→言われてみると、長年自分は教員をやってますが、めったに生徒、あるいは後輩を叱ることはしてこなかった、それはおそらく自分でこの本が述べているようなことに気づいていたからかな、なんて感じたりしています。「先生に叱られたおかげで、成長できました!」なんて言われたことないし、言われたらうれしいかもしれないけど、自分本位の満足に終わるだけでしょう。“厳しい指導”が何も“叱る”だけではない、“叱る”に頼らなくても必要な厳しい指導はできる、といったことも、文中に述べられています。→
→ それで最初の3つの「 」の問いかけですが、いずれも我々の思い込みのたぐい(著者はこれを“素朴理論”と呼んでいます)で、科学的見地からは全く真実ではない。とそのあたりのことも、この著作では詳しく解説してくれています。“叱る”“叱られる”ことの本質を見極めたい人には必読の一冊です。
従って一般に叱ることの効果は非常に限定的である一方で、その弊害は大きい。むしろ叱れば叱るほど相手は学習や問題解決ができなくなる。ではなぜ人は人を叱るのか。叱ることが気持ちいいからだ、と著者は言う。悪いことをした相手を罰する時、脳内の報酬系が働いて罰する人間は快感を得ている。それと同じように、叱っている人間は実は快感を得ており、それが度重なると行動嗜癖、依存のような状態になるのである。
この社会では、家庭、学校、会社、スポーツチーム、司法、行政などの様々な場面で、状況を定義する権力を持つ人々が、「叱る依存」に囚われて正しい振る舞いを取れないでいるのではないか、と著者は危惧している。
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