久々に小川洋子ワールドを漂いました。静かな登場人物たちの静かな日常を、磨りガラスを通して覗き見る感覚。小川さんの作品の多くは翻訳されていて評価も高いと聞きますが、漢字の字面や音のイメージを伝えるのは難しいだろうなと思いつつ読みました。

もうすぐ閉店してしまう本屋さんで、何か記憶に残る本を買っておきたいと思い選んだ。メロディーが一緒に流れてくる懐かしい詩たち。哀しみや怒りを孕んだ言葉の群れに圧倒される。

司馬さんの台湾愛が随所に溢れている。清々しい読後感とともに、「無主の島に生まれた文明国」の未来が平和であり続けるようにと祈りたい気持ちになった。

そもそも美術史に疎く、初めて知ることばかりだった。美術史を通してユダヤ人の苦難の歴史が生々しく伝わってくる。ユダヤ教徒にとってのモーゼ第ニ戒の重さなどということは考えたこともなかった。文章も読みやすく、最後まで緊張感漲る時間を味わえた。

佐藤愛子さんの楽天主義は養老孟司さんの本でも取り上げられていた。平穏時ならともかく、自分の身に不幸が降りかかってきた時に楽天道を貫くのは難しい。しかし何という痛快さ。ぜひ見習いたい。

他の巻とは少し趣が違う。散歩というのが相応しい淡白さに戸惑った。その代わりにといっていいのか、ドナルド・キーンさんを中心に据えて日本文化についての考察に多くのページが割かれている。古典が読みたくなった。

久々に小川洋子ワールドを漂いました。静かな登場人物たちの静かな日常を、磨りガラスを通して覗き見る感覚。小川さんの作品の多くは翻訳されていて評価も高いと聞きますが、漢字の字面や音のイメージを伝えるのは難しいだろうなと思いつつ読みました。