海を挟んで隣の岡山県、ド田舎姫野村の事件。移住者麻宮恭一は証券会社員。その友人で大学助教の吹邑黎人は、村の中学2年生天木裕也に“村人達の確たる証拠もなしに断言してしまえるメンタルが羨ましい。きっと葛藤や自責とは縁のない毎日を過ごしているのでしょうね”と呆れる。数十年、葛藤と自責の世界で生きてきた私の今は、それとは縁なく悠々と過ごすも、これに金があれば言うことなしだが。麻宮も“姫野村の者は、無学で無教養だから陰謀論に引っ掛かりやすい”と。 知的好奇心こそ人を啓蒙し社会を発展させるに至らぬ閉鎖的姫野村だった。

1章ワーキングクラス・ヒーロー、岡山の建設会社の従業員4人がベトナム人実習生を暴行した事件を彷彿と…。当時の見出しで“ベトナム人技能実習生「2年間暴行された」たたく・蹴る……骨折も”とある。映像も鮮明に記憶する。酷いものだった。みちのくアッセンブル社とはシックスクリエイトなのだ。3章サムシン・ステューピッド、朝比奈美桜はＮＡＳ社経営者の野宮綾子より、人間性も親近感もある。彼女はＮＡＳ契約社員だがポケットマネーで有道に助太刀頼むほどリッチ。日吉の名門大学に通うお嬢。ヤクザから戦い方を学んだ胆力が素晴らしい。

二人の“くらまし屋”内藤と成滝の掛合いに迫力。解説吉田伸子氏も内藤陳氏を引用し“葛原と成滝のプロとプロの闘いは勿論のこと、この二人以外の登場人物達も圧倒的存在感で読ませる”が本書の魅力と。また警視正河内山がつけた2人のＳＰの巡査部長。男性の大出はつまらんが女性の29歳咲村が素晴らしい。河内山警視正もいい味出してる。さて、どうしても2001年5月の金正男偽造旅券で日本入国事件を彷彿。金正日が林剛哲、兄弟を入れ替え林忠一が金正男、林煥が金正恩と誰しも思う？しかし愛国心ある林忠一こと金正男がＴＤＬに行くなんて。

凱旋門賞でのカムナビの結果は予想通りで買ってりゃ相当の配当だっただろうに残念。何せ“カムナビは脚が速い馬ではない。だがトップスピードを維持する能力は桁外れだった…重戦車という言葉がぴったりの走りだ”そうだ。ほほう重戦車のサラブレッドね。見たこともない。ところで児玉調教師の“サラブレッドは愛おしい。その感情はすべてのホースマンに共通する”が本書の肝か。しかしホースマンって消防士かなんかかと思った。そうか、ファイアマンか。さてフェスタの孫娘でカムナビの娘のピリカ、今年の凱旋門賞にチェレンジするが、期待したい。

神田川病院に入院の二人の女性末期癌患者。捨て子で都立優秀校城南高校2年小出桜子と姑が鳩山安子を思わせる元キャバ嬢で代議士の妻谷村貴子36歳。主治医は空想の世界に長く生きてきた女医黒田摩周湖29歳。聴診で相手の思考と過去を見聞きできる聴診器を介して織成す感動巨編。さて嫌な気分にさせる人物が2人。一人は桜子の養護施設入所者先輩24歳のユリ。桜子にＴシャツプレゼントし“ねえ桜子、少し用立ててくれないかな」だとよ。そら来たよ。もう一人、貴子の義弟の息子。余りの成績の悪さに付属の大学に上がれず米に留学。アホ丸出し。

海を挟んで隣の岡山県、ド田舎姫野村の事件。移住者麻宮恭一は証券会社員。その友人で大学助教の吹邑黎人は、村の中学2年生天木裕也に“村人達の確たる証拠もなしに断言してしまえるメンタルが羨ましい。きっと葛藤や自責とは縁のない毎日を過ごしているのでしょうね”と呆れる。数十年、葛藤と自責の世界で生きてきた私の今は、それとは縁なく悠々と過ごすも、これに金があれば言うことなしだが。麻宮も“姫野村の者は、無学で無教養だから陰謀論に引っ掛かりやすい”と。 知的好奇心こそ人を啓蒙し社会を発展させるに至らぬ閉鎖的姫野村だった。