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2024年10月の読書メーターまとめ

TSUYOSHI
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2024年10月に読んだ本
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2024年10月のお気に入られ登録
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  • 柴 洋
  • sakesage

2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

TSUYOSHI
本書は、可能な限り先入観を排して、冷酷非道との印象が強い独裁者スターリンの実像を客観的に記述する評伝である。価値中立的な筆致が徹底して貫かれているが、一読して浮かび上がってくるのは次のような見方だ。すなわち、スターリンは決断力と実務能力に長けた人物であり、ソ連が急激な工業化を遂げ、独ソ戦を戦ううえではその能力が役立った。しかし、決断力の裏返しとして、一度決めた国家目標を達成するためなら多大な犠牲も厭わない非情さがあり、それが仮借ない穀物徴発や大飢饉、大量の粛清や虐殺となって表れた。⇒(1/3)
TSUYOSHI
2024/10/13 23:08

⇒ロシアにおける評価では、ドイツ軍を退けたスターリンの「功」と、粛清や虐殺などの「罪」が表裏一体で結びついており、どちらかというと「功」を強調する議論の方が優勢のようである。私はロシアでのこうしたスターリンへの評価に違和感を覚えた。このような意見からは、「個人」や「自由」の尊厳に対する考察が抜け落ちてはいまいか。ウクライナに侵攻したプーチンに対する支持が落ちない理由として、ロシアにおける「自由」に対する信頼の低さを指摘する声があるが、スターリンへの肯定的な評価も、同じ文脈上にあるように思える。⇒(2/3)

TSUYOSHI
2024/10/13 23:08

⇒また、スターリンが第二次大戦前後に示した領土に対する野心(それは安全保障を憂慮する心理に発していたようだが)も、そのままプーチンに受け継がれている。抑圧によって国民を恐怖させ、政府に従わせる統治手法まで同じだ。上述したスターリンに対する評価の問題と考え合わせると、ロシアは今なおスターリンという精神的な桎梏から逃れられていないのであろう。本書によると、フルシチョフはスターリンを讃えることは奴隷の心理だと語ったそうだが、現代ロシアでスターリンをプラスに評価する人たちはどう思うのだろうか。(3/3)

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2024年10月にナイスが最も多かったつぶやき

TSUYOSHI

先日読んだこちらの本で、民主的な選挙における「情報コスト」について触れられていた。有権者は、投票先の選択にあたって自分で収集した方がよい情報の量が増えるほど、その作業に大変さを感じて判断が適当になってしまいがち、という指摘だった(その意味で、参議院の非拘束名簿方式は人にも党にも投票できるから情報コストが高いという)。こう考えると、最高裁裁判官の国民審査は、政治以上に縁遠い司法の領域の情報を集めないと判断ができないので、一般国民にとっては情報コストがかなり高いことだなと、今回つくづく感じる。

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2024年10月の感想・レビュー一覧
4

TSUYOSHI
三島由紀夫の生誕百年(2025年)を記念して、憂国忌の主宰団体がまとめた三島論。過去に執筆された三島に関する論考やシンポジウムの抄録などを収め、これまでとは異なる視角から三島の人物像に迫ることを目指している。私は十代のころ三島に(文学的にも思想的にも)傾倒していた時期があって、その経験が私の文学観や政治思想の基礎になっているのだが、一読して感じたのは、現在の私は、少なくとも政治的には三島の影響圏を脱して、同時代人の福田恒存のような「近代保守」の立場にシフトしている、ということだ。⇒(1/4)
TSUYOSHI
2024/10/26 23:28

⇒ただし三島は、近代保守の思想と全面的に対立していたわけではない。「反革命宣言」では、「言論の自由」を保障する制度としての代議民主制を擁護しているし、本書が指摘するところでは、三島自身が「自分は相対主義者だ」と発言していたという。それがなぜ日本への熱誠を叫んで自刃するに至ったか。本書では謎とするに留めているが、思うに、三島は己の美学に殉じたのだろう。政治「活動」家であって政治家でなかった三島が、具体的な制度構築の提案よりも、自身の至上と信じる価値に殉じることを選択したと考えれば合点がゆく。⇒(3/4)

TSUYOSHI
2024/10/26 23:28

⇒なお本書では、三島の人物像に対する独自の解釈は示されていない。その激しい恋闕の情の淵源を、水戸藩との浅からぬ縁に求める等、ユニークな切り口からの議論もあるが、それらをどのような意味に解するかは読者次第である。また、これらの議論は基本的に推測の域を出ておらず、論証が尽くされているとは言いがたい。その点にも注意を要するだろう。構成も、様々な論考を断片的に集めてつなぎ合わせた印象を拭えなかった。さらに、関係者の顔ぶれに、かなり「右寄り」と評価されている人たちが散見されることも個人的に気になった。(4/4)

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TSUYOSHI
良書。主に米欧諸国との比較に拠りながら、日本の選挙制度の特徴と問題点を批判的見地から説明し、いま一歩の選挙制度改革に向けた国民的議論を喚起する。筆者いわく、日本の選挙制度には「理念」が欠けており、理想の国家像を描いて、そこから演繹的に国会の役割や適切な選挙制度の在り方を検討することができていないという。その傾向は制度設計者や政治家に限らず国民一般に対してもいえ、筆者は、そうした態度の根底にある専門知識の軽視や、数々のロジックなき「改革案」なるもの(つまり単なる思いつき)を戒める。⇒(1/4)
TSUYOSHI
2024/10/22 21:41

⇒日本の選挙制度とそれを取り巻く知的環境の問題点を指摘した後、筆者は次のように選挙制度改革の方向性を描く。すなわち、改憲も視野に入れつつ、参議院の権能を弱めて衆議院の優越を明確化させ、さらに衆議院を小選挙区制か比例代表制のいずれかに一本化するというものだ。議院内閣制下で、内閣を支える「機能する多数派」の形成を第一に考えるなら小選挙区制への一本化が理想なのだろうが、少数政党への門戸を事実上閉ざすこの選択肢の実現性は、社会に対する政党の構造化が弱いわが国では未知数と言わざるを得ない。⇒(3/4)

TSUYOSHI
2024/10/22 21:42

⇒日本人に「理念」がないという指摘は、選挙制度だけでなく政治の仕組み全般に対して妥当するのではないか。例の「裏金」問題にしても、検討の過程を無視して一足飛びに「企業・団体献金、政治資金パーティーの禁止」という、民主主義の理念に反する短絡的な提案に飛びついてしまう。思考の軸がないから、耳心地のよい話にたやすく惑わされるのだろう。理念を基に順序立ててじっくり思考するということが日本人は得意でないのかもしれない。もしその宿痾が今次衆院選に影響して国の舵取りを誤るようなことがあれば一大事だ。(4/4)

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TSUYOSHI
本書は、可能な限り先入観を排して、冷酷非道との印象が強い独裁者スターリンの実像を客観的に記述する評伝である。価値中立的な筆致が徹底して貫かれているが、一読して浮かび上がってくるのは次のような見方だ。すなわち、スターリンは決断力と実務能力に長けた人物であり、ソ連が急激な工業化を遂げ、独ソ戦を戦ううえではその能力が役立った。しかし、決断力の裏返しとして、一度決めた国家目標を達成するためなら多大な犠牲も厭わない非情さがあり、それが仮借ない穀物徴発や大飢饉、大量の粛清や虐殺となって表れた。⇒(1/3)
TSUYOSHI
2024/10/13 23:08

⇒ロシアにおける評価では、ドイツ軍を退けたスターリンの「功」と、粛清や虐殺などの「罪」が表裏一体で結びついており、どちらかというと「功」を強調する議論の方が優勢のようである。私はロシアでのこうしたスターリンへの評価に違和感を覚えた。このような意見からは、「個人」や「自由」の尊厳に対する考察が抜け落ちてはいまいか。ウクライナに侵攻したプーチンに対する支持が落ちない理由として、ロシアにおける「自由」に対する信頼の低さを指摘する声があるが、スターリンへの肯定的な評価も、同じ文脈上にあるように思える。⇒(2/3)

TSUYOSHI
2024/10/13 23:08

⇒また、スターリンが第二次大戦前後に示した領土に対する野心(それは安全保障を憂慮する心理に発していたようだが)も、そのままプーチンに受け継がれている。抑圧によって国民を恐怖させ、政府に従わせる統治手法まで同じだ。上述したスターリンに対する評価の問題と考え合わせると、ロシアは今なおスターリンという精神的な桎梏から逃れられていないのであろう。本書によると、フルシチョフはスターリンを讃えることは奴隷の心理だと語ったそうだが、現代ロシアでスターリンをプラスに評価する人たちはどう思うのだろうか。(3/3)

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TSUYOSHI
谷垣禎一氏という政治家の手腕は、自民党の結束を保つべき局面においてその真価が最大限に発揮されたといっていい。首相の印綬を帯びるに至らなかったことを惜しむ人もいるが、政党政治では、谷垣氏のように党をまとめられる人材は首相と唇歯輔車のかかわりにあって、不可欠な存在である。野党自民党を短時日に立て直して政権復帰への道筋をつけた谷垣総裁の功績をよく理解していたからこそ、後を承けた安倍総裁(首相)は谷垣氏を閣僚として遇し、改造人事では総裁経験者ながら幹事長に起用して党全体への目配せを任せたわけだ。⇒(1/3)
TSUYOSHI
2024/10/06 08:51

⇒因みに谷垣幹事長の前任は現首相だが、本書では石破氏と安倍総裁の波長が合っていなかったと述べられており、『安倍晋三回顧録』でも、石破氏交代の経緯が赤裸々に語られている。さて、幹事長となった谷垣氏は、安倍総裁を密に補佐し、消費増税延期を問う衆院選を取り仕切る等した。財政再建論者で「税と社会保障一体改革」三党合意の当事者だったが、持論を封じて総裁の政策実現に協力したのである。ご本人は終始謙遜されているが、2010年代の自民党史を語るには、党のまとめ役としての谷垣氏の存在を決して抜きにはできない。⇒(2/3)

TSUYOSHI
2024/10/06 08:53

⇒自転車事故で障害を負ってからは、リハビリのかたわら障害者や犯罪者の社会復帰支援に従事されている。私自身、司法福祉の業界にいながら、谷垣氏が全国保護司会連盟の理事長を務められていることを知らなかった。反省。齢八十を目前にして日々のリハビリをたゆまず「自助・共助・公助のバランスが大事」と語る姿には非常な説得力がある。また、昨今の派閥解消の流れに対する憂慮の表明も必読だ。政界の裏話が満載というわけではないが、谷垣氏の実直な人柄がにじみ出たオーラル・ヒストリーとしてぜひ一読をお勧めしたい。(3/3)

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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2016/08/24(3013日経過)
記録初日
2016/07/17(3051日経過)
読んだ本
391冊(1日平均0.13冊)
読んだページ
119453ページ(1日平均39ページ)
感想・レビュー
306件(投稿率78.3%)
本棚
5棚
性別
年齢
34歳
血液型
A型
職業
事務系
現住所
長崎県
自己紹介

読書の記録管理と、新たな本との出会いを求めて利用中。
本を読むのは好きな方ですが、速度が遅いのであまり数はこなせません。それに飽きっぽい性格なので、読みたい本に次々目移りしてしまい、中途半端な積読が書棚の奥で埃を被ることもしばしば・・・多読家の方々には本当に敬服します。
令和6年は、昨年も目標に掲げながら惜しくも届かなかった年間60冊の読破を改めて目指します。
読むジャンルは、主に日本近現代史関係と、政治学や政治思想に関する本です。小説(娯楽傾向の強いものよりも、歴史や政治が絡む本中心。最近は歴史改変メインのSFも読むようになりました)も読みます。
平成元年の生まれですが、昭和戦前期世代の作家ばかり読んでいました。その影響で現代の作家はほとんど読んだことがありませんでしたが、最近になってぼちぼち読むようになり、その面白さを知りました。少しずつですが数を増やしていきたいと思います。

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