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敗者の想像力 (集英社新書)

感想・レビュー
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俺、バカだからよくわかんねぇけどよ
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「かくも従順に、抵抗もせずに、不当なことを受け止める」その敗者の位置からの想像力は実に無力であるが勝者には決して見えない景色がある。昔読んだ吉本隆明と大塚英志の対談本にあった気がするが人生において「負けた~」という感覚がない人には理解できないかもしれない。私は人生の敗残者であるためか実に説得的な本だった。右からも左からも叩かれることの多かった筆者の独特な立ち位置はこの「敗者」の感覚から生まれているのだろうなと思った。
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いきいきボーイ
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安易にアメリカ化した戦後日本に抵抗するような言説だった。電通的、企業主義的な風潮という部分が日本の未だ蓋をされている要因なのだという部分に刺激を受けている。
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読書メーター
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スパスパっと進んでいく。論証するよりもとりあえず言いたいことを全部言いたい、という気持ちが勝っている。言いたいこと、そしてそれを阻んでいることなどを全部言おうとするあまり迂遠になるのが加藤典洋の魅力のひとつではあると思うが、この本では言いたいことがダイレクトに言葉になっている感じがある。とくに後半の大江健三郎『水死』論は力が入っていた。
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月光老人
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「まえがき」から「あとがき」まで加藤典洋さんの思いがぎっしり詰まっている。信頼できる文章を書く人だ。大江健三郎は80年代以降の作品は全く読んでいないが、読もうと思う。特に「大江健三郎の「遺書」としての『水死』」は。他にも読んだり、観たりしたいものが沢山。それにしても曽野綾子の「軽薄才女」、「男版の曽野綾子ともいうべき石原慎太郎」、「曽野綾子や徳永信一の輩」には、溜飲が下がる。
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ザビ
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「戦後(戦後民主主義)はもはやぼろきれも同然ではないか」敗戦後、日本は悲惨な戦争と引き換えに国内初の国民主権・言論自由・戦争放棄の憲法を手にすることができた。それは勝者(アメリカ)の正義に追従するためではなく、屈辱体験を受け止めた敗者の立場から、新しい社会像を想像&創造する「戦後民主主義」時代を迎えたことでもあった。う~ん、リベラル知識人の目指す社会ってブータンみたいな国のイメージだけど、さすがに世界3位経済国がブータン目指すのはムリがある。戦後はぼろきれ…時代が変わるってこういうことなのか。
ザビ

ゴジラを「戦没者の怒りの魂の体現」と見る人も今はほとんどいないだろう。ただ、そんな価値観を大切にしたり想像したり主張したりする自由は確かに大切にしたいと思うので、「反日売国」と強く揶揄することには距離を置きたいな、と。

04/09 13:29
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浅香山三郎
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戦争に負けたといふ現実から出発した日本の文学・思想を論じ、敗者であつたからこそ得られた視座の可能性を読み取らうとする試み。ゴジラ・大江健三郎・宮崎駿など、対象は多岐にわたるが、大江健三郎に対する集団自決裁判、『水死』論は後半の中核をなす。初期以外の大江さんの作品は読んで居ないが、加藤氏の分析を読んで、大江さんの仕事を辿つてみたいと改めて感じた。
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cojo
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加藤典洋好きだって気づいたから、いつかまた読み返したいな
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のせなーだ
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本当に読書中、読後ずっと苦しかった。今も常にどこかで一人の独裁者の駒となる軍事集団、兵隊たち、軍事兵器の殺戮力強化。軍隊が威張り散らす理不尽な暴力への無力感は昔から何も変わらない。戦争体験者は戦死ほかで無言。アメリカ兵はもちろん、守ってくれるはずの日本兵は身近でもっと残酷で怖い存在だった沖縄の住民の辛苦悲しみは計り知れない。曽野氏の立ち位置が全く理解できない。武器を持った兵隊に命令されたり殺されたり生き地獄だ。今なお稚拙な威嚇を取り上げ、利用し軍事力強化、憲法破壊をあいも変わらず発言できる彼の神経とは?!
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静かな生活
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かなり前に読んで「よくわからないけど凄いことを言っている」とは思っていたけど、やっぱり凄かった。確かにいつにも増して加藤特有の難解さはある。しかしそのくらいの難解さを持つに相応しい難問が提示されている。この難問を少しでも解くためにも、死にきれない、そんな気がする(しかし一方で大江叩きに躍起な某曽野綾子のくだりは最早マンガの悪役のようで可笑しいというかなんというか)。
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ネムル
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まあ当然ながらも、著者の問題意識が『アメリカの影』や『敗戦後論』と変わらないことがよくわかる。さらりと読める文芸批評、『シン・ゴジラ』、鶴見俊輔、大江のあたりを特に楽しく読んだ。「彼(庵野)は周到に、遺漏なく、こうした「電通」的なるものの文化的な制度に対する抵抗を、いわば必敗の覚悟のもと、しかし堅固に展開するのである」といったナイーブさが、どこまで正鵠を射ているかはわからないけど。
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ケディーボーイ
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文芸評論としてはとても興味深く読めたし説得力もあった。 それが導く「敗者の想像力」が大事というのにも異論はない。 しかし今やそれだけでは足りないのではないか。 敗者の視点は重要だが、負けたものが必ずしも広い見識を得るわけでもないのはマイノリティがマイノリティを虐げる有様をみていれば周知の事実。 はたして「敗者の想像力」は、「敗者への想像力」になりえるのだろうか。 文化相対主義の限界から抜け出てない論に思えていまさら感が否めない。 また、アジアへの視点がほぼ無い所が気になる。日本は敗者なだけではないのでは…
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とらちゃん
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第二次大戦に敗れた反省で勝者の新しい世界(先進の西洋思想)に深く学ぼうとした「戦後民主主義思想」に対して、敗者として、勝者より広くて深い経験の領域で学んで、これまでになかったものへと育てたようとした吉本隆明や鶴見俊輔。著者はそこに惹かれ、敗者がより広い境域で世界の奴隷として考える世界に、敗者の想像力ともいうべき魅力を感じておられる。「敗れるという仕事を最後までやり遂げた」大江健三郎氏に対しても然り。常に自らの正義を振りかざす勝者の論理ではなく、新たな正しさを模索する敗者の想像力に理があると共感できる。
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勝浩1958
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備忘録「思考を一個のプラクティス(用法、用例)としてみると、ある問題を解くための、ゴール到達のための思考ではない、いわばゴールをもたない、スタートだけに理由をもつ思考という範疇が得られる。人は、面白いから考える、というように、思考とその表現を、それだけで独立して改めて思考の対象に捉える捉え方である。」最近の保坂和志氏の著書がこのような感じかな。「「正しさ」とは何だろうか。それは、人が生きる場面のなかから、その都度、「これしかない」というようにして掴み取られ、手本なしに生きることを通じて、つくりだされるもの
勝浩1958

なのではないか。強い立場の人びとの「正義」の物語をお手本にするよりも、新たに自分たちの「正しさ」を模索することのうちに、「正しさ」の基礎はあるのではないか。また、そのことのうちに、本当の成長も兆すのではないか。」「敗北することによって、そこからどんな課題を受け取るか。それが敗者にとっての問題なのだが、このこと、どのような条件のなかでも、「成長」の強迫観念から自由であること、「成長」の急きたてに懐疑的であること、そして自らのゆったりした速度で、与えられた条件に制約されつつ、自分にあった「成長」の仕方を

06/19 08:37
勝浩1958

めざそうとすること、それが日本社会が戦後、米国流の近代成長神話に対して受け止め直し、つくり直した命題なのである。」この考え方は、いまの日本ではまず受け入れてもらえないものだと思う。

06/19 08:41
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しゅん
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日本には「敗者の想像力」が存在する。もちろん第二次大戦の「敗者」を意味しているのだが、それは日本固有の問題ではなく「敗者」は世界中に存在する。「敗者の想像力とは、敗者が敗者であり続けているうちに、彼のなかに生まれてくるだろう想像力のことである」。カズオ・イシグロ、ゴジラ、多田道太郎、大江健三郎と続いていく「敗者」の系譜を追った本書は、理路を前に進めていくわけではなく、同じ主題のヴァリエーションを並べた感が強い。にもかかわらず、本を進めるごとに重みがでてくるのはどういうわけか。強烈な印象だけが残る。
しゅん

「私を離さないで」の、ヘールシャムとヒロシマを重ねた日本人論、「ゴジラ」の、忘れられた戦没者の回帰論など、前半の議論には歴史と作品の紐づけが綺麗で説得力がある。後半の大江論は、沖縄集団自決裁判で極右からの攻撃を受けた大江の体験と、『水死』の物語とを詳細にというより執拗に照らし合わせたもので、説得力より迫力がある。曽野綾子と大江の対照的な道筋も面白く読んだ。多田道太郎の非応答の抵抗は『バートルビー』、または西谷修の「バートルビー=アメリカ先住民」論とつながっているように思う。

01/19 14:09
しゅん

この本の重要なテーマ、「占領期の忘却」(1945~1952のGHQ)を書き忘れていたことに驚く。考えを展開さえすぎかもしれないけれど、大問題として指摘されていた「忘却」をさらに「忘却」してたことは根の深さを物語っているような・・・

01/19 14:17
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恋愛爆弾
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結局はいつも大江なんだな。でもその通りなんだ。戦後は、結局はいつも大江なんだ。
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弥勒
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ネタバレ敗者の想像力とは、敗者が負けた屈辱から目を背けず、勝者では得られない経験を全身で受け止める感受性を養ううちに得られる想像力のことである。そして、その想像力から得られる「正しさ」は、勝者が押し付ける「正しさ」よりも深くて広い。というのも、敗者は勝者に後れをとるからだ。勝者が取りこぼした大切なものを敗者は後ろから取り残さず拾える位置に居るのだ。
弥勒

敗者となるには2つ必要なことがある。1つは、負けた屈辱を受け止めることである。そして、もう1つは、勝利では得られない経験を見極め、その経験を全身全霊で知る感受性を養うことである。

06/28 22:30
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...
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安岡章太郎の部位が好きだった。 占領を占領とさせない米軍と占領として受け入れない日本とのwinwin
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ころこ
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ネタの多くは初出でないようですが、タイトルの言葉で纏められている議論の地平は広大です。結論めいていない文章を書く力は傑出しています。「本気」は出していないようで、いつものように議論の厚みはありません。むしろ短く平易な文章で渉猟することによって、視点の確かさが強調されています。ここに登場する未読の小説を無性に読みたくなりますし、既読の小説の読みが欠落していることに気付かされ、再読してみたくなります。安岡章太郎『ガラスの靴』が、批評性から「重さ」を抜き取られており、大岡昇平『野火』と「隣り合っている」という読
ころこ

解に続き、曽野綾子と吉本ばななを比較して、大江健三郎と対峙させています。大江のサルトルからの「借り物」と批判される一方で、占領期を的確に捉え、その後に長く続く敗戦後の問題を予言させるアンビバレントな評価に読み応えがあります。前半にあるこの占領側(曽野)と非占領側(大江)の対立は、後半の『水死』の批評の前提となる裁判の原告と被告の布石になっています。大江の小説でも問われた「戦後民主主義」が、ヘミングウェイ『老人と海』の「人間は負けるようにできている。しかし負けても、打ちのめされたりはしない」に重ねられます。

12/15 22:28
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v&b
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28 山口昌男『「敗者」の精神史』『「挫折」の精神史』1995 53 尾崎翠 「歩行」『第七官界彷徨』56 安岡章太郎「ガラスの靴」「ジングルベル」「ハウス・ガード」「勲章」 小島信夫「アメリカン・スクール」 遠藤周作「黄色い人」 曽野綾子「遠来の客たち」 以上第三の新人 大江健三郎「不意の啞」「人間の羊」 野坂昭如「アメリカひじき」 59 江藤淳『夏目漱石』(1956)『奴隷の思想を排す』(1958) 66 1951年 1909生まれ大岡昇平「野火」、1918生まれ堀田善衛「広場の孤独」と安岡ガラスの靴
v&b

81 高嶺剛『パラダイスビュー』について(1985年)(『ホーロー質』所収、1991年) 85 敗北の直後に訪れる多幸感(ユーフォリア)→「解放者」に対する幻滅と覚醒、敗者の精神的・道徳的な優位性へのすがりつき +敗戦国に生き残った者とその敗れた戦争で死んだ者の、関係の切断 (橋川文三「敗戦前後」) 169 LL4 210 大江『水死』 78歳 ギュンター・グラスのナチスの武装親衛隊所属告白→グラスの孤立への共感→大江も戦争中は軍国主義時代の絶対天皇崇拝の少年だった

07/19 12:00
v&b

"私が、この文章を書くに際し、自分用に作成した「大江健三郎受難記録」なる簡易年表をここに載せることは紙面の関係で差し控えるが、"

07/19 12:02
3件のコメントを全て見る
0255文字
yuya
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3回目
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yuya
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2回目
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佐島楓
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訃報とともに、高橋源一郎さんがラジオで触れていらっしゃったのがきっかけ。サブカルからの引き方など、主に論の方法において参考になった。文章の感触が好印象だったのが嬉しい……と同時にやっぱり後悔。なぜもっと前から読んでいなかったのか……。圧倒的に勉強量が足りてないな私……。
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ダイキ
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著者の訃報を機に。何を根拠にそのような断言が出来るのか理解し難い部分も少なくはなかったが、基本的に示唆に富んだものとして興味深く読んだ。しかし、「第七章」及び「終わりに」に於ける大江健三郎論には全く辟易させられる。作品・作家論としては恐らく非常に優れたものなのではあろうが、大江健三郎を恰も地上に舞い降りた天使ででもあるかのように神格化する文章が随所に散りばめられているのが、とにかく薄気味悪くて仕方がない。大江健三郎はこのような煽てに随喜するほど無恥な作家なのだろうか? 絶対に違うそうだよ、この本によれば。
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寝子
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ファーストゴジラ、ハリウッドゴジラ×2、シン・ゴジラ、手塚治虫、宮崎駿、吉本隆明、大江健三郎、等々に関する敗者の想像力という観点からの評論。面白かったです。ご冥福をお祈りします。
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ユーカ
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文学や映画から読み解く初歩的な戦後思想にはじまり、「シン・ゴジラ」論を間に挟んで、思想家たちについての本格的な内容へ。そして最後には、大江健三郎の「水死」についての論考という流れになっている。頭から最後まで、“考えること”を刺激され、夢中になりながらも努めて丁寧に読み進めていった(実際に「シン・ゴジラ」も観たりして)。やはり、最後の大江健三郎「水死」についてが素晴らしく、気がつくと息を止めているような読書。敗者の想像力を持って奥深くまで潜るようにして考える姿に、私は神々しいとまで感じながら強く憧れる。
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静かな生活
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【「戦後」を埋葬する】 「負けた」という決定的事実から、何を抽出しうるか、という題目の極めて文芸批評的な一冊。今や日本文化を担うサブカルの「前史」である「ゴジラ」が荒唐無稽「だから」時代を表象しえた、という事実はあまりにも重要。極め付けの晩期大江健三郎論は鬼気迫る迫力。結託していた時代に裏切られた老兵は、恨みを買われまくっていたウルトラ右翼(あるいは新興右翼)たちに無残な袋叩きにあう。彼は最後まで闘い抜く。しかし、同時に頓挫した「戦後」(=大江の理念)を省みた。この想像力が表題になるのだろう。
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mochizo
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この本の集約の文章は大江健三郎さんの「人間は負けるものだ。でも打ちのめされたりはしない」というひとことなのでしょう。ゴジラがなぜ戦後あんなに受けたのかとか、結構興味深いことを書かれています。あと、結局は大江健三郎さんが、先の戦争の敗者からの脱却をきちんと描いている事もよくわかります。最近、先の戦争で負けたけど、結局その戦争の大義を戦後成し遂げたから戦争には勝った、という愚かな論調をする極右の人がいますが、負けは負けです。その点をしっかりと踏みしめないとおかしな事になるという当たり前なことを書いていますね。
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サラダボウル
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難しすぎるところは、飛ばし飛ばしで。後半、大江健三郎についてなので、あ、ちゃんと読んだ事ないと思い、その辺りまで。先の敗戦について。文学作品や、宮崎映画やシンゴジラなどに触れつつ進む。まだ私が読んでない、カズオイシグロ作品の解説もあり、つい引き込まれて読んでしまい、ちょっと残念‥。社会の現状をどう考えるか。これまでの経緯をどう捉えるか。興味深かった。
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Mealla0v0
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後半に行けば行くほどヘヴィな面持ちを見せる。《敗者の想像力とは、敗者が敗者であり続けているうちに、彼のなかに生まれてくるだろう想像力のことである》。この観点から、カズオ・イシグロ、シン・ゴジラ、大江健三郎『水死』まで駆け抜ける。典洋が徹底的に拘る「敗戦」が、彼のなかでどのような位置づけを占めているのかを示しているように思う。それは葛藤の根源であり、成熟の契機であるような、単に敗北したという以上のなにかである。日本の文芸批評が担ってきた日本に特異な思想の系譜がここにある。「日本的情況を見くびらない」ために。
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酔うた
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負けたことをなかなか人間は認めないようにできている。そこをごまかし、次のステップに乗り換えてしまうとき、「ねじれ」現象が生じ、進歩が閉ざされる。日本の戦後がまさにそのようで、戦後の進歩は本当の意味では進歩ではない。イシグロの「私を離さないで」で人間に供される少し感度が鈍いクローンたちがアメリカの属国に甘んじる日本人のアナロジーであったとは。想像力が足りなかったようだ。
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mirie0908
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後半の大江健三郎論がすごい迫力で目が離せず一気読み。「負け」の哲学はすごく自分のうちに迫ってくる感じ。
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oooともろー
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知的訓練には適している手強い本。「敗者の想像力」など、数に奢ったどこかの首相には縁の無い話だろう。大江健三郎の「晩年の仕事」は未読なので評価のしようがなかった。
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K.Hajime
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良い本を読んだなあと感じた。僕はある年齢を越えてから「夢中で」小説を読む事が出来なくなっていたが、この本を読んでいくつか読んでみたくなった。例えば最後に濃密な論が展開されている大江健三郎の『水死』(2009年)。昔、文庫本『水死』を買ったはいいが、難解過ぎて30頁で諦め、売り払ってしまった事を思い出したが、大江氏がこれを著したのは、先の大戦の沖縄・慶良間(けらま)諸島・渡嘉敷(とかしき)島の「集団自決」訴訟をめぐり、曽野綾子・稲田朋美ら「ウルトラ右翼」による不毛な告発に晒され続けた経験にあるという。
K.Hajime

こういった背景が、具体的に『水死』のどの筋に投影されているかの説明が、加藤典洋 氏は驚くほどうまい。そして本書165頁、「批評と言うのは、『本を一冊も読んでいなくても、百冊読んだ相手とサシの勝負ができる、そういうゲーム』と記したら、この言葉をくさす、小谷野敦の『デリダやフーコーを知らないのなら、読めばいいのだ』……何だそんなもん、単に怠慢なんじゃないか、という発言を読んで、目からウロコが落ちる思いがした」と書いており、僕は笑ってしまった。もちろんこの「批評」のすぐあとに続きがあるが、――

10/28 01:01
K.Hajime

少しとんで別の続きを。大江『水死』論にて――「彼(大江)は、彼の戦後民主主義的な信念を自虐的な『非国民』のたわごとと非難するウルトラ右翼の批判の、その内奥深くまで彼のメスの切っ先を沈める。もし島民の集団のなかにこのとき10歳の自分が身を置いていたら、やはり『天皇陛下万歳!』と叫んで死ぬということもありえた!そう名誉毀損の被告の席で彼は感じるのだ」(232頁)。この語りが、先の加藤氏の「目からウロコ」と重なって思えた。今度は笑えなかった。そういえば冒頭には文庫版『死者の驕り・飼育』所収の「人間の羊」の話も。

10/28 01:02
0255文字
*
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敗者になった意味は、その後の態度によって決まる。生きているからこそ「敗れた」と自覚できる。それを恥ずかしいと思う暇があったら、勝者にはできない経験を積んでいった方がいい。
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linbose
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★★★★★
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三上 直樹
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8/15のうちに読了したかったのですが、間に合わず。連載したものに加筆して、敗者であることから何を得るのかという主旋律から大きく離れるものまで論じていますが、幕間のゴジラ論が一番わかるのでは、上っ面をなでているだけなのでしょう。
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skunk_c
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文芸批評は殆ど読まないのだが、これは『永続敗戦論』での議論を別の角度から見ることができるのではと期待して読んだ。いやいや、こちらの方がはるかに深い。多くの知識と洞察が随所に感じられるのだが、文章は明晰かつ平易で読みやすい。書き手の力を感じた。敗者とは敗北から逃げることなくそれを認め、受け入れるもの。それが敗者の視野を広げ、勝者に勝るものになる。これをヘーゲルの弁証法、宮崎駿とディズニーの対比などで論じていく第2部は圧巻。特に最後の大江健三郎論は白眉で、『水死』を読みたくなった。「シン・ゴジラ」論も面白い。
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ophiuchi
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これを読んで、憲法改正は日本国憲法より上位の存在となっているアメリカによる支配から脱した後に行うべきであると強く思った。
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trazom
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「敗者の想像力」というタイトルで提起したかったことがよくわかる。確かに、日本は、敗戦を終戦と言い換え、占領軍を進駐軍と呼ばせることによって、占領されてきた記憶を消そうとしてきた。だから、占領時代を描いた文学が殆どないのだと。敗戦後、西洋思想から学ぶことを第一とする戦後民主主義思想(丸山真男、加藤周一など)と、この第一の道に抵抗して自己形成する戦後思想(吉本隆明、鶴見俊輔など)の二つの方向性が生まれるが、加藤さんは明らかに後者に惹かれている。「負ける」ことを受け入れることの意義を、考えさせられる一冊である。
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敗者の想像力 (集英社新書)評価80感想・レビュー43