の知らない言葉を手に入れるため」に読む。乱読している自分を励ましてくれているような言葉で、ちょっと気分が上がった。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
ネタバレ心スポ突撃YouTuberの池田、池田のファンブック企画を持ち込んだ編集者の小林、視えるライターの宝生。人気動画を元に話を盛ることで記事を検討していくが、それぞれには別の思惑があり…という連作短編。怪異を利用しているつもりが利用されていた、という形で幕を閉じるのは好み。考察要素については轢死した鈴木優子=敬一の元カノ、彼女は敬一という輪廻ラブホで産まれた存在と関わったことで風船男(赤ん坊のメタファー?)の一部に。変態小屋も天国病院も輪廻ラブホも風船男の輪廻に関わったことで汚染された場所…で良いのだろうか。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
30周年記念に相応しいアンソロジー。『ココノエ南新町店の真実』澤村伊智は雑誌記事風の一作。過去に心霊騒動があったスーパーを名物ライターが取材するが…思わぬ真実とそれが事実なのかを測りかねる曖昧な表現が気持ち悪い。霊能力者ものは氏の得意とするところだが一筋縄ではいかない展開が面白かった。『ニンゲン柱』阿泉来堂は那々木悠志郎シリーズの短編。怪異を崇める村、かなり直接的なスプラッタ、感想では言えないアレ、と短編ではあるもののいつもの味わいが楽しめる。それにしてもあの世界の北海道、化け物いすぎじゃなかろうか。
佐倉
2024/09/04 21:15

『魂の飛翔』鈴木光司はリング執筆の裏話…と思わせて現実と小説が入り混じる一作となっている。リングという作品自体が天啓のように現れたとすれば、誰がその天啓を与えたのか?伊熊平八郎の娘(つまり貞子の異母妹)の率いる教団がリングの謎を解こうとする作中作も面白かった。本当に文庫化するつもりなら読みたい。『828の1』原浩は高齢の母がやたらと口にする言葉の謎を追ううちに死へと近づいてしまう作品。何気ない日常と怪異が結びつくというのが一番怖いと思う。自分の場合は…とか考えてしまうのも境界を飛び越えてくるような感覚。

佐倉
2024/09/04 21:26

『にえたかどうだか』一穂ミチはマンションやママ友の人間関係の厭さと、それゆえに怪異に付け込まれる親子を描いた作品。母や動画が「もうすぐ煮えるんでしょう?」が言ってくるシーンはかなり怖かった。糸の集積としての怪異、それを切り取る鋏と和裁士の副業という展開も意外性がある設定だった。『風来たりて』小野不由美はある住宅地と集落に起きた怪異…奇妙な声、死者、数多くの障りを描く。終わりの見えない対処法も見えない絶望感…から営繕かるかやシリーズであることが明らかになる。小野不由美作品の実話怪談的な魅力も健在。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
土地、人物、動物、物体……”右園死児“と名付けられた存在は無数の災厄を撒き散らす。そんな怪異存在について政府機関が収集した明治25年から現在にかけての無数のドキュメントをまとめた報告書という体裁の作品。自殺者が続出する土地、右園死児を名乗り災厄を振りまく教団の教祖、論文化したことで発狂した教授…と様々な報告が1頁ごとに集約していく中、右園死児という名の外務大臣の存在や政府機関の隠蔽、そして我々の生きるこの世界との決定的な違いが明らかになる。悍ましさとワクワクが詰まったホラーSF小説だった。
佐倉
2024/09/03 18:36

いわゆるSCPに近い形式の作品だが設定は作品世界内で完結している。中盤までは報告書や傍受記録といった形で進んでいくが中盤以降のある事件をきっかけにそれまで報告してき探偵・神谷や機関のメンバーが集まっていく。

が「ナイス!」と言っています。
佐倉
ネタバレ切れてしまった繋がり、切れてしまうかも知れない繋がり、誰にも見えなくなってしまった繋がり…と今回のテーマはサブタイの通り『繋がりの時』。これまで読んだエピソードは”爽やかに終わったけどしこりが残る“だったのがなぜだか今回は“心にしこりは残るのに爽やかだ”と逆の印象になった気がする。それにしてもプロローグの叙述トリックは見事に引っ掛かった。「もう何十年もこの仕事を続けてきたかのようだ」にあれ?となりつつスルーしたが……まさか智恵子さんの方とは。次巻はまた田中敏雄が登場。こちらの因縁はどう決着がつくのか。
が「ナイス!」と言っています。
佐倉
弁護士や塾講師などと言った一般的な職業、湯灌師、神主のようないかにも怪異がありそうな職業、ゴルフボールダイバーやシューフィッターなどあまり聞かないまで、様々な業種の人の怪談が集まった一冊。結婚式で使うペーパーアイテムという縁起の良し悪しが重要視される業種の『吉兆』、競馬予想屋の知り合いに起きた赤ペンの怪異『父の愛』、別々に採集された卒塔婆と絵馬の怪談、しかし現場とされる場所は近くもしかして同じ業者から買い取ったのでは……と業者に取材を試みる『木怪』『巡る因果』が良かった。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2021/12/10(1239日経過)
記録初日
2021/11/27(1252日経過)
読んだ本
847冊(1日平均0.68冊)
読んだページ
277000ページ(1日平均221ページ)
感想・レビュー
817件(投稿率96.5%)
本棚
23棚
年齢
30歳
外部サイト
自己紹介

人文・民俗学・ホラー小説などを中心に読んでますが時々全然違うところに飛んだりもします。早い話が乱読屋さんです。

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