
小林信彦の数ある喜劇人評論の中でも、とりわけ当事者としての生々しさと、愛に満ちた客観性が同居する秀逸な名著。この機会に再読できて良かった。 “ <遅れてきた軍国少年>がそのまま育ち、まっすぐに「漫才道」を信じた。師匠の横山ノックも相方のきよしも人生のステップとしか見なかった漫才という古い芸を蘇らせ、その中に生きた。大阪の男たちは、そうしたやすしの姿に自分の父親や叔父や兄の影を見いだすのであろう ”
“ 笠原和夫の言葉を借りれば、ぼくも<寝覚めが悪い>のだった。映画の主役に引っ張り出しておきながら、あとの面倒が悪いやないか、というやすしの声が耳の近くで聞こえていた ”
うまく模写している(解説・田辺節子談)のだから脱帽するしかない。 本書の可笑しさは、流行に弱い大親分と、凄まじい同調圧力、空気を読んで暴走を合わせる周囲の構図。だがこれは現代の日本社会そのものとも言えるでは。笑って、感心して、最後にちょっとゾッとする。極上の大人向けユーモア小説。
『唐獅子映画産業』の部下ダーク荒牧のセリフ「映画がでけるまでの裏話の方が、映画の中身より、ずんとおもろい」。本作は何度も映画化が企画されその都度潰れた。その後、横山やすし主演で映画化されるも、ゴタゴタがあり思ったできにはならなかった。それが心残りだった小林信彦は、やすしの死後、評伝「天才伝説横山やすし」を書いた。これもまた哀愁がありよい評伝。
あと夢探偵では性的な描写も(ラポール的な)。乾副理事長の動機も、業績への妬みや異端宗教世界の構築など複層的。映画原作どちらも異なる味わいがあるので両方を見てほしい。
受験先に都市工学のある大学を選んだのも、空き店舗が目立つ青森・弘前を活性化させたいという理由からだ。関心の対象が個人から周辺、そして郷土へと、格段に視野が広がっている。 また、本作は「青森小説」としての側面も素晴らしい。繊細な津軽弁のグラデーション、東京への気後れと「ちょうどいい都会」である仙台への親近感、地元の岩木山への愛着とようやく仲良くなれた八甲田山。
何よりも、津軽三味線の描写が圧倒的に魅力的だ。まさに「groove」と「drive」。津軽じょんがら節・新節のジュニアチャンピオンである、こまとのセッションは最高だった。 2021年に青森ロケで製作された映画の視聴や、実際の青森弘前への聖地巡礼を通して、この作品の世界をさらに深く味わってみたくなる。
本屋大賞発掘本2026の作品。推薦のコメント「昨今、移民問題等で海外の方々に対するイメージがマイナスな面に傾く事が多くなっている気がする。地球上の全人類が心の底から理解し合えるのは流石に不可能かもしれない。(中略)現実には起こり得ない不思議な出来事で満ちてはいるが、たしかに自分の心と世界中の人たちとの距離が縮まった瞬間だった。小さなことからでいい。この物語たちを愛することから相互理解の試みを始めてみてもいいじゃないか、と思えるのだ。」正に今こそ読むべき本。
本屋大賞発掘本2026の作品。推薦のコメント「昨今、移民問題等で海外の方々に対するイメージがマイナスな面に傾く事が多くなっている気がする。地球上の全人類が心の底から理解し合えるのは流石に不可能かもしれない。(中略)現実には起こり得ない不思議な出来事で満ちてはいるが、たしかに自分の心と世界中の人たちとの距離が縮まった瞬間だった。小さなことからでいい。この物語たちを愛することから相互理解の試みを始めてみてもいいじゃないか、と思えるのだ。」正に今こそ読むべき本。
本があれば大丈夫
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