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2024年9月の読書メーターまとめ

Sora
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436ナイス

2024年9月に読んだ本
20

2024年9月にナイスが最も多かった感想・レビュー

Sora
西遊記を読んでみたいけど話が長いし難しそうという初心者にも、途中まで読んでいたけど挫折したという人にもおすすめの一冊。西遊記をダイジェストに紹介しているだけでなく、本文の訳も載せてくれているので、飽きずに読める内容になっている。西遊記のあらすじや本文だけでなく、西遊記の元ネタになった『大唐三蔵取経詩話』(三蔵法師の資料をもとに妖怪退治含む様々な物語を加えたもの)の解説や、猪八戒の故郷や結婚願望などの興味深いコラムもあり、面白い内容だった。
Sora
2024/09/15 15:53

西遊記は三蔵法師が経を取りに行く内容なので仏教文学に思えるが、五行説(木、火、土、金、水の5つの元素から物質は成り立っているとする説)や太上老君、宝貝等の道教の思想が色濃く描かれているため、道教的な物語ともいえるというのも面白い。

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2024年9月にナイスが最も多かったつぶやき

Sora

2024年8月の読書メーター 読んだ本の数:15冊 読んだページ数:4783ページ ナイス数:353ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/623744/summary/monthly/2024/8

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2024年9月の感想・レビュー一覧
19

Sora
12世紀のヨーロッパにおいて、地獄、煉獄、天国はどのように受け止められてきたのか、またどのようなことをすれば天国(または地獄)に行くと考えられたのか。本書は二つの異界巡り譚を通して、中世ヨーロッパの倫理観や世界観を知ることのできる内容となっている。『トゥヌクダルスの幻視』は、マルクスというアイルランド人修道士が女子修道院長ギゼラに宛てた文書。トゥヌクダルスがまだ無慈悲な貴族だった時に、臨死体験として地獄と天国を巡り、その後蘇生したと述べ、彼は後に改心して財産を貧者に施したのだと物語る。
Sora
2024/10/06 23:05

『聖パトリキウスの煉獄譚』は、騎士オウェインが生きていながら、地獄、煉獄、天国を巡って、無事に現世に戻るという内容。実在した修道院近くにある暗い坑が舞台で、またその坑に入るための儀式が存在し、坑に入る事自体が罪の清めになると考えられた事も興味深いが、一番興味深いのが大司教の説教を通して語られる煉獄の受け止め方だ。洗礼を受けた後で罪を犯したまま亡くなった場合は煉獄に行き、そこでの苦しみを通して罪が浄化されて天国に至るのだという。またミサの中で故人の為に祈れば浄化の苦しみはその度に軽減されるのだと述べる。

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Sora
前教皇としての説教を収録した最後の講話集。2012年から2013年までの説教を載せている。中東の紛争終結を願う講話を行っているが、10年以上経過している今でも戦争は収まっておらず、拡大している。それでも神(絶対者)を信じる者は絶望せず、また、武器に頼る事なく、常に心を開いて対話をしなければならない。著者は講話の中で祈る。「あがない主が生まれた地に平和が萌えいでますように。そして、主がイスラエルとパレスチナの人々に長年の戦争と対立を終わらせ、交渉の開始を決断する勇気を与えてくださいますように」(P338)。
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Sora
ジャイナ教については、生き物の殺生を禁止している事しか知識がなかった為、興味深い読書になった。仏教とほぼ同じ時期に登場したジャイナ教は、生き物の殺生だけでなく、暴力さえも解脱という目的に役立つ事はないと訴える。また、暴力は執着と結びつくと指摘している。仏教と同じく輪廻からの解脱を目的としている事や、慈悲を説いている点、如来や比丘等の用語を用いている事等、仏教との共通点が多いが相違点もあるため、仏教との比較研究も今後の課題であると編者は述べている。
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Sora
救う命を選択できるかというトロッコ問題を議論の導入として、功利主義、リバタリアニズム(自由至上主義)、市場と資本家の思想、カント、ジョン・ロールズとリベラリズム、アファーマティブ・アクション、アリストテレスとコミュニタリアニズムといった、アメリカにおける正義論の流れと問題点を網羅して解説した内容。本書は10年以上前に出版されたものだが、現代のアメリカ、いや世界における貧富の格差の拡大と民主主義の危機、自由と責任の関係性等を考察しており、正義論の教科書と言える内容となっている。
Sora
2024/10/17 17:41

サンデルが依拠するアリストテレスによると「正義とは合法性及び公平さであり、不正とは不法及び不公平なのである」から、正義と不正について論じるとき、サンデルは当該問題が「誰にとって」平等なのか、また、その正義の原理は「何により」認められるのかを問題としている。

Sora
2024/10/17 17:41

またフランスと異なり、アメリカは宗教(特にキリスト教)が個人の倫理だけでなく、その共同体の倫理と論理にも影響している。そのため、宗教の価値観が政治(公共)の世界の問題(例えば授業で進化論を教えるかどうかや中絶等の課題)においても関係している。本書の後半ではケネディとオバマを取り上げる。政治における、公としての自分(政治家としての自分)とキリスト教徒としての自分は矛盾なく併存しているだけでなく、アメリカにおいては、保守派とリベラル派における数少ない共通の価値観であるだけでなく、国民としての大前提でもある。

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Sora
本書は、プレスター・ジョンの伝説で有名な『司祭ヨハネの手紙(ラテン語版と古フランス語版)』とその手紙の元になった『アレクサンドロス大王からアリストテレス宛の手紙』を収録している。いずれも当然ながら偽書であり、哲学的(あるいは神学的)書簡ではなく、東方に住む民族や国家、習俗や生物を紹介する内容となっている。しかし、アマゾネス族やプラグマーニ族、サラマンダー、ティンシレタ等、空想上の民族や生物を紹介する内容となっている為、歴史上の東方ではなく西洋諸国が想像するオリエントの世界を知る事のできる内容になっている。
singoito2
2024/09/30 13:29

よこっちょからすいません。U.エーコの「バウドリーノ」をお読みになりましたが?プレスター・ジョン伝説に取材した小説で、結構、面白かったです。お暇な折りに、と一言、情報提供です。ではでは。

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Sora
妖怪と人間、超自然的なものと科学の対立と共存を描く短編集であり、また、ロボットは心を宿せるのかという興味深い問題も本書で取り上げている。科学者の相良邦雄は、ある事情から妖怪の百目の助手となり、探偵事務所で働くようになる。妖怪は自分の興味のある事や自分の利益になる事しかしないという、ある意味で自分勝手で、人間の価値観とは異なる自由な生き方をしている。ヒトは価値観が全く違う他者と共存できる存在なのか、それとも徹底的に排除することしかできない、哀しい存在なのか。本書はその問いを読者に突き付けているように感じた。
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Sora
政教分離とは何か。ユゴーの『レ・ミゼラブル』やゾラの作品、第三共和政の代表者とされるジュール・フェリーの演説等を手掛かりに、フランスにおいてキリスト教含む宗教と共和政はどのように対立し、どう妥協していったか、政治(公教育)と宗教の分離はどのようになされたかを考えていく内容。フランス革命においてカトリック(教皇庁)と対立したことは有名だが、その後はナポレオンによってフランスという国家の枠組みの中に吸収され、勢力の拡大と縮小を繰り返しながら、少しずつ政治の世界から分離していく流れがわかりやすく説明されている。
Sora
2024/09/23 21:36

本書の後半でも触れられているが、イスラームの女子生徒が学校にスカーフを持ち込んだので、フランス国内で問題になったという出来事があった。フランスという国は、共和政を定着させ、政教分離を進めてきた国なのであり、イスラーム教徒を示すスカーフを学校に持ち込むということは、宗教を公教育(政治)に持ち込む事だとする論理があるから問題になったのではないかと著者は述べる。しかし、同時に、このスカーフは宗教的象徴として使用されたのではなく、多数派に対する無言の抵抗や挑戦という意味で使用された可能性があることも示唆している。

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Sora
オリゲネスは3世紀のアレクサンドリア出身の神学者。死後に異端とされたが、第二バチカン公会議以降彼の神学は見直され、前教皇ベネディクト16世によって、「真の教師」と評された。彼の思想は東方神学だけでなく、ミラノのアンブロシウスを通して西方教会の神学にも強い影響を与えた。本書は彼の主著であり、三位一体論、世界の成り立ちや魂についての議論含む形而上学、自由意志論、終末論、聖書解釈について論じている。聖書解釈に関しては、文字通りの解釈、倫理的解釈、三位一体や魂、教会についての霊的解釈の三通りの方法があると述べる。
Sora
2024/09/22 15:39

本書はオリゲネス自身の思想を述べたものではあるが、あくまでも「思索の書」であり、「いくつかの可能性を提示、その選択は読者に委ね」、結論について、彼自身は判断を保留している。また彼は、本書だけでなく様々な著作でしばしば「アポカタスタシス(万物回復)」について述べている。「アポカタスタシス」とは、終末には、アダムとイヴの堕落以前の、あの「最初の至福の状態」に回帰する、というものだ。オリゲネスによると、天使や悪魔、人間等のすべての理性的被造物は自由意志を有しており、その自由意志によって善も悪も行うことができる。

Sora
2024/09/22 15:40

すべての理性的被造物が、神の「神的な本性への参与」に招かれている。神の像として創造された人間が、教育(パイデイア)を通じて、最終的に神の似姿として完成され、「すべてにおいて神がすべてとなられる」。また、悪魔やそれに服従する被造物が「自らの内にある自由意志の能力に応じて、来るべき代々におけるある時点で、善へと向きを変えることがありうるのであろうか、それとも持続し根を下ろしてしまった悪は習慣によって、これらの者たちの内で本性のようなものに変わってしまったのであろうか」という問題は読者の判断に委ねるとしている。

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Sora
「教会(キリスト教)の外に救いなし」とする保守的なカトリックとプロテスタントを批判する内容。諸宗教に対する寛容な「包括主義」や、他宗教を信じているが真理を求めている人、いわゆる「無名のキリスト者」という考え方は、その宗教を信じている人の信仰を認めないという考え方につながるものであり、他宗教に対する無意識的な差別になりかねないと警告する。ただし、著者の考えは、読者がキリスト教徒であれば注意が必要だ。著者は、ロゴスの受肉は一種の「神話的観念」であると述べている為、下手をすると読者は自分の信仰を見失う事になる。
Sora
2024/09/22 18:28

また、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教だけでなく、仏教やヒンドゥー教、シク教も同じ神を信じているのであり、ただ名前が異なるだけだという考え方は、ある意味で別の「一神教」を唱えているのと同じであり、解決にならないのではないか、また、それぞれの宗教の独自性を否定しかねないものではないか、さらには、独自性を失うということは、今日はキリスト教徒で明日は仏教徒だという、何を信じているのかわからない状況になるのではないか等、課題が残る。

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Sora
本書は、アウグスティヌスの「信仰と信条」、「信の効用」、「シンプリキアヌスへ」、「エンキリディオン」を収録している。『告白』がアウグスティヌスの人間性と思想の入門書なら、本書の「エンキリディオン」はアウグスティヌス及びカトリック神学の入門書と言える内容。「エンキリディオン」によると、万物は神により創造され、「全体の驚嘆すべき美は万物から成り立っている」。「悪は善の欠如にほかならない」のであり、「悪と言われているものも、よく秩序づけられてその場所に置かれると、善いものをよりいっそうひきたたせることになる」。
Sora
2024/09/22 17:06

ただし、アウグスティヌスの晩年の思想である「予定説」はカトリック神学には引き継がれておらず、そのほかにも彼特有の思想も含まれているため注意が必要である。

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Sora
西遊記を読んでみたいけど話が長いし難しそうという初心者にも、途中まで読んでいたけど挫折したという人にもおすすめの一冊。西遊記をダイジェストに紹介しているだけでなく、本文の訳も載せてくれているので、飽きずに読める内容になっている。西遊記のあらすじや本文だけでなく、西遊記の元ネタになった『大唐三蔵取経詩話』(三蔵法師の資料をもとに妖怪退治含む様々な物語を加えたもの)の解説や、猪八戒の故郷や結婚願望などの興味深いコラムもあり、面白い内容だった。
Sora
2024/09/15 15:53

西遊記は三蔵法師が経を取りに行く内容なので仏教文学に思えるが、五行説(木、火、土、金、水の5つの元素から物質は成り立っているとする説)や太上老君、宝貝等の道教の思想が色濃く描かれているため、道教的な物語ともいえるというのも面白い。

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Sora
史的イエスの実像の復元は困難だと述べ、ルナンらによる復元の試みは失敗であり、ブルトマンによる聖書の非神話化を批判しながらも、イエスの思想と原始キリスト教の神学の復元を試みている内容。有神論的実存主義とプロテスタンティズムの観点からアプローチを試みている。興味深い内容だったが、いくつか問題もある。まず、「実存」という、人間の在り方に着目する考え方は、キリスト教と諸宗教との違いを曖昧なものとし、その独自性を失わせてしまうのではないかという疑問は著者も指摘しているが、その他にも問題はある。
Sora
2024/09/12 23:39

本書の内容は、キリスト教の歴史や教義を実存主義で解釈し直しているだけで、イエス及び原始キリスト教の思想の復元に失敗しているのではないか。著者は律法を否定しているが、そもそもパウロは律法自体を否定しているわけではなく、指導者的立場にあったエルサレム教会も律法をどう解釈するかで揉めていたこと(アンティオキア事件を参照)。律法対自由(恩寵)という考え方はプロテスタントの神学によくある思想であり、その二項対立で分析するのは物事を単純化しすぎているのではないか。

Sora
2024/09/12 23:39

新約聖書の文書群はそれぞれ成立時期や歴史的背景や思想的環境も異なっている(たとえばマタイ共同体とルカ共同体は神学的傾向が異なっており、ヨハネ文書を書いたグループはヨハネ共同体の中では少数派で、多数派はグノーシス主義に傾いたと思われる)のに、その点を考慮せずに扱っていいのか。本書には多くの課題が残されていると感じた。

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Sora
著者のアリー・イブン・アビー・ターリブは、第4代の正統カリフでシーア派の初代イマーム(指導者)だが、後継者争いで暗殺されたという。また、時期が時期なだけに戦いの前に行った説教も散見されるが、神(アッラー)への賛美と祈り、神の唯一性等の属性への言及の説教と、聴衆に人間の儚さと欲を抑えるべきことも説く内容の説教も数多く収録されている。イスラーム教の教義を知ることのできる古典。
Sora
2024/10/27 19:44

「アッラーの下僕たちよ、アッラーを畏れ、善行を行って死に備えよ。移ろいやすいもので永続する喜びを贖うのだ……それゆえ現世にいる間に、明日(来世で)君たちの身を護るのに十分な備えを蓄えておくのだ。したがって下僕たる者は主を畏れ、自らを戒め、悔い改め、欲望を抑えねばならない……悪魔は彼に罪を美しいものと思い込ませ、おかげで彼はたやすくそれを犯すことになる」(『第六十三の説教』より)。

Sora
2024/10/27 19:45

「アッラーよ、私が知る以上に貴方が知っている私を赦し給え。私が(罪に)赴けば、私への赦しに向かって歩み給え。アッラーよ、私が自分に約束しながら貴方がその不履行を認める事柄について赦し給え。アッラーよ、舌で貴方に近づくことを願いながら、心でそれを果たさなかったことを赦し給え。アッラーよ、私の瞼のまたたき、悪しき言葉遣い、心に抱く欲望、舌の過ちを赦し給え」(『第七十七の説教』より)

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Sora
本書は、キリスト教、悪と黒ミサ、芸術、笑いとユーモア、無意識、著者の母親について、文学の評論、『沈黙』とキチジローについて等、様々なテーマのエッセイとなっている。フランスのリヨンで行われていたとされる黒ミサは、キリスト教に対する否定、呪いと破壊の欲望を意味するだけではない。黒ミサで表現される破壊と否定は、著者の中で、アウシュビッツで母親と子供を虐殺し、家庭ではモーツァルトの演奏に涙し、よい夫であったという矛盾と恐ろしさと重ね合わせられる。悪とは、人間の尊厳の否定と、ただ堕ちていくということも意味している。
Sora
2024/09/22 20:30

『沈黙』のキチジローは、神を否定しながらも神を捨てきれない男として描かれており、著者はキチジローは自分だと思いながら書いたのだ、と述べている。興味深い内容が多いエッセイ。

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Sora
ヨーロッパの美術や文学を知りたい人にもお勧めの本。本書はハトや蛇、木、十字架、太陽、光輪といった様々な動植物や物が、キリスト教や西洋美術で何を意味し、どのような表現に使われているかを学べる内容になっている。たとえばハトは日本では平和の象徴として有名だが、本書によると、福音書にあるイエスの洗礼の話から、西洋美術では聖霊を表現するときにも描かれるということだった。気になった言葉を索引から探して辞典として使用するのもよし、最初から最後まで読み通してもよし、という楽しめる辞典となっている。
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Sora
日本人にも馴染み深い物語である本書は、様々な人々や神々、怪物を物語に登場させて、教訓を付け加えるという内容になっている。たとえば、有名な「狐と葡萄」の話では、「このように人間の場合でも、力不足で出来ないのに、時のせいにする人がいるものだ」と書き残している。また、プロメテウスが人間を創造した時、他人の欠点を入れる袋を前に、自分の欠点を入れる袋を後ろにかけさせたために、人の欠点はすぐに目につくのに、自分の欠点は目につきにくいのだ、と述べる「振分け袋」の逸話も興味深い。
Sora
2024/09/12 22:14

白鳥は死ぬ前に美しい歌を歌うという話はプラトンの『パイドン』にあるが、本書にもその話が載っている。また「ゼウスと善の甕」という逸話は、ヘシオドスの『仕事と日』に収録されているパンドラの物語と類似しているものの(唯一希望だけが残ったという点)、相違点もある。ヘシオドスによると、壺を預かったのはパンドラという女性だが、イソップによると甕を預かったのは無名の男性になっている。同じ話でも希望が残ったという結末は同じなのに、こういった相違点があるのが興味深いと感じた。

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Sora
著者が好きな作品である、モーリヤックの『テレーズ・デスケルウ』を読み解く内容。作品のあらすじや記述を追うだけでなく、彼の発言や思想、フロイトやユングの無意識思想、仏教の唯識論等を手掛かりに読み解いていく。テレーズの殺人未遂と最後の選択を肯定的にとらえる読者もいるようだが、モーリヤックと遠藤氏は、テレーズは救われなかったと考える。著者によると、当初はテレーズはある神父の導きによって救われるはずだったが、彼女は「小説プランを破って勝手に歩き出し……罪に堕ちていくだけだった」ので、どうしても救えなかったという。
Sora
2024/09/24 21:10

フロイトとユング、唯識論の考察は興味深かったが、本書でただ一つ残念な点がある。それは、ホメオパシーを遠藤氏が擁護している点だ。ホメオパシーは治癒するための物質が無いのにも関わらず、水の記憶により治療効果があると称する、非科学的な思想であり、2010年に、日本医学会と日本医師会が反対する声明を出している。時代が時代なだけに、医学はまだ今ほど発達していなかったので仕方ないとはいえ、残念に思う。

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Sora
日本二十六聖人の一人、三木パウロに焦点を当てて、彼の生涯を手掛かりに、日本国内におけるキリスト教の布教の状況、支配者層や仏教との摩擦と対立、国内のキリスト教弾圧とそれに伴う殉教を記述する内容。本書は戦国時代の習俗、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の政策、キリスト教の布教について詳しく記述しているので参考になるが、しかしいくつかの点で問題がある。キリスト教に好意的な政策を行っているかどうかで、権力者の人となりを批評しており、また、寺の破壊や領土内での強制的な改宗という当時の過激な布教方法を正当化している。
Sora
2024/09/22 19:35

遠藤周作の『侍』に登場するベラスコのモデルである、フランシスコ会のルイス・ソテーロについて記述しているため勉強になった。しかし、殉教者を英雄視しているため、フェレイラやハビアン等、「転んだ」人々には冷たく、不公平な批評となっているとも感じた。

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Sora
大船の造船・操縦法を知りたい幕府と伊達家、植民地化と貿易を目論むスペイン、弾圧の緩和と布教の権利の独占を狙うフランシスコ会及びパードレ(司祭)・ベラスコ。三者の思惑が交差する中で、召出衆の侍(支倉)、田中、西の3人は政治に巻き込まれていく。政治と運命に翻弄され、受け身でいるしかなかった3人と比べ、パードレ・ベラスコは常に積極的だ。布教の権利が認められずに失敗に終わった事で絶望し、神の意志を信じられなくなったベラスコ。しかし、それでも、もう一度神の意志を信じて、日本に戻って殉教する道を選ぶ。
Sora
2024/09/02 22:02

侍のモデルである支倉常長と、ベラスコのモデルであるルイス・ソテーロについてもっと知りたくなる読書になった。

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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2015/11/01(3312日経過)
記録初日
2015/11/01(3312日経過)
読んだ本
683冊(1日平均0.21冊)
読んだページ
211030ページ(1日平均63ページ)
感想・レビュー
673件(投稿率98.5%)
本棚
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性別
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