形式:単行本
出版社:作品社
意図を読み取ったと記す。更に、シンゴジラはプロガバンダ映画や全体主義的なロマン主義になりそうなギリギリのところでそれに抵抗するポイントを用意している。それらの構想の痕跡により映画が救われ、抗争と葛藤の場となることによって生ずるゴジラの生命を見事に表現することに成功していると述べる。シンゴジラに対して映像の快楽で酔い個や虚構と現実が融解しているかの様な錯覚に陥ることを危惧。矛盾や両義性そのものであるシンゴジラを、単一の意味や政治思想にに回収せず、バラバラな葛藤それ自体として受け止める解釈こそが重要と主張。
ゴジラ禁足の地たる宮城より天皇陛下には京都御所へ御戻りいただき、江戸城本丸を再建してのち、次のゴジラに壊してもらいましょう。
しかしゴジラを「ブラックボックス」として結論することは実質的に自論を何も述べていないに等しく、その結論が公開当初の『シンゴジラ』評を総括して得られたものであるということも含めて、ちょっと「後出し」的な狡さも感じてしまう(庵野を「作家性なき作家」で片付けてしまうことにも同じことが言える)。ゴジラがあらゆる解釈を受け入れながら拒む存在であるという「解釈」を相手に、どのような反論や「乗り越え」が可能であるというのか? これまで書かれたなかでもっとも充実した『シンゴジラ』論であることは間違いないと思うのだが。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます