ガザやウクライナで戦闘(侵略虐殺)が続くなか、パリでは平和の祭典。日本は悪夢のような高温続きの毎日で電気料金の心配をしながらもエアコンはフル稼動。日焼け止めと日傘でも薄っすら日焼けで憂鬱。頭が沸いて本を読んでもいまいち入って来ない。かき氷を食べるため猛暑の八坂神社横の坂道を上るのは本末転倒だけど、今年も長楽館の白桃🍑かき氷は外せない。紅茶ミルク、紫蘇の花、ミント…複雑な味わい、美味しい https://s.tabelog.com/kyoto/A2601/A260301/26006416/
パリオリンピックの柔道男女混合団体戦決勝には色々思うところがあるけれど、旧植民地出身の黒人選手ばかりで、最近読んだ『夜、すべての血は黒い』と同様、フランスを背負わされ最前線で戦っている。かつては戦争、今は名ばかりの平和の祭典という違いがあるけれど、勝利であっても痛烈な批判であっても、誰かの思惑のために、彼らは代替え可能な存在として矢面に立っているようで、そんな世界の仕組みにはうんざり
衒学趣味が溢れ、わくわくするゴシック小説。同時に平等を装いながらも解放奴隷を軽蔑し特権意識を持ち豊かさを享受する者たちと、彼らの娯楽のために命をかける末端の人々が対照的に描かれる。そしてそんな彼らを掬い上げるキリスト教黎明期の伝道者たち。多神教を信じる人々の“寛容性”の隙をついて、一神教で“非寛容”なキリスト教が席巻していく様に目を瞠る。狡猾な世界(支配)の仕組みは複雑で、自然は過酷。抗う術もないちっぽけな人間は日々精一杯生きるだけなのか?明日も知れぬ、早晩失われる生命を生きる意味が問われる。
アイデンティティへの疑問や、その最盛期は若い頃の一時期に限定されるか?と頭の中はぐるぐる回る。昔の顔に固執しても、コピーである後発の追随者の方が若いため、衰えていくオリジナルを踏み越えて行く。そしてきっと彼らもまた…。SNSの写真については、対象物を撮るのは“観察者”だけれど、自撮りが入ると“当事者”になり、承認欲求にも濃淡がある。さて何処に“じぶん”の所在はあるのか?歴史を書くことを命題とするポーランドのノーベル文学賞作家が、“今”に最適化する現代人を描き、流されて行く歴史の一コマを捉えた作品だった。
大きな壁が立ちはだかる。表題作は、現在から僅か数年後の近未来。白人至上主義者に追われ、家を残し逃げ込んだ先がモンティチェロ、アメリカ合衆国第3代大統領トーマス・ジェファーションの邸宅と歴史的プランティーション。“建国の父の一人にして人格者”しかし黒人奴隷サリーと6人の子をもうけ、主人公はその傍系子孫。未来を見据えている筈が、合衆国の原点に戻ることで、過去を繰り返す地獄巡り無限ループの様相が現れる。2024年パリオリンピックのアジア人差別を目の当たりにした年に読んで、ずっと知っていた筈の世界の仕組みに慄いた
協力者の郵便局長をそんな簡単に葬れるのか?素養がない13歳が小説を完成させられるのか?そもそも何故フィニッシングスクール?それも隣国スイスではなく英国なのか?など現実的な齟齬は、設定そのものを重要視しないイシグロのように寓話的。その一方で、人は生き伸びるために創作し、現実を直視するためにフィクションを介在させる必要など、他者の人生を読み続ける読者にとっても切実な問題を突きつける自己決定権の物語だった。初期作からのファンとしては、違和感を抱えつつ読み続けたが、最後の頁で息が出来なくなった。素晴らしかった。
【追記】バブル期の終盤、日本の大学を卒業後スイスのフィニッシングスクール(最上のFS)で仕上げる知人が何人かいて白目を剥いたが、本作でわざわざ“英国”のFSにしたことで2番手感を、女校長の野心と胡散臭さを表したのか?また英国作家ミュリエル・スパークの学園小説が念頭にあったのかも?そして『悪童日記』や『エンジェル』的な、虚構に着地してからの現実を書き換えてしまうほどの真実は、マキューアン『贖罪』にも通じる。イーユン・リー、やはりすごい…けれど類似作が次々と浮かぶ…次作は独自性が前面に出ることを期待してしまう
そして不可解なラストを咀嚼しきれないまま読み終えた。同じセネガル系仏人作家モアメド・ムブガル・サール 『人類の深奥に秘められた記憶』もそうだが、セネガルはオランダからフランスに引き継がれた奴隷貿易の拠点で、隷属させられ掻き消された彼らの小さな声を、口承文学(一人称)の体で現代作家が再構築する。また主人公が自身について“他者の欲望の対象になる美しい存在”だと繰り返し言及するが、美の評価基準を変えて反発を引き寄せることで、常に“野蛮な黒人”から欲される側としての、自己愛に満ちた仏文学を反転させたのも面白い。
2016年1月から、読了本のタイトル登録を始めました。それ以前のものについても今後思いつくたびに登録予定です。
2023初めくらいからの感想を少しあげてみようと思いますが(2023.9.4)不具合ならすぐやめます。
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大きな壁が立ちはだかる。表題作は、現在から僅か数年後の近未来。白人至上主義者に追われ、家を残し逃げ込んだ先がモンティチェロ、アメリカ合衆国第3代大統領トーマス・ジェファーションの邸宅と歴史的プランティーション。“建国の父の一人にして人格者”しかし黒人奴隷サリーと6人の子をもうけ、主人公はその傍系子孫。未来を見据えている筈が、合衆国の原点に戻ることで、過去を繰り返す地獄巡り無限ループの様相が現れる。2024年パリオリンピックのアジア人差別を目の当たりにした年に読んで、ずっと知っていた筈の世界の仕組みに慄いた