何者かはその本を元の場所に戻すと、鍵を片手に部屋を出ていった。 しばらく無音だった廊下に、ペタリ、ペタリという音だけが響き渡る。 ──────────────────◇◆◇───────────────────
何者かはしばらくページを見ていると、一瞬どこかのページがキラリと鋭い光を放った気がして手を止めた。少し戻りそのページを開くと、光るものは月明かりに照らされた鍵だった。鍵は何もついておらず、ごく一般的な見た目をしている。 しかし、何者かはその鍵を見るなり恐ろしいほどの笑みを浮かべた。その口元が鍵から発せられる光に照らされ、不気味に光る。
記憶の片隅に置かれた探しもの。それを探して。 ふと、ある人物の言葉を思い出し、何者かの手が止まる。やがて、何者かは狭い部屋の一番奥へ歩み寄り、棚からある一冊の本を取り出した。 本の表紙はすっかり黄ばんでしまって一文字も読み取れず、全体の色も黄色い。しかし見た目からは想像がつかないほど重く、開いてみると本のページ一枚一枚がしっかりしていて折り目一つないくらいしっかりしている。
──────────────────◇◆◇─────────────────── ピタリ、ピタリ、ピタリ。 薄暗い廊下に、何者かの足音が響き渡っている。 それは1分ほどの間止まるのを知らずに鳴り響いていたが、ある部屋の前でようやく静けさを取り戻した。 金属が擦れる音。長い間手を付けられず誰の眼にも写っていなかったドアが今、何者かによって開かれた。 錆びついているせいでそれほど開かず、ようやく小柄な人が通れるくらいほどの隙間しかなかったが、その何者かは難なくドアの隙間を通って部屋に入った。
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