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2024年3月の読書メーターまとめ

佐倉
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22
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6530ページ
感想・レビュー
22
ナイス
489ナイス

2024年3月に読んだ本
22

2024年3月のお気に入り登録
7

  • ジムノペディ
  • ∃.狂茶党
  • kinnov
  • かおすけ
  • 不純文學交遊録
  • はりね🦔
  • yc

2024年3月のお気に入られ登録
3

  • しげ
  • yc
  • はりね🦔

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

佐倉
煙鳥氏のおすすめ本から。芳蓮堂という骨董屋ときつねが何かしら絡んでくる幻想怪奇短編集。京都を舞台にして摩訶不思議な人なり奇縁なりが展開するのはいつも通りながら、文章にはネバネバとした闇がまとわりつく。印象に残ったのは「きつねのはなし」と「果実の中の龍」。 「きつね」はナツメさんの妖しくも可愛らしい人物像、何かとてつもないものが日常の闇に潜んでいる雰囲気が魅力的。「果実」に登場する先輩の話は他のエピソードと矛盾しつつも符合するものが多くて実はある方法で神秘の中枢に辿る糸に触れていたのかも……なんて思った。
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2024年3月にナイスが最も多かったつぶやき

佐倉

2024年2月の読書メーター 読んだ本の数:10冊 読んだページ数:3139ページ ナイス数:316ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1299022/summary/monthly/2024/2

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2024年3月の感想・レビュー一覧
22

佐倉
疲労と疲労感の違い、生理的疲労と病的疲労の違い。それをヒトヘルペスウィルス6の働きやストレスとの関係で読み解いていく。非常に込み入っていて難しい用語も多かったがうつ病とコロナ後遺症の関係や欧米と日本での疲労観の違い、それによって引き起こされる研究態度へのギャップなど興味深い点も多かった。疲労感ではなく疲労を回復するものとしてビタミンB1(とそれを誘導するアリナミン)、疲労の原因とするeIf2αのリン酸化を解除する物質として米糠に含まれるガンマ・オリザノールが挙げられていたりと玄米最強説が補強される一冊。
佐倉
2024/03/26 22:39

嗅球にアポトーシスを起こすことでアセチルコリンによるコリン作動性抗炎症経路の働きを低下させる、という仕組みはコロナ後遺症も同様。というよりコロナ後遺症の研究によって炎症が起こる流れを特定できたらしい。ブレインフォグではコロナウィルスの中にあるS1タンパク質と呼ばれる物質がSITH1と同じ働きをする。そして体内でS1タンパク質が炎症性サイトカインを生成することで脳に炎症を引き起こす……という流れ。うつ病も同じメカニズムだが、こちらでは疲労を感じた時にのみ炎症性サイトカインが生成され脳に届くという違いがある。

佐倉
2024/03/26 22:51

なのでアセチルコリン不足を補うことが出来れば新型コロナ後遺症にもうつ病にも効果がある可能性がある。ドネペジルというすでに認知症の薬として販売されている薬品を2022年からコロナ後遺症患者に治験中とのこと。

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佐倉
ネタバレ長江俊和の作風はモキュメンタリー+意味怖的な要素が多いがこの短編集は意味怖寄り。叙述トリックにアナグラム、時系列変更とあの手この手でこちらを引っ掛けてくる。カルト村ホラーの雰囲気とおぞましい愛、露骨なアナグラム(しかけられているとは思ったが並べ方が分からず最後まで気付かなかったのだが)が楽しい『ルレの風に吹かれて』逃げられない孤島でのサイコな映画撮影の閉塞感、ラストのどんでん返しにやられた『撮影現場』、シチュエーションコント染みた雰囲気の『イップスの殺し屋』が面白かった。
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佐倉
11世紀のチベット密教僧ドルジェタクにピントを合わせチベット密教にある闇…性的ヨーガや度脱のような呪殺法のカタチを炙り出していく。今日から見て非常に過激で仏教らしからぬものに見える後期密教は意外なことにインドから生まれた。異民族の流入や東西交易の凋落によって支持基盤を失い仏教が劣勢となった時代に現世利益 や呪殺、ヒンドゥー教すら手を出していない性的な要素を取り入れて挽回を図ろうとした7世紀以降のインド仏教の要素をチベット仏教も色濃く反映しているという。
佐倉
2024/03/23 21:18

著者も指摘しているがこのロジックはオウム真理教のポアと全く同じもの。他にも性的ヨーガにおけるパートナーをダーキニーと読んだり、オウムの思想や用語に関してチベット仏教はかなり直接的な元ネタであることが伺えてくる。オウムの教義に関して仏教側から「仏教を曲解している」という発言があったようだが、大乗仏教や後期密教に暴力や性的暴行の種が潜んでいることを著者は指摘していく。そしてチベット仏教がいかにこの暴力性を制御していったかというドルジェタク死後の歴史も語る。

佐倉
2024/03/23 21:36

オウムに関連して読み始めたが、乱世の教義としての密教はかなり面白いテーマに思えてくる。聞き馴染みの無い名前と用語がほとんどで着いていくのにやっとという感じもあったがそれを押してもパワフルな歴史を感じられた。殺人を肯定するように読める教義は日本に伝わってきた密教経典『理趣経』にもあり、これの貸し借りを巡って空海と最澄が不仲に…とか仏敵の呪殺(調伏)と浄土に送る(息災法)はチベット仏教ではセット運用なのに日本では調伏だけしかしないがこれには御霊信仰が絡んでいるのでは…など日本密教に絡む話もあって実に興味深い。

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佐倉
地下鉄サリン事件の時期が来たことをきっかけに。最近、文化人類学などの本で成人儀礼について調べていて思うのだが”大人になる”ということは社会に受け入れられることでは無いか。そう考えた時、村上春樹のインタビューで取り上げられたオウムに入信し出家したような人々は、オウムの中でようやく受け入れられて”大人”になることが出来た。インタビューの中で彼らはオウムに入信したことを誰も後悔してはいない。ワークの内容や教団内のゴタゴタに失望はしても、受け入れられた瞬間の喜びはむしろこちらにも伝わってきそうですらある。
佐倉
2024/03/22 00:41

全体として、アンダーグラウンドに比べると流石に言わずにはいられないことがあったのか色々と口を挟むシーンも多かったが”彼らがその時どう考えたのか”に対して価値づけをすることはなるべくしていない。やはり誠実な態度でインタビューに臨み執筆しているように読めた。一方で高橋との対話を見ていると村上春樹が自分自身で物語を作りそれによって誰かに受け入れられた(あるいは受け入れさせられる力を持った)強者の側である、ということも実感せずにはいられない。彼はオウムからもそれを生み出した社会からも自由で強い心の人間なのである。

佐倉
2024/03/22 00:42

それは寄り添うという行動の限界ではあるが、一方でこの本に貫かれている客観性を担保したものでもある。

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佐倉
スノボやサーフィン、スカイダイビングに飽きたらずさらなるスリルを求めて心霊スポットを巡り始めた男の末路を描く『刺激ジャンキー』、遺品整理の際に見つけてしまったヤバい写真の話『おじいちゃんの写真』、“見える人”の話だがシャンプー中に髪から穢れを感じるという見えかたが珍しい『腐れ髪』などが印象的だった。なんだったんだろう?という不思議系な『みんなで鍋を』とかモノ悲しい雰囲気の『石子供』などもあってバラエティ豊かだが、『舐める男』『呪胎告知』のような艶かしい要素のある話もそちらが本業だけあってか読み応えがある。
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佐倉
タイトルと表紙とプロローグを読んだ段階ではこんな作品だとは思わなかったが、読み進めると本性が露になってくる。読むと死ぬ魔導書、肉塊、入れ替わり、吸血鬼、因習村と様々な道具やシチュエーションから引き起こされる探索系ホラー連作。主人公の非常に淡々とした一人称文体とそこから時折繰り広げられる暴言とスプラッタが癖になる一作。日常世界に留まりたいのにそこではしっくり生きられない楠田、どっぷりあっち側に行ってる古戸のコンビはお互いドライオブドライで時に呑気ですらあるのだが、この雰囲気が実に良い。次巻もぜひ読みたい。
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佐倉
一般的に集中すること、論理的に思考することなどが良いとされがちだが、分散系(前頭前野と大脳皮質を結びつける神経線維”帯状回”の働き)はそうした時には抑制され、景色を眺めたり散歩したりといった何もしていない時にのみ活性化する。その働きによって情動や意味記憶、手続き記憶などの無意識的な記憶が検索されたり結びつけられていくのだという。著者はこの意識に登らない脳の活動の結果を直観とし、直観が働くためのメカニズムや具体的な行動を説いていく。
佐倉
2024/03/18 22:39

集中系と分散系は一方が働く時に一方が抑制される表裏一体のもの。働きに偏りが出ると様々な問題が出てくるともしていて、集中系が長期間働きすぎると分泌されたノルアドレナリンが神経細胞を破壊してしまう。逆に分散系の働きばかりになるとニューロンやグリア細胞が死んでいき、認知症やうつ病にも繋がってしまうのだという。外にも何かをするに当たって報酬を期待させると偏桃体が動かされ集中系とされる部分が活発に動くが、内的な好奇心などから動くとそれらが抑制される=分散系が働くのではないか?などと面白い話が色々とあった。

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佐倉
妖怪とは超自然的な存在である、という前提が近代的なものではないかとした前著から、では妖怪が如何に近代で超自然と結びついたか妖怪・オカルトブームと民俗学の関係を通して見ていったり、柳田や小松民俗学に共通する妖怪と神との関係にエクスキューズを付ける論考など『妖怪の誕生』応用編的な内容の第1部、文化人類学という比較の視点で日本民俗学…異人論や股覗きのような呪術、ゴリラ女房などの民話を捉えなおそうとする第2部、そして進行中の現代のネット怪談(日本のみならず世界も含めて)を紹介・分析していく第3部で構成されている。
佐倉
2024/03/18 11:19

基本的に過去の論文の集成なのでまとまった結論があるわけでは無いが、後書きによると2部(グローバルな視点で日本民俗を捉える)3部(現在進行中のネットロア)の内容をそれぞれ単著でまた出す予定とのことなので、楽しみにしたい。読み応えでは第2部が一番あった。股覗きやゴリラ女房といった民話の分布、貍に化かされるという民俗をアマゾンのヤノマミ族の人間観と比較するなど。一方で頻出したトーテミズム、アニミズムとパースペクティズム、アナロジズムなどの専門用語に対して自分の理解足りてないのは感じたのでもっと調べたい。

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佐倉
ネタバレダウナー系夫妻がゆっくりと絆を深めていく退魔モノ3巻目。これまでも花菱家と淡路の君のバックボーンはかっちり設定されていたことは示唆されていたがそのあたりの情報もちらほら開示されていく。10世紀後半、村上帝~あたりの人物で佑季なる人物が当主だった時代の人物で、恐らくは花菱に嫁いできた人物……そして彼女自身が巫女だったのではないかという示唆。淡路の君関連の本筋が色々と気になる引きだった。
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佐倉
民族の呪術や妖術など学生の頃受けた講義の内容と近いものもあれば現代政治や社会に目を向ける領域の話もあり自分のような初学者へのガイダンスのような内容だった。文化人類学は今生きる世界の考え方や在り方を自明のもの、唯一のものと考えがちだがそうではないということを考えていく学問なのかも、と改めて感じる。読了した金枝篇がどのような位置にあるのか、他の学者は呪術をどう研究しているのかなども書かれていて参考になる。次はタンバイアがカストロを読んでみたい。廣田龍平の妖怪研究の本への解像度も上がった気がする。
佐倉
2024/03/14 15:56

「父親の服と一緒に洗濯されたくない」という娘を呪術に準えて語る部分は面白かった。ただ面白がるだけでなく、それによって家庭という単位の中で人間関係を更新する営みとしてこうした言葉がある、という読み方をするのも興味深い。存在論的転回をするにしろしないにしろ呪術には色々な読み方が出来る。

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佐倉
煙鳥氏おすすめ本から。かなり好みの作風。『禍記』なる古史古伝。すでに散逸し、注釈や目録しか残っていないその文書をオカルト誌の編集者が追う表題作がブリッジとなって妖怪や因習、絶滅生物、異界を描いた怪しげな短編たちが展開されていく。赤子が生まれてから出身地の”取りかえ子”という妖怪説話を思い出してしまう母親を描く『取りかえっ子』巨大な蝶、それを御使いと崇める村の因習を描いたバイオホラー『天使蝶』盲人以外は殺されてしまうめんやみ島とそこに婚約者を探しに来た目の見える女性、そしてひゃくめさまなる怪異の存在が(続く
佐倉
2024/03/12 22:06

不気味に見え隠れする『怖い目』子供たちが口を揃えて語りだすモミという存在。鳥のようだが、子供たちしか目に見えないその獣が二転三転して語られる『妄執の獣』ワープ航法が完成した未来、そのために通り抜ける超空間は冥界だった……というSFとオカルトが混ざり合い外連味たっぷりな描写と設定に心がグッと掴まれる『黄泉津鳥舟』とどれも好みの作品ばかり。どれも甲乙つけがたいが『天使蝶』のメイオウシジミの描写が嫌悪感を催して秀逸。『黄泉津鳥舟』は異界描写がトリップ感満載で素晴らしかった。

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佐倉
煙鳥氏のおすすめ本から。芳蓮堂という骨董屋ときつねが何かしら絡んでくる幻想怪奇短編集。京都を舞台にして摩訶不思議な人なり奇縁なりが展開するのはいつも通りながら、文章にはネバネバとした闇がまとわりつく。印象に残ったのは「きつねのはなし」と「果実の中の龍」。 「きつね」はナツメさんの妖しくも可愛らしい人物像、何かとてつもないものが日常の闇に潜んでいる雰囲気が魅力的。「果実」に登場する先輩の話は他のエピソードと矛盾しつつも符合するものが多くて実はある方法で神秘の中枢に辿る糸に触れていたのかも……なんて思った。
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佐倉
読んだら死ぬ本『ゆうずど』を軸に繰り広げられる連作短編。カウントダウンとなる黒い栞が随所に現れたり、栞についての描写が実際のページと一致してたりと手元にある本と展開がリンクしているのが楽しい。小説自体が怪異というリングや枯れ井戸を彷彿とさせる舞台設定だが、やっぱりこういうのは好き。第一章である程度ルールが開示され「なるほどね」と理解したと思ったら二章から例外が出て来て「どういうこと!?」と混乱したりと“ゆうずど”自体の設定やギミックも良かったが、短編一本一本の厭味も濃い。お気に入りは『牧野伊織』の回。
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佐倉
後半は死の49日。寺、墓石、精進落としといたるところで襲い来る刺客とトリックを例のごとく事前に看破していく。トリック百連発かというほど行く先行く先に何らかの殺人トリックが仕掛けられているの、ハラハラして読みつつも途中からコントを見てるみたいで笑えてくる。刺客の描写が挟まり、すれ違った人物を「何だアイツ」とジロジロ見てたら実はその人物が別のトリックのために差し向けられた人物で……というのが延々と続く当たりがお気に入り。実に楽しい一冊だった。
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佐倉
莫大な遺産の相続者となり命を狙われることになった女子高生の一華と、彼女の命を守るために雇われた『トリック返し』の二つ名を持つ探偵。一華の命を狙うため複数の完全犯罪が目論まれるが……これも一種の倒叙ものか。すべてが実行直前に未然に叩き潰され、計画したトリックによって自滅させられることに。犯罪もあるしトリックもあるし探偵もいるが、スパイものや殺し屋もの的な計画の面白さ、そしてラストの必殺仕事人とか地獄少女みたいな外連味のあるトリック返しの展開がすっきりしてて楽しい。
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佐倉
『遠野物語』を民俗学以前の物として読もうと試みる一冊。新体詩人としてデビューし竜土会という文学サロンの中心人物として田山花袋にネタ提供をしていた柳田の経歴から、遠野物語を自然主義文学のパラレル(大塚氏の言葉では花袋への当て擦り)な本として読み解く。自意識とその周辺に対して目を向けるのではなく他人の語りに目を向け、文一致文体に対する文語体で記された文章…話はそこから田山花袋、水野葉舟、佐々木喜善といった周囲の文学者たちの文章=自意識の在り方へと展開する。彼らは柳田となにを共有し、何を共有しなかったのか。
佐倉
2024/03/08 23:12

民俗学の本を読むと『遠野物語』は方法的な問題……フィールドワーク不足 や佐々木喜善からの収奪といった面で批判している姿が見られるが 、ひとつの文学的な思潮によって読み解くことでまた違った側面が見えてくるのは興味深かった。神経の時代とは自らを語る言葉が混乱し定まらない時代、と考えると明治から昭和初期にかけての文学の文脈の一端が取れそうな気がしてくる。

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佐倉
『怪談前後』を読むに当たって読了。他人の話、知り合いの田舎について伝え聞く物語と、現地に赴いた主人公が見た村の様子と遭遇した火事、その犯人と目される爪弾き者の重右衛門についての著述がメイン。終盤に重右衛門や死後の村人の態度を「自然」という言葉を用いて批判しているが田山花袋が自然主義文学の人だった、ということを踏まえると現代的な語義の理解では取り落とす文脈がありそう。
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佐倉
マンションの窓が異界(恐らくは過去)と繋がり、住人の柚子は異界の民から窓越しに“かみさん”と崇められる。ペットボトルなどと引き換えに織物や熊の肝、絶滅した植物などといった代物を受け取ってはネットで売り捌く柚子たが…という幻想怪奇短編集。現実にいながら異界のことを思い、どんどんとあちらの世界へと惹かれて行き、現実で受けた言葉と共に立ち位置がグラグラ揺れて、やがては境界線上の存在=山姥と自己認識していく主人公の様子が丁寧に描かれる。竜宮童子の話のような異界との交換と強欲による没落をなぞっているのだが、こうした
佐倉
2024/03/05 12:29

説話での異界側(竜宮のような上位側)の存在として現代と主人公を置いているのが新鮮だった。

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佐倉
ネタバレある日、気まぐれで仕事を休みふらっとやってきたキャンプ場での心温まる交流の翌日。帰宅しようとした友美はキャンプ場から出ることが出来ず、昨日交流した人々は記憶を失っており会話が噛み合わない。しかも周辺では行方不明者や子供が死亡したという噂話が……というキャンプ場ホラー。前半のどことなく不気味な雰囲気から中盤に探索パートに入り、終盤で映画的な派手な脱出劇が繰り広げられる構成で読み易かった。『屍介護』と合わせて考えるとこの作者さん、ちょっと年上の明るい女性が不憫な目に合うのが好きなんだろうなぁ……
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佐倉
『カルキノス』を別のアンソロ集で読んでからいずれは読みたいと思っていた短編集。フリーターの猿渡と怪奇作家の伯爵が行く先々で怪異の事件に出会うのだが、その一々が飄々とした猿渡の視点で描かれていて、それが実にしっくりくる。志怪という言葉の通り、怪を軽妙に志していくような不思議な雰囲気が楽しかった。食をモチーフにした『カルキノス』『埋葬虫』『水牛群』が特にお気に入り。禍々しいのに美味しそうに感じる蟹の描写が素晴らしい。存在しない異界の食べ物を描写しているのにイメージが湧いてくる。『水牛群』の最後の一文も好き。
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佐倉
火を祀る意味、オークとその寄生木が信仰されていた意味を寄生木によって撃ち殺されたバルドルの神話、そして外魂の民話や民俗に求めていく。呪力なり魂なりを外に宿らせることで無敵となるがそれが破壊されると力が衰える、というのは現代の物語やゲームにも用いられるモチーフだが、これと北欧神話のバルドルの死、そしてネミの森の王の「聖木の枝が折られることで挑戦権が与えられる」という構図と同一視していく。ドルイドなどではオークの寄生木は聖なる力を持つ万能薬として扱われており、となるとそれが死因となる神や祭祀の存在はそれを司る
佐倉
2024/03/02 12:51

神であることを表しており、そして聖なる樹木が火祭りに用いられるケースがあるが古代呪術において木=火や日の力の源泉としても捉えられていた可能性があって……と無限に展開していく。通しで読み終えても到底一言では言い表せないのだが、呪術、信仰、物語などについて多くの示唆、そして多大な納得感を与えてくれた。読んで良かったと思う。

佐倉
2024/03/02 13:04

とにかく途中途中のディテールが細かくてそこが読み難いと思う一方、民話・神話百本ノックというような感じで勉強にはなった。読了後、母に感想を語っていたら祇園祭の話をされたのだが、祇園祭の生稚児は地に足を付けてはならず食べてはいけないモノがあり……と確かに呪術師的。金枝篇に照らし合わせれば地に呪力をまき散らさないように、という呪術と解釈できるし、時期が新暦7月ということは元々は農耕関連の祭りだった?とか”生”稚児と態々書いているということは?とか現代に残っている習俗にも当てはめて考えることが出来ておもしろい。

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佐倉
屠殺して食べたり利用したりする一方でその動物を神として尊崇するという信仰、生物無生物問わず災厄の転嫁、そして火祭りと様々なケースを探っていく。屠殺に関してはアイヌのイオマンテが詳細に、類例も紹介されている。魂を異界に送る際、またこちらに来て貰ったり異界で人間に利する行動をとって貰えるよう、もてなした上で殺す。これは王の身代わりとしての人間犠牲とは細かいロジックは異なるのだろうが、結果として似た儀式になっているのが興味深い。日常的に屠殺した上で敬するアイヌ型、日常的に崇拝して儀式の際だけ殺すエジプト型と
佐倉
2024/03/01 19:57

典礼にも様々なケースがあるらしい。火祭りについての話も夏至や冬至などに行われる様々なものが紹介されている。農耕か牧畜かによって時期が変わる(メイデイとハロウィンのケルトは牧畜みたいな)と色々な 話があったが、ヨーロッパの夏至で篝火を焚いて祝い人形を焼くという風俗、地方によって人形の名前がお婆さんだったりユダをだったり復活の男だったりマルティン・ルターだったりとごった煮な感じ。別にあった農耕関連の儀礼にキリスト教の用語を被せたものなのだろう。日本の仏教や陰陽道などがごった煮になった習俗に近いものを感じる。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2021/12/10(870日経過)
記録初日
2021/11/27(883日経過)
読んだ本
605冊(1日平均0.69冊)
読んだページ
198816ページ(1日平均225ページ)
感想・レビュー
575件(投稿率95.0%)
本棚
18棚
年齢
29歳
外部サイト
自己紹介

人文・民俗学・ホラー小説などを中心に読んでますが時々全然違うところに飛んだりもします。早い話が乱読屋さんです。

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