端金にしかならないレベルで無いと言えるだろう。だが、この物語はそんな彼を主人公に設定した上で、確かな感動と純愛話を繰り広げている。人生に絶望している人を救えるような力強さが存在している。「失敗を知っている俺ならば、これからやり直せばどこまでも上り詰めることができる」と言う人は現実が見えておらず、彼はようやくスタート地点に立ったところでしかない、といった説教じみながらも、現実に役に立ちそうな見解が作中にはある。人の価値とはなんだろう。はじめて幼馴染ではない誰かを受け入れて変わっていく主人公の姿を見るのは、
とても楽しく勇気を貰える。どんな人間であろうと、確実に価値のある存在になることは可能で、落ちぶれている彼らはまだきっかけが掴めていないに過ぎない。自分も幸せになる為に変わろうと思える、力強い話だったと思います。自分の価値は、自分が作り出すものなのだと感じました。そして等しく、幸せについても。
いつでも絶望が付き纏うなら、無理に抜け出そうとせず淡く曖昧な安らぎを求める。「いたいのいたいの、とんでゆけ」と、それをした所で実際に傷は治らない。けれど、確かに届く思いはあって、彼らのその行いが無意味なはずなかったのだ。タイトルの言葉にとてもマッチした、苦しくも温かい話でした。終わり方が、とにかく美しかった。
がら生きるべきなのか。ありえない事情が起こっている物語なはずなのに、人生に対する諭しの説得力が高くて、終盤は読んでいて終始感心していた。「幸せの欠片っていうのは、そこら中に落ちていたみたいなんだ」という作中の言葉に、ここまで納得させられる事があるなんて感動だ。綺麗事で、説教じみた話だったが、これは良い。今の環境をちゃんと愛して。もっと素直に、もっと前を向いて生きたいと思える、最高の一冊でした。
だから死んだはずの吉野がそこには存在し、主人公染井も終わるまでは、そこで生きることができる。染井の行動がひとつのきっかけとなって、吉野は死んだのだろう。彼を肯定してあげることは難しい。彼は、やりすぎてしまっていたから。でも、彼が犯した行為は世界で何度だって行われてきた。憧れや嫉妬から、微かな模倣が生まれ、新たな作品が生み出される。小説を読むという行為に対して、これから何かが変わってきそうな、新たな価値観を得られた本だった。染井の心を、理解してあげられる人はきっと数多くいるはずだ。
何もしなくても死んでしまう人もいれば、生き続けてしまう人もいる。いつかは無になる人生での生き様のひとつを見られた話だったと思う。「君は月夜に光り輝く」の続編として見ると、もう少し夢のある話でも良かったと思うが、これはこれで悪くない。前巻でも煙草とか生徒と先生の恋とか汚い部分は存在していたし、多くの人は許容できるだろう。
物語に主張しまくるわけでも、突然にそれっぽい人生感を語るでもない彼には好感が持てる。性格も人間らしい良い人で気に入った。作者には反出生主義があるように思えるが、でもだからこそ響くものもあるように感じる。クサイけれど、愛があれば人生に意味が生まれるみたいなものだ。実際この本にはそんな話が書かれていた。少々雑というか適当だろという部分があるのも、そんな青臭い話の味になっていたと思う。若ければ間違いなく刺さる。この一冊を読んで、生きたいと思えた人がきっといるはずだ。面白かったです。
何かを消すかわりに、自分の大切な何かが消える。その残酷な能力から来る過去の話は素晴らしく悲愴的で、苦しい。あくまで逃避行。ありふれた少年には誰かを救う力など無かった。でも、だからこそ、彼にしかできないことは存在している。最初の展開とは中々違う方向にいったり少々駆けだったりしたものの、美しく最後まで突き進んだ純愛の話だったと思います。
していた。最終決戦の戦闘描写は少々分かりづらかったが、終わったあとに書かれた種明かしでようやく理解。これについては戦闘中にわかりやすく明かして欲しかったかな。なんとなくで読み進める戦闘シーンほど難しいものは無い。あとは、貴族達のぽすぎる会話が多くて文章を読み解くまでに時間がかかることも少々気になった。これはまあ、雰囲気づくりとして役立っているため好みの問題かもしれないが、私は難しく感じはするが嫌いじゃない。だから、そこそこに楽しめた。
恐らく、今巻の話はまだまだ序章に過ぎないだろう。そうにも関わらずこの二巻は、キャラクターの過去を明かしては現在と比較し、一冊の中で起承転結をどこまでも熱く描き切った。作品世界観の中で最大限に、主役二人の関係の魅力を増幅させたよい二巻だったと思います。
なんでもありで眩しすぎるものの、現実味が凄まじいのはやはり詩的な心情描写のおかげなのか。人生において明確な終わりがあるものは少なく、だからこそ青春は美しいのだなと思わせられた。終盤の紅葉については当初想像していたよりもぬるい着地をしたが、それは私が彼女に騙されていたにすぎなかったようだ。紅葉は千歳だけでなく、周りにいる皆、その空気だって好きだったらしい。その停滞こそがまず彼女の求めていたものだったらしい。彼女の人柄が見えて、なんだか一番好きなヒロインになってしまった気がする。そして、着地の仕方は言わずもが
な最高だった。前巻、七瀬悠月が七瀬悠月を誇れるようになったところでのこの返し。しかも、今まで度々描写されていた私だけが特別じゃないに対するアンサーまでもが加えられており、並々ならぬ感動に満たされてしまった。どうしようもなく優しいのが彼らなのだな、ぬるいのがチラムネなのだな、そう物語を振り返らせてくれるシリーズに相応しい終わり方を迎えた学園祭編・九巻だったと思います。…ただ、これからどう物語を動かすのだろう。もう場を掻き乱す新キャラは出せないだろうし、ますます答えを出しづらくなってしまっているが。期待です。
対比の為のように感じる。紅葉は途中から混じってきた部外者で、悠月は既に彼らの大切。だから結局誰も傷つけず、傷つけられず、悠月は夜にあのような行動を取ったのだろうか。最後、今まで振りまかれてきた七瀬悠月の不安が解消され、また彼らの関係は振り出しに戻ったが、確かに変わった何かはある。七瀬悠月を正しく誇れるようになった彼女の演劇が素直に楽しみになった八巻で、個人的に期待していた話とは違ったが面白かった。恐らく、次巻が最大の答え合わせなのでしょう。演技の上手さとうたいつつも、役柄は、彼ら彼女らそのものなのだから。
恋なんて、結局すべてたまたまの寄せ集めなのだろう。誰もが、時と場所を関係なしに魅せられる可能性がある。それを紅葉は受け入れて、自分を誰かの悪にしてまで恋を掴み取ろうとしている。物語の都合的に、恐らく彼女は勝てない。多分、完全な和解もできないくらいの暴れ方をするのだろうし、もうしている。こうもヒロイン達の恋心をえぐってくるラノベがあるのか。長らく停滞していた話がようやく動き出したような気がして、とても面白いがどこか苦しい七巻だった。悠月の覚醒にとにかく期待しまくりです。
涙を自分だけに見せたのちに、今日という辛い日を糧にまた進んでいく。そんな姿はまっすぐと誰の心にも突き刺さってくるように思うし、青春の良さとからさがいい具合に絡み合っていた。陽の話と繋がってくるが、やっぱり全部掴み取りたいものだ。自分もこんな風に頑張り続けて、辛い日を乗り越えた先にある夢を叶えたい。まだ過程でいられる時期だからこそ、彼らはこんなにも悩めるのだと感じました。青くて最高の長篇集だった。
ーだから、この状況を引き寄せた。そしてそれは、周りの彼女達も同じ。皆が互いを思い、すれ違った。そんな彼らへのアンサーは多分、もっと愚かでいい。大切で親しいからこそ、迷惑は掛け合うもの。それはヒロインの一人である優空の家族の話と共に語られた関係性であり、愚かな千歳朔も変わらずヒーローだとする彼らの告白シーンはまさに青春素晴らしかった。これからは皆が恋心を認め合い、譲り合いなしにぶつかっていくのだろう。まだまだ荒れると思われるが、それはきっと清々しく青い争いな予感がする。終始納得させられっぱなしの六巻でした。
ら謎だった夕湖が千歳へと惚れた理由。それは、今まで大切に育て上げられてきて、純粋すぎた彼女へと最初に突きつけられた一筋の牙。普通ならば嫌いになってもおかしくないのに、夕湖はその出来事をきっかけに千歳朔へ一目惚れしたのだという。正直、夕湖はわがままだと思う。自分の立場を利用して優位に日々を過ごして、はじめにぶつかる。「告白」、ずっと気になっていた彼らの有耶無耶だった恋路は、八人全員の前で輝き、消える。恋は儚く、青春も同じ。丁寧に、丁寧に積み上げられていった彼ら八人の関係の綻びは、ついに最後崩れてしまった。
原因は間違いなく、告白をした夕湖だ。けれど、彼女を責められはしない。恋・青春とはそういうもので、勝者と敗者が存在し、また主役の影で薄らと傷つき去っていく者もいる。結果は芳しくなかったが、確かに進んだ何かはある。彼ら八人はこれからどうなってしまうのだろう。もう二度と元通りにはなれないし、ヒーローでいる千歳は誰か一人を選べるのだろうか。まだまだ謎の多い彼である為に、次巻以降の掘り下げに期待だ。美しく儚い心情・情景描写と共に描かれた最高の青春物語でした。切ない。
その大体は何か大きな出会いがあって救われたりする。でも彼はそうでなく、苦しみ続けた果てに荒れて、大切な人に嫉妬し当たり散らかし、そして見捨てられるのだと思えば…違う。彼に八つ当たりされた彼女は彼を受け入れて、彼に再起のきっかけを与えた。それはまさに「どうせ人間なんて、みんなちょっとずつおかしい」であり、後に別の人物の視点で見えてくる彼と彼女の幸せそうな姿は、未完成な人々のよい付き合い方なのだと感じた。その他の話も、一つ間違いを犯してしまった人々の事情が細かく明かされて、恨むに恨めない人間像を描いている。
一人は兄と違って大切な人と別れ。また一人は間違えたままで。理解し難い話も存在していたが、どの話を読んでも分かるのはやはり「みんなちょっとずつおかしい」だった。物語に登場した人間の多くが正直酷い性格の持ち主であったものの、なぜか受け入れてしまう。なぜか感情を揺さぶられる。他人由来の苦しみを受け入れるのか、受け入れないのかで未来の行き先は変わってきて、そして主役の二人はそれを受け入れた同士で、惹かれあったのかな。雨の美しい景色を思わせる文章の元に描かれた、人々の苦しみの話だったと思います。
か。まあ、七層・八巻も続いたシリーズで、展開がクエストNPCの掘り下げ→マップ探索からクエスト攻略→クエストから発展してフロアボス討伐と、パターン化してしまっている。それを良い意味で変化させる要素としてのキリトの「それ」は、今までにない面白さが確かに存在していた。遊びではないにせよカジノに参入したり、既にアスナがキリトへ好意を持っていると感じえない匂わせ描写があったりと、楽しさハラハラ共に素晴らしい八巻でした。SAOはゲーム世界なのだから、今後もどんどんごちゃ混ぜ世界が見れそうで楽しみです。
熱い作品が好みです。若造がぼちぼち感想を書いてます。
あくまで個人的な感想であり、結局読書は人によって受け取るモノが変わってくるので、こういう意見もあるのだとしてあまり鵜呑みにはせずに。
★☆は個人的な楽しめた度。僕自身の好みで変わってきます。
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