ネタバレ【A+】単語に負けず劣らず悩ましいのは、基礎的な素養として、イディオムをどれほど覚えればよいかということ。本書が類書と根本的に異なるのは、熟語などを構成する一語一語について説明をしている点にある。例えばat large(逃亡中で) という意味だが、元々largeにはliberty(自由)という意味があったから、犯人=自由の状態にいる→逃亡中、という論理だ。by and largeは元は船乗りの言葉で、ほぼ全ての風向き→概して、という意味になったなど暗記のためのペグになってくれる。読み物としても面白かった。
ネタバレ【A+】和田誠の「仕事」を映画から回顧した展覧会の図録。和田さんと映画は、中高生の時代から切っても切れないものであり、1984年には『麻雀放浪記』で監督デビューまでしてしまった。和田氏の画風は精緻画の極北にあり、俳優の肖像は極力省略された線で表現されるのだが、そのすべてが彼らの特徴を見事に見る者に伝える。画集の自身の似顔絵の上に"THAT IS NOT ME!"と記してくれたのは、M・ディードリッヒ。大女優らしくシャレが効いている。《俺の最高傑作は『真夜中まで』だな》といわしめた同作を、私は見逃している。