“外国語もしゃべれず、ピカソをプロヴァンスの煮込み料理と勘違いするような女といっしょになったら、二、三年で物笑いの種”(P128)“六人だけの内輪でディナーにしようと思うのよ。ロブスターのクリームスープ。子羊の肩肉ステーキにサヤインゲン添え。あとはなにかデザートを。飛行機なら、その夜のうちに帰れるわよ。年とったおばの頼みと思って”(P130)身分違いの結婚を望むパウル。なんとか思いとどまらせようと親族たちが画策した結果…全編「長距離電話」でなりたつスタイルが◎。
■図書館長♂茶トラふたたび入院ふたたびの生還。前回は命と引き換えにスワローズの日本一を諦め、今回コスタリカ戦を捨てたスマン。決勝T進出したから許して■なわけで月間7冊という最低記録更新■薔薇の名前はバタースカッチ■2022年11月の読書メーター 読んだ本の数:7冊 読んだページ数:3163ページ ナイス数:862ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/200370/summary/monthly/2022/11
“まさに、そのカスパーが腕にナプキンを掛け、ライン川流域のワインの細長いフラスコの栓を恭しく開けようと”(P108)“昨夜は実に美味であった。小鹿にライチョウにカワカマス、どれも堪能した。俺は公平な男だ。きちんと仕事をしたときは、言葉に出してきちんとほめる。今日も然りだ。この猪の腸詰の白ワイン煮は実に美味そうだ。それに、このザリガニのスープからも美味しそうな匂いが”(P109)エルクマン=シャトリアン「狼ヒューグ」は、タイプミスの校正しそこないが数箇所あり残念。
“朝が来て、ミス・タリーは焼いたベーコンとポリッジの朝食を作ってくれた上に、出る前には山登りの途中で使う弁当と、飲み水を詰めたひょうたんを渡してくれた。ミスター・ヤードロは十ドル札を差し出した”(P432)“日当たりのいい開けたところに来たので、俺たちは切り株に座って、ミス・タリーが持たせてくれたコーンブレッドと燻製肉の弁当を開いた”(P435)マンリー・ウェイド・ウェルマン「ヤンドロの部屋」も連作短編集『悪魔なんかこわくない』で既毒。https://bookmeter.com/books/4876987
“昔から家族ぐるみで付き合ってる友人だよ。ロンドンで〈ソニー・ビーン〉という名のレストランを経営して”(ハリエットの恐ろしい夢 P135)“極上のスモークサーモン、極上のヒレステーキ。世界の食材といっても限りがあるからね、嬢ちゃん、やがて食べたことのないものはなくなるのさ。そりゃ、調理法はさまざまあるよ。ハトのむね肉、マーマレードとフォアグラ添え。スズキのスモーク、エシャロットとシイタケ添え。だがそれもこれももう食べてしまったというとき”(P143)ワガママ嬢ちゃんの行く先は?〈ソニー・ビーン〉の呪縛が…
“サンダルまで届く白い民族衣装をまとっている。ターキッシュデライトを買いにちょっと外へ出ていたのだ。男は指についた砂糖をなめながら” “猿の耳を売っただと?”(P220)“ベッカー家ではだれも寿司を食べたことがなかった。袋を開けると、箸が三膳と、プラスチックの容器にカニときゅうりの巻き寿しが十二本” “猫にやるわ”(P226)四つのお願いを叶える「猿の耳」…ロールスロイスならぬ巻き寿しが届く。ツッコミ1=ふぅん英語わかるんだー。ツッコミ2=お話し好きが「猿の手」聞き逃すってありえなくない?
“ロウソクをともすと、いい雰囲気になり、くつろぎました。ヴィヴィアンがガラスの盆にのせて運んできたティーカップもすてきでした。繊細で、美しい青の模様が施され、夢のような風景が磁器の表面に描かれていました。紅茶は濃くて、渋く、砂糖とクリームは添えてありませんでした”(幽霊 P80)わたしたち夫婦はオーストリアから観劇のためロンドンを訪れた。前列の女性に興味を持ったらしい夫が、舞台そっちのけで話しかける機会をうかがう。まあいつものことと生ぬるく見守ると、その女性が兄妹で住む家に招かれ…幽霊譚のお手本ですな。
“外国語もしゃべれず、ピカソをプロヴァンスの煮込み料理と勘違いするような女といっしょになったら、二、三年で物笑いの種”(P128)“六人だけの内輪でディナーにしようと思うのよ。ロブスターのクリームスープ。子羊の肩肉ステーキにサヤインゲン添え。あとはなにかデザートを。飛行機なら、その夜のうちに帰れるわよ。年とったおばの頼みと思って”(P130)身分違いの結婚を望むパウル。なんとか思いとどまらせようと親族たちが画策した結果…全編「長距離電話」でなりたつスタイルが◎。
“クラウン・ロイヤルのミルク割りで?” “どうしてわかるんだ?” “ビューフォーに聞いたんだよ、あんたは常連だってね”(P115)“ジム・ビームの水割り?” “クラウン・ロイヤルのミルク割りをロックで” “今夜はJBが1ドルよ” “決めてるんだ。CRのミルク割りを頼む”(P135)郵便局員イージー・アール・ブレイキー46歳。愛車は真っ赤な1978年型マーキュリー。どこのバーへ行ってもオーダーはクラウン・ロイヤルのミルク割りである。この後想像もできなかったことが起こり、世界がまったく変わってしまうとは・・・
“ラジオを消した。まっすぐバプティストまで行ってセブン-イレブンに寄り、ビックの剃刀とスニッカーズと黒いコーデュロイのプレイボーイ・バニーのキャップを買った。車のバックミラーを使って乾いたままの髭を剃り、次にスニッカーズを食べた。それはまだ髭を生やしていない十六歳のときに食べたきりだったのを思い出した”(P145)クラウン・ロイヤルのミルク割りを飲んでただけなのに、馬鹿げた事故から、警官射殺犯として追われる身に。
“焼きたてのトルティーヤが積まれている。テーブルの上にはバター、砂糖、ブドウジャムの鉢と、塩、トウガラシ、挽いたシナモンの瓶”(P128)“ニンニクを一片もぎ取り、皮を剥いてチョリソに加え、フォークでしっかり砕いた。大きめのトウガラシを切り刻み、ソーセージとニンニクといっしょに混ぜた。チョリソがジュージューと音を立てて色濃くなり、ニンニクとトウガラシのかけらがしみ出た油のなかで茶色に染まった。食欲をそそる強い香りが、コーヒーと煮豆のにおいに混ざった”(P129)下宿の朝食うまそう〜
“ダーティ・ライスとエトゥフェをかき込むおれの旺盛な食欲と、どちらかが言ったちょっと面白い程度のことに大笑いする気分の高揚”(P124)“おれは揚げピーマンとタマネギののった分厚いステーキ、ボウル一杯の小豆と米、刻んだソーセージ入りのスクランブルド・エッグ”(P142)“ブレンダ・マリーは半熟卵とバターをつけたクロワッサンを食べ、おれが食べ物を腹に詰め込むのを微笑み”(P143)わたしを愛さないで、男が女に惚れた途端に鬱陶しくなる、とブレンダ・マリー。たったの5歳上。パトロネと呼ばれるような歳ではない。
“大きな椀に入ったやたら辛いチリビーンズと、添え物がいろいろついた特大のハンバーガー、篭入りでケチャップがたっぷりかかった太いフライドポテトを食べた。そして背の高いグラスに大量の氷を入れて、ミントを添えたレモネード。朝食にパンを少しかじり、昼食にチーズサンドウィッチを何口か食べただけのベルは、ついに食欲を” “デザートには、新鮮な桃の果肉と上等の粗目を使った分厚いピーチパイ”(P228)ベルが加わりテキサス西部へ。ロード・ノヴェルな部分があり、当然料理でも読める。宿の主人=ミスター詩人に脇キャラ票を。
“醤油の香りが唾を誘うあれを、もう一度食べたいなんて贅沢は言わない。幻のマイ・ラスト・メニューにとどめておこう”(P064 お焦げのお結び)“ねえやは前の晩に米をとぐ。冬でも、指先が痺れそうな水に手を突っ込み、ざっくりざっくりリズミカルな音を立ててといでいた”(P065 ねえやのお握り)掲載は別々の誌面だが、懐かしい食の思い出に「ねえやが朝、お釜のお焦げで握ってくれたお結び」をあげている。久世光彦『マイ・ラスト・ソング』への言及が嬉しい。
“みじん切りした葱と唐辛子の輪切りと挽肉を炒め、火が通ったら醤油を入れ、醤油がわっと煮立ったら、豆腐を入れて、しゃもじで突き崩しながら炒める。これだけです。〈麻婆さんのとうふ〉と題されていたように思うのですが、記憶違いかもしれません。教えてくれたのは、『暮しの手帖』という雑誌でした”(P070 わっと煮立ったら)『暮しの手帖』誌掲載のエッセイ。所帯を持った当初から作っているレシピの話。〈わっと煮立つ〉という表現が印象深いのだという。
“なんて気の抜けた蜂蜜酒だ! 12杯飲んだってまっっすぐ歩けらあ。ポセイドニアじゃ絶対にこんなことはなかったんだがなあ”(カットナー「不死鳥の彼方に」P78)カットナーがC・L・ムーア夫とは知らずにスマン。傭兵エラークと呑んだくれ相棒ライコンもの。ヒロイック・ファンタシイにあまりなじみはないのだけれど、グイン・サーガみたいな口調に親近感わく。
“黒焦げの骨も一山あった。馬の骨だけではなかった”(P226)“あのときの肉が食いたくなるんだ。ものを食って、あれほど旨いと思ったことは、後にも先にもないからな。もちろん、飢えていたからだとは、わかっているが”(P227)“誇らしくはないけれど、恥じることでもない”(P229)目当てのランズデール「飢えた雪」。道に迷ったメーサーが避難した洞窟には先住者がいた。油断ならない男二人、髭面男、母親と少年。もともと大所帯の一行は、雪にふりこめられ食料も尽き、死んだ同行者の肉で命をつないできたらしい。
海外ホラー、ミステリ、SF主食の異形読み。
1999年「死ぬまでに10000冊の毒書」を宣言、
年間250冊を読みすすめるも途中7年の沈黙。
2012年、読メ登録とともに復活を果たす。
短編好き。アンソロジストに憧れを抱く。
紙本主義。装丁など本の佇まいにこだわる。
版ヅラやノンブル位置にキビシイ「組版警察」
密林のドイヒー画像が許せぬ「書影警察」
プラクティス好き「試走警察」
三一書房『サイコミステリーベスト100』を
2019年6月、30年がかりでコンプリート。
2020年11月「おあと6000冊」達成。
2023年3月プロフィール更新。
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“ロウソクをともすと、いい雰囲気になり、くつろぎました。ヴィヴィアンがガラスの盆にのせて運んできたティーカップもすてきでした。繊細で、美しい青の模様が施され、夢のような風景が磁器の表面に描かれていました。紅茶は濃くて、渋く、砂糖とクリームは添えてありませんでした”(幽霊 P80)わたしたち夫婦はオーストリアから観劇のためロンドンを訪れた。前列の女性に興味を持ったらしい夫が、舞台そっちのけで話しかける機会をうかがう。まあいつものことと生ぬるく見守ると、その女性が兄妹で住む家に招かれ…幽霊譚のお手本ですな。