“わたくしのコンパートメントに、ミネラルウォーターの瓶と、大きなグラスに注いだオレンジジュースを持ってきてくださらない? お夕食には、ソースなしのチキンと、それから茹でたお魚をお願いね”(P47)“エヴィアンもヴィシーも置いてないなんて、どう考えても変だわ”(P51)旅情たっぷりかと思いきや意外や意外、料理で読む場面もほぼなし。その分、毒者を事実と尋問に集中させる。ある意味とってもフェアなのだ。
■前半モノクロームな装画、中盤カラフル後半は通常運転■もらったコインの期限地獄に嵌りそうだったが電書限定本で解決■頻発する千葉県東方沖地震により崩落した夫婦岩2024年4月撮影。先月の画像=打ち寄せる波で穴が穿たれ始めた2022年9月頃と比較されたし■2024年4月の読書メーター 読んだ本の数:17冊 読んだページ数:5324ページ ナイス数:1531ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/200370/summary/monthly/2024/4
“ロイ・クレイグは火の上にかがみこみ、ぐつぐつ煮えている鹿肉のシチューをかきまぜながら、飛翔艇のなかにある電気コンロを使わせてくれればいいのに、と思いたくなる気持ちを迎えた。けれども、新参者たちは全員が赤い点をつけていて、野外で炎を熾したがった。もちろん、彼らが正しい”(マッケナ「狩人よ、故郷に帰れ」P11)クレイグの額にはグレート・ラッセル恐獣を倒した印がない。モーディン男子の成人テストを受けていない《半人前》扱いされ…疎外者&異形読みにどストライクな作品。ちなみにマッケナは『砲艦サンパブロ』の原作者。
“揃って食卓についた。ステーキははるばる南半球から運ばれたもの、マッシュルームは鯨座オミクロン星十四惑星からの輸入品、ほかに、サラダ、グリーン・ピース、焼きたてのパン、あんずのパイ、コーヒー”(ロバート・F・ヤング「妖精の棲む樹」P225)“これはどうですかな、最上の火星座バーボンです。エリュトラエ海の精選とうもろこしから蒸溜されたものですよ”(P228)世界樹伐採作業。途方もない大木を倒す工程が克明に描かれる。食事は村長が運んでくる特別料理だ。予想どおりの結末。苦いエピローグ。永遠に身勝手で愚かな人類。
“ミセス・パリエンテがホッとした顔で迎えてくれた。キャベツを使ったイタリア料理、インヴォルティーニ・ディ・ヴェルツァを作っているところだった。母の得意料理でもあったので、匂いを嗅いだだけでよだれが”(P144)“ひと口でいいから食べさせてくれない? そしたら元気が出るから” “わたしったら、ほんとに気が利かないわね。ソースの煮込み具合がまだ充分じゃないけど、ソースなしで食べてくれる?”(P146)食事抜きで駆け回る。マスクで食い意地を隠してはいるが、キャベツ煮込みの誘惑に屈服した。
“うちの社長が自分の古いニッサンを置いてった。新車のレクサスでニュー・メキシコ州へ1カ月のお出かけだってさ。ニッサンをこわすんじゃないよ。こわしたら修理代はそっち持ちだ”(P139)急いで移動しなくては。ムスタングの代わりに目立たない車貸してと頼むとソニアは渋々承知。さて他の方のレビュを勝手に検証。原書は見てないが、とりあえず「ニッサンのレクサス」という誤りは犯していない。オートパーツ店の社長でレクサス相応のニッサンならインフィニティか。サニーという可能性もあるな、北米ではセントラ。
“みんなで台所のテーブルを囲んで食事をした。ドンナ・イローナとわたしは食卓の祝祭気分を盛り上げようとがんばった。甘口ワインを飲み、オリーブとトマトを添えてオーブンで焼いた魚と、わたしが持参したホウレン草とレーズンのサラダを食べ、蜂蜜とアーモンドとベリー類を添えたマスカルポーネで食事を締めくくった”(P26)ロティの患者イローナ・パリエンテはローマ出身。ヴィクとはイタリア語でおしゃべりする。パリエンテ夫妻は自身の将来への不安に加え、シナゴーグの信者減少問題を抱えている。
“マックスのところの家政婦は料理の名人だ。オヒョウのローストのホウレン草添えとリグリア産の辛口白ワインで食事をするうちに、わたしの心も落ち着いてきて、マックスとロティの音楽の話題に耳を傾けたり”(P252)ついこの前まで、こうして同じテーブルにつくこと、隣人の手を握ったり肩を抱いて励ますこと、挨拶のキスも交わせない世界にいたのだ。ロティとマックスですら毎日喧嘩が絶えないほどだった。ワクチン接種が進んだこともあり、隣人同士の親交が戻りつつあるが…
あねさ~act3 毎年どれだけ積読を減らせるかが勝負😂さん、コメントありがとうございます。作品とその作家に惚れて読み直すのってステキですね。同じ作品なのに歳を重ねてから読むとまた印象が違うこともありますね。「日本の夏は、やっぱり怪談」イベントでお会いしましょう。
“ほどなく、そこが特別扱いの席であることを知った。料理が真っ先に運ばれてくるし、しかも極上のものばかり” “デリケートな味わいの食後のクリームチーズを食べるころになってようやく、ブークが料理以外のことを”(P44)“わたしにバルザックのごとき文才があればなあ! この場面を小説にできるのに”(P45)おや面白い。P・D・ジェイムズ『原罪』序盤の場面を思い出す。ダルグリッシュがアクロイド氏←名前!と倶楽部で食事。もしこれがフィクションで自分が小説家ならあの昼食場面を冒頭に置くだろうとダルグリッシュは思うのだ。
“わたくしのコンパートメントに、ミネラルウォーターの瓶と、大きなグラスに注いだオレンジジュースを持ってきてくださらない? お夕食には、ソースなしのチキンと、それから茹でたお魚をお願いね”(P47)“エヴィアンもヴィシーも置いてないなんて、どう考えても変だわ”(P51)旅情たっぷりかと思いきや意外や意外、料理で読む場面もほぼなし。その分、毒者を事実と尋問に集中させる。ある意味とってもフェアなのだ。
くだけすぎた新訳というのをあまり好まぬ自分にとって、桑原千恵子による旧訳の全体のトーンも、特に真相判明の辺りも好みなのだが、ごくたまに納得いかない箇所はある。例えばオーラス、廊下での場面、原書で“she passed two young people” の箇所。ディティシャム卿夫人の前を若い二人が通って行ったのではなく、夫人が若い二人の側を通りすぎた、だろう。
以下暴言。ブレイク兄弟が本当に愛していたのはどちらもエイミアスでは。兄は夫人への敬意と思慕を口にしたり手記にも書いていたが、実は結審後のどさくさにエルサに求婚していた。薄らトンカチどころか抜け目がない(でも一蹴されて当然と思わなかった点は十分に薄らトンカチ)。弟が俺の親友を殺しやがってと夫人への憎悪を顕にしてたのは裏返しの愛だったとされるが、実はもう一回裏返して、弟の愛はずっと夫人にではなくエイミアスに向いていたのでは?
“アンジェラは、最後の悪口をわめきたてながら、寝床に駆けだして行きました。第一にアミアスをこらしめてやるといい、第二に死んじゃったらいいのに、第三に不治の病で死んだらいいきみだ、第四に物語に出てくるようにソーセージが鼻にくっついて離れなければいいのに” “次の朝、食堂に遅くおりていくと、誰の姿も” “そのとき食べたベーコンとキドニーの味が忘れられないほどうまかった”(P264)フィリップ・ブレイクの手記。新訳も〈不治の病〉だが原書では〈leprosy〉。宿題の一つ、モーム『月と六ペンス』に関わる箇所。
“ジンやベルモットやレモネードやジンジャー・ビールなどが並べてあり、そのほか小さな冷蔵庫があって、毎朝氷をつめて、その中にビールやジンジャー・ビールをいつも入れて” “アミアスのところに持っていくのだから、ビールを一本ちょうだい”(P326)五人の話と手記に微妙な食い違いがあり読み飛ばし禁物。バーに改造された此処はもともとヴィクトリア時代に建てられた a little conservatory(原書)。野菜貯蔵所(旧訳)か温室(新訳)かでいえば後者だろう。そういえば友人宅にあり、中でニャンずが暮らして居る
“もし腎臓のカソレットがお嫌いなら、牛肉か小海老と香草入りのオムレツに変えることも” “カソレット、きっとお口に合いますよ”(P40)“小さな蒸しじゃがいも、そらまめ、キノコです。それにもちろん、アルマニャック・ソースです。このソースは、主人が9年前に初めて成功し、以後ずっとお出ししているものなんです。他のレストランでは絶対に” “はずんだ気持ちになり、同時に感激した。少なくとも自分の職業を愛している人間がここに”(P41)本日は水曜日。レストラン《オ・トロワ・クトー》に、探偵シャンフィエが初入店。
“生牡蠣の皿をさっさとたいらげた。彼の前には薄く切られたソルト・バターが塗られている黒パンが何枚か置いてある。すでにミュスカデの小瓶はほとんど空に”(P79)“狩人風ウサギ料理を味わっていた。キノコとパセリとを一緒にこんがり焼いてある小さなじゃがいもがついている。ソースが素晴らしかった。口当たりが良く、とても香ばしい味。口の中に、何か神々しいものがしっかり根づいたような感じだと思っていただきたい”(P82)初入店した翌日。木曜限定の特選料理ラパン・シャスールを味わうことに。
“いつもの夕食時間はとっくに過ぎていたので、ふたりとも腹ぺこだった。それで、最初に見つけたレストランに飛びこみ、おいしいオムレツとリブステーキに舌鼓を打った。食事のあとブラック・コーヒーを飲みながら、ポアロは” “さて、次は宿だ。オテル・デ・バンに行ってみようか” “かしこまりました、ムシュー、海の見える素敵なお部屋をご用意いたします”(P337)本作には料理で読むチャンスがほぼない。具体的なメニューは終盤のこの場面にしか登場しないが、前後が極めて重要な流れ・・・
“ぼくが辛かったのはね、ヘイスティングズの声をやっていた富山敬君が、45本終わったところで亡くなっちゃったこと”(P371)解説(談)はドラマでデヴィッド・スーシェの吹き替えをした熊倉一雄。クリスティー文庫には時折ハラたつような解説がつくものだが、こういう解説なら大歓迎。富山敬といえばヤン・ウェンリーでもある。
“ベーコンエッグとトーストとコーヒーの何とも言えず香ばしい匂い” “配給制は事実上終わっていた”(P239)“5シリングと3ペンスの上等の野兎。どうだい一羽” “土鍋で煮ればいいわ” “二人の間の中空には、コトコトと肉汁のなかで煮えるスコットランドの野兎の肉団子と、それに添えた酸塊のゼリーの白い壺”(P241)“規制されてた棗椰子の実は手に入れたのか?” “なんとか昨日2ポンド分”(P242)配給切符ナシで何が手に入るか。子どもそっちのけの若い夫妻…ゴーリーの絵で読むK・マンスフィールド「郊外の妖精物語」
“いまは体も乾き、きりきりするような空腹も、薄く切ったハムの燻製、落とし卵、蒸したじゃが芋でいっぱいになった。あかあかと燃える火を囲んで座り、ウィスキー・トディを飲んでいる。集まりに花を添える二人のご婦人は、タンブラーではなくワイングラスに同じ飲み物をつぎ、控えめにお相伴を”(リデル夫人「宿無しサンディ」P250)スコットランド。雨に降られた十人が、山あいの牧師館でひと夜を過ごす。牧師が正真正銘の実話を…ウィスキー・トディ。砂糖など甘味を加えたウィスキーを水またはお湯で割る。レモンスライスやスパイス入りも
海外ホラー、ミステリ、SF主食の異形読み。
1999年「死ぬまでに10000冊の毒書」を宣言、
年間250冊を読みすすめるも途中7年の沈黙。
2012年、読メ登録とともに復活を果たす。
短編好き。アンソロジストに憧れを抱く。
紙本主義。装丁など本の佇まいにこだわる。
版ヅラやノンブル位置にキビシイ「組版警察」
密林のドイヒー画像が許せぬ「書影警察」
プラクティス好き「試走警察」
三一書房『サイコミステリーベスト100』を
2019年6月、30年がかりでコンプリート。
2020年11月「おあと6000冊」達成。
2023年3月プロフィール更新。
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“ほどなく、そこが特別扱いの席であることを知った。料理が真っ先に運ばれてくるし、しかも極上のものばかり” “デリケートな味わいの食後のクリームチーズを食べるころになってようやく、ブークが料理以外のことを”(P44)“わたしにバルザックのごとき文才があればなあ! この場面を小説にできるのに”(P45)おや面白い。P・D・ジェイムズ『原罪』序盤の場面を思い出す。ダルグリッシュがアクロイド氏←名前!と倶楽部で食事。もしこれがフィクションで自分が小説家ならあの昼食場面を冒頭に置くだろうとダルグリッシュは思うのだ。