テロに対し無闇に怖れない。知が経済の中心となった今、領土獲得の戦争は利益を生まない。自分中心ではなく謙虚にと。道徳と同様な約束はチンパンジーにもあり、道徳的生活には神は必要ではない。無謬性を主張するより世俗主義の方が良い。人間は真実を見抜くことが難しいし、正義も実現できていない。将来の職業の姿が分からないので教育も変わらなくてはならない。人生の意味も変わってくる。仏陀は人生に意味は無いと。著者はこのように論じる。このような発想が身についたのは、宗教抜きの瞑想で自分を本当に観察して理解を深めたからだという。
2023年12月の読書メーター 読んだ本の数:8冊 読んだページ数:3024ページ ナイス数:200ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/307059/summary/monthly/2023/12 写真は氷華。草の茎の中を毛細管現象で上昇していた水が氷結して、茎を薮って生育したもの。この茎はシモバシラという野草です。
明治時代に中国進出が進むと右翼や大陸浪人らが特務機関を作り軍を支えた。頭山満の玄洋社の者達が国龍会を作る。満州事変以後は中国の政治経済を混乱させ、自らの謀略工作の資金を作る為に偽札を流通させ阿片を売った。ここで頭角を現したのが児玉誉志夫だ。戦後大物フィクサーとして現れたのが三浦義一だ。日本金銀運営会に入り込み組織と利権を利用した。ロッキード事件で機種選定の工作をロ社から頼まれたのが児玉だ。佐藤政権退陣の時に田中政権を作らせた力を持つ。政商小佐野賢治もロ事件で出てくる。リクルート事件は大疑獄事件に発展した。
佐川急便事件で皇民党事件の経過が分かった。金丸信が逮捕され捜索の結果大量のワリシンや金塊がでてきて、無役だが政界のドンであったことが分かった。金丸は脱税の罪であった。その捜査でゼネコン18社を捜索したところ、地方自治体の贈収賄事件が明になった。泉井事件は三菱石油の代理だった。朝堂院大覚こと松浦良右は後藤田正晴を支えた。石原慎太郎をマルコス大統領に合わせ、アラファトとも親しく交流していた。政治家は表で地元の縄張りを仕切り、裏で仕切るのが暴力団。口利きをしてバックを取るやり方が政治家と暴力団では全く同じだと。
山口組という暴力装置が背後に控えていたからだ。山口組3代目組長の田岡一雄がビジネの優先を考えた。5代目若頭宅見勝は弁護士や公認会計士や、不動産取引や証券・金融・為替の実務に精通したプロを採用したシステムを作った。特に変わったのが85年のプラザ合意以降だ。暴力団幹部や企業舎弟が不動産・証券取引に使う金をノンバンクから引き出した。闇社会が表に出てきた。住友・イトマン事件では3千億円もが裏社会に回った。90年代は企業テロが頻繁におこった。関西では中堅銀行が経営破綻し、その顧客である経済・産業界が身動きできない。
00年代のITバブルでも闇社会が出てくる。投資事業組合・転換社債型新株予約権付社債・租税回避地を使い金を儲ける。暴力団ではない投資詐欺もいる。土建・興業・政治が近代ヤクザの三大産業と呼ばれていた。今やそこに金融・不動産等の合法ビジネスが加わった。暴対法等で反社会的勢力を閉め出そうとするが、暴力団の活動は水面下に潜り見えにくくなってきた。今や医療舎弟、福祉舎弟、宗教舎弟、卵子提供や代理母の斡旋、乳幼児の養子縁組斡旋まで暴力装置を背後に金を稼ぐ。投資家の目的は金を稼ぐ。ハッカーまでやる企業舎弟が現れたという。
被害者宅は公園用地であり移転が決まっていた。だが移転先が完全に決まっていたわけではない。ここに不動産ブローカーが現れる。長男の発達障害の相談を受けた者が先の話を聞いたからだ。自分の情報を消すために物色してパソコンを操作した。不動産ブローカーが直接手を出したのではない。彼は子飼いにやらせた。そして彼は宗教団体の幹部でもあるので、逃走に宗教施設を使ったのだという。だから跡取りが明らかにならないのだ。子飼いは韓国人であり、2度と日本に入国する気が無いので指紋を気にしなかった。だから難しい事件になったのだろう。
著者は実行犯と主とに接触して色々聞き出している。主犯は著者の雑誌の連載記事を見ていて、著者が現れることを予見していた。事実を隠そうとするのだが、次々に言われて困っている。実行犯は事件を知らないと言いながら、著者が未だ言っていない被害者数を言うなど犯罪に詳しいのだ。遺留品のヒップバッグの中の物は、実行犯が行ったネバダ砂漠の砂や、印刷業で使っていたビーズが残されていた。特に決め手は紙コップに残った指紋が犯行現場の指紋と一致したことだ。しかも実行犯は再び日本に現れた。死んだと言う者もいるが、真実は分からない。
74年には株式会社化して18店で経営。78年には東京進出を果たす。81年には店舗数が200店を突破し、売上高は100億円を越えた。93年には店頭公開して2年後には上場を果たした。この年に加藤朝雄が病没し、2代目は大株主から選び、3代目は朝雄の長男潔が社長となった。だが経営が傾き、2000年に4代目として社長になったのが大東隆行だ。経営を立て直し現行のような餃子の王将にした。そもそも義兄の加藤朝雄と二人三脚でやって来たのだから原点回帰でもある。70年代は現在と全然違うことがある。93年に暴対法ができたのだ。
前はチェーン店が出店するには地元も暴力団に話を付けなければならない。福岡県飯塚市出身の加藤朝雄は同じ出身の同和団体の中心人物の実弟で不動産会社経営者に取りまとめを頼んだ。この会社がバブル崩壊で資金繰りに困り王将から融資がなされ王将の経営が傾いた。大東がこの関係を切ったから、大連進出時にマフィアを怒らせたから、ブラック企業の元従業員の怨み等が考えられた。日本でしのぎができないので東南アジアに逃避した暴力団は何百万かでヒットマンを調達できる。はっきり分からないが、金の有るところに危険な連中が集まって来るのだ。
個人事務所であれば弁護士は事務員の給与を払う為に稼がなくてはならない。共同事務所でも分担金がありその支払は義務づけられている。冤罪事件だけでは稼げない。だから弁護士は他で稼いでその一部を刑事事件に充てる。今村先生も他で稼ぎたいから冤罪弁護士とは名乗りたくない。今村先生は「証明の科学化」を考えていた。無罪となった放火事件では焼亡研究所で実際に燃焼実験をして検察の鑑定書の矛盾を指摘した。鑑定書に不同意とか反対の鑑定書を出すのではなく、実際に実験して矛盾を立証しようとする弁護士は滅多にいない。彼はそういう人だ。
人権派弁護士として生きようとしたが、冤罪弁護に自分の進む道を見つけその道に進んだ。無罪を取れないこともある。無罪となっても家庭が崩壊することもある。厳しい道だ。特捜事件は検察官が筋を作るが。警察では警察官がヒントを与えて被疑者が筋を作るように自白させる。警察官が犯人と信じているからだ。だがこれが冤罪を生む。法曹の考え方も固定化している。そして構造的に冤罪が生まれる状態になってしまった。今村先生にその冤罪を生む構造の破壊を期待されていたが、令和4年8月20日に59歳の若さで亡くなってしまった。無念である。
犯行と直接結びつく遺留品・物的証拠が乏しかった。7月4日にこがね味噌工場・事務所・従業員宿舎の捜索が行われた。その時怪我をしていたので警察に目を付けられたのが袴田巖氏だ。専務が大柄の柔道有段者だったので元ボクサーだったら刺殺できると考えられた。少量の血痕のついたパジャマもあった。この日より監視され、8月18日に任意出頭を求められて逮捕される。そして20日後に自白する。毎日12時間以上に及ぶ取り調べであった。第一審で調書45通の中で1通しか採用されない。自白の任意性に疑問が残る。1年後に犯行着が発見された。
逮捕時の味噌樽は空に近かった。南京袋入りの服5点は隠せないとみるのが妥当だ。だが翌年の8月31日に新たに作った味噌の中から出てきた。ズボンは大きすぎるという。警察・検察は袴田氏のものか確認が取れない段階から犯行時の服の変更を求めた。出来過ぎだ。服に付いた血痕は上着に付いたものが下着に染み込むと思うのだが、ステテコにはA型でブリーフにはB型と異なる。ポケットには昭和42年に改名した「王こがね味噌」のマッチが入っていた。長男がボールペンを付けたYシャツを着て殺害されたので殺害時間も深夜よりも前だと思われる。
静岡は戦後10年で3つの冤罪事件を生んだ地だ。幸浦事件では発見した死体を埋め戻して被告人の秘密の暴露のように偽造した。事件は昭和41年6月30日未明の味噌醸造会社の専務宅の火災に始まる。焼け跡から一家4人の死体が見つかる。線路の反対側に工場がある。その日が給料日なので内部犯行説が強まり、アリバイがなく手に怪我をしていたボクサー崩れの袴田巌が8月18日に逮捕される。証拠は無い。警察は自白に賭ける。毎日12時間を越える取り調べで自白を取る。自白の任意性が問われ、45通作成された調書は1通しか証拠採用されない。
裏口の閂は不自然。翌年の9月13日には冒頭陳述の変更がなされた。味噌蔵から犯行当時の服が見つかったのだ。この服は被告人には小さすぎた。昭和43年9月11日に判決が言い渡される。翌年4月末に彼は退官した。高裁で覆るのが彼の希望だった。昭和51年に控訴が棄却され、昭和55年に上告も棄却された。彼は死刑という殺人に関与していると感じて生活が荒れた。平成19年に彼は秘守義務を破り合議の内容を公表した。平成20年に第1次再審請求は最高裁で棄却され終わる。平成26年に静岡地裁は再審開始の決定を下し、48年ぶりに保釈。
そして250年前に産業革命がおこる。化石燃料を使って動力を生み、その動力を使って機械で大量生産をし、輸送を行う。技術的・経済的・社会的・な変革だ。食料にも変革が及ぶ。食物を摺潰して粒子にして繊維を除いて澱粉質と糖度の含有率を増した全粒粉食品がうまれた。消化が速いのだ。医学が進歩し感染症を克服したが、新たな病気が生まれた。人類は脳を大きくしてエネルギーを溜め易く進化した。産業革命は人力の使用を抑えたので肥満が増えた。特に内臓脂肪の肥満は危険だ。肝臓に脂肪が集まると血中にグルコースを放出する機能を損なうのだ。
急激な高血糖はインスリンを多めに放出して空腹にさせる。甘い物は別腹なのだ。こうして2型糖尿病や生殖がんがミスマッチ病としておきる。人類は身体環境負荷に応じて表現型を成長させる(表現型可塑性)ように進化した。産業革命で人類は楽をするようになり、負荷がないので廃用性の病がおきる。骨粗鬆症や埋伏智歯だ。これもミスマッチ病だ。人類は自然選択だけではなく文化を通じても進化ができるようになった。だが文化は生物学的仕組みを越えられない。現在までの人類の進化を考え、進化した身体にあった生活をしていくしかないのではないか。
進化とは時間を経ての変化だ。変異・遺伝性・繁殖成功度の差の3つの結果が自然選択だ。それは環境に適した結果であり、形成が不利な時に大きく働く。1千万年~500万年前に地球が寒冷化して、アフリカの熱帯雨林が縮小し疎開林帯が拡大した。疎開林では以前よりも食料が豊富ではない。二足歩行の方が食料を集めやすいのだ。サヘラントロプス等の初期人類が二足歩行を始める。腰の形状・S字の脊椎に変化がある。400万年前にアウストラロピテクスが現れる。歯や咀嚼筋が大きくなる。塊茎・種子・茎を食べ出した。持久力の高い歩行をしだした。
190万年前にホモ・エレクトスが現れる。脳が大きくなり、採取だけではなく狩猟もしだす。植物性食料と肉を仲間と協力して得て、加工する。汗腺で体温を下げられるホモ族は長時間追いかけて弱らせる猟だ。腸を短くして脳を大きくし、脂肪を溜めやすくした。40万年前には常時火を使うようになる。成長に時間がかかる様になる。20万年前にホモ・サピエンスが現れる。1万4千人位だ。中期旧石器時代だ。声道が母音の発声に適した形になり会話が始まる。5万年前に後期旧石器時代になる。技術革命がおきた。文化が次々に変化していくようになる。
初期鉄器時代になり、土地の開墾が容易になった。エジプト及びカナンで奴隷状態にあったハビルが都市の支配の及ばないパレスチナ中央の山地に脱出共同体を形成して定着したのだろう。小家畜飼育から農耕へ移り、生活サイクルも農耕中心となる。社会構造も変化し、貧富が生まれ、王国となった。豊穣信仰も興り、ヤハウェも農業神化し、農耕神バアルと変わらなくなる。ユダヤ人は神に選ばれた選民だ。だがその社会は貧富の差が極限まできており不正が蔓延り社会は歪んでいた。新たなるメシアを期待するようになる。ユダ国は新バビロニアに滅ぼされる。
ユダ暦には王国の出来事は滅亡だけを記載することで自己断罪した。捕囚はバビロンの国力に圧倒された。バビロンの主神マルドゥクにも圧倒された。ここに我々の神も強いはずとの思いから、ヤハウェは天地創造の神、民を贖う神、唯一神となった。捕囚が終わるが、今度はローマにエルサレムを追放される。苦難を打開するメシア待望がおきる。捕囚期の祭司がトーラーを完成させた。ハシディー(敬虔派)の流れをくむファリサイ派の口伝トーラーが613の義務を作る。こうしてヤハウェは律法の神となった。律法を守り恩寵を期待するユダヤ教の誕生だ。
帰還せずにバビロンに残った者やエジプトに逃げた者はディアスポラのユダヤ人となり、各地にユダヤ人社会を作った。トーラーがあったので民族的アイデンティティを作り出せたのだ。だが反面この為に他民族から差別され続けた。ローマ時代に2度のユダヤ戦争があり、エルサレムから追放される。地中海沿岸及びバビロンにユダヤ人社会ができた。ディアスポラのユダヤ人は主にアシュケナジム・セファルディム・中東のユダヤ人に分けられる。中東はイスラム化される。10世紀迄の右肩上がりの時代と15,6世紀のオスマン帝国では自由を享受できた。
アシュケナジムはシャルルマーニュやルイ1世の商業活動の奨励により入植した。だが十字軍が始まると弾圧された。イエスを刑死させたし、血の告発(過ぎ越祭の血が非ユダヤ人の血との噂)が原因だ。セファルディムはイスラム教圏からキリスト教圏に代わった頃は良かったが、合併してスペイン王国になるとマラノとして残るか、セファルディムはオスマン帝国に逃げた。近代国家観が発達してユダヤの地位が変化する。だが20世紀になってもポグロムがおこる。シオニズム前からカナンに集まりだす。国家はできたが、近隣との安定関係はいつできるのか。
ヒトはライフサイクルを変え、人間性を獲得していく。ヒトは子の世話に時間とエネルギーを費やす。自分の子孫を残すためだ。文化的適応と生物学的適応により、生殖活動を終えた後も長生きするライフサイクルになった。人種の差異は数千年前より古い時代に現れる。性淘汰の影響だろう。動物も危険信号を発するなど言葉を使うが、ヒトの複雑な言語はピジン・クレオールにより発達の経緯が見て取れる。狩猟民が農耕民に変化する。数種の穀物に頼る生活となり、栄養状態が悪くなり伸長が縮んだ。だが人口は増え、貧富の差が生まれた。農耕民が強くなる。
言葉・農業・高度な技術によりヒトは生息分布を拡大させた。大陸毎に文化の進度が異なった。これは生物学的地理学的な違いによる。ヒトは大虐殺をした過去がある。これはチンパンジーやゴリラと同じように小さな群れで暮らす類人猿にあるものだ。ヒトは種を絶滅させ続けてきたし、豊かな環境を破壊し続けてきた。だが現代に生きるヒトには科学的な知識があり、それを共有できる。現在核の危機があり、環境破壊の危険がある。前者は1回興ったら終わりだが、後者は現在進行形だ。生物は依存関係にあるのである種の絶滅が次の絶滅を呼ぶことがある。
人間は自由選択をするが、実は感情に過ぎず計算なのだ。バイオ革命とITが融合すると人間より優秀なアルゴリズムができる。そのアルゴリズムが人間を支配しかねない。能力を強化した体や脳を買えるようになれば不平等は確定する。人間は身密なコミュニティを必要とするが、それが崩壊しつつあるのでグローバルなコミュニティで代替する試みがある。文明の衝突と言うが、物質・エネルギー等の考えは世界共通であり、同じ文明とも言える。ナショナリズムや宗教は世界的な危機に対しては役に立たない。生命の危険がある移民には国家は受入義務がある。
テロに対し無闇に怖れない。知が経済の中心となった今、領土獲得の戦争は利益を生まない。自分中心ではなく謙虚にと。道徳と同様な約束はチンパンジーにもあり、道徳的生活には神は必要ではない。無謬性を主張するより世俗主義の方が良い。人間は真実を見抜くことが難しいし、正義も実現できていない。将来の職業の姿が分からないので教育も変わらなくてはならない。人生の意味も変わってくる。仏陀は人生に意味は無いと。著者はこのように論じる。このような発想が身についたのは、宗教抜きの瞑想で自分を本当に観察して理解を深めたからだという。
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人間は自由選択をするが、実は感情に過ぎず計算なのだ。バイオ革命とITが融合すると人間より優秀なアルゴリズムができる。そのアルゴリズムが人間を支配しかねない。能力を強化した体や脳を買えるようになれば不平等は確定する。人間は身密なコミュニティを必要とするが、それが崩壊しつつあるのでグローバルなコミュニティで代替する試みがある。文明の衝突と言うが、物質・エネルギー等の考えは世界共通であり、同じ文明とも言える。ナショナリズムや宗教は世界的な危機に対しては役に立たない。生命の危険がある移民には国家は受入義務がある。