“マリーをそっと降ろしたカミンズは、妻を抱き締め、子供は父親に寄りかかって、両腕で父親の足を抱き締めている。少しの間、親子三人は自分たちだけの世界で一枚の絵となって静止し、ダルグリッシュはのけ者になった。彼はルーク・カミンズをじっと見つめて、ヴェニーシャ・オールドリッジの夫、彼女の世界、彼女の憑かれたようにひたすら前進する人生の一部として想像してみた”(P71)ドライブの最終目的地は、ヴェニーシャの元夫が家族を住む陶房だ。ああこの場面は好きだなあ萩尾望都の絵が見えてしまう。
栗本薫『キャバレー』を見届けろミッション終盤モヤモヤ。■愛車の純正マフラーが経年劣化、せっかくなので専門店で交換。見た目は品よいまま音はポルシェに。■写真は最近オススメのワンコインワイン。ブエルタ・ア・エスパーニャで目につくオズボーンの雄牛です。2022年5月の読書メーター 読んだ本の数:20冊 読んだページ数:7648ページ ナイス数:2025ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/200370/summary/monthly/2022/5
“はじめて会った竹宮恵子は、「案に相違して、ひっそりと物静かな、はかなげな人で、マネージャーにウォルフみたいにいたわれていてびっくり」した、と”(P274)“ドジさまとはじめて会ったのは竹宮さんより1年くらいおくれて、例の、あとでささやななえと結婚することになる佐川俊彦が、「コミックJUN」という少年愛雑誌をつくったとき”(P275)“しめた、これは面白くあそべそうだと”(P276)本書は大泉関連本でもある。マネージャーと書かれている増山法恵は当時、竹宮のプロダクトディレクター的な立場。
同人誌の内容や絶筆「トゥオネラの白鳥」のあらましを聞くにつけ、せっかく人生でアガペ=慈愛に遭うというめったにない経験ができたものの、最終的にはエロス=性愛の不足を嘆きながら亡くなることになったのかと思うとなんか切ないです、人間って。
『朝日のあたる家』を書庫の奥へ仕舞おうとして発見。わざわざJUNE本誌まで遡らなくてもよい、そこそこの資料価値アリ。まぁしかし超人的?な記憶力に相当自信を持っていたようですな。確認もせずに書いちゃうから、こともあろうに森茉莉作品の主人公名を間違えたりした言い訳部分は単行本化ではむろん削除。1987年集英社文庫化。1998年刊行のちくま文庫化ではハッキリ増補新版とされており、コチラは一読せねばと思っている。
“私、迫る側になったジュリーに少々興味を失いました。いま、あっSEXY、と思うのは、甲斐よしひろくんです、あのしなやかな腰と細い脚、たのきんなんて目じゃないのよ” “コンサートが終わった直後、楽屋へいったら、甲斐くんは全身もう汗びっしょり”(P112)甲斐よしひろとは対談で意気投合したもよう。曲にインスパイアされた創作は世によくあるスタイルだが、栗本薫の場合気分で表題に使う程度で、あんまり深くないような。甲斐よしひろで『完全犯罪』を完璧に創り上げた萩尾望都と比べてはいけないがな。
アンドレ・カンドレ時代からアルバム『ライオンとペリカン』までの全詩と、自作年譜、写真&エッセイ、インタビューで構成。詩が好きでも歌えるかといえばそうでもない曲があるのがなんか不思議。
コットンさん、愉しませていただきました〜そういえば神戸っ子が『コットン』さんというステキな喫茶店の話をしてくれて、一度訪ねたいと思っていた矢先に閉店してしまったんです。落ち着いたらまた神戸の書店&喫茶店巡りをしたいです。
最近更新出来てないですがコミュニティ『素敵な喫茶店』と『素敵なランチの店』というのを作っています〜。良ければ覗いて見てください→https://bookmeter.com/communities/331496 『個性派書店倶楽部』というコミュニティもやってますのでこちらも〜。
そういえば十年前、堺を出発って朽木(山内練の故郷だ)に寄って敦賀のヨーロッパ軒でソースかつ丼食べて、武生の遊里跡を探訪し、高岡で馴染みの居酒屋の暖簾をくぐり、翌日は安房越えで松本平に下りました。透と良、米原から蓼科までクルマでいけば近かったのにね。あ、透は運転ド下手だったね春先もスタッドレスじゃないと無理だしね。
身も心も。“今、俺の腕の中で夢見る人よ””一つにとけて、今、俺の腕の中で眠る人よ”・・・・まんまですね。別の作品のタイトルになってるけど。わたしゃ、やっぱり、島津を「友達」だと力説する透の言動は、ダメだと思うのよね。だって、ウソじゃん。それが、自分の為に人生投げ打ってくれた人に対して言う言葉かと。透がダメなんじゃなく、そんなこと書いちゃう栗本薫がダメなのよ。
読友さんが東京サーガの年譜を作成してくれた!感謝。これに栗本薫/中島梓と、沢田研二と久世光彦を追加妄想。実際のGSブームとかキチンと追うと〈キャバレーブランチ〉を取り込みさえしなければ納得。両ブランチを合体させ俊一を年上にしたのはどう考えても間違ってる。ジュリーは劣化し、久世光彦は亡くなってしまった。マンガ狂で文学少女でJUNE文学始祖としての貯金が尽き、死の直前まで商業小説家としてのリハビリを試みていたのか、未完のシリーズをうっちゃって、ただ矢代俊一をオモチャに趣味の世界に没入していたかったのか。
COMIC JUN(のちJUNE)創刊2号座談会を検証。「もっと外で遊びたい」竹宮惠子、「もっと少年を知りたい」増山法恵、「もっと煙草を吸いたい」羅亜苦、「もっと沢田研二を知りたい」中島梓、「もっと締切を守りたい」ささやななえが出席。JUNEを熱く語る中島梓「小説でその種のシーンだけをすごく書いてた一時期があったの。前後、全然なしでね(笑)。そういうのが山ほどあるんだけど人に見せられないわけ。そのことを昼日中に考えるのも恥ずかしいって感じで。ところが不思議なことに、それを見ているとだんだん前後が出てくるの
(中略)そしてそこに到達するための前後の何百枚かを一生懸命書き始めると、今度はその前後の方が重大になっていて、とうとう最後には、そこなしでも一つの話が書けるようになったわけ。すべてこれ健全な社会復帰への道でしてね(笑)。だから、人に見せられるものが書けるとなった時初めて、書いてもいいんだと思う。そこのけじめっていうのが欲しいんだな。」ケジメ!節度を持て!と晩年の栗本薫/中島梓に強く返しておきたいです。
コットンさん、懐かしい街を楽しませていただきました。1丁目から見える『ぢ』の看板とか、昭和通りの改造社ビルとか気になる場所がいくつかありまして、近々訪ねてみようと思います。
最近の共読率激高ですけど、どの本も、文庫ー単行本で別々の本として読了登録してるんで、一向に「相性」には反映されない・・・・ですね(笑) 暴力の連鎖が描かれたこの本ですが、読んだ当初はけっこうキツい内容と思ったのですが、その後『残酷な神が・・・・』の執筆があり、こちらはまるで童話かってくらいに暖かい話に、自分の中では格上げ・・・・・
“そうして、磨かれて、床の間に飾られて、四十四まで来てしまった”(P188)雪子のこと。前巻で43歳。誕生日がいつかにもよるがブレ始める。ちなみに島津52歳、透33歳は維持されている。考えてみたら第1巻と第2巻は同時に刊行されてることだし、そのくらいは編集が校正するだろうし。
ゴリゴリっと単行本である。第3巻は1999年10月25日の第4刷。ってことはWEB上に自分の過去の毒感があるはずなのだが、どうやら古すぎてGoogle検索にかからないような状況になってきたらしい、知らんけど。
雪子の年齢のあたりは私も目をつぶって読みとばしてました。。。とにかく頭にうかんだことばを書き流すスタイルだったんでしょうね。その場の雰囲気やその場限りの説得力だけあればいい、と。大作家様なんだから、せめて考証スタッフ一人おいておきゃあこんなことにはならんのに。私もだいぶ読み流すように努力しましたが、ちょっと最後まで保ちませんでした。(苦笑)
“神学校には昼食時に着くと言ってあった。ローストフトを出る前にデリカテッセンで暖かいロールパンとバター、きめの粗いパテ、ワインのハーフ・ボトルを買い込んだ。彼は田舎をドライブするときには必ず、グラスと魔法瓶に入れたコーヒーを用意する” “秋の野原が広々と見渡せた。彼はそこに車を止めて、弁当を開くことにした。だがその前に携帯電話のスイッチを切った”(P76)自動車電話の登場は確か1986年『死の味』。本作には何度か携帯電話の存在が記されるが、全然シリーズの雰囲気を損なっていない。
“オリーヴ油で焼いたナスとピーマンはすでに食卓に出ていた。フォークの触れあうひそやかな音がして、食事が始まった。その合図を待っていたかのように、ラファエルが朗読を”(P186)“魔法瓶に野菜とパスタがたっぷり入った、手作りらしいミネストローネ・スープが入っていた。おろしたパルメザン・チーズと、ナプキンに包んだ温かいロール・パン、バターが添えられている。皿の蓋を取ると、サラダとおいしそうなハムが現れた。おそらくセバスティアン神父の配慮だろう、ボルドーの赤が一壜”(P335)食事は美味く、ワインの趣味もよい。
“チーズとパテ入りのフランス・パンの弁当を持ってきていた。ワインのないのを残念がる気持ちは起きなかった。すっかり満足しきった今の気分を、これ以上増幅させる必要はない。怖いほどに生々しい、疼くような幸福感、若さと無縁になってからめったに感じなくなった、あの魂を突き動かされるような喜びが、血管を巡るのがわかった”(P57)ダルグリッシュはひとりジャガーを疾らせる。大聖堂を見学したあと思い立ち海へとハンドルを切る。丘陵の緑から海の青き広がりまで一大パノラマを望む解放感が伝わりくる。
“マリーをそっと降ろしたカミンズは、妻を抱き締め、子供は父親に寄りかかって、両腕で父親の足を抱き締めている。少しの間、親子三人は自分たちだけの世界で一枚の絵となって静止し、ダルグリッシュはのけ者になった。彼はルーク・カミンズをじっと見つめて、ヴェニーシャ・オールドリッジの夫、彼女の世界、彼女の憑かれたようにひたすら前進する人生の一部として想像してみた”(P71)ドライブの最終目的地は、ヴェニーシャの元夫が家族を住む陶房だ。ああこの場面は好きだなあ萩尾望都の絵が見えてしまう。
“洒落た店が嫌いだが、食べ物にはうるさかった。古くなったロールパン、乾燥したチーズ、油臭いバターには手をつけなかった” “彼のために初めて食事を作った。献立はステーキ。男性はステーキが好きにきまっている。肉屋の勧めでヒレ肉を買い、厚切りの新鮮な赤い肉は、直前にグリルに入れられるのを皿の上で待っている。〈マークス&スペンサー〉で、すでに洗って、食べられるようになっている野菜ー豆、ベビー・キャロット、新ジャガを買ってきた”(P92)ヴェニーシャが弁護し無罪を勝ち得たばかりの青年アッシュが娘オクタヴィアに接近。
“地下の台所に降りて、厚いオニオン・タルトを作りました。デリア・スミスのレシピなんですけど、オールドリッジ先生のお気に入りでした。でも、まずペストリーを作って、練り粉を冷蔵庫で三十分寝かせて、その間に詰め物を作るので、そう簡単にできる料理ではありません。食後にアプリコット・ジャムのパンケーキが食べたいと言うので、オニオン・タルトを食べた後に作って、フライパンから直接お皿によそいました”(P228)デリア・スミスは実在する料理家。「練り粉」は「生地」ぐらいがよいのでは?
もともとマネージャーが甲斐バンドの大ファン、聴くうちにモー様もファンになったのだそう。「萩尾望都と甲斐よしひろ」で検索したら、萩尾望都デビュー50周年記念パーティでのちょっとイイ話?を見つけニマニマした。里中満智子カッケーさすがです。
“私にとってエポック・メイキングに思われたのは、宮谷一彦が「少年サンデー」に二回、書いたこと” “「俺の名はセイント、だが聖者でも何でもない」というフレーズではじまる、この「75セントのブルース」” “中年のわりとショボタレたジャズマン・セイントと、同居している少年トランペッター鷹彦の物語である。鷹彦にはアイドル・タレントとして売り出す話がまいこんで”(P121)初毒で読み流していたが、この設定は例のアレだ。個人的には脳内に古井戸「750円のブルース」が流れはじめ、別の匣を開けそうになる。いかんいかん
■情報求む:栗本薫が萩尾望都と繋がれなかったのは、JUNE(創刊時COMIC JUN)1978年10月号に「11月のギムナジウム」のヤオイ作品が載った件もあるのではと個人的には思っている。あの「日々への想い」を描いた折原はるかとは誰のペンネームなのかご存知の方いらっしゃいませんか?
“世田谷の『若草』だなんて、園長、シブイ店の名前出すんだもの、ちょっと見直したわ、わたし” “昔ふうの、けっこうどっしりしたケーキなの。スポンジを共立てしてるから” “考えようによっては野暮ったい味ね。だけどそこがいい、ってファンが”(P124)“レトロなバタークリームのケーキが多いのも特徴かな。砂糖の量も多め、その割にはリキュール類は控えめで、昔ふうにバニラ・エッセンスが香りづけの”(P125)俺の人選に間違いはなかった。山内練の秘書・環はさすが東京スイーツに詳しい。ついでにまさかのトリプルAネタが。
“東京中のフェイジョアーダの中でいちばん旨いと俺は思っている。だが面白いことに、つかっている豆がブラジルの小さな黒豆ではなく、日本の丹波産の黒豆なのだ”(P184)“ブラジルのお好み焼きという感じのトルタサウガーダ、名前は覚えられないがブラジルではポピュラーな食べ物だという、白身の魚の入ったコロッケ、ひき肉とトマトと野菜を煮込んでご飯にかける料理、シュハスコという牛肉の串焼き”(P185)ライブハウスオーナーの宣ちゃんは元刑事で元四課。組織犯罪に詳しい。ブラジルビールを飲みつつ、例えばなしで情報収集だ。
海外ホラー、ミステリ、SF主食の異形読み。
1999年「死ぬまでに10000冊の毒書」を宣言、
年間250冊を読みすすめるも途中7年の沈黙。
2012年、読メ登録とともに復活を果たす。
短編好き。アンソロジストに憧れを抱く。
紙本主義。装丁など本の佇まいにこだわる。
版ヅラやノンブル位置にキビシイ「組版警察」
密林のドイヒー画像が許せぬ「書影警察」
プラクティス好き「試走警察」
三一書房『サイコミステリーベスト100』を
2019年6月、30年がかりでコンプリート。
2020年11月「おあと6000冊」達成。
2023年3月プロフィール更新。
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“チーズとパテ入りのフランス・パンの弁当を持ってきていた。ワインのないのを残念がる気持ちは起きなかった。すっかり満足しきった今の気分を、これ以上増幅させる必要はない。怖いほどに生々しい、疼くような幸福感、若さと無縁になってからめったに感じなくなった、あの魂を突き動かされるような喜びが、血管を巡るのがわかった”(P57)ダルグリッシュはひとりジャガーを疾らせる。大聖堂を見学したあと思い立ち海へとハンドルを切る。丘陵の緑から海の青き広がりまで一大パノラマを望む解放感が伝わりくる。