ネタバレ職場の後輩に元ミス大津（美人でした）がいて、彼女も膳所高出身だったことを思い出したり、大学受験のエピソードでは我が子のように心配したり、没入し心震える？楽しい読書時間でした。「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」「地域に貢献したいとか、人の役に立ちたいとは思っている」膳所から確実に広がっていく成瀬の世界。これからも成瀬から目が離せない！！

ネタバレ「元彼の遺言状」の著者のエッセイ。前作に続き興味深く読む。夫の仕事の関係で一年滞在した英国を拠点にヨーロッパを満喫。愛読書の聖地巡礼、パリオペラ座で「サロメ」を鑑賞（衝撃の演出）。奔走するバッグ、時計への偏愛。アメリカで撮影した著者近影の供養（？）生きづらさの理由。分析、挑戦の小説修行。あらゆる方面に疾走する文章が未知の世界へ連れて行ってくれるから好きなんです。小説も読まねば、と思います。

ネタバレ「男にとって行動は第二の価値　ことばは第三の価値」「そして第一の価値は生きる姿勢さ」（「アリエスの乙女たち」1973）このセリフ、今もおぼえています。凛とした美しいヒロインとはまさに里中満智子先生のこと。歩んでこられた道は、そのまま日本漫画の歴史、良質な漫画を描き続けてくれたから世界に誇る漫画文化の今がある。語り口調で綴られていて読みやすく、懐かしい漫画も載っているとても嬉しい本でした。

ネタバレ1981年、親に短大の入学金を使い込まれた十八歳の理佐は八歳の妹、律を連れて家を出て、そば屋に就職する。仕事内容は他に鳥（喋るヨウムのネネ）の世話じゃっかん。様々な出会いが綴られる四十年を大切に読んだ。「恵まれた人生だと思った。」「自分はおそらく姉やあの人たちや、これまでに出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている。」序盤の古典的英米児童文学のような趣、姉妹のコミュニティが広がっていく過程、本、映画、絵画、音楽への思い、イラストも大変魅力的で、良い友人のような本とめぐり逢えて嬉しいです。

ネタバレ「世話の必要なものたちをわざわざ集めて、浮世の義理みたいなものを人工的につくりあげて、情で自分をがんじがらめにして、必死で世話しているのはなぜか。自分が、この浮世にどうにかこうにかひっかかって、生き抜くためなんではないか」6歳の雄のジャーマン・シェパードと猫二匹、そこに雌の野犬チトーが加わって‥‥あとは野となれ山となれ。2020年から3年の記録。野犬と暮らす大変さ（慣れない！）はある意味壮絶、だからこその根源的な生き物の温もり、匂いが愛おしく伝わってきて、心酔する伊藤さんの文章にいつもながら酩酊する私。

ネタバレ久しぶりの久坂部洋先生。「健康で長生きしたい」という欲望が「おびえ」を生み出す。必要以上の検診に走らないように。医療は新興宗教ではないのだから。誰もが「どうせ死ぬ」のだけど、ネガティブにとらえずある意味無頓着にその日まで生きていきたいものだ、と先生の本を読むといつも思います。

ネタバレ久しぶりにメリケンパークに行った帰りに書店で目が合いジャケ買い（？）。「書いてどうなるのか」「ロック漫筆家」によるガイドブックに載らないマニアックな神戸案内108のエッセイ。知らなかったことがたくさん、懐かしく思い出した点在していた映画館、これから行きたい喫茶店、古書店、銭湯など。村上春樹が高校まで過ごした神戸の空気を味わえる本だと思います。

ネタバレ職場の後輩に元ミス大津（美人でした）がいて、彼女も膳所高出身だったことを思い出したり、大学受験のエピソードでは我が子のように心配したり、没入し心震える？楽しい読書時間でした。「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」「地域に貢献したいとか、人の役に立ちたいとは思っている」膳所から確実に広がっていく成瀬の世界。これからも成瀬から目が離せない！！

ネタバレAP通信社の記者となったジョーは、上院議員の記事により名誉毀損で訴えられる。自閉症の弟ジェレミーの後見人になったものの、司法試験を控えた同居する恋人ライラへの負担を心苦しく思いながら、実父かもしれない男の不審死を知り、現地へ赴く。あちこちから投げられたボールを打ち返すような展開、味方と思っていた人物が実は‥‥その逆もあり、読みも推理も見事に玉砕、ヘトヘトになりましたが、面白かったし（許して）、何よりジョーのことを嫌いにならずに済んで良かった。

ネタバレいとこと結婚した41歳の志津はスーパーの若いアルバイト店員早見を気に入り、幼稚園児の息子晴一を実家に預け、その店でパートとして働くことにする。夫和仁には愛人がいるらしい。反対されながらもいとことの結婚に拘った理由が徐々に明らかになり、何故そんな風に考える？共感できない（私なら脱出する）彼女の心の中の世界に閉じ込められ息苦しくなりながら読了。ぶち壊すぎりぎりのところで踏みとどまりながらも、夕陽に向かって息子と手をつなぎ歩く結末は連鎖を予感させて巧み、テーマはともかく、読ませる、上手い作家なのだろうと思った。

ネタバレ明治35年（1902）1月、陸軍第八師団第五連隊199名の犠牲者が出た八甲田雪中行軍遭難事件。世界登山史上最大級の悲劇に歴史雑誌編集者の菅原が疑問を持つ。雪中行軍は日露戦争に備えた人体実験だった？消えたひとりの兵士の真相は？事件時と現在、時をかける構成、菅原は離婚寸前で編集長と関係を持ち、などと他の人物造形も巧みで八甲田山に囚われたかのようにぐいぐい読ませる。そして。「人生という『囚われの山』からは決して逃れられないのか」ちょっと吃驚、なかなかシビアで味わい深い結末。私のような「八甲田山」初心者にお勧め。

ネタバレ朝日新聞三代目社主村山美知子（1920〜2020）は、大阪国際フェスティバル協会専務理事としてカラヤン、ストラヴィンスキー、小澤征爾、佐渡裕など超一流の音楽家を招聘し全幅の信頼を寄せられた。創業家の矜持、経営陣との確執、お家騒動などを大阪社会部記者から秘書役となった作者が「御影の令嬢」の生涯を綴る。こんな事実があったとは！朝日新聞購読者なのに社主のことをあまりにも知らなかったことに呆然、読んで良かった。香雪美術館やフェスティバルホールへの思いが変わりました。

ネタバレ七十篇の自選随筆集（底本は1973年刊）。松竹歌劇団員を取材した密やかなファン目線が微笑ましい「ラインダンスの娘たち」、昭和34年当時のTVディレクターの仕事ぶりを追った「三人のディレクター」、食べるのがやっとの時に妻が買った思い出のレコード「マリアン・アンダーソン」、そしてこれぞ庄野潤三文学の真髄「庭の山の木」。温かく柔らかな視点、ゆるぎない文学観から生まれる美しい文章で綴られた随筆たち。氏の「せきれい」など一家の年代記的作品を愛読していた私には、大好きな長女夏子さんの文章もあり至福の読書時間でした。