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kthyk
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大戦中の子供の頃ピエモンテの山腹に避難していたヤンボ(エーコ)は60才を過ぎ、この山腹の霧の風景の中の祖父の屋敷で記憶を失った病の静養をする。19世紀は説話論的磁場にあったと「物語批判」は言うが、この小説は21世紀の宇宙論的時空にあると言える。錯綜した翼廊を持つ迷路的世界、この屋敷の屋根裏部屋には夥しい雑誌の挿絵や百科辞典、漫画、絵本。戸棚にはラジオやレコード、音響機器。ここは間違いなく言葉の、いや単語による量子論的時空だ。ヤンボの時空の旅はやがて多色刷り表紙の絵本「女王ロアーナの不思議な炎」に辿り着く。
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屋根裏部屋の小宇宙旅行がそろそろ終わりに近づいた頃、ヤンボはまだ開けられていない本箱のあいだ箱から「三つ薔薇ホテル」を見つける。その本の記憶は彼の高校時代の想い人リラ、妻のパオラ、現在のシビッラという、まだ、霧の中だが3人の女性に繋がっていく。ここからはヤンボは最早、宇宙旅行にあるのではなく、ドラマチックな実人生を回想していく。ネタバレは避けたいが、エーコの人生は、戦時中の多くの人々との関わりがベースにあるようだ。しかし、人生とは誰にとってもまさに、いつも宇宙か霧の中の風景と言って良いのでは無いだろうか。

10/31 11:25
0255文字
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プロフィール

登録日
2020/10/14(1648日経過)
記録初日
2020/10/14(1648日経過)
読んだ本
421冊(1日平均0.26冊)
読んだページ
134254ページ(1日平均81ページ)
感想・レビュー
393件(投稿率93.3%)
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自己紹介

kthyk / Dilettante

散歩と雑学 東京在住

「音楽と建築、そのデザイン」kindle出版

「建築家の言葉」エクスナレッジ 共著

「ふしぎな国のガウディー」エクスナレッジ 共著

「集住の知恵」技報堂出版 共著

Blogger Commedia テーマ=音楽と建築

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