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ちはや@灯れ松明の火
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ちはや@灯れ松明の火
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キャンバスに咲いた燃えるようなひまわりに恋をした。小熊のように転げながら絵を描いて、東京の片隅で未来を夢見て、魚をほぐす優しい手に心惹かれた。版木に対峙する真摯な姿が眩しかった。野草を採って食べる貧しい日々、見えぬ目の代わりに万物を視る手、偶然と必然が連なって奇跡が起こった。板を掘る。花が咲き、鳥が啼き、鬼が蠢き、仏様が笑う。墨を擦る。あなたもわたしも独りではない。紙に刷る。白と黒が生命を吹き込み、世界を色鮮やかに染める。海を越えて、憧れを超えていく。あなたのてのひらが板の上に咲かせた花は、愛おしかった。
ちはや@灯れ松明の火

版画ではなく、板画。天才板画家棟方志功が世界に羽ばたくまでの助走の日々を奥さんの目線で綴った芸術と夫婦愛の物語。もじゃもじゃ頭に分厚い眼鏡、素直で豊かな感情表現とユーモラスなリアクション。看護師を目指すチヤの前に現れた小熊のような青年スコさ(志功さん)は、ゴッホに憧れる芸術家の卵だった。青森の貧しい鍛冶屋の三男坊として生まれ、上京して創作活動に励むもなかなか芽が出ない。結婚後も青森の実家暮らしで別居状態が続いていたチヤはしびれを切らし、まだ赤子の長女を連れて、友人夫妻の家に間借りする夫の元へと押しかける。

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  • いつでも母さん
  • Sato19601027
ちはや@灯れ松明の火

恥ずかしながら棟方志功が青森出身であることも、ゴッホのひまわりに憧れて画家を目指したことも、幼少時から目が悪く大人になって更に悪化したことも、西洋への憧れから子どもたちに自分をパパと呼ばせていたことも知らなかった。駆け出しの頃から戦争を何とか乗り切るまで、世界のムナカタとなる前のスコさの真摯なのに可笑しみのある姿がメインで、原田マハさんの他の作品と比べるとフィクションとの融合部分が少なめのシンプルな構成となっている。装丁は代表作の二菩薩釈迦十大弟子、題字と著者名も作品から抜粋した本物のスコさの文字らしい。

11/28 21:30
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2009/03/14(5858日経過)
記録初日
2006/01/07(7020日経過)
読んだ本
3013冊(1日平均0.43冊)
読んだページ
869238ページ(1日平均123ページ)
感想・レビュー
2114件(投稿率70.2%)
本棚
36棚
性別
血液型
O型
職業
事務系
現住所
神奈川県
自己紹介

タイプ:どく
分類:ものぐさほんよみ
生息地:カナガワちほう
主な出現場所:としょかん・ふるほんや
特技:ひるね
弱点:あつさ・さむさ・くうふく・ねむけ
持病:かたこり・つかれめ

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