“見やると、マティーニのグラスの底でマホガニーのカウンターに濡れた円を描いていた。グラスのなかでオリーブがせわしなく揺れているのを見て、ふと、あの色だ、と”(P266)“マティーニを渡された。うまい。オリーブをさっと揺らしてみると、わたしのほしい色とはちがってやや茶色がきつすぎたが”(P267)“ほとんどベルモットだ。ひどくまずい。しかし、なかのオリーブはさっきのより黒っぽく、わたしが思い描いていた色に近かった”(P276)妻を探す画家。気まずい空気の原因は? 「愛しのラム」は〈サラダ〉とな。
■毒了数が激減しているがその分濃かったはずの2023■恒例毒毒ランキング2022をアップしてないことにさっき気づいた■2024もよろしくお願いいたします■蔵出し写真:ゼロ年代の富岡にてスナックのちょいと中近東風な色柄の階段■2023年の読書メーター 読んだ本の数:145冊 読んだページ数:40967ページ ナイス数:15216ナイス ★去年に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/200370/summary/yearly
“父さんはぼくたちに一度も羊を食べさせなかった”(P47)“何でもおかまいなしのコヨーテたちが残したこんなものを食べるほど落ちぶれるぐらいなら、今より空腹でいたほうが”(P70)“一口ごとに力がみなぎってくるのが分かる。皮を剥ぎ、肉をのみこむ。赤いものがあごを伝う” “肉が残っている。その中に寝転がりたくなるほどいい匂い”(P102)コヨーテから横取りした肉はやめ、車に轢かれた鹿を食べた。巻末資料によれば野生の狼は親に教わった獲物を捕食、家畜を襲うのはやむをえぬ場合のみ。カラスと協力する狩りが興味深い。
“この稿を書き始めた今日は、2022年12月9日です” “中世に回帰したような2028年、身分ある人々は律儀に名前+父称で呼び合っています。二日酔いの朝の恒例メニュー、クワスとウォッカとキャベツの漬け汁を飲んで祈禱してジャグジーに入ってから、壁の〈ニュース・バブル〉に「ニュースを!」と命じる”(P288)ソローキン『親衛隊士の日』は至近未来における架空ロシアを描く。2006年発表、2013年ハードカヴァーで邦訳刊行。2022年2月ウクライナ侵攻。訳者提案に編集者が速やかに応じ2022年9月文庫化なる。
“その日から眩暈と酩酊感は日を追つて深まり、それまで安住してゐた世界から徐々に隔てられてゆくやうな、自分では統御しがたい不可思議な気分の日が続きました。五日目を過ぎた頃には赤唐辛子をふんだんに使つた特異な匈牙利料理やトカイ酒の味にも馴れ”(樅の木の下で P32)父の仕事の関係で維納に暮らす私。ベルヴェデーレ宮の庭園で美青年ヘルベルトと出逢い交遊を重ねる。トランシルヴァニアへ誘われるが…吸血鬼小説集『就眠儀式』の1編。旧仮名づかいだが、読みにくさは感じない。
“爵は生の牛肉と生野菜以外のものは食べようとしない。萵苣・和蘭芹・和蘭三葉・独活・甘藍・水田芥子・菊萵苣・馬歯莧・蕃茄・胡瓜・花椰菜・洋唐辛子・廿日大根…などから玉葱・大蒜・茗荷・浅葱・紫蘇・浜防風・蓼に至るまで、生のまゝで食べられさうな野菜を” “柘榴の無い日が続かうものなら、爵の機嫌は悪くなるばかり”(天使2 P128)美大生・百合男の部屋に入り込んできた翼あるもの。爵と名づけるが、兎に角嗜好が難しい。理由はわからぬがお気に入りの柘榴を、百合男は探し回らねばならない。
(20240129memo) 『絵本作家のアトリエ 2』福音館書店母の友編集部 長新太、堀内誠一、中谷千代子、中川宗弥、マーシャ・ブラウン、薮内正幸、なかのひろたか、安野光雅など画家12人にインタビュー。創作現場の写真多数。 https://bookmeter.com/books/5727065
“私たちはゆったりとテーブルにつき、クリームソースを使ったみごとなカンネッローニ料理とシャトー・ヌフ・デュ・パブのグラスを前にしていた。真上から照らすシャンデリアの光がルッチフレーディの左の頬に刻まれた深い傷跡を浮かびあがらせ、どことなくフランク・シナトラに似た”(P74)“美味いねえ、このノガン料理は”(P79)名医の死をめぐり、驚愕の事実が発覚…そんなつもりはさらさらなかったが、お気に入りの1篇「セソストリ通りでは別の名で」が料理で読めてしまって困るぅ。
“厚紙の皿の上には、ミートボール、いや、小さなパイがひとつ、載っていた。それとも、クリームかパテに包まれたミートボールと言ったほうがいいか。上にかかったバターがいかにも優美な渦巻きを描き、キャビアを思わせる黒っぽいものが”(P203)“表面は、こんがりと焼けた牛肉の色合いをしている。縁は高く、パテかもしれない銀灰色のものですっかり覆われている。その上には、キャビアかもしれない黒い斑点と渦巻き状のバター”(P208)年金暮らしの教授が書斎の書物机で見つけた小箱の中身は…「ミートボール」も料理で読めて困るのだ
“二杯めのカクテルを飲み、ぼくはもういくつか質問をして答えをもらい、狭心症のことはだいたいわかったと思った。その後、料理を注文した。〈アイルランズ〉はシーフードで有名だ。内陸のシーフードレストランではおそらく国内で一番の店なので、三人とも魚介類を頼んだ。ドクター・クルーガーとアムおじさんは、ロブスターと格闘した。ぼくにはそんな度胸はなかったので、舌平目を”(女が男を殺すとき P55)編者=小森収。〈オードブル〉から〈コーヒー〉まで、フルコースに見立てた並び。ハンター&ハンターもの2作は〈魚料理〉。
“見やると、マティーニのグラスの底でマホガニーのカウンターに濡れた円を描いていた。グラスのなかでオリーブがせわしなく揺れているのを見て、ふと、あの色だ、と”(P266)“マティーニを渡された。うまい。オリーブをさっと揺らしてみると、わたしのほしい色とはちがってやや茶色がきつすぎたが”(P267)“ほとんどベルモットだ。ひどくまずい。しかし、なかのオリーブはさっきのより黒っぽく、わたしが思い描いていた色に近かった”(P276)妻を探す画家。気まずい空気の原因は? 「愛しのラム」は〈サラダ〉とな。
remonさんコメントありがとうございます。前世紀、本はすべて購入。ゼロ年代は新刊7割、古本3割ぐらい。2017年ごろから図書館も利用しています。蔵書が1万冊以上はあるので、再毒を愉しみつつ過ごす予定です。
“いかなる基準に照らしても変わった人物で、背が高く、がっしりとした体格と気高い風貌”(過去のない男 P12)“現世の人間でないことは明らか” “究極の悪、悪魔そのものを捜し求めている” “言ってみれば、世界でもっとも正気な人間”(P13)“いろいろと旅をしています”(真鍮の街 P145)“いとも不可解な謎をほのめかす例の低く深い声”(死を招く喇叭 P327)サイモン・アークとは何者か? ふだん黒いスーツ姿だが、第1集「悪魔撲滅教団」での、白のスポーツシャツ+ブルーのスラックスというスタイルは貴重。
“スパイスの効いた東インド料理は、少なくともしばらくのあいだ腹を満たしてくれた” “ディナーのあと、アメリカのソフトドリンクを飲みながらくつろいでいると”(P274)“祝宴は始まっていて、わたしたちは牛肉や豚肉、米をたらふく食べ、地元で醸造したアルコール飲料で流し込んだ”(P281)マダガスカルを舞台にした「吸血鬼に向かない血」の一場面。「墓場荒らしの悪鬼」のクラブでのディナー場面にはステーキとコーヒーだけ登場。この事件簿が料理で読めないのはよーくわかった。
海外ホラー、ミステリ、SF主食の異形読み。
1999年「死ぬまでに10000冊の毒書」を宣言、
年間250冊を読みすすめるも途中7年の沈黙。
2012年、読メ登録とともに復活を果たす。
短編好き。アンソロジストに憧れを抱く。
紙本主義。装丁など本の佇まいにこだわる。
版ヅラやノンブル位置にキビシイ「組版警察」
密林のドイヒー画像が許せぬ「書影警察」
プラクティス好き「試走警察」
三一書房『サイコミステリーベスト100』を
2019年6月、30年がかりでコンプリート。
2020年11月「おあと6000冊」達成。
2023年3月プロフィール更新。
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“二杯めのカクテルを飲み、ぼくはもういくつか質問をして答えをもらい、狭心症のことはだいたいわかったと思った。その後、料理を注文した。〈アイルランズ〉はシーフードで有名だ。内陸のシーフードレストランではおそらく国内で一番の店なので、三人とも魚介類を頼んだ。ドクター・クルーガーとアムおじさんは、ロブスターと格闘した。ぼくにはそんな度胸はなかったので、舌平目を”(女が男を殺すとき P55)編者=小森収。〈オードブル〉から〈コーヒー〉まで、フルコースに見立てた並び。ハンター&ハンターもの2作は〈魚料理〉。