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2024年2月の読書メーターまとめ

おとん707
読んだ本
12
読んだページ
3170ページ
感想・レビュー
12
ナイス
303ナイス

2024年2月に読んだ本
12

2024年2月にナイスが最も多かった感想・レビュー

おとん707
犯罪者になる環境に生まれる人。一方で犯罪者にならずに済む環境に生まれる人。そういう特権的環境の人達は犯罪者に同情する義務があるという視点で構想された新形態刑事施設、通称シンパシータワーは犯罪者も平等に幸福を享受する施設。建築家沙羅は男友達が発した東京都同情塔という言い替えが壺に嵌りコンセプトを確立してコンペで勝つが何か納得していない。AI時代の思考が生み出す差別もない整然とした理論がどこか窮屈で実社会の感覚と噛み合わない。カズオ・イシグロや芥川賞選考委員でもある平野啓一郎の近未来小説に通じるものを感じる。
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2024年2月にナイスが最も多かったつぶやき

おとん707

1月はアンコールワットにゆかりの本を読み、そしてアンコールワットとその周辺を旅してきました。写真は三島由紀夫が戯曲「癩王のテラス」を書くインスピレーションを得たと言われるアンコールトムの観世音菩薩像群です。 2024年1月の読書メーター 読んだ本の数:12冊 読んだページ数:3281ページ ナイス数:299ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/876755/summary/monthly/2024/1

1月はアンコールワットにゆかりの本を読み、そしてアンコールワットとその周辺を旅してきました。写真は三島由紀夫が戯曲「癩王のテラス」を書くインスピレーションを得たと言われるアンコールトムの観世音菩薩像群です。
2024年1月の読書メーター 読んだ本の数:12冊 読んだページ数:3281ページ ナイス数:299ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/876755/summary/monthly/2024/1
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2024年2月の感想・レビュー一覧
12

おとん707
全1500ページ近い大作で思想・哲学・宗教・政治などを論じた「教養小説」が謳い文句とあっては足も竦む。小説の舞台スイスの雪山に挑戦するようだ。一応ゲーテのファウストを読み雪山用装備はしたが案の定険しい。主人公ハンスはサナトリウムにいる従兄をちょっと訪ねたつもりだったので病人達を見る眼も客人の視線。登場人物は極めて多く殆どが病人。やがて本人も罹患が判明し当事者に。好む好まないに関わらず交流は進む。自称教養人の押付け説教、出身毎にできる病人社会。恋愛と性。社会の縮図に主人公は飲み込まれる。私も飲み込まれた。
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おとん707
綿矢りさの「蹴りたい背中」を読んだ勢いで芥川賞同時受賞の本書を読んだ。受賞時にも読んだ筈だけどこんな作品だったっけ。たぶん当時読んだ時にこの良識のタガを全部取っ払って開き直ったような刹那的若者達の異常さが受入れ難く無意識に私の記憶から排除されたのだろう。今もこれが本当に20歳の少女が書いた作品とは信じられない。「蹴りたい背中」とは両極にあるような作品。だから甲乙つけがたく同時受賞だったのかもしれない。その後の金原ひとみ作品は読んでいないが少しは丸みが出たのだろうか。それともこれが彼女の変わらぬ味なのか。
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おとん707
土門拳が活躍したのは1970年代までで当然フィルムカメラの時代。カメラも始めは手持ちライカだったが脳卒中で体が不自由になってからは大型カメラを弟子に運んでもらっての撮影。しかし妥協は絶対にせず納得いくまで撮り続ける。リアリズムの追求、カメラと自分の肉体化、被写体を熟知する、絶対非演出等々。これが土門拳の写真撮影入門だ。フィルムは現像するまでわからない。その制作過程を著者は黒澤明の姿勢に重ねる。黒澤は現像を窯から出すまでわからない焼き物に喩えたそうだ。デジタル化で随分楽になったが求められる姿勢は変わらない。
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おとん707
ザ・スプリームスがモデルの映画ドリームガールズの小説版。デトロイトの黒人社会で誕生した黒人女性歌手グループに目を付けた自動車販売店主カーティスがこれは金になると店を畳んで彼女らのプロデューサーに。全米に売り出すには白人社会に売り込まねばと目立ち過ぎのセンターエフィーを外してバックのディーナをセンターに。失意のエフィーは去り貧困のシングルマザーに転落。グループは成功するがやがてディーナはカーティスがエフィーにした不正に気付きカーティスとの決別を決意。彼女らの真の幸福とは。ちょっとほろ苦いアメリカンドリーム。
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おとん707
芥川賞をとった時以来の再読だからちょうど20年ぶりになる。もう20年!20年も前の高校生を描いているわけだから、ああそんな時代もあったな、と思いそうなものだが、今こうして再読してみても古さを感じない。もちろん固定電話のように今は使われなくなったものも出てくるが、物語の中心になる”推し”や教室での疎外感、どこか人工的な交友関係、意識はしていないになぜか無視できなくなる自分の気持ち、などは今も変わらない若者の心の内ではないだろうか。いや、むしろその後の芥川賞受賞作が描く社会を先取りしていたようにも感じる。
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おとん707
正直な話ビーチ・ボーイズも、ましてやそのアルバム「ペット・サウンズ」も聴いたことはなかった。偶々家にあったので手に取っただけ。辛い少年時代を過ごした著者が似たような境遇を持つビーチ・ボーイズの中心メンバー、ブライアン・ウィルソンに惹かれ、ブライアンの半生とそのアルバム「ペット・サウンズ」を評論したものだった。つまり聴いたこともないのに評論を先に読んだわけ。そして実際に聴いて驚いた。不思議なコード進行、伴奏から分離するメロディー、突然割り込む低音の強奏、曲ごとに違う奇抜な楽器編成…なんと斬新な!目から鱗だ。
おとん707
2024/02/18 22:37

本の感想を書いていなかった。私が聴いて驚いた、まさにその音楽が文字で書き表されていた。

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おとん707
犯罪者になる環境に生まれる人。一方で犯罪者にならずに済む環境に生まれる人。そういう特権的環境の人達は犯罪者に同情する義務があるという視点で構想された新形態刑事施設、通称シンパシータワーは犯罪者も平等に幸福を享受する施設。建築家沙羅は男友達が発した東京都同情塔という言い替えが壺に嵌りコンセプトを確立してコンペで勝つが何か納得していない。AI時代の思考が生み出す差別もない整然とした理論がどこか窮屈で実社会の感覚と噛み合わない。カズオ・イシグロや芥川賞選考委員でもある平野啓一郎の近未来小説に通じるものを感じる。
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おとん707
芥川賞作「蛍川」と同年の「泥の河」を収録。戦争の傷跡がまだ消えない大阪が舞台の「泥の河」、戦後17年を経て高度成長期であったであろうがまだ昔の生活が色濃い富山が舞台の「蛍川」。共に人々は貧しい。主人公は共に子供。父親が死に住み慣れた場所を離れざるを得ないのも共通している。前期芥川賞が前衛的な「エーゲ海に捧ぐ」だったのに比べると随分古風な作風だが、底辺に暮らす大人の宿命とそれを未熟乍ら納得して受け入れる子供の健気な姿には重い運命を感じる。今読めば古典だが書かれた当時はそれが目の前の現実だったのかもしれない。
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おとん707
芥川賞の時期には必ずその期の受賞作と過去の受賞作を読むことにしている。今回は本書を再読。小川洋子は現芥川賞選考委員。本書は芥川賞の表題作と「ドミトリイ」と「夕暮れの給食室と雨のプール」を収録。3作に共通なのは、超広角レンズで撮った写真のように隅々までピントが合ったクリアな描写。なのにそこに一か所だけありえない景色が密やかに待ち伏せしていて、不意にそれを目の当たりにしてぞっとする。登場人物には名前がない。だからか名前を聞かなくても理解できる誰か知り合いの話を聴いているような錯覚を起こす。シュールな世界だ。
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おとん707
1977年上期芥川賞の表題作とそれより少し前に書かれたらしい「ミルク色のオレンジ」「テーブルの下の婚礼」を収録。共にエロスを題材にしている。エーゲ海が象徴するあの表現は「ミルク色…」では蝶になり「テーブル…」ではそのものずばりと収録作順に描写が具体化していく。そういう意味では「エーゲ海…」が版画家たる作者の前衛的作品との直接的関係を一番感じる。「エーゲ海…」の最後の1行は何を意味するのだろうかと疑問に思いつつ読了したが、実は芥川賞受賞の稿から選考委員の指摘で末尾の13行を削ったそうだ。元の文が気になる。
おとん707
2024/02/10 17:06

池田満州夫は1934年満州国奉天(現瀋陽)の生まれ。その1年後に小澤征爾は同じ奉天で生まれている。池田満州夫と小澤征爾は幼い頃奉天で接触があったのだろうか…と小澤征爾の訃報に接してふと思った。

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おとん707
本多と同級生だった清顕と聡子の悲恋と清顕の夭折、その転生としての勲と死、さらにその転生としてのジン・ジャンと死。その全てを経験した本多が次に転生の証と信じた透が本多に見せつけた現実。清顕の死から既に60年が経過した。転生が肉体が滅びても魂は新たな肉体を得て次の生に繋がるのなら永遠不滅の何かがあるはず。本多はそれを追い求めたと思うが80を過ぎて死の近い本多は何を悟ったか。結局一瞬前の世界ですら既にこの世では無く、今の瞬間以外はすべて幻か。聡子も本多の訪問を受け初めてそれに気付いて意思を固めたのではないか。
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おとん707
「春の雪」の高雅な文章、「奔馬」の澄んだ文章に心を囚われて読んできたがここにきて雰囲気が変わり内容も難解になってきた。本多が見たタイの風景も「春の雪」や「奔馬」の日本の風景の細やかな描写に比べると若干荒いように思える。二部構成の第一部はひたすら抽象的で哲学的で正直言って本多の思考のレベルに辿り着けない。対する第二部は突然卑俗な世界に入り込む。これまで準主役ながら物語の骨格を支えてきた本多はここで主役になったが、同時に俗人化していくように見える。三島が屡々使う頽落という言葉が今の本多を象徴している。
おとん707
2024/02/04 14:08

「豊饒の海」は数十年ぶりの再読。前回読んだときはバンコク駐在中で、チャオプラヤ川(作中ではメナム川)越しの暁の寺を目の前にして読んで感動した記憶がある。だが、今回読んでみると三島のバンコクの風景の描写が日本の風景を描いたときの繊細さに比べて一段落ちるように感じた。三島にとっては日本の風景ほどにはバンコクの風景は心を動かさなかったのかとふと思った。

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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/05/31(2219日経過)
記録初日
2018/05/08(2242日経過)
読んだ本
778冊(1日平均0.35冊)
読んだページ
233152ページ(1日平均103ページ)
感想・レビュー
778件(投稿率100.0%)
本棚
7棚
性別
現住所
千葉県
自己紹介

毎月3000ページ、10冊、そのうち1冊は英語の本を含むことを目安としています。それより多過ぎもせず少な過ぎもせずというのが消化不良を起こさず、空腹感も覚えない私の読書ペースです。毎月ゆるいテーマを決めてそれに沿って、或いはそこから派生した本を選んで読みたいと思っています。読メに参加してから読んだ本は全部感想を書いています。趣味はクラシック音楽(聴くのもやるのも)、ひとり旅、写真、美術館・博物館めぐり、競馬、友達との飲食、そして読書。時間が足りません。

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