余程の猛者か阿呆でなければ大抵の人間は死を恐れる。誰も解らないから怖いのだ、死の間際の感覚も、死んだ後どうなるのかも。もしも今差し迫った死の影に怯える人が運命を前向きに受け容れるこの本を読んだら、根拠のないことを言うなと怒るかもしれないし、こうであってほしいと涙ながらに願うかもしれない。どう受け止めるかは人それぞれだけど、死ぬ者、看取る者、遺されて生き続ける者、それぞれの立場に真摯に寄り添っていると私は感じたし、自分にもしものことがあったら最期はライオンの家でマドンナに見守られて幕を降ろしたいと思ったよ。
二十代で重い病を患って治療の甲斐なく余命を宣告された三十代前半の女性が瀬戸内海の小島にあるホスピスで残りわずかな日々を過ごす話、と書くと途轍もなく重苦しく感じるけどそんなことは全くない。レモン島(通称)のライオンの家(施設名称)のマドンナ(施設のオーナー)という響きの明るさと和やかさが確実に迫り来る死への不安を、生命の誕生と表裏一体の神秘へと変えている。憤怒や悲嘆や絶望を越えた先の諦観と、それでもまだ残っている生への希望と深い感謝。それにしてもライオンの家の食生活は非常に魅力的だ。日替わりお粥食べたいな。
しかし本書の肝はやはりタイトルにもあるおやつでしょう。皆さん覚えてますか、数ヶ月前に学校がコロナ対策で一斉休校になって給食用の牛乳が余ってしまった時にSNSで何が話題になりましたか?はい答えは牛乳を煮詰めて作る『蘇』ですね。時代に先駆けてマドンナさん既に作ってたよ蘇(作中では『ソ』)。他にもタケオさんの豆花、マスターのカヌレ、百ちゃんのアップルパイ、シマさんの牡丹餅、先生のレーズンサンド、そして雫さんのミルクレープと美味しそうなのがたくさん出てくるけど、やっぱり一番食べたいのは蘇だね。作るのめんどいけど。
タイプ:どく分類:ものぐさほんよみ生息地:カナガワちほう主な出現場所:としょかん・ふるほんや特技:ひるね弱点:あつさ・さむさ・くうふく・ねむけ持病:かたこり・つかれめ
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます
余程の猛者か阿呆でなければ大抵の人間は死を恐れる。誰も解らないから怖いのだ、死の間際の感覚も、死んだ後どうなるのかも。もしも今差し迫った死の影に怯える人が運命を前向きに受け容れるこの本を読んだら、根拠のないことを言うなと怒るかもしれないし、こうであってほしいと涙ながらに願うかもしれない。どう受け止めるかは人それぞれだけど、死ぬ者、看取る者、遺されて生き続ける者、それぞれの立場に真摯に寄り添っていると私は感じたし、自分にもしものことがあったら最期はライオンの家でマドンナに見守られて幕を降ろしたいと思ったよ。
二十代で重い病を患って治療の甲斐なく余命を宣告された三十代前半の女性が瀬戸内海の小島にあるホスピスで残りわずかな日々を過ごす話、と書くと途轍もなく重苦しく感じるけどそんなことは全くない。レモン島(通称)のライオンの家(施設名称)のマドンナ(施設のオーナー)という響きの明るさと和やかさが確実に迫り来る死への不安を、生命の誕生と表裏一体の神秘へと変えている。憤怒や悲嘆や絶望を越えた先の諦観と、それでもまだ残っている生への希望と深い感謝。それにしてもライオンの家の食生活は非常に魅力的だ。日替わりお粥食べたいな。
しかし本書の肝はやはりタイトルにもあるおやつでしょう。皆さん覚えてますか、数ヶ月前に学校がコロナ対策で一斉休校になって給食用の牛乳が余ってしまった時にSNSで何が話題になりましたか?はい答えは牛乳を煮詰めて作る『蘇』ですね。時代に先駆けてマドンナさん既に作ってたよ蘇(作中では『ソ』)。他にもタケオさんの豆花、マスターのカヌレ、百ちゃんのアップルパイ、シマさんの牡丹餅、先生のレーズンサンド、そして雫さんのミルクレープと美味しそうなのがたくさん出てくるけど、やっぱり一番食べたいのは蘇だね。作るのめんどいけど。