ネタバレあっという間に読んでしまいました。応仁の乱直前の京の都の動乱を足軽誕生と貨幣経済の発展、農業生産力の向上による身分制度の動揺を下敷きにして描き切った見事な物語でした。才蔵の修行時代はジャッキーチェンの映画をみるようで非常に楽しい。再読でしたが、やはりいい本はいい。

ネタバレ加害者家族という立場でありながら、犯罪被害者のカウンセリングを仕事に選んだ主人公は、被害者の側に立つことで少しだけでも自らの贖罪を果たすことを考えたのかもしれない。ただ多くの犯罪関係者の側に立つことで犯罪そのものに巻き込まれてゆく。辛うじて出した答えは事実と向き合い続けること、辛くても、逃げながらでも生き続けてゆくことだった。本多さんの物語はいつも安易な決着にならない。いい本でした。

ネタバレジェリーフィッシュは凍らないに続くマリア＆漣シリーズ第２弾。綿密に計画した不可能犯罪で、しかも最終的に悲劇的な結末に陥る点は前作と同じ。題材が架空の飛行船であったジェリーフィッシュが、実現不可能とされた青いバラに変化して、少し因習的なエッセンスが加わった感じになっています。が、密室は無理筋でもあり、復讐のための犠牲が大きすぎる点も不自然で、トリックを成立させるために動機が操作されすぎた感じがします。出来はジェリーフィッシュが上か。次は行かないかな?どうかな。

ネタバレ一つの水彩画を中心に多くの人たちが行き交う。掌編の連作のように見えて、最後にくるりとひとまわり。それぞれが希望や挫折、焦りと苦しさ、そしてあたたかな喜びにも出会う。生きることはただ生きるだけでなかなか大仕事なのだと思わせてくれる。きれいすぎる読後感が、すこし不満でした。このなかでは「トマトジュースとバタフライピー」が一番好み。

ネタバレ深緑氏の短編集ははじめてかな。結論から言えば長編がいいのかな。緻密に積み上げていくタイプの方がよい感じがする。まあしかし、ファンタジーホラー風も悪くはない。悪くはないが、良くもない。全編にわたってカミサマは出てこない。そうはいないというのだから、たまにいるのかと思って探してみたが。