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2024年3月の読書メーターまとめ

Satsuki
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2024年3月に読んだ本
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2024年3月のお気に入られ登録
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  • 岡本正行

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

Satsuki
冒頭で著者は、ミリシアという語につき、州兵と、民間の極右(に限らないが)暴力的団体の両義を解説する。両者は全くの別物ではないかとまず思ったがさにあらず、後者の背景には前者にも連なる、植民地期以来の「ミリシア文化」があるとの視点だろう。植民地期以来の共和制と市民兵の伝統の中、ミリシアの存在感は大きかった。一方でミリシア自体も変容し、19世紀前半には志願兵の組織へ。南北戦争後には連邦政府の権限拡大の中で、ミリシアは「州軍」と名を変える。正規軍と州軍(兵)が現在のような形になったのはやっと20世紀の大戦でだ。
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2024年3月の感想・レビュー一覧
13

Satsuki
武藤と言えばすぐ浮かぶのが、盧溝橋事件後の拡大と日米避戦の対比。ただいずれも、勝てる戦争はやる、勝てない戦争はやりたくない、という情勢判断は同じだった。前者は武藤一人の責でもないが、当時の楽観論という本書の記述を読むと、あの時不拡大に留めておけば、とつくづく思う。米国相手ではさすがに勝てないだろうことは明白だったろう。また、強硬論者、軍の政治介入の主役という一般的な武藤イメージに対しては、実は柔軟だった、米内内閣倒閣の主役ではなかった、という異なる姿を著者は説明する。
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Satsuki
まず新型コロナ、続いて天然痘、ペスト、マラリアを各章で扱う。著者の専門は歴史学のようで、感染症と人間の生活の関係というのがその視点。著者は、「感染症が世界を変えた」と単純化する「疫病史観」には懐疑的で、その影響をより丁寧に見ていく。その中で、新型コロナは言うまでもなく、行政の強制種痘、植民地行政やGHQによるマラリア対策など、感染症対策は統治そのものと不可分だと分かる。また日本軍で、将校よりも兵のマラリア死亡率が高かったとの事実に見る階級格差は、新型コロナで明らかになった今日の感染症でも同じだ。
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Satsuki
ベトナム戦争からオバマ政権まで。上巻以上に馴染み深い期間だ。終章で著者は、対アジア大戦略を持つことの重要性を示唆。この点では、上巻のセオドア・ルーズベルトに続き下巻でニクソンに肯定的評価。著者はオバマ政権のアジア重視には肯定的だが、そのブレには否定的。上巻の時代よりアジア外交が複雑化しており、政策担当者の個性で左右される余地が小さくなっているのではないか、との読後感。著者は「三次元チェス」との言葉を使う。上段は地域秩序の強化、中段は中国との安定的関係、下段は軍事力と戦闘態勢の確保、という意味だ。
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Satsuki
原書は2017年刊で、上巻は18世紀末から1960年まで。大部なのでやや自分には消化不良だが、著者がセオドア・ルーズベルト(とマハン)の地政学的大戦略によるアジアへの関与、パワーゲームへの参加を肯定的に評価しているのが分かる。日本の中国進出ひいては対米戦の要因の一つも、その後のかかる大戦略の放棄、具体的には海軍力、前線基地や米英海軍協力を維持強化しなかったことだと示唆するぐらいだ。加えて、日米戦で米が西太平洋の島々を「踏み石」として確保し、冷戦の開始により日韓に長期駐留し、防衛線を前方に設定したと指摘。
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Satsuki
建国準備委員会での左右合作失敗を中心に、終戦前後の総督府の混乱ぶりも含め描く。呂運亨を筆頭に、本書中の重要人物のうち少なくない人物がその後非業の死を遂げているのが悲しい。著者は左右合作失敗の要因をどちらかと言えば右派に帰しているようだ。とは言え筆致は静か。また本書末尾で、この時の左右対立が南南対立の原点だとする。しかし著者自身は左右どちらにも強く肩入れせず、ただ、外国勢力に規定された「悲劇」を悲しみつつ静かに見つめているようだ。仮に建準で左右合作が成ったとしても、米軍進駐時点ですぐ分裂したような気もする。
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Satsuki
90年代後半の「日本大衆文化開放」はアジア通貨危機や金大中が直接の契機でもなく、出版物は80年代末からで、その後も検討や議論があった。そして90年代には、禁止を維持する4つの論、ナショナル・アイデンティティ、反日感情、子供・青少年保護、国内文化産業保護が正当性を失っていたと指摘。また90年代後半以降のJ-POPが東アジアで成功しなかった理由として、音楽産業自体の要因に加え歴史認識のズレを指摘。更に2000年代以降の「韓流」との比較では、日本の現地化戦略の不在や、音楽のデジタル化というトレンドの変化を指摘。
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Satsuki
冒頭で著者は、ミリシアという語につき、州兵と、民間の極右(に限らないが)暴力的団体の両義を解説する。両者は全くの別物ではないかとまず思ったがさにあらず、後者の背景には前者にも連なる、植民地期以来の「ミリシア文化」があるとの視点だろう。植民地期以来の共和制と市民兵の伝統の中、ミリシアの存在感は大きかった。一方でミリシア自体も変容し、19世紀前半には志願兵の組織へ。南北戦争後には連邦政府の権限拡大の中で、ミリシアは「州軍」と名を変える。正規軍と州軍(兵)が現在のような形になったのはやっと20世紀の大戦でだ。
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Satsuki
6〜18世紀の著者が着目する思想や歴史が主で、自分には馴染みがなかった。その中で関心を持ったのは、ヨーロッパ世界とは何か、との点。中世まではビザンツ帝国が体現する「キリスト教ローマ帝国」であり、その範図外の諸部族もビザンツ帝国との関係性の中で自らを位置づけていたと著者は指摘。アジアの「中華」とも共通するのではないか。今日、西欧の方がより「ヨーロッパ的」だと思いがちなので意外だった。では、コンスタンティノープル陥落後は「核」がなくなったわけで、以降は「ヨーロッパ」とはいかに意識されてきた又はこなかったのか。
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Satsuki
朝鮮戦争以来の国連軍としての機能と関連する制度の歴史を辿る。その大元として吉田・アチソン交換公文と国連軍地位協定に特に着目。「瀬取り」監視活動のため現在も有益な協定だ。座間に加えて普天間等3基地も国連軍基地指定。国連軍の形をとるため米軍以外の要員派遣を保つ苦労。鳩山政権下、普天間国外移設が頓挫した原因は同基地が国連軍基地だったためとする。平和安全法制やACSA、円滑化協定も国連軍又は各国軍という「二つの顔」の視点から見るのが新鮮。また、闇雲に日米地位協定の改定を求めるのではなく交渉戦略を求める視点は冷静。
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Satsuki
清末通史の知識はあったが、生き生きとした描写に引き込まれた。著者が意識するのが中国共産党史観からの自由な評価。近代化等での袁世凱の手腕を著者は高く評価する。李鴻章をはじめ、体制側で懸命だった人々に対しては、著者の視線は温かい。北洋艦隊の指揮官たちの最期は胸に迫る。また、各重要人物は保守か開明か自己利益かと単純に色分けはできず、一人の中に各要素が併存していたのだろうと感じた。光緒帝と康有為が「軽躁」との評は知っていたが、本書でその思いを強めた。クーデター計画に乗らなかった袁世凱が極めてまともな人物に見える。
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Satsuki
清掃カーストを中心としたダリト(指定カースト)を主に扱う。カーストの考え方や現代インドの政策、それに「可哀想な人々」程度の理解だったダリトについて、多様性に気づくと共に多少解像度が上がった気がする。カースト問題やダリト差別に変化はあるが、その変化が集団暴力や若者の自殺を起こしているとの著者の指摘は重い。総じて、安易に善悪で割り切れないカーストの意味や「何を誰と食べるか」の重要視は、他文化それも門外漢が完全に理解するのは難しいのだろう。それでも、本書に登場したダリトの人々により良い未来があればいいなと思う。
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Satsuki
著者は南アジア研究者だが、本書では食べる側の視点であり、読んで楽しい。紹介された色々な食をぜひ試してみたくなった。粉食か米食かという南北差、また宗教に伴う禁忌の食肉程度の知識はあったが、自分の予想よりも遥かに多様だった。アイデンティティと直結する食。ベジ自体も一般的でありながら多様。果物やスイーツはかなり魅力的。花椒が入らない「シェズワン」をはじめインド式中華、チベットや東南アジアとも共通する料理も面白い。
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Satsuki
古代史のサブ自体と言うより、各文献がどう作られたかや文献自体の分析が主で、自分には知識不足で消化不良だった。書籍と呼べるものの誕生は戦国時代。書籍にある過去の歴史の記述は、その著者や書かれた当時の歴史観を反映という本書著者の含意は当然そうだろう。諸子百家の著作もそうで、また『史記』では始皇帝批判にかこつけた漢武帝批判。秦の焚書坑儒は実際にはそこまででもなく、前者は平常時の書籍散逸までそのせいにされ、後者は儒者への弾圧ではなく方士の詐術への懲罰だった可能性。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2012/07/03(4314日経過)
記録初日
2007/11/22(5999日経過)
読んだ本
1683冊(1日平均0.28冊)
読んだページ
487937ページ(1日平均81ページ)
感想・レビュー
1683件(投稿率100.0%)
本棚
10棚
自己紹介

東アジアの政治や歴史、国際関係の本が多いです。

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