さらに生息環境が常識外れだった。ザ・シダーズの泉は生物にとって過酷な極限環境だった。pH値が11~12という強アルカリ溶液。これでは呼吸でエネルギーをつくることができない。栄養となる物質もそこでは乏しい。では、このような環境で微生物がどうやって生きているのかはいまだ謎だらけだという。
「第一次世界大戦後の困難な時代を背景に、一人の若い女性が飢えと貧困にあえぎ、下女、女中、カフェーの女給と職を転々としながらも、向上心を失うことなく強く生きる姿を描く。大正11年から5年間、日記ふうに書きとめた雑記帳をもとにまとめた著者の若き日の自叙伝」と本書の紹介にある。この「日記風に書きとめた雑記帳をもとに構成した」がミソ。構成する前の生の文章に接したいと願わせた。きっともっと灼けたトタン屋根の雌猫だったのだろう。
そういえば、かのラフカディオ・ハーン(小泉八雲)もアイルランド系の人物だが、名前から分かるようにギリシャの血を受け継いでいる。そのせいか、虫を愛した作家であり、「ファーブルの昆虫の本を愛読し、美しい竹細工の虫籠に松虫や鈴虫、草ひばりなどを飼い、その声音に耳を傾けてい」た。
本文、分かりやすくと心掛けているようだが、吾輩にはつついていけなかった箇所も。それでも面白い。当初は仕事の車中の待機中に読んできたが、連休ということもあり、半分は自宅で一気に。
中世ヨーロッパで蔓延した魔女刈りも、男に対し反抗する女性を魔女として社会が寄ってたかって責めさいなんだ歴史としても読み取れる。女性は意思があってはならない。人形でなければならない。魔女狩りの物語ではないが、イプセンの『人形の家』は、若い頃繰り返し読んだものだ。お勧め…するまでもないか。
本作の感想は微妙である。シェイクスピアはさすがにウイットと言葉遊びをとことん駆使して喜劇調に仕立てているが、彼の本意は見えない。脚本や演出家、役者らに下駄を預けている? 本作について一読だけじゃ判断は下せなかったな。
著者:「ワインガード,ティモシー オックスフォード大学で歴史学を専攻して博士号を取得。現在、コロラド州グランド・ジャンクションにあるコロラド・メサ大学で歴史学と政治学を教えている。カナダと英国の陸軍で将校としての服務経験を持つ。これまでに世界各国で、軍事史と先住民族研究の分野における4冊の著書が発売されている」
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処女作では本題と遊び部分のバランスが取れていて手ごろだったが、本書は両者ともに膨らんでいて、やはり600頁は(本人は割愛した部分が多いと釈明するが)長過ぎる。
吾輩は、仕事の車中の待機中に、暇の徒然に読めたからいいが、自宅では辛かったかもしれない。でも、まあ、ご苦労様です。