版画家・棟方志功の妻であるチヤを主人公に取った作品。割と淡々と話が進んでいくので、ともすれば単調にも感じるんだけど，ところどころめちゃめちゃ心をざわつかせるパートがあるのがすごい。例えば、棟方志功が柳宗悦に見出される場面や、ちよゑが高熱を出す場面、チヤが代々木に板木を取りに戻る場面などは、鳥肌が立つ思いをした。それにしても、筆者はゴッホがらみの作品が多い。ゴッホ好きなんだろうな。『たゆたえども沈まず』がものすごい熱量の作品だったのはゴッホの熱量か。本作は志功の作品の持つ熱量と静寂さを表しているのだろうか。

何が虚構で何が現実か、不思議な浮遊感の中で虚実がないまぜに展開するホームズ譚。舞台はヴィクトリア朝京都。四条烏丸を出町柳を糺の森をホームズやモリアーティが闊歩する。後半の展開は『熱帯』にも通じるが、こちらの方がやや読者に寄り添っているか？『ソフィの世界』のような世界の転換に脳がグラグラする。最近のモリミーは、こっちの世界とあっちの世界を行き来する話に凝っているのかな。しかし、残念なのは私自身にシャーロック・ホームズの素養がかけていたことか。シャーロキアン諸氏ならばよりこの世界観を楽しめること請け合いである

ダ・ヴィンチで取り上げられてて興味を持った本。誘拐された極限状態で、犯人に好意を抱いてしまう現象をストックホルム症候群というが、これだけ大切に扱われたら、好意を持つのは当然だ。ましてや、両親にひどい虐待を受けているのならばなおさら。虐待の話は胸が苦しくなるから苦手だけど、本作はそこまで凄惨な描写ではない。でも胸が苦しくなるのは間違いない。渡辺がなぜこのような行為を起こしたのかという動機の部分は最後まで予想もつかなかった。結末は目がうるうるしながら、みんなよかったね、としみじみ思う良い読後感の作品でした。

谷崎といえば『春琴抄』『細雪』『痴人の愛』など、有名どころがたくさんあるが、本書に収録されているのは知らない話ばかりだった。中でも『乱菊物語』が全体の7割を占める。にもかかわらず、いよいよ面白くなってきたところで未完。理由は細君譲渡事件だというのだから谷崎らしい。あまり谷崎らしいエロティックな表現はなかったけど、にせのう◯こを見物する話（乱菊物語）とか、好きな人の母乳を舐める話とか（蘆刈）さすが谷崎っていう感じがした。最後のトイレに関する考察も、「上臈が自分のう◯こをみてほしくない」とか発想が面白かった。

版画家・棟方志功の妻であるチヤを主人公に取った作品。割と淡々と話が進んでいくので、ともすれば単調にも感じるんだけど，ところどころめちゃめちゃ心をざわつかせるパートがあるのがすごい。例えば、棟方志功が柳宗悦に見出される場面や、ちよゑが高熱を出す場面、チヤが代々木に板木を取りに戻る場面などは、鳥肌が立つ思いをした。それにしても、筆者はゴッホがらみの作品が多い。ゴッホ好きなんだろうな。『たゆたえども沈まず』がものすごい熱量の作品だったのはゴッホの熱量か。本作は志功の作品の持つ熱量と静寂さを表しているのだろうか。