自動化の恩恵は長期的には皆にもたらされる物というデータは揃っている。だけど本書に引用されるケインズの「長期的には私たちはみな死んでいる」(関係ないけど『絶滅へようこそ』を連想した)という指摘の通り、長い目で見れば無視できるほどの「短期的な弊害」が、その人にとって一生に匹敵するほどの長さ続くことになるとしたら?(実際産業革命以後の労働者階級は三世代にわたって困窮を経験した) 自動化に反発する事自体はそれほど奇妙な話ではないと著者は指摘する。
全体を通して、他の自動化にまつわる議論一般ではスキップされがちな細かい論点も拾いつつ、痒いところに手の届く分析が展開されてるなと感じた。問題群についてのかなりクリアな整理が得られるかと。 また、「補完技術か置換技術か」という補助線を入れることで歴史の諸事象の動向になんとなくパターンが見えてくる(技術を分類するカテゴリーとしての労働置換/労働補完は、マクルーハンのホット/クール、イニスの時間バイアス/空間バイアスといった分類と同様に私たちが日々接している「技術」なるものに新鮮な観点をもたらしてくれます。)
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