ポーランドの作家ステファン・グラビンスキの怪奇幻想短編集。すでに翻訳書としては4冊目で、本国以外にこの作家をこれだけまとめて読める言語は日本語以外にはないとのこと。「サラの家で」は一種の吸血鬼物である。「遠い道のりを前に」では語り手は自分の葬儀を夢見る。「追跡」はL. A. ルイスの「海泡石のパイプ」を思わせる作品で、当人が知らない間に犯罪を犯す話。後半の「偶然」と「和解」は対をなす作品で、前者では人妻の不倫が偶然によって悲劇的結末を迎え、後者では妻と夫との関係が驚くべき「和解」という結末を迎える。