読書メーター KADOKAWA Group

2023年9月の読書メーターまとめ

かふ
読んだ本
28
読んだページ
7378ページ
感想・レビュー
28
ナイス
820ナイス

2023年9月に読んだ本
28

2023年9月のお気に入り登録
3

  • うたかた
  • Roco
  • 炭酸

2023年9月のお気に入られ登録
3

  • うたかた
  • Roco
  • 炭酸

2023年9月にナイスが最も多かった感想・レビュー

かふ
帰りの電車での読書はこの本を一気読み。イギリスの家庭を省みない(といより相手にされなくなった)男たちの憩いの場がパブ文化という共同体で、それは男たちがサッカーを見て応援したり家庭の愚痴をこぼしながら若い時の夢をとりもどそうとする連帯の場でもある。それは昨今の右傾化ということもあろうが、イギリス人の中にあるパンク(ロック)魂みたいなもの。自分のケツは自分で捲くるというような。生き過ぎると自己責任論になりかねないのだが自分の道は自分で決めるという男たちの様子がエッセイだけど物語のように語られる。
かふ
2023/09/11 01:37

彼女と仲直りするために「平和」と入れ墨を掘るはずが「中和」になってしまったおっさんラブな方向性は、日本の演歌で無理やりカラオケで女の子とデュエットするオヤジではないんだろうなということは感じられた。UKロックのノスタルジーさを引きずりながら太陽は傾いていく。

が「ナイス!」と言っています。

2023年9月にナイスが最も多かったつぶやき

かふ

後半この暑さでバテたがまあまあか。一日一冊を目標として出来るのは無職だから。読書のために人生はあるというような生活。2023年8月の読書メーター 読んだ本の数:31冊 読んだページ数:8375ページ ナイス数:793ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/56191/summary/monthly/2023/8

が「ナイス!」と言っています。

2023年9月の感想・レビュー一覧
28

かふ
ヌーボ・ロマンのような女性の語り手の意識の流れというようなモノローグ小説。三部に分かれていて、第一部(一章)はある巫女を訪ねる男女の旅でそこで記憶喪失の女性が「ウル」だという名を知る。「ウル」はいろんな意味が込められており、例えばソウルのウルでもウルフのウルでも読み手のイメージに委ねられる。なんとなくヴァージニア・ウルフを連想した。倉橋由美子『暗い旅』とか二人称小説があったが、そんな感じにも読める。二章はもう現代詩のような文体で理解するのは難解だ。カフカの晩年の短編『断食芸人』の劇をやるような記述がある。
かふ
2023/09/29 13:49

一章が男との旅なのだが、結婚式に招待されて、その後に男が動物園のコヨーテ小屋で死んだという。それの舞台化だろうか?三章になって、ジョナス・メカスの『リトアニアへの旅』のビデオを見て感動して手紙を出したことが語られる。それは「美とは何か?」という唐突の質問だったが、メカスが絵葉書で返事をしてくれて「美は後悔することだ」と書いてあり、それに刺激されて根源を求める旅をしているのだとわかる。遠きにある「ウル」とはその根源性のことだと思う。その原初の名前を求めてのモノローグ的旅日記のような物語。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
石牟礼道子『完本 春の城』があまりにも長いので箸休め的に芥川のキリシタン物。芥川では箸休めにもならんが。キリシタンの女が子供が危篤状態なので日本の医者に何とか救ってくれとそのためには「転び」ますからとキリストの十字架を踏み絵したが娘は助からなかった。それでせっかく転んだのになんということかとまたキリシタンに戻ってしまったという医者の告発なんだが、面白いエピソードだと思う。母の子供を思う気持ちはキリスト教も医学も関係なく、ただ戻ってしまったということはキリストに救われたいと思ったのか?今更という感じだが。
かふ
2023/09/29 04:46

死んだ娘が生き返ったというのが謎だった。神はこの女の信仰を考えてのことではあるまい。この不信心者に神の力を示したかっただけなのか?医者に対する当てつけか?堂々巡りしてしまうが、芥川がこれを書いたのが一番の謎だった。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
著者の鈴木健一氏は鈴木宏子氏の夫だった。『「古今和歌集」の創造力』と内容が重なる部分もあるのだが、和歌だけではなく、漢詩や俳句についても論じている。詩歌全般ということなのだが、漢詩が入ってくると混乱するな。まあ和歌は漢詩の影響を受けているということだけ分かればいいのかもしれない。そして和歌から俳句の影響へと。西行から芭蕉の影響とか上げている。第二部は解釈の違いについて。それぞれの時代による解釈もあるが、重鎮による解釈の違いもある。「閑さや岩にしみ入る蝉の声」は油蝉かミンミン蟬かというような。そういう論戦も
かふ
2023/09/27 15:59

油蝉と主張した斎藤茂吉は後でミンミン蟬でしたと訂正するのだが、そんなことに熱くなるのかと感心した。法師蟬のような気がするけど。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
女子高生小説に流行りのLGBTとかSNSがテーマとして絡んできていい具合に現代社会の小説になりましたと言う感じでオジサン・オバサン世代から大絶賛の新人賞作品かなと思った。女子高生の通過儀礼的な試練が描かれているのかな。すべての言葉がマニュアルで出来てできるだけ他人を傷つけないように距離を取って生きているけど社会人のお姉さんからはしっぺ返しされるし、友人はいいやつみたいな。今どきの女子高生の小説なのかなと思ったけどそれ以上でも以下でもなかった。青春を過ぎた年頃には眩しく映るわけで。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
工藤庸子の文学講義。『ドン・キホーテ』から始まるのが嬉しい。全体的にモダンな作品を扱いながらポスト・モダンな読みかな。フローベルのキッチュな『純な心』とか。カフカ『断食芸人』は作品とカフカ自身を重ねて涙が出そうになる。そして『失われた時を求めて』も。フェミニズム関係では『ジェイン・エア』をヴァージニア・ウルフにつなげて解釈する。「開かれた文学」なのだ。一つの作品がそこで閉じるのではなく次の読書に繋がる。そんな文学の楽しみ。最後のカルヴィーノは引用が出来なかったが、カルヴィーノの初期はリアリズム文学なのだ。
かふ
2023/09/26 05:38

厳密に言うとネオ・リアリズムとなるのだが、ペローやグリムの童話を紹介しているように、そういう童話や寓話に入り込んでしまう少年時や青年時の話。ペローやグリムの童話が子供のためにあるのではなく、リアルな残虐性を帯びているのはその社会を描いているから(ペローの「あかずきんちゃん」は狼に喰われておしまい、そのあと説教のような教訓になると言う)。だから原作は今でもけっこう読める(現実世界を感じることが出来る寓話なのだ)。過去の文学が古びない今でも読まれ続ける理由だ。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
カフカの日記や手紙のエピソードから興味深いものを取り上げ作者が解説を加えたもの。まあカフカ好きにはたまらない本だとは思うが、カフカの日記や手紙は正直素晴らしいので全集で買うのは大変なのでこういうまとめ本は便利である。カフカが生きた時代背景も描かれているので。娼婦についてとか、父との関係とか、恋人のこととか。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
俳句が世界文学として詠まれているのは、ロシアのウクライナ侵攻でETVで両国の俳句を読んでいたが、その中に出てきたウクライナの俳人だった。戦時中に短い言葉でこれだけ表現できるのは凄いと思った。アニメとかそうだけど、こういう文化が世界に広がっていくことは喜ばしい。「地下壕に紙飛行機や子らの春」「地下壕に開く日本の句集かな」「いくたびも腕なき袖に触るる兵」「街の灯の消えハルキウの星月夜」多くの人の目に触れるといいと思う。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
架空のオーストラリア出身の女性作家エリザベス・コステロという人物を設定して、文学賞受賞スピーチや講演、クリスチャンの姉との対話など、文学論的メタフィクション。大江健三郎の晩年の仕事につながるところがある。ジョイス『ユリシーズ』の妻を描いた小説で注目を浴びるというのがメタ小説だった。サイードのオリエンタリズムやフェミニズムに言及したり、最初が「リアリズム」というフィクションを描いている。その後に植民地文学、神について、悪について、エロスについてと文学的問いに正面から挑むのだが、最後はカフカの掟の門前だった。
かふ
2023/09/23 22:52

その後にホーフマンスタール『チャンドス卿の手紙』のパロディの妻の手紙があるのだった。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
『神戸・続神戸』は戦時から戦後の混乱期の港街の様子が面白く描かれている。アウトサイダーの外国人と娼婦たちと西東三鬼は新興俳句事件で逃げてきた男。川名大の俳句史では白泉らを騙した悪い男になっているが、そのぐらいに強かさがある連中が闊歩するホテル暮らしなんだろう。成瀬巳喜男『浮雲』の自堕落さのような。『俳禺伝』の方はその新興俳句事件までの経緯が述べられていてこっちの方も興味深い。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
かつて「旗艦」という新興俳句雑誌があった。戦時に官憲に睨まれて終刊になった。その中に片山桃史や藤木清子の表には出ない俳句の数々があったのだ。いわば戦時の沈没船を「サルベージ」するという編集を宇多喜代子はやったのである。それは藤木清子という戦時を生きた寡婦が詠んだ俳句である。戦時の女性俳句は戦意高揚句以外はあまり知られていない。それも女一人で戦時を俳句と共に生きた俳人の証言として貴重である。彼女は再婚するにあたって俳句を捨てるように言われたという。それから消息不明。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
大江健三郎からの興味だったのが、それほど興味を惹かなくなった。サイードの幼少期からの回想インタビューでサイード入門にぴったりかもしれない。アラブ人だけどキリスト教徒で自身の中に矛盾した出自を持っていた。一つはイギリス式教育で父からの厳しさに反発しながが、母の芸術性(音楽)的趣味を受け継ぐ。ワーグナー好みとか、人と作品は別というような思想だが、そこはなんか違うと思ってしまった。サイードも自身の中に二面性があり、その分裂した思考が『オリエンタリズム』を書かせたのだろう。パレスチナのアラファトに対する不信感。
かふ
2023/09/20 06:13

むしろイスラエルが出ていったあとにより強固な支配が始まったと言う。今のパレスチナのどうしよもなさはアラファトが招いたというような。実際にその場にいないのでこのへんの歴史はよくわからない。サイードもパレスチナは諦めてアメリカに棲んでいる。祖国追放者というより祖国放棄者と言っていた。国家に重きを置かない根無し草(アナーキスト)なのかもしれない。自身はアメリカの市民権を得ているが母親がないために病弱なのに追い出されようとした体験が国家に対する不信感なのかな。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
室生犀星は男根主義者だと思うがそういうのを気にしなければ詩作の技術や象徴詩のアンソロジーのようで読み応えがある。犀星の根本にはニーチェの超人思想があるような気がする。つまり詩人は特別なのだと。そうい特別な詩人が住まう世界を喪失してしまった。ロシア革命により多くの亡命詩人が紹介されているがそういうことだと思う。フランス象徴派の興味も、象徴=すでに失われた世界を現す言葉の幻影なのだ。そのために日々努力せよと。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
小説を書き始めて基礎知識的な本を探していたから図書館で借りた本。公募ガイドの創作教室という内容で、市民講座なんかのカリキュラムと同じことをやっているのかもしれない。そういう創作教室出身の作家が多くなることで、またそういう本が読まれる。例えばここでは大江健三郎の小説のようなものは勧めない。芥川賞を取った市川沙央がラノベを書いていたということで、最近のラノベのレベルも凄いかもと思って読んだのだがそういうことだった。次々に量産されるラノベ小説の書き方というような本かもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
ドン・キホーテの騎士道物語は叙事詩であり、それを批評するサンチョ・パンサというメタ・フィクションになっている。セルバンテスから影響を受けた現代作家ナボコフや大江健三郎にその喜劇的諧謔性は受け継がれていた。ナボコフは『ドン・キホーテ』をテニスの試合に例えていたがラスト近くにテニスの喩えが出てきたのには驚いた。また思い姫のヒロイン(名前は覚えられなかったが)がイメージとしてドン・キホーテの主人となるのはキリスト教的な説話のようだ。それを異教徒の書いた物語の翻訳としているところが入れ子構造になっている。
かふ
2023/09/16 17:49

敗者となったドン・キホーテが牧歌的なイメージをサンチョに語るところなんてドン・キホーテの詩人らしさを現している。いまさら騎士道でもないだろうと批評していたサンチョ・パンサもそのイメージの虜になってしまうのだ。そして帰還してドン・キホーテは詩の中にしか居らず、本名のアロンソ・キハーノに戻る(狂気からの帰還)。それはすでに一人の詩人の臨終でしかなく、大いに胸に込み上げてくるものがあった。批評家であったサンチョ・パンサもドン・キホーテの遍歴の従者だったことに気がつくのだ。そして読者も。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
石牟礼道子の足跡を辿りなが、家という制度から水俣、さらにもだえ神の精神と解説していく。石牟礼道子というと水俣という事件ばかり思い出されるが人と自然の繋がりにおいて人間が生を営んできた思想の中に古代から伝わる自然神がある。それは獣や虫たちも人と変わらない生を営んできたという水俣の海の姿。チッソを懲らしめるというのではなく、チッソと共に悶えていくという、それは日本人の生活が物質主義によって、失われた世界を想起させるものだ。水俣が天草の乱や東日本大震災と繋がりを持ってその中に生きる人々を晒す。
かふ
2023/09/16 06:20

「毒死列島身悶えつつ野辺の花」という一句は福島の汚染水を詠んだような句でドキリとさせられる。そういうところが巫女的なのかなと。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
映画『コロニアの子供たち』で描かれているコロニア・ディグニダという新興宗教の教祖がドイツから逃れてきたナチスの残党で、チリのピノチェト政権下の独裁の中で隠されてきた事件が『ウィリー・シュホルツ』だと知って再読。ボラーニョはまったくの虚構を描いたわけではなく、そういう事件があったのをフィクションとして描いていた。それは文化に影響されるというような。例えば日本ではオウム真理教事件のように。ジャニーズもそうかな?
が「ナイス!」と言っています。
かふ
詩のエッセイ。入沢康夫が松江出身で、出雲大社や神話のこと、さらにラフカディオ・ハーンの思い出とした回想風のエッセイから現代詩についてのエッセイや現代詩人たちの去就や仕事などを述べた章。最後はまとまったネルヴァルについて詳しい解説があった。この人はフランス象徴詩が専門なのだろうか?ちょっとつかみ難い詩人だった。現代詩について杞憂するところは共感できるというか、なかなか現代詩も大変そうだ(ほとんど読まないし、興味ない人が多いと思う)。ナルシスの話が良かった。エコーについては知らなかった。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
3.11のカタストロフィからどう生きればいいかを模索した作品か。大江健三郎のそれまでの小説が死者たちとの対話で成り立っていたのだが、生者である女三人からの批評を受けて改編を余儀なくされる。それは障害のある息子が自殺をほのめかす発言をしたことから、女たちアサ(妹)と千樫(妻)と真木(娘)から古義人(作中の私)は批評される。それは『ドン・キホーテ』のサンチョ・パンサのような役割。大江健三郎は世界文学として詩に多く親しんできたのだが、それは彼岸(西洋だとダンテ『神曲』とか)の世界であり、
かふ
2023/09/14 02:44

終章で示される詩「私は生き直すことができない。しかし私らは生き直すことができる」という「私」は作者なのだが、「私ら」はその後続者であり、ラストの詩が著者からの遺言めくのだが、もともと大江健三郎は詩を書きたかったのかと思う。しかし、散文的世界(小説や批評)に現実があるわけで、その対峙する世界として小説を描き続けた。それが死に憧れる作家の生きる道で、妹アサが古義人が自死しようとするのを助け出す話が暗示しているように、そうした女性の生き直す力が強く出てくる作品。女子供は従者の立場だったのが逆転していく。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
もともと和歌に「たをめやぶり(手弱女)」という『古今集』以来ののジェンダーがあり、そこからどう短歌を外部へと伝えていくということだと思うが、短歌が内輪になりやすいのは和歌の伝統芸にあり、それを他者に伝えていくには石牟礼道子「もだえ神」にあるのではないかと思った。「たをめやぶり(手弱女)」から「もだえ神」へ。そのあたりが難しいと思うのだが、下手すると自慰としか見られない場合もあるわけで。https://note.com/aoyadokari/n/n3ce56fa146da
が「ナイス!」と言っています。
かふ
帰りの電車での読書はこの本を一気読み。イギリスの家庭を省みない(といより相手にされなくなった)男たちの憩いの場がパブ文化という共同体で、それは男たちがサッカーを見て応援したり家庭の愚痴をこぼしながら若い時の夢をとりもどそうとする連帯の場でもある。それは昨今の右傾化ということもあろうが、イギリス人の中にあるパンク(ロック)魂みたいなもの。自分のケツは自分で捲くるというような。生き過ぎると自己責任論になりかねないのだが自分の道は自分で決めるという男たちの様子がエッセイだけど物語のように語られる。
かふ
2023/09/11 01:37

彼女と仲直りするために「平和」と入れ墨を掘るはずが「中和」になってしまったおっさんラブな方向性は、日本の演歌で無理やりカラオケで女の子とデュエットするオヤジではないんだろうなということは感じられた。UKロックのノスタルジーさを引きずりながら太陽は傾いていく。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
青春18きっぷが2日余ったので、行く場所は決めないでただ電車の中で読書するという目的のお供に『ドン・キホーテ』を持っての読書の旅は、ドン・キホーテの遍歴とローカル線の相性の良さ(新幹線ではドン・キホーテの遍歴にはなるまい)に笑って泣いてというようなストーリーテーリングの面白さ。この巻はドン・キホーテが騙される回であり悲惨この上ないのは、ドレの傷ついたドン・キホーテの姿として描かれている。それに比例してサンチョ・パンサはますます饒舌になり読者を翻弄していく。この巻はサンチョ・パンサの方が主役になっていた。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
新興俳句を中心にみた現代俳句史。個人ではなくグループやその時代に流行した俳人を並べているので俳句史として理解しやすい。現代俳句協会の分裂とか中にいる人はなかなか書けないだろうそういうトッピクもある。何より女性俳人についてこれほど述べた本はないのではないのか?戦時の女性俳人として、藤木清子に出会えたのは良かった。「戦争と女はべつでありたくなし」「戦死者の寡婦にあらざるはさびし」
が「ナイス!」と言っています。
かふ
新興俳句の興味からその後継ということで読んでみようと思った。西東三鬼や渡辺白泉を追悼する句が良かった。池田澄子もその後継なのか?『まぼろしの鱶』が魚、『眞神』が獣、で次は鳥にしようと思った時に二人の師匠の句に「鷓鴣」があり、それを表題にしたのだという。「鷓鴣を締むおそるる眼かたく閉づ 西東三鬼」「塵の室暮れて再び鷓鴣を想ふ 渡辺白泉」「鷓鴣は逝き家の中まで石河原 三橋敏雄」が良かった。西東三鬼と渡辺白泉はいろいろあったようだが、その二人を師として敬う。「日にいちど入る日は沈み信天翁 三橋敏雄」
が「ナイス!」と言っています。
かふ
十二支にまつわる怪異譚。ショートショートでどんどん読めるけど飽きてくる部分はあると思う。自分の干支とツマミ読み。蛇の章がおどろおどろしい情念の世界のような。犬、猿があって、猫がないのが寂しい。親父が馬になってそれが餌によってもとに戻ったとか「杜子春」みたいな話があった。ウサギが何も持ってこれないので最後に火の中に飛び込んで食べてくださいという話。それが月に映るウサギだとか。面白かった。
が「ナイス!」と言っています。
かふ
植物と文学のエッセイ。植物の描写が上手い作家を取り上げながらその描写が植物学者から見ても正確なことが伺われる。中には植物園の植物を描写したために自然界のそれとは違っていた例なども(安部公房『デンドロカカリヤ』)。特に漱石『それから』の白百合の分析は見事過ぎる。また『それから』が読みたくなった。小説は面倒なので映画を観ます(予告篇は確かにテッポウユリだったな)。https://note.com/aoyadokari/n/n54dc2549de71
が「ナイス!」と言っています。
かふ
大杉栄一家惨殺事件と満州国の立役者としての甘粕のイメージは別のように描く伝記文学。著者のあとがきで現代では甘粕のような人は否定されるが、そこに浪漫を見出している。例えば法治国歌のなかで行われた軍部主導の裁判の中で「国士」として大衆が請願請求を集めたことに、それ以後の軍国主義化の流れを感じてしまう。大杉事件と満州国建設の浪漫は別の話ではないのだ。その間にフランスでの引きこもり時代の甘粕がいた。甘粕を文学的に英雄と描く浪漫ならばそれでいいかもしれない。ただノンフィクションでは問題がある。
かふ
2023/09/04 05:12

例えば甘粕が妻を表に出さずいたのは家父長制の悪しき姿であると思う。一方大杉の妻野枝はどうだろうか?そこに大杉一家を惨殺せざる得ない甘粕の本性が見えてくるような気がする。アメリカ国籍の甥も二重国籍という甘粕には許されない存在のである。この事件がアメリカの圧力によって明らかにされたという過程は、今に繋がることかもしれない。隠蔽国家であり法治国家とは言えない姿がそこにあったのだ。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
大江健三郎の「晩年の仕事」、『取り替え子』から最後の小説『晩年様式集』まで、大江健三郎がそれまでの文学をリリーディング(読み直すこと、バルトの概念。)することによって自身の作品をリライト(再話)していく方法をたどりながら大江文学を解読していく。最初にあるのが『ドン・キホーテ』のパロディの手法。そして詩を書きたかったという大江が英詩を読み解きながら、自身の物語に織り込んでいく手法など世界文学として開かれた読みを誘う。それはサイードの現代思想の対話から辺境にあるコロニアム性というものからの脱却していく私という
かふ
2023/09/03 12:03

ポストコロニアムの方法論は日本の私小説的な文学から脱却して世界文学へと接続していくのだと思う。

が「ナイス!」と言っています。
かふ
戦時中、中国で中国文化研究会の名目で働いていたがそれは日本の占領政策の一環だった。その下で働く漢奸のように敗戦後に逆転していく中国との関係(上海時代)。それは例えば蜜江が生活のためにデパートで万引きをしたり、売春をしていかなければ生きていけない現実だった。モデル小説として武田百合子や竹内好が描かれているが他にもいるようだが、よくわからない。三島由紀夫が蜜江の描き方を褒めた(売春婦をして右翼の連中に絡まれるが魯迅の詩を寄せ書きに一気に書いた)というが、大江健三郎が当時読んで衝撃を受けたという。自己批評の書。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2010/03/16(5207日経過)
記録初日
2010/03/24(5199日経過)
読んだ本
2354冊(1日平均0.45冊)
読んだページ
575391ページ(1日平均110ページ)
感想・レビュー
2232件(投稿率94.8%)
本棚
25棚
性別
現住所
神奈川県
自己紹介

note https://note.com/aoyadokari

参加コミュニティ1

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう