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新樹の言葉 (新潮文庫)

感想・レビュー
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シャートフ
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今まで知らなかったのが悔しいくらい面白い短編がたくさん詰まってる珠玉の一冊!エンタメ感を重視した結果普段の太宰の作風とはまた違った印象を受けた作品も多い。とはいえ読者を楽しませようとする奉仕の精神は一貫して感じた。火の鳥がその中でもいちばん面白かった。未完なのは残念だけど、、
シャートフ

八十八夜もめっちゃ覚えてる。笠井さんはコミカルなキャラデザインなのに、作家の苦悩について語る描写等、真に迫る感じ。

11/30 10:35
0255文字
Major
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「くるしさは、忍従の夜。あきらめの朝。この世とは、あきらめの努めか。わびしさの堪えか」ー太宰の冒頭は美しい。文語調から口語調さらに英語へ。この短い作品の中でも、明治から昭和の時代の推移を仄めかそうとしたか。初版が1939年(S14)。1年後には英語が敵性語となりその排斥が進む。I can speak… で切り取られたタイトルに太宰のセンスが光る。国全体に差込む2月の暗い月影の下、誰もがぼんやりとした不安と不吉を抱いた時代の雰囲気をスナップ写真のように切取った秀作である。青空文庫でも読める。お薦めである。
Major

所収作品のうちの短編『I can speak』のレビューでした。

11/06 18:33
0255文字
めしいらず
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中期の佳品十五編。死が迫る妹と姉と父の最後の日々。妹が人生の後悔を訴える悲痛。思い合っていてもすれ違うのが家族。口笛の響きに思いが重なる「葉桜と魔笛」。まだ活気があった三島の思い出を寂れた現在から振り返る。不良の息子が祭の日に大花火を見せたいと母を負うて屋根へと登る健気に心温まる。そして失われゆく昔日の寂寥感。これが白眉「老ハイデルベルヒ」。清廉潔白な兄妹に濁り切った己を恥じる主人公。もう一つの「黄金風景」のよう「新樹の言葉」。太宰が語る芸術論「春の盗賊」。婉曲な二人の恋愛の結末はどちらに転ぶ?「花燭」。
0255文字
999
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まあまあ面白かった。葉桜と魔笛、火の鳥が好き。
0255文字
Caracal
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中には家族のたわいない団らん風景やユーモアが含まれた作品があり、ふ~ん、太宰さん、こんな感じのものも書いたんだと意表で楽しませていただいた。ただ、太宰さんおなじみの薬とは自殺とかが話題となっている作品はやはり読んでいて苦しく好きではないかな。
0255文字
ささぶね
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ネタバレ一つ一つ話にボリュームがあって面白かったです。火の鳥の続きが気になりすぎる…
0255文字
優希
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太宰の叫びのような作品だと思います。麻薬中毒と自殺未遂という地獄から立ち直ろうとした日々。普通に生活することがいかに太宰には難解だったかを考えてしまいます。懸命な力が込められているのが伝わってくる短編集でした。
0255文字
のーのー
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普通の生活を送ることが、太宰にとってどれだけ勇気の要る、革新的な、過激ですらある事だったかがよくわかる。『秋風記』がとにかく優しくて良い。『八十八夜』の主人公には共感した。『春の盗賊』は『二十世紀旗手』の収録作を思わせる作風で、おっ、ぶり返してきたな、と思った。
のーのー

「まずご自分の救済をして下さい。そうして僕たちに見せて下さい。目立たないことであっても、僕たちは尊敬します。どんなにささやかでも、個人の努力を、ちからを、信じます。むかし、ばらばらに取り壊し、混沌の淵に沈めた自意識を、単純に素朴に強く育て直すことが、僕たちの一ばん新しい理想になりました。」(『花燭』)「どうしても、死ななければならぬわけがあるのなら、打ち明けておくれ、私には、何もできないだろうけど、二人で語ろう。一日に、一語ずつでもよい。ひとつきかかっても、ふたつきかかってもよい。私と一緒に、遊んでいてお

03/12 01:47
のーのー

くれ。それでも、なお生きてゆくあてがつかなかったときには、いいえ、そのときになっても、君ひとりで死んではいけない。」(『秋風記』)「東京は、いいわね。あたしより、もっと不幸な人が、もっと恥ずかしい人が、お互い説教しないで、笑いながら生きているのだもの。」(『火の鳥』)「でも、もういい。私は、やってみる。まだ少し、ふらふらだが、そのうち丈夫に育つだろう。」(『懶惰の歌留多』)

03/12 01:54
0255文字
quickening
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太宰の中期前の作品集。再出発を図った短編が多いので、確かに他の時期の作品よりも退廃的な部分が少ないように感じた。しかし、「春の盗賊」や「懶惰の歌留多」といった部分で、芸術としての陰鬱で感情的な自分と、職業作家として世間で認められなければならない自分の間を、必死にもがいていることが読み取れた。「葉桜と魔笛」は国語の教科書にも載っている小説で、何度読んでも感動を欠かすことのできない傑作である。他にも、「新樹の言葉」「火の鳥」「誰も知らぬ」など、女心をよく捉えた素晴らしい作品が続き、読者の興味を掴んで離さない。
quickening

他にも「I can speak」「美少女」も印象的だった。どうしたら数ページでこんなに綺麗な作品が書けるんだろう。

03/04 18:50
0255文字
bibi‐nyan
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「I can speak」「懶惰の歌留多」「葉桜と魔笛」「秋風記」「新樹の言葉」「花燭」「愛と美について」「火の鳥」「八十八夜」「美少女」「春の盗賊」「俗天使」「兄たち」「老ハイデルベルヒ」「誰も知らぬ」 「新樹の言葉」乳兄弟の再会。最後の火事は悲劇ではなく浄化の炎のよう。 「愛と美について」ある兄弟たちが、即興で物語を紡ぐ。家族愛と文学への愛情と、どこかにある理想の美しさへの憧れが感じられる。 「花燭」筆者の分身のような青年の語り風小説だが、ラストが良い。
0255文字
けぴ
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昭和14-15年頃書かれた短編集。表題作が『津軽』っぽい私小説で一番の好みでした。
0255文字
優希
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麻薬中毒と自殺願望の地獄の日々から立ち直ろうとする様子が感じられます。懸命な努力を重ねていた時期の短編集。それぞれの短編に再生への祈りや恋愛など前向きな要素を見てとることが出来ました。
0255文字
Madoka.@書店員復帰を目指し中!
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ネタバレ読了まで時間が掛かってしまった理由は『太宰治』という作家の作品のひとつひとつを噛みしめながら、そして、太宰の生み出した文章をずっと読んでいたかったのと自分の中で大切にしたかったから。太宰の作品を読むといつも、胸がきゅーっと締めつけられるような感覚に陥る。この本に収録をされている作品たちもその感覚をぶつけてくる。繊細さと狂気という真逆の要素を持ち合わせながらもその2つが上手く噛み合い、突然変異を起こすような感じもあり、太宰の作品を読むことがやめられない。中毒性の高さと高揚感を一気に味合わせてくる。
0255文字
KJ
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自分以上の仕事は出来ない。傑作は無理でも正直に生きる。不憫な妹を想う姉の精一杯の優しい嘘。血縁が全てに非ず。乳兄弟の爽やかさ。自分の為なら折れる心も他者の為なら頑張れる。自愛の必要性。苦しい夜の次にも朝は来る。弱さの中の悪と強さの中の善。弱い人間を神が愛すとは限らない。男を庇う強き女は男を尊敬し権威さえ欲する。時代を経て変遷する愛の形。行き詰まった作家の無茶な旅路。作品に昇華出来れば辛い経験も報われる。泥棒との顚末を語る饒舌に小心が表れる。恥辱の告白は誇りへの願望。異なる価値観に触れる事も読書の醍醐味だ。
0255文字
ky
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葉桜、姉さん、あたし知っているのよ。これ、姉さんが書いたのね。あれはウソ、あんまり淋しいから、ひとりであんな手紙書いてあたしに宛てて投函。新樹、いつかは会えると確認していた。焔の光を受けて並んで立っている幸吉兄妹の姿は凛として美しかった。愛と美、退屈したときには皆で物語の連作をはじめるのがこの家のならわし。美少女、顔より乳房のほうを知っているので。盗賊、どろぼうを手づかみ。どろぼうなんかに文学を説いたりなさるのはおよしになったら。俗天使、あのころの事は、たんねんにゆっくり書いてみるつもり、人間失格という題
0255文字
山のジョニー
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ネタバレ絶望的な状態からの復活が見て取れる作品が多い気がした。『I can speak』『葉桜と魔笛』『秋風記』『新樹の言葉』特にこの4つ。人と人と会話から、心の触れ合いが繊細に優しく書かれていて、読んでいて悲しいような温かいような気になる。1作品ずつ感想書いてく。『I can speak』工場から聞こえる女性の歌声に力を感じるところも良いのだが、弟が英語を学んだことを姉に報告するところが微笑ましいし、この姉弟に生活のための力強さを感じる。『懶惰の歌留多』月から手紙をもらったってところが好き。畏怖を感じる。
山のジョニー

『誰も知らぬ』誰も知らない恋慕の告白。叶わなかった相手も自分も今は別々の生活を生きている。ほとんど芹川さんの兄さんに対することは言ってなかったのに、芹川さんが行方不明になったシーンで唐突に出てきたのだが、そうだよな好きだったんだよなってなんか納得させられるような変な感じ。本当にそのときに好きになったではないか? 良くわからなくなってきた。

07/11 19:08
山のジョニー

この短編集全体的に好きだ。人間を繊細に描写してるのは全てにおいてそうなんだけど、などこかハツラツとしてて力強さがある気がする。前向きというか。とにかく良かった。また読もう。

07/11 19:10
6件のコメントを全て見る
0255文字
はむ
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ネタバレ後の魔作『人間失格』のさりげない執筆宣言が、「俗天使」内でされている。
0255文字
RFMJUVE
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「葉桜と魔笛」「秋風記」「新樹の言葉」「花燭」「誰も知らぬ」が良かった。フワッとしていて美しいような印象。
0255文字
西岡剛
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短篇集。「火の鳥」最後に未完って出てきて終わる。ここで終わりなのか。残念。
0255文字
かんろ
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全15編の中短編集。全体的に何かに踠いてる足掻いてるて印象を受けた作品が多かった。 秋風記の《僕には花一輪さえほどよく愛することができません。ほのかな匂いを愛づるだけではとても我慢ができません》の台詞が好きだな。 火の鳥が未完で続きどうなるん!?てなった… 数少ない読んだことある太宰治作品て、女性がモブみたいな妻かなんか聖性魔性で理想化した2パターンしか嗅ぎ取れないんだけど、これは作風なのか時代性なのか…
0255文字
mutenka
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0255文字
ねぼ
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再読。以前読んだときは『葉桜と魔笛』『火の鳥』『愛と美について』に夢中だったけど、今回は『秋風記』が特に刺さった。小説家の私とKという女性のデカダンスな関係。おそらく私はKを愛している。けれどKには子どもがいる。私はKにささやかな贈り物をする。黄色い石で水仙の花が飾り付けられている指輪である。Kはそのお返しとして長女の写真を送る。黄色水仙の花言葉は「もう一度愛してほしい」「報われぬ恋」
0255文字
±
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甲府の湯村温泉に赴く前に当地が舞台の『美少女』を読んでおきたくて手にする一冊。そちらや表題作など明るめのものは気楽に読めるが、大体において〆切に追われてこんなの書かなきゃいけなかったのは大変ねぇ(自殺してなくても自殺してたのじゃなかろうか)…という作風で長雨多湿下に大変鬱陶しいまま頑張る半日読書。筆者筆頭に人間が多すぎるのか。読者も、いま、理由もなく不機嫌である。的な読後感。やれやれ。
0255文字
名前はまだない
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古典文学の研究者のとあるインタビューをたまたま拝見して、そこで『「母よ、子のために怒れ」というのはどのような意味だと思いますか?』という逆質問があったので、気になってそのまま購入(古い人間だからかやっぱり小説は「書籍」として手にして読まないと頭に入ってこないし、なんか悦びが少なくなる気がする)。久々に読んだ太宰は相変わらず少し読みづらく、イライラする人物も多いし、でも何かわからない魅力があるんだよな(笑)『女生徒』が一番好きだけど、この本でも、女性…少女の目線で書いてる短編がイキイキしてて好き。
0255文字
鈴木貴博
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昭和14年から15年にわたって書かれた中短篇集。15篇を収録。
0255文字
yama
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ネタバレ昭和14-15年、太宰治30-31歳時の15編を収録。甲府に転居して結婚し、精神的にも安定した日々に生まれた作品。太宰が心中で殺してしまった女性を作中で不死鳥の如く甦らそうとした悪漢小説「火の鳥」。話の途中で北杜夫のふざけた小説みたいな展開を辿る「春の盗賊」。太宰が自分自身を道化として戯画的に描く私小説風の物語である「新樹の言葉」「花燭」。女心に秘められた過去をさらっと振り返る「誰も知らぬ」など。物語として破綻している作品もあるが、薬物中毒と自殺未遂の地獄から心機一転しての充実した作品が多い印象。
0255文字
takakomama
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昭和14年と15年に書かれた、中期のはじめの時期の15扁。太宰の本音が透けて見えます。特に「火の鳥」には太宰の願望と理想を感じます。生きているだけで、充分、親孝行なのかもしれません。
0255文字
Yasu
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太宰治の文体に大分慣れてきたのか、苦もなく読むことができた。他の本も読み直してみよう。
0255文字
シロナガススイカ
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前半は静かに意表をつくオチの話が多く、珍しく普通の小説らしい小説じゃないかと思ったのだが、後半はいつも通りの自傷的な赤裸々文章が展開された。べ、別に前半が物足りなかったとかじゃ、ないんだからねッ!冗談はさておき太宰が自身のことを語る時、どこまでが本当の話なのか…。わざと大袈裟に卑屈に描いているのか?と、連日太宰を読んで気になる今日この頃であった。お気に入りは『葉桜と魔笛』。聞こえる筈のない口笛を耳にして、妹は死んだ。その口笛は、ただ文字を追っているにすぎない私達にも同様に。軍艦マーチに馴染みはないけどね。
0255文字
読書家さん#mdQf51
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ふと目をさますと、部屋は、まっくら。頭をもたげると枕もとに、真白い角封筒が一通きちんと置かれてあった。…光るほどに純白の封筒である。きちんと置かれていた。手を伸ばして、拾いとろうとすると、むなしく畳をひっ掻いた。はッと思った。…魔窟の部屋のカアテンのすきまから、月光がしのびこんで、私の枕もとに真四角の月かげを落としていたのだ。…私は、月から手紙をもらった。-この感性。「懶惰の歌留多」 …ちがうだろうね -最後の一文がいい。「I can speak English 」 その他「葉桜と魔笛」「春の盗賊」
0255文字
Ise Tsuyoshi
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「くるしさは、忍従の夜。あきらめの朝」(p.8)。冒頭から太宰ワールド全開。「私の悪徳は、みんな贋物だ」「まことは、小心翼々の、甘い弱い、そうして多少、酒でも飲まなければ、ろくろく人の顔も正視できない、謂わば、おどおどした劣った子である」(p.285)。『春の盗賊』は作品としては正直どうかと思うが、太宰の内面や創作姿勢を考える手がかりになる。30~31歳ごろの作品群。自殺(心中)を扱っている作品もあるが、この頃の作品には、太宰の生きようという意思が込められているように感じる。
0255文字
ふくしんづけ
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ワードの選び方、並び、順番、頁の面。音ももちろんだけどまず見た目の面白さが太宰作品にはあり、それが物語を置いて吸引力となっていると思う。そして語りの中にある、自画像。私小説の顔をしたり、他者や架空の人に委ねたり。独りよがり、茶目っ気、乙女らしさもしくはロマンティズム。らしさが表れてある。未完ながら『火の鳥』が秀逸。序章冒頭の美しさで、一気に引き込まれる。太宰の諦感はある所にぴったり嵌ると儚さ美しさが頂点に達すると思う。おそらくそれは太宰にとって切実でなく、少し遠いものとして見ているときの気がするのだけど。
ふくしんづけ

ほかには『新樹の言葉』『俗天使』『兄たち』『老ハイデルベルヒ』既読の『懶惰の歌留多』『秋風記』がいい。〈生れて、十年たたぬうちに、この世の、いちばん美しいものを見てしまった〉『秋風記』〈やっと見つけたと思ったら、もうこの人は、この世のものでは、なかった〉〈このひとと一緒に死のう。あたしは、一夜、幸福を見たのだ〉『火の鳥』この死生観がまったく、いい。少なくとも今の自分には、くる。

01/08 23:40
ふくしんづけ

あと家族関係で勝手に蟠ってたり、あるので、〈片言半句でも、ふるさとのことに触れられると、私は、したたか、しょげる〉〈血のつながりというものは、少し濃すぎて、べとついて、かなわない〉『新樹の言葉』にうなずいたり。

01/08 23:40
0255文字
心士二人
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短編集。「愛と美について」先に「ろまん燈籠」を読んでいたので、5人兄妹の創作物語がまた読めてこのお話はおもしろい。小説、ではない小説もあり、太宰治の苦しさややりきれなさ、陰鬱な気分が感じられる。
0255文字
じいじ
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読友さんのレビューで、〇十年ぶりに太宰小説を読んでみたくなった。太宰が麻薬中毒と自殺未遂から抜け出したいと懸命に足掻いていた時分に書かれた15篇の短篇集。5人の兄妹を明るく描いた【愛と美について】が面白かった。ちょっと偉そうぶる29歳の長男を頭に、嫁にもいかずお堅い鉄道省に勤める長女、帝大医学部の秀才だが体が弱く学校へ行けない美男で半病人の次男、ミス日本に応募したいが身長が足りない次女…など5人の人間模様が壮観である。5年前に父親は他界。5人をじっと微笑みながら見つめる母と5人兄妹の物語は気分爽快です。
じいじ

KEIさん、一時夢中に読んだ太宰小説ですが…、何を読んだかもすっかり忘れています。こちら15の短篇集ですが、7点ほどつまみ読みしました。昔の太宰小説のイメージを覆す明るい小説で愉しめました。「気分爽快」は少々オーバーだったかもしれませんが…。(笑)ぜひ、読んでみてください。

11/14 11:28
KEI

では、ポチります。

11/14 12:42
3件のコメントを全て見る
0255文字
杜若
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著者の心中や精神衰弱の経験を基にし、自罰的、自虐的でありながらも、文学には誠実に向き合った内容の短編集。表題作は、甲府へ居を移して創作活動をしていた時に、偶然自身の乳母であった女性の息子と娘に出会い、親しく交流したという記録的小説。苦労しながら生真面目に生きる兄妹の姿に、創作活動が上手くいっていない主人公が励まされ、何事かを決意する結びまでが流れるように描かれ、とても気持ちのいい作品になっている。病弱の妹に、心優しい姉が架空の人物からの手紙を書き、堅物の父親がそれに合わせて口笛を吹く「葉桜と魔笛」も神品。
0255文字
メルキド出版
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「俗天使」タイトルに惹かれて読んだ。作中「人間失格」や「女生徒」の言及があり大江じゃんと思った。作者と登場人物の距離を考える上でマストな短篇だった。
0255文字
豆電球
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【再読】高校時代に読んで以来。全編通して自死への決別宣言とでも言うか、生きる為に力強くあれと自分に言い聞かせているような表現が多く、思わずいじらしさを覚えます。「火の鳥」は未完である事が悔やまれるほど面白かったし「葉桜と魔笛」も私の好きな太宰に溢れていました。お気に入りは「春の盗賊」。後半の泥棒とのやりとりは言わずもがな、支離滅裂でちょっと何言ってるか分かんないってなりかける前半も非常に面白い。一人称で小説を書く事の難しさを説いていますが、後の「人間失格」は確信犯だったのでしょうかね。
0255文字
SATOMAN
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Icanspeak 甲府で小説を書いている時期のエッセイ。女工さんの合唱に癒され、弟のI can speakが心に残る。ヨハネの福音書。はじめに言葉ありき。 懶惰の歌留多 カルタ風のエッセイ。 葉桜と魔笛 姉妹と父三人が登場する短い小説。姉の語りで展開。美しいが病弱な妹の最後の100日を描く。妹を思う姉の心境、美しいまま青春をなくす妹の悲しみ。ダイレクトに伝わり、涙を誘う。 秋風記 主人公「私」と、2歳上の有夫kとの(心中?)旅行。
SATOMAN

愛と美について 五人兄弟が順番に物語を語る。おっちょこちょいの末弟が作ったわけのわからない話を、兄や姉たちがうまくまとめていく様は、とても面白い。兄弟それぞれその個性がうまく反映されていて、作者のキャラクターたちに対する愛情が強く感じられる。 火の鳥 未完の小説。女優高野幸代をめぐる男たちの物語。 八十八夜 太宰を思わせる作家笠井一が主人公。すっかり通俗小説家になってしまった己を恥じ、豪遊するために旅行に出る。クライマックスの女中とのいたずらシーンが鮮やか。

09/06 22:57
SATOMAN

美少女 温泉で出会った美少女との思い出。乳房ばかり覚えていて顔を覚えていない。 春の盗賊 前半は盗賊とは関係のない、太宰の思い溢れるエッセーのような形式。強盗押し入り後のやりとりが、とてもユーモラス。 俗天使 前半はエッセイ、後半は女生徒の手紙のような形式。 兄たち 愛と美ついてのモデルのような兄弟の姿。早世したすぐ上の兄の思い出。 老ハイデルベルヒ 三島で世話になった佐吉さんを尋ねる。ロマネスクのモデルのような人。 誰も知らぬ 女性の告白体。駆け落ちした友人の兄に、突然恋心を抱く。

09/06 22:58
3件のコメントを全て見る
0255文字
Koji
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嬉しさのあまり酩酊しながら心の底に秘めた自省の思いをつい裏腹に吐露してしまう主人公(表題作)。虚栄を捨てられず斜に構えて、一度自らの混沌の淵に沈めた自意識を素朴に鍛え直そうと踏み出す主人公(『花燭』)。執筆当時の筆者の生きることへの思いが痛々しいまでに峻烈だ。桜の園を取りかえす術なきや。真実というものは何もしなければ虚偽であり、傲慢であり独りよがりである。何か行動を起こして初めて関係性が立ち上がる。意気込んで帰宅し、取りも直さず芥川の真似をして「忙中謝客」と玄関に貼り出す高揚感が、とても切ない。
0255文字
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