「くるしさは、忍従の夜。あきらめの朝。この世とは、あきらめの努めか。わびしさの堪えか」ー太宰の冒頭は美しい。文語調から口語調さらに英語へ。この短い作品の中でも、明治から昭和の時代の推移を仄めかそうとしたか。初版が1939年(S14)。1年後には英語が敵性語となりその排斥が進む。I can speak… で切り取られたタイトルに太宰のセンスが光る。国全体に差込む2月の暗い月影の下、誰もがぼんやりとした不安と不吉を抱いた時代の雰囲気をスナップ写真のように切取った秀作である。青空文庫でも読める。お薦めである。
ネタバレ絶望的な状態からの復活が見て取れる作品が多い気がした。『I can speak』『葉桜と魔笛』『秋風記』『新樹の言葉』特にこの4つ。人と人と会話から、心の触れ合いが繊細に優しく書かれていて、読んでいて悲しいような温かいような気になる。1作品ずつ感想書いてく。『I can speak』工場から聞こえる女性の歌声に力を感じるところも良いのだが、弟が英語を学んだことを姉に報告するところが微笑ましいし、この姉弟に生活のための力強さを感じる。『懶惰の歌留多』月から手紙をもらったってところが好き。畏怖を感じる。
ふと目をさますと、部屋は、まっくら。頭をもたげると枕もとに、真白い角封筒が一通きちんと置かれてあった。…光るほどに純白の封筒である。きちんと置かれていた。手を伸ばして、拾いとろうとすると、むなしく畳をひっ掻いた。はッと思った。…魔窟の部屋のカアテンのすきまから、月光がしのびこんで、私の枕もとに真四角の月かげを落としていたのだ。…私は、月から手紙をもらった。-この感性。「懶惰の歌留多」 …ちがうだろうね -最後の一文がいい。「I can speak English 」 その他「葉桜と魔笛」「春の盗賊」
八十八夜もめっちゃ覚えてる。笠井さんはコミカルなキャラデザインなのに、作家の苦悩について語る描写等、真に迫る感じ。