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2023年5月の読書メーターまとめ

夢追人009
読んだ本
70
読んだページ
5710ページ
感想・レビュー
70
ナイス
42806ナイス

2023年5月に読んだ本
70

2023年5月のお気に入り登録
33

  • もっけ@たい焼きんとペア画中
  • ウタ
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2023年5月のお気に入られ登録
6

  • もっけ@たい焼きんとペア画中
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2023年5月にナイスが最も多かった感想・レビュー

夢追人009
県立高校で働く図書館司書・星川駒子が出入りの書店員・針谷敬斗の鋭い推理の力を借りて高校生達の相談に潜む日常の謎を解明する推理の面白さと、より良い人間関係の向上を実感できる学校図書館ミステリーの秀作ですね。本書では凶悪な犯罪事件ではなく学校生活の中で起きる些細ながら見過ごしにはできないテーマに関する事件が巧みに描かれ著者の並々ならぬ情熱に感心しましたね。全5話は単独の話ですが読み進める内に内容が深まってさらに面白さが倍増するように思えました。本書で取り上げられる実際の名作本に読書意欲をかきたてられましたね。
夢追人009
2023/05/18 22:45

本書を読んで私自身は小中学で図書室に親しみましたが高校では疎遠になり全く利用しなかったことを思い出して反省しましたね。本書は日常の謎解きミステリーの面白さと読書の素晴らしさについて改めて実感させてくれる読み物ですので老若男女全ての方にお奨めしたいですね。また本書がシリーズ化されるのであれば、ぜひ続巻も読みたいなと思いますね。#NetGalleyJP

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2023年5月にナイスが最も多かったつぶやき

夢追人009

読み友の皆さん、4月も沢山のナイスをくださってありがとうございました。40冊の大半25冊が掌編ですが4月は少し盛り返しましたね。最近は新しい本をよく読むので共読が増えて嬉しいです。季候がよいので5月はこの調子で読書してレビューの本数を増やしますよ!2023年4月の読書メーター 読んだ本の数:40冊 読んだページ数:5272ページ ナイス数:33610ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/868158/summary/monthly/2023/4

かすみん
2023/05/01 19:21

いつもありがとうございます(*'▽')気持ちの良い5月ですね~(*'▽')今月もよろしくお願いします🎏

夢追人009
2023/05/01 20:29

かすみんさん、こんばんは。今月はやっと寒さとオサラバできそうですね。こちらこそいつもありがとうございますね。今月もどうぞヨロシクお願いしますね!

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2023年5月の感想・レビュー一覧
70

夢追人009
夢野久作さんの教訓童話は悪い奴は必ず罰せられる勧善懲悪の物語ですので最後は気持ちがスッキリしますね。凧屋の店の中で達磨と章魚(タコ)とが喧嘩をしました。タコは偉そうな口調で「達磨は手も足も出ないじゃないか」とボロカスに貶し乱暴に八本の足で蹴りつけました。それを見た奴凧が止めに入りましたが「お前なんか黙っておれ」と同様に蹴られました。翌朝、太郎、次郎、三郎が凧を買い太郎の達磨と次郎の奴は大空高く飛びましたが三郎のタコは木の枝に足が引っ掛かり破れてしまいました。ああ、足がなければ良かった。罰があたりましたね!
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夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の56編目は中国の災い転じて福と為す良い話ですよ。少年が通りかかった未来と過去の判る旅人から気の毒がられ、お前さんは二十歳を過ぎないで若死にするよと言われる。少年は驚いて頭を地べたについて長生きできるように頼むが「人の生命は天が司っているからどうにもならない」と言われ家に帰って父親に話すと二人で旅人を追いかける。漸く追いついて父親が頼むと考え込み「では酒と鹿の乾肉を用意して待て」と返事をもらう。少年は卯の日に旅人から聞いた通りに南方の大きな桑の木の下で二人の老人が碁を打つ場所へ行く。
Johnnycake
2023/05/31 09:21

神々の碁の勝負で思い出したのが、イングマール・ベルイマンの「第七の封印」で騎士と死神のチェスの勝負です。洋の東西で似たようなことを思いつくものですね。

夢追人009
2023/05/31 09:40

南風は暖かいので性格が優しくて北風は冷たいので厳しい性格なのですね。関係ないですが加山雄三さんの「旅人よ」も名曲ですね。

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夢追人009
夢野久作さんのけったいでちょっとブラックなおとぎ話です。子供が遊んでいると雪が降って来てみんな大喜びでした。「砂糖になったらどうするか」と大きな声がして白いひげ、白い着物、白い帽子ですきとおった氷柱のような杖を持ったお爺さんが現れて問いかけました。みんなが良い事ばかりを言ったのでお爺さんは褒めてやり続いて「塩になったらどうするかな」と尋ねると「先生の眼玉にすりこんでやる」と悪太郎が初めて答えました。お爺さんは急に怖い顔になり「望み通りにしてやるから待っておれ」と言って消えると雪が降り出し三人に砂糖が降る。
夢追人009
2023/05/30 09:29

だが悪太郎には塩ばかりバラバラと降って目に入って痛くて堪らなくなったので泣きながら家に帰りました。こういう話は子供が読むと怖くて夜は悪夢にうなされそうですね。因果応報の物語で悪太郎は反省して善太郎になって欲しいですね。

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夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の55編目は非常に珍しい空の怪談です。昭和六年の夏の夜に夜間飛行の練習をしていた飛行機が後方から自分の物とそっくりな飛行機が追いかけてくるのを目撃した話で、こういうことはよくあるらしく、空のドッペルゲンガーと言えるでしょうね。本物なのか錯覚なのかよくわからない話ですね。陸の上だと大丈夫ですが、洋上だと視界の関係でよく起きるのだそうですよ。有名なサルガッソー海域、バミューダ・トライアングルの謎も神秘的で、洋上は何かと危険なのですね。今回は何時もよりも格段にスケールの大きな怪談でしたね。
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夢追人009
夢野久作さんのほのぼの童話の世界の一編です。題名からして何か逆転のどんでん返しがあるブラックな話かなと思って読んだら意外にもそうではない穏やかな話でしたね。大晦日に犬と猪が会って御飯屋でご飯を食べながら話をします。犬と猪は十二支の干支の最後の2つの動物なのです。結論は良い子と悪い子が一回りした十二年後にどうなるのかによって罰を与えたりご褒美をあげたりしようと決めるのですね。まあめでたしめでたしのハッピーエンドでした。でも、もしも犬の相手が猿だったら犬猿の仲でこういう風に上手く納まらずに決裂したでしょうね。
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夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の54編目は怖い話ではなく中々に考え深い喜劇です。この話に出て来る門跡(もんぜき、もんせき)は、皇族・公家が住職を務める特定の寺院、あるいはその住職のことであるという事ですよ。門跡様が御下向(都から地方へ下る)されるというので大勢の人々が沿道に見に集まった。門跡様のお駕籠に背の高い婆さんが人並を強引にかきわけて近づくと無遠慮に駕籠の中に頭を入れた。すると門跡様が手で押されたのか婆さんは外へ突き返された。すると人々は門跡様が婆さんの額に手を触れたのを見て、ありがたい事だと口々に言った。
夢追人009
2023/05/29 08:48

その内に一人が門跡様の触れた婆さんの髪の毛を引っ張って抜いた。すると皆が真似をして次々に髪を抜き始め、あっという間に婆さんの頭には髪の毛が一本も無くなって尼さんになると皆は興味を失って門跡様の進む行列に続いたのだった。お婆さんは本当に可哀想ですが、これも神様の思し召しでしょう。なむあみだぶ、なむあみだぶ。まあお婆さんは勝手な事をしたから自業自得ですけどね。でも宗教熱に取り憑かれた集団の狂気には恐ろしいものがありますね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんのメチャクチャナンセンスな物語です。キャラメルと飴玉がお菓子箱の内で口喧嘩をおっ始めて互いに相手をボロカスに口汚くののしります。二人とも段々と興奮して取っ組み合いの大喧嘩に発展し大勢の仲間達も加わり「お菓子大戦争」になって、終いにみんながくっついて離れずに動けなくなります。坊ちゃんが来てお菓子箱の中を覗いてビックリし、お母さんは「一緒に仕舞っておいてはいけないと言ったではありませんか」と叱って金槌を持ってきて打ち壊してしまいました。まあお菓子達は遅かれ早かれ結局は人間に食べられる運命だからね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の53編目は短いながらもとても悲惨で理不尽な話ですよ。岩手県の北上川の流域にある亀ヶ淵には昔から大きな亀が住んでいていろいろな怪異を見せるというので夜は誰も近寄らなかった。近くに住む小学校の中年の教員が秋の夕暮れに釣りに行ったが不漁だったので怪異なんて迷信さと言って亀ヶ淵に行くと大漁に魚が取れた。彼は大喜びで浮かれたが、足の下の大岩がぐらっと揺れたので慌てて飛び降り家に走って帰った。彼はその夜から酷い熱病にかかり「亀が来た、亀が来た」と言いながら数日後に大目を開いたまま死んでしまう。
夢追人009
2023/05/28 07:56

彼の小学校二三年の息子も二日後に流感にかかって、ぽっくりと死んでしまった。彼の女房も重なる不幸に逆上してしまい死んだ息子を追いかけたり「大きな亀だ」と言って付近を狂い歩いていたが、やがて亀ヶ淵に死体となって浮いているのが見つかり右手には亀の子をしっかり握っていたという。うーん、凄まじい亀の怨念・祟りの何て恐ろしさなのでしょうね。ちょっと立ち寄ったぐらいの事で即一家皆殺しなんてあまりにも可哀想すぎますね!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
市川憂人さんの鮎川哲也賞受賞作のデビュー作で「そして誰もいなくなった」に挑戦した力作ですね。最初にこのトリックは正直言って機械的過ぎて手放しで好きにはなれませんが、カー、クイーン、クリスティーら黄金時代の巨匠達ならば私たちの書いて来たトリックを現代テクノロジーを駆使して上手に料理しているねと言ってニヤリと微笑むでしょうね。まあこれだけ大掛かりであれば機械に頼らざるを得ないのも致し方ないでしょうね。それから5つのインタールードと最後6人目の大迫力の殺人シーンで著者は気前よく犯人の台詞でヒントをくれています。
夢追人009
2023/05/27 21:34

これは謎解きパズルは別にしても何よりも著者が犯人の怨念と執念をぜひとも書きたかった故の描写でしょうね。必然的に著者が犯人に肩入れしている姿勢が見え見えですが、これは誰もが共感するでしょうね。舞台がA国であるのは科学技術と国力が世界一のレベルにある点で選ばれたのでしょうね。本書の探偵役マリアと蓮は仲が良いとは言えませんが、お互いの緊張感が良い効果を生んでいるのでしょうし年の功の実力が示されて日本人贔屓にしていないのもいいですね。具体的な事は殆ど書いていませんが、完成度の高い現代本格ミステリーの傑作でしたね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
摸擬葬儀を執り行う事がメインのハピネスエンディング株式会社。現実の葬儀の前に予行演習して粗相がないように慣れておくというのは建前で実際には小さな子供の頃から毒親に精神的・肉体的に虐待を受けて苦しんできた子が思う存分に怨み・憎しみを吐き出してストレスを発散し実際はまだ存命の親を仮に死なせて心を一旦整理し次へ進む為の儀式で、これは同時に親子殺人の抑止力にもなるのだ。大学生の智也はネットで知ってインターンに応募し最初は戸惑うが働く内に次第に会社の意義を理解していく。本書は優しい題名とは真逆で生易しくありません。
夢追人009
2023/05/27 20:46

冒頭に読んでいて気分が悪くなったら一旦本を閉じて気持ちを落ち着けてからもう一度読んで下さいという注意書きが書かれています。私は本書を読んで複雑な気持ちになりまして、こういう行為は親との話し合いによる和解の道から逃げている如何にも現代社会らしいドライな方法だと思う気持ちもあるのですが、一方で親子殺人にまで至る最悪の事例も世の中には多くあるようで完璧ではなくても実際は仕方ないのかなとも思います。明るく楽しい読み物ではないですが苦しみ悩む人の心に寄り添いつつ人生勉強になる一冊でしたね。#NetGalleyJP

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夢追人009
夢野久作さんの最後まで読んでもどう解釈していいのやら皆目さっぱりわからない掌編です。死にかかった病人の枕元で医者が首をひねり「もう一時間も六かしいです。これを助ける薬はありません」と言った。病人はこれを聞くと「いっその事、飲んでから二、三日目に死ぬ毒薬を下さい」と言った。六かしいは難しいの意味なのでしょう。病人は聞いた瞬間から一時間も生きられないのは辛すぎるので、せめて二、三日ぐらいは猶予をもらってこの世を去る前に心を落ち着けたいということなのでしょうね。実際はそんな遅効性の毒薬を作るのは困難でしょうね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の52編目は長くて少しだけ薄気味悪いですが案外慣れれば大丈夫な中国の話ですよ。王という若い男がいて十八の年に細君を迎えたが、間もなく病気で亡くなってしまった。王は旅が好きである旅館が気に入って友達の家と交替で行き来して旅館に帰ると十五歳程の女が寝床に入って来た。王は何となく女が死んだ細君のような気がしたが目を開けると消えていた。毎晩のように女はやって来て遂に王は彼女を腕に捕まえ名を聞くと呉秋月と答え旅館の東側に葬られている者で15の年に死んで30年するとあなたに縁づく運命ですと言う。
夢追人009
2023/05/27 09:27

王は女と結婚し、あの世について聞いてみるとここから近いと言われて女に案内されてついていく。あの世は意外にもこの世と殆ど変わらない世界であった。そこで兄が役人二人に捕まっている姿を目撃した王は腹を立て刀で役人を二人とも斬り殺して兄を連れて行く。秋月は大変です、舟で家に帰って七日間扉を閉じて外出しないようにすれば災いから逃れられますと言う。王が現世の家に帰ると兄が死んで葬儀があった事を知る。連れ帰った兄は消えたが、二日後に墓から甦る。王はあの世へ行って秋月が牢屋に捕まっているのを役人を殺し助出し家に連れ帰る。

夢追人009
2023/05/27 09:28

王は秋月から自分のよみがえる時が来ましたから墓を掘って下さいと頼まれて土中から女の死体を掘り出して家に運ぶと三日目に生き返り暫くすると普通の体で歩けるようになった。昔の中国では人間が復活していたのでしょうか。まあハッピーエンドで、めでたしめでたしですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの読む者の心に強く反省をうながす深い教訓のお話です。子供が鉛筆を削っているとあまり無茶に削るので何べんでもシンが折れた。子供はナイフが悪いのだと考え、ナイフを磨いで削ったが、やっぱり黒いシンが折れた。子供は鉛筆が悪いとカンシャクを起こして鉛筆を折ってしまった。鉛筆は折られながらも言った。あなたの心をもっといいのに取り替えないと、いくらいい鉛筆を買っても駄目です。この子供みたいにものを粗末に乱暴に扱っては絶対に駄目ですよ。それから自分の腕も磨いて上手にできる様に一生懸命工夫と努力をしましょうね!
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の51編目はかなり長い話ですが非常に不気味で面白いですよ。江戸から箱根の山中へ湯治に来た武士が湯宿の亭主と碁の対局をしていると旅僧が見にきた。亭主は弱いので張り合いがなく武士は僧に勝負を挑むと先手が勝ち後手は負けるという互角の戦いが続く。勝負は一日中続き、十日間ほど毎日僧がやって来る。武士が僧に毎日来てもらうのは申し訳ないから山の上の庵へお伺いしましょうと言うと頑なに拒否される。その内にある日朝から待っいても僧が来ないので武士は若い従者を供に連れて山の上へ見物に行くと小屋を見つける。
夢追人009
2023/05/26 08:41

中には僧がいてお茶を用意しようと席を立つ。武士が置いてある茶釜の下の竈を見ると顔が浮かんできてスーッと消える。武士は戦慄し早々に辞去しようと考え従者に声を掛け仏壇に布施を置いてくれと頼むと、震える声で仏壇に生首がありますと言われて見ると確かにあった。武士は僧が戻って茶を出すと飲んだ振りをして捨てて足早に小屋から立ち去る。宿に帰り亭主に話すと危険だから何も言わないで江戸へお帰りなさいと奨められ素直に従い従者と共に宿を出発した。金沢の宿に着くと家臣が待っていた。家臣は武士がお帰りだと知り迎えに来ましたと言う。

夢追人009
2023/05/26 08:41

家臣が言うには四十くらいのお坊さんが家に来て門番に武士が明日お帰りになると知らせてくれたのだという。武士は「なに」と驚いたが無言で夜に江戸の邸に帰ると親類や友人たちが帰国の祝をする為に待っていた。武士が上へあがると皆が集まって来た。縁側に彼の可愛がる四つの息子が立っているのが見えて、大きな声を出したので驚いて見に行くと、男の子の首のない体が縁側に倒れていた。何という恐ろしい結末でしょうか!本人ではなく何の罪もない弱い息子を犠牲にするとは何て残酷で無慈悲な野郎でどうにも遣り切れない嫌な気持ちになりましたね!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
柚月裕子さんの長編第2作は誰も認めるに違いない文句なしの傑作ですね。著者の初の法廷ミステリーは一見単純に思えますが著者の周到な企みが最後の最後に読者に襲い掛かるサプライズ・エンディングで呆然自失となりボクサーならば一発でノックアウトされるでしょうね。著者はプロローグで事件関係者の男女二人の凶行場面を描き、続いて裁判の当日まで場面を飛ばすと同時に事件の原因となる医者夫婦の物語を平行して詳しく描きます。こうして著者は事件の真相に関して気前よくヒントをくれるのですが、実は肝心要の真実は断固として隠し通すのです。
夢追人009
2023/05/25 22:16

中盤で裁判の詳細が明らかになり読者があれっ?と驚き戸惑っている間に裁判はどんどん進行していき、最終弁論の場で予期せぬ最後の証人が現れ、驚愕のまさかまさかの大どんでん返しが炸裂するのです。この騙しのテクニックはシンプルですが実に効果的な逆転の発想なのですよ。処で初登場の弁護士・佐方貞人は「全ては真実の為に」と考える公平無私の人で絶対に信頼のおける素晴らしい人物なのですね。組織の圧力にも負けない彼の気魄あふれる正義感に感動して魂が震えましたね。本書は2010年の古い作品ですが未読の方はぜひ読んで欲しいですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
時は2020年、コロナ禍真っ只中の関東地方で、三十路の独身OL、高校生男子、中年既婚男性の3人がそれぞれに滅茶苦茶としか言いようのない大騒ぎに巻き込まれてゆく狂騒的な物語。最後は偶然にも三人の運命が交錯する結末や如何に?この騒ぎの元凶が全てコロナ禍にあるかと言えば違うと思いますし、あの時もっと適切な行動をとればこんなに泥沼に嵌らなくて済んだかもしれないとか、いろいろと後で思い浮かぶ事はありますけれど彼らは一生懸命にやったと思いますし、人間は諦めなければ望みは常にあるのだと教えてくれているように思いますね。
ヨシ
2024/01/30 01:25

読みました〜。一気読みでした。クレイジーだけど良書というのがよくわかります。

夢追人009
2024/01/30 08:02

ヨシさん、ありがとうございます。まあ100%マジメでガチガチの固い本ではなくて適度なユーモアが混じっているのが良いのだと思いますね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの自由気ままな発想の短い話です。懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いていると、鼠が見つけて笑った。「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに何だって動いているんだい」「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ。人の見ない時だけか、又は人の見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」と懐中時計が答えると、鼠は恥ずかしくなってコソコソと逃げて行きました。うーん、深い話ですね。中々に難しいですが人の見ている時だけに働いているものは真実の働き者ではないから泥棒なのですね。
夢追人009
2023/05/25 10:26

鼠は真面目に働いている者を冷やかして馬鹿にした自分の行為が恥ずかしくて逃げたのですね。懐中時計の中は鼠の鳴き声のチューと韻を踏んでいますけどね。これはほんの冗談ですよ。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の50編目は不気味ですが面白い話です。この厄介な難読漢字は「ろくろ首」と読むのですよ。ある武士が主家の滅亡後、出家して怪量と名乗り諸国を遍歴した。甲斐の国を遍歴している時に日が暮れて岩山で横になっていると男がやって来て、ここは恐ろしい魔所ですから危ないので私の住まいへご案内しますと奨める。怪量はそれでは厄介になろうかのと答え草葺の家に入り四人の同居人を紹介される。その夜通された部屋で読経し喉が渇いたので部屋を出て次の間へ行くと何と恐ろしい事には5つの首のない身体が横たわっていたのだ。
夢追人009
2023/05/25 09:43

彼が首の付け根を検めると血も刀の斬り跡もないので「ろくろ首じゃ、さてはたばかってわしをおびき寄せたな」と悟り書物で得た知識から体を別の場所へ離しておくとよいのだと考えて主人の体を抱えて谷底へと突き落す。彼は外へ出ると杉林から話声が聞こえ5つの首が人魂のように飛び回っていた。彼は松の木を引っこ抜いて振り回し首を退治するが主人の首だけは衣の袖に噛みついて離れない。僧はそのまま山を下り諏訪の村を托鉢して回ると首が気味が悪いので役人に捕えられ白洲で裁きを受ける。手間取るが結局ろくろ首の事を知る者がいて解放される。

夢追人009
2023/05/25 10:34

怪量は木曾の山中で山賊に襲われ、首と衣を売ってくれと頼まれ勝手にしろと言って応じる。山賊は暫くは首でもって旅人を脅して稼いでいたが諏訪で首の由来を聞くと蒼くなり祟りを怖れて首の家へ行き土中に首を埋めて塚を築いて立ち去った。そこは「ろくろ塚」と呼ばれた。誠に波乱万丈の愉快な冒険妖怪譚でしたね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんのとっても愉快な現代の落語になりそうなお話です。与太郎はお母さんから、「あの森にはいろんなものに化ける狸がいるから日の暮れぬ内に帰らぬと恐ろしいぞ」と言われていたので毎日きちんと教えを守っていましたが、ある日うっかりして真っ暗な森を通りかかると一つ目入道や、ろくろ首、鬼が出てきました。でも与太郎は喜んで相手に挨拶して機嫌よく話しかけます。化け物は与太郎が少しも怖がらないので、つまらなくなって狸の姿になりました。すると与太郎は「ワア狸が出たあ。化けると大変だ。助けてくれ」と叫んで逃げ出しました。
夢追人009
2023/05/24 10:01

反応が遅すぎるわ、さっきから何度も化けてて今はもう終っとんねん!と思わず突っ込みたくなる馬鹿馬鹿しいオチでしたね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の49編目は人間と謎の存在との友情物語で心に残るいい話ですよ。漁師の勘作が魚が全く獲れず生暖かな晩に不景気な顔で家にいると見覚えのない色白の小柄な男が訪ねて来る。男は東から来たと言い勘作が不漁の話をすると外に行き魚を獲って帰って来る。男は時々来ては魚を獲ってくれて一緒に酒を飲んだ。三年が過ぎ男は勘作に自分は人間ではなく水におる者だと打ち明け、明日旅人を殺して体を借りて人間になろうと思っていると話す。勘助は翌日旅人に注意してやり命を救う。水の者が来て勘助に私の仕事の邪魔をしたなと怒る。
夢追人009
2023/05/24 09:35

勘助は人の道に外れた事をしてはいけないと言って教え諭して酒を飲む。三年後また人間になるという水の者の話を聞いた勘助は翌日今度は夫婦喧嘩をした女房の命を救ってやる。勘助は怒る水の者をなだめてまた三年が過ぎる。水の者は「私はお前さんのお蔭で悪い事しないでやってたから神として祭られる事になったのでお前さんは神主になるがよい」と話し最後に実現して勘作は神主になる。結局は無益な殺生も回避され、誠にめでたしめでたしのハッピーエンドでしたね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
歌野晶午さんの第3作の家シリーズで名探偵・信濃譲二シリーズの最終作ですね。本書はプロローグからいきなり仰天のビッグ・サプライズで始まります。それは一応置いておきまして。今回は前2作とはガラリと趣向が変わってワトスン役が不在の形で、信濃がミニ劇団マスターストロークのマネージャーに雇われながら舞台公演中に起きた殺人事件の謎に挑む趣向です。しかし実は著者が前二作のパターンに続く如何にも分かり易すぎる題名「動く家」のトリックを暴き出すと見せかけて途中でご破算にしてしまうのですね。これは著者が裏をかいたのでしょう。
夢追人009
2023/05/23 22:42

著者は過去作からのマンネリ打破の想いも込めて、後年の有名な代表作を思い出させる大胆な騙しのテクニックで読者を翻弄してアッ!と驚かせるのですね。それと同時に意外な犯人のトリックも考え抜かれていて素晴らしかったですよ。ラストに哀愁が漂うストーリーも新鮮で私は今回も完全に騙されて著者の巧妙かつ周到な企みを見破れませんでしたね。私は最初から最後まで面白く読みましたし、本書は著者のイメージチェンジした新たなスタイルと魅力が開花した意欲作だと思いますし私は好きな一冊ですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
ネタバレ大沢在昌さんのデビュー短編を含むハードボイルド短編集です。法律事務所に所属する失踪人調査のプロ・佐久間公(こう)はこの手の作品では珍しく自分を僕と呼んで表記するタイプで初読みの感想としては派手なアクションはないものの事件に対する徹底した最後まで決して諦めない粘り強さと他者への優しさですね。非番の日でも頼まれれば嫌な顔一つせずにあっさり引き受けるのですね。全7編の内で小説推理新人賞を受賞した表題作は殺しや死体も出ては来るものの評価されたのは甘い優しさ故でしょうね。暴走族のアタマ26歳の男が公に人探しを頼む。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの今日の掌編は中々に深く考えさせられる約束についての話です。「ある人が橋の下で友達と会う約束をして待っていると大雨が降って来て水位がどんどん上昇しても約束を守る為にいつまでも逃げなかったので、とうとう溺れ死んでしまった。だから約束を守るのは悪い事だ」とある人が言うと、もう一人の人が尋ねた。「その人は橋の下で死ぬ約束をした訳ではないのだから、他のよくわかる場所で待っていてもいいじゃないか」初めの人が言い返した。「そうじゃない。大体、約束を守ると言う事は馬鹿な事なんだ」するともう一人がこう言った。
夢追人009
2023/05/23 10:17

「つまりお前は自分だけ約束を守らないで、他の人にだけ約束を守ってもらいたいのだろう」うーん、極端すぎる意見ですね。人間は約束に縛られずにその時のシチュエーションに応じて柔軟に行動する事が大事でしょうね。例え約束を破ったとしても罪悪感を抱いて心を病まないように気持ちを切り替えて強く生きて行かないといけませんね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の48編目はマジで恐ろしい女幽霊の怨念の怪異譚ですよ。平兵衛は女房に相談して加賀から土佐に行く事を告げ向うで落ち着いたら知らせると話して一人で旅立つ。土佐で無事に受け入れられた平兵衛は郡奉行に抜擢され、女房に連絡する事を忘れ土佐の若い女を妻にして平三郎と名付ける子供を産ませた。加賀に残った妻は一向に知らせてこない夫に不審を抱いて旅の人に調べてもらうと漸く夫に裏切られたのだと知る。女は非常に悔しがって、その夜に川へ身を投げて死んでしまう。やがて平兵衛は加賀の知人から妻の死を知らされる。
夢追人009
2023/05/23 09:39

平三郎は十九になり初夏の夜に部屋で読書していると女中が来て奥様からですと言って酒を奨める。彼が酒は嫌いだが何とか我慢して嫌々飲み干すと二度、三度とさらに飲ませようとしつこく迫る。あまりに無礼な態度に立腹した彼は刀を抜いて女中に斬りつける。血が噴き出て逃げる女中を追って母の部屋へ行くと女中はずっと側におりましたと聞く。部屋に戻って確かめると不思議な事には血の痕跡は跡形もなく消えていた。その夜遅くから大雨が降り出し川が氾濫すると郡奉行の平兵衛は家を出て人夫を指揮し堤防の所々へ砂俵を積ませる処置対応をしていた。

夢追人009
2023/05/23 09:39

息子の平三郎も手伝いに出て舟に乗って川を見ていると一人の女が浮いてきた。彼は別の船に乗る父に向って昨夜の女の死体が浮きましたと知らせる。平兵衛は知っている女の顔だったが素っ気なく「そうか、この水では人の一人や二人は死ぬだろうて」とだけ言う。すると不意に平三郎の乗る舟が下から何かに突き上げられ転覆してしまう。人夫達は助かったが平三郎の姿は見えず死骸はとうとう見つからなかった。平兵衛は後に知人に話す。あれは先妻の祟りじゃ、私に怨みを報いるつもりだったろうが私を恐れて息子の命を取ったのじゃ。凄まじい怨念ですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
喫茶店をテーマに描かれた25作の超ショート・ストーリーの書き下ろしアンソロジー。本書はスキマ時間を埋めるのにぴったりの作品集で、まあ仕方ないですが短く呆気ない嫌いがありまして、この短さでサプライズを演出するにも限界がありますので、どちらかと言えば現実系の謎解きよりも幻想系ファンタジーの方が面白かったですね。また喫茶店と相性の良いニャンコの出て来る5作品が好きですね。私のお気に入りは『おじいさんと猫の喫茶店』高橋由太:優しいお爺さんに拾われて飼われた野良猫の話で喫茶店はお婆さんの死後は営業を停止しています。
夢追人009
2023/05/22 22:06

長い時間が経ってお爺さんが家を出て行って中々帰って来なくなると猫は外へ探しに行き、営業していない筈の喫茶店に漂うコーヒーの香りに導かれて中に入ると若い男女がいて、猫はそれがお爺さんとお婆さんの若い頃の姿なのだと気づきます。それから人間も猫の姿も見られなくなりました。答は最後の最後まで書かれませんが、彼らは今も天国の喫茶店で仲良く暮らしているのかも知れませんね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
吉村達也さんの第5作はサイコサスペンスミステリーですが実は本書は後年に書き直したリメイク版で登場人物も結末もオリジナル版から大きく変更されているのですね。私は最初の本は未読でして何時か時間があればまた図書館で借りて読もうと思います。本書は東京のデザイン事務所「藝術屋」のチーフを含む6人の間で起きる連続殺人で青山キラー通りで喉を切られ後頭部に白いリボンが結ばれる謎の猟奇事件です。まあフーダニット・ミステリーの仕掛けは上手く出来ていて意外性十分で楽しめますが、読み所は若い和久井刑事の上司がオカマ警部なのです。
夢追人009
2023/05/22 21:13

その名も西郷藤吉郎という歴史的人物の姓名をくっつけた出鱈目の適当な代物なのですね。彼はスパルタ的な口の悪さで和久井刑事をボロカスに罵倒します。曰く、ボケ夫、ボケ太郎、留めはボケ左右衛門、大ボケの出世魚だよ、おまえは!と、もう言いたい放題のどSぶりなのですね。まあ他にもう一人、紅一点のギャル刑事・南野マリン(本名)がいます。でもまあこの偉そうなオカマ警部が大口を叩くだけあって名推理でもって事件を解決に導くのです。まあ残念ながら本作は単発作品でオカマ警部とは、これっきりお別れなのが少し惜しいなと思いましたね。

夢追人009
2023/05/23 10:34

×留めは→〇とどめは、で平仮名の方が良かったですね。少し真面目に書きますと西郷警部は、先入観や固定観念にとらわれるな!と型破りな考え方で若い和久井刑事を戒めてビシバシと鍛えるのですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんのスリル一杯だけど何処かのんきなムードも漂う終ってみれば愉快な与太話ですよ。泥棒がケチンボの家へ入ってピストルを見せて、お金を出せと言った。ケチンボは、そのピストルを千円で売ってくれるならお金を出そうと交渉し思案の末に泥棒は売ることにした。ケチンボはピストルを受け取ると泥棒にピストルを向けて有り金を全部出せと脅す。泥棒は、アハハ、それはおもちゃのピストルだよと笑い表へ飛び出す。ケチンボはピストルを投げ出して泥棒を追いかけ往来で取っ組み合いをしているとお巡りさんが通りかかり二人を警察へ連行する。
夢追人009
2023/05/22 10:16

警察で調べると、泥棒が貰った千円のお金は偽物で、ピストルはやっぱり本物だった。二人共牢屋に入れられまして、ハッピーエンドでめでたしめでたしですね。どっちもどっちのあまり頭がよくない小悪党でしたね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の47編目は少し長いですが中々に考え抜かれた面白い幽霊話ですよ。題名の「喫う」は「食う・食べる」の意味です。町の酒屋で若い主人が亡くなって葬式を済まし皆が寝静まった夜に裏門を叩く者がある。女房が起きたが恐ろしいので伯父さんを起こして見に行って貰った。訪ね人は芳三と名乗り死んだ亭主で、伯父に生前の私の着物や持ち物を墓に埋めて欲しいと頼む。伯父が了承して皆に話をして翌日に墓に埋めてやる。暫くして再び裏門を叩いて芳三が来て対応した伯父と父親に今度はお金を五十両ばかり墓に埋めて欲しいと頼む。
Herohiro
2023/05/22 09:59

リラックスるるラ

Herohiro
2023/05/22 09:59

走って、ら

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
岡本かの子さんのこの話はほんのりユーモラスな味がありますが決して冗談で揶揄するのではなく人間的な温かさが感じられる好短編ですね。資産家・河内屋の娘・駒子は子供の時に脳膜炎を患った為に白痴で十九だが六七つ程の知恵しかなかった。だが女の発達の力が頭ではなく身体に働いた為に生まれつきの美人だった。三人程、大学出の婿候補が来たが結局は皆が逃げ出した。松崎は面白半分に見物に来て近所で鮎釣りをしていると、両親から買い物の練習をする様に言われ店へ行った駒子がきて松崎に聞く。お金が汗をかいたわ!こんなお金で塩煎餅買えて?
夢追人009
2023/05/21 22:09

松崎は駒子の美しい手を見て掌にキスをして、買えますよ、これからは僕が一緒にお店へついて行ってあげましょうと言って、秋には彼女を嫁に貰うのです。心が洗われてスーッとし素直に感動する良い話ですので、みなさんもぜひお読みくださいね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
クローズドサークルで起きる密室殺人事件にダイイングメッセージの謎と古典本格ミステリの趣向がてんこ盛りに詰まったミステリ愛好家には堪らない魅惑の一冊です。被害者は当主の金持ちの老人で、家族達と招待客を含めた容疑者は10人です。著者は大学のミステリ同好会二人の内のA二ノ宮(男)、B雑誌編集者の牧(女)、C被害者の孫の梗介(男)の三人の視点による語りで進行し、時々X名でヒントをくれます。本書の特長は途中で素人探偵が登場して考えを述べる多重解決の趣向ですが、皆さんが自信満々に語る推理がことごとく的外れで自慢の鼻を
夢追人009
2023/05/21 21:24

へし折られるのが面白いですね。本書は密室やダイイングメッセージのトリックよりも、A・クリスティー流の心理の盲点を突いたフーダニットミステリの面白さが秀逸で私は完全に騙されて犯人にしてやられましたね。この容疑者の人数の多さで真実を見抜くのは相当に困難だと思いますね。著者は本書が初のミステリ作品だと言う事で、きっと今までに書いていないジャンルだったからこそ新鮮で手慣れていない良作が生まれたのだと思いますね。終盤では異常心理のサイコミステリの香りも漂う秀作を非常に満足して読み終えました。

夢追人009
2023/05/21 21:25

本書で作品の幅を広げた著者の今後のさらなる活躍をお祈りしますね。#NetGalleyJP

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの生き物の話は、作者は優しくて常に強者より弱者の味方で、力の弱い生き物をしぶとく生き残らせてくれますね。ひらめが海を泳いでいるのを見た鷹が飛んできて掴もうとしたが水が深くて掴めません。仕方なしに知恵を出して、ひらめにこう言いました。ひらめさん、もっとこちらの浅い所に来てご覧、お前の好きな餌が沢山あるよ。ひらめは笑って返事をしました。あなたはほんとに御親切ですね。私を食べないで下されば、もっと御親切だと思いますけどもねえ。と言いながらズンズン深い方へ泳いでいきました。人間の漁師にも気を付けてね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の46編目は凄まじい怨念の怪異譚です。奈良県の真言宗の寺院に名音(みょうおん)という老尼がいて最初は泉の尼寺に居て有徳の住持に仕えていた。秋の日の朝に三十代の男女二人連れの姉弟が訪ねて来て、姉の方が尼になりたいという。住持に話すと対面し一旦は帰らせ翌日再度来たので正式に許され剃髪して玉音(ぎょくおん)と法名を与えられた。彼女は顔立ちも美しく素直な女だったので住持にも気に入られた。順風満帆に思えたが、数日後の夜中に玉音は急に苦しみだした。両手で虚空を掴み歯を食いしばって体を痙攣させた。
夢追人009
2023/05/21 08:27

名音と住持の介抱により落ち着くと「これが私の持病で医者に行っても原因不明なのです」という。ある日、名音は住持と共に檀家へ行って夜十二時過ぎに帰り便所に行って手を洗っていると横を鼠色の法衣を着た法華僧が素早く通り過ぎていき声を掛けるとパッと消えた。翌朝、玉音が名音に昨夜に見た法華僧にまつわる死霊の祟りの話を打ち明けた。彼女は地主の娘で従兄弟の弁護士と結婚して夫婦円満だったが、囲碁に興味を持って強くなると寺の新しい住職が愛碁家だったので対局に朝から夜遅くまで通うようになる。やがて彼女は夫に殴られ家を飛び出す。

夢追人009
2023/05/21 08:27

その日は寺へ泊まり翌日家に戻ると空き家になっていて夫は娘を連れて出て行っていた。彼女は寺に住み込んで寺に住み込む青年画家と戯れるようになり住職にそれを知られそうになると金目の物を盗んで画家と駆け落ちする。やがて檀家に知れて大問題となり住職は女に裏切られた苦しさと厳しい檀家の糾問に耐えかね自ら縊死する。それから彼女は住職の怨霊に悩まされ青年画家は金を奪って逃げる。彼女は自殺を図るが果たせず弟に引き取られ尼になったのだ。玉音は一月後に発狂してしまい弟の家に引き取られた。まあ自業自得とはいえ恐ろしい怨念ですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの教訓に満ちた生き物のお話です。夏の暑い日になまけものが昼寝をしていると、蚤と蚊が交替でやって来て刺したり食いついたりしました。なまけものは怒って「折角人が寝ているのに何だっていたずらするのだ」と叱りつけました。蚤と蚊は声をそろえて答えました。私たちはあなたのように寝ころんでいるなまけものが好きなのです。私たちに好かれないようになりたいなら起き上がってセッセと働きなさい。怠惰に過ごすのも程々にして人間は真面目に働かないと駄目ですね。私も人の事は言えませんが蚤と蚊に刺されないように注意しますね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の45編目は非常に厳しい内容で人の道の大切な教えを説いていますよ。四国の吉野川のほとりに長者が住んでいて奴隷を海と山に入らせ倉には金銀財宝が溢れたが人には施してやる心がなかった。そんな貪欲な彼も八人いる子供は心から可愛がった。ある日長者の家へ穢いなりをした旅僧が来て鉄鉢を差し出して「御報謝を願います」と言ったが、庭前で子供と遊んでいた長者は「ならん、帰れ」と素っ気なく追い払った。その後二度三度と来た旅僧に腹を立てた長者は遂に鉄鉢を引ったくり石の上に投げつけると八つに砕けて飛び散った。
夢追人009
2023/05/20 10:26

すると急に真っ暗になり黒い雲が渦巻のように下がって欠片を空に運び去り旅僧は姿を消した。その夜から長者の子供達が病気になり十日もしない内に八人全員が亡くなった。呆然とし死んだようになった長者は暫くして落ち着くと家に出入りする老僧に相談した。それこそ弘法大師様でございます。あなたは悪い事をなさいました。早くお詫びしないと貴殿も地獄に落ちますと言われた。長者は四国の霊場を二三年で二十二回も回り次に逆回りして漸く旅僧に巡り合って己の罪業を消滅させる為に私に引導を渡してくださいと頼み、来世では大名になりたいと願う。

夢追人009
2023/05/20 10:26

弘法大師は長者の腰を打って長者を息絶えさせ死骸を葬り杉の杖を立てかけて去る。そこから立派な杉の木が育ち八十年すると火になって焚けてしまう。その頃、河内の豪族の家に子供が生まれて成長し後に大名になった。長くなりましたが、強欲は己の身を滅ぼしますので、常日頃から気を付けて生きましょうね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
故郷で開かれた中学校の同窓会で60歳定年間近のアパレル会社勤務の独身キャリア・ウーマン可南子は、中学時代の大親友だった未亡人の芳美と再会して、この町で同居して一緒に暮らさないかと誘われて考えた末に都会を離れる一大決心をする。若い日に共に嵌まった少女マンガのコレクションに朝から晩までどっぷりとのめり込む毎日、これでいいのだろうか?とも思いながら二人は未知の還暦ライフを突き進んでいく。私は男で少女漫画の世界とは無縁の人生でしたが、それ以外はほぼ似た境遇にありまして大変興味深く読みまして大きな勇気を貰えました。
キャラメルパフェ
2023/05/23 23:01

夢追人009さま 初めまして こんばんは。この度は、お気に入り登録ありがとうございました(^-^)

夢追人009
2023/05/23 23:42

キャラメルパフェさん、こんばんは。また今後もよろしくお願いしますね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
岡本かの子さんのブラックな風刺小説で短くてシンプルながらも楽しく読みました。青空文庫でカップ麺にお湯を注いで待つ間にササッと読めますよ。この楽しさは「人の不幸は蜜の味」みたいな意地の悪い喜びの感情で良くはなく、最後まで書かれない被害者の悲鳴と怒声を思うとお気の毒に思いますが。この小説は今では都会の他人への無関心さが薄情だと言われる世相で、でも過剰に他人に気を遣って親切にし過ぎるのも考え物だと逆に皮肉っているのですね。著者は世の中の奥様方に教訓を与えてくれていて辛口な作品だからこそ後世に永く残るでしょうね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの生き物たちの童話は無邪気で面白いだけでなく時々ピリッと辛くて勉強になりますね。冬になると蛇も蛙も冬眠の為に何も食べなくなり土の中へもぐってしまいます。秋の末に蛇が蛙に、もう何も食べなくてよくなるから敵同士をやめて仲直りして一緒の穴へ入ろうよと誘うと、蛙は頭を振ってキッパリと断りました。嫌なこった。そんな事を言ってるけど、来年の春にあたたかくなったら一番に食べるつもりなんだろう。私と仲良くしたいなら普段から私達を食べないようにするがいい。残念ですがこの二人は永遠に友達になれない運命でしょうね。
夢追人009
2023/05/19 18:40

蛙さんは土の中でヘッドホンでヘビメタを聴きながら寒い冬を乗り切ってくださいね~!

胃之中野"ど根性ガエル"蛙(いのなかのかわず)
2023/05/19 20:01

夢追人009さんに座布団一枚!蛇メタですな~そうするでやんす!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の44編目は無害な幽霊の話で不気味ですが割と冷静に読めますよ。東京の近郊では有名な料理店だが、もう時代に取り残されたような建物で、つけてある電灯も薄暗かった。彼女が二階から降りて一人で右側の女便所に行くと入り口に二人が立っていた。印半纏を着た料理番のような若い男と銀杏返しに結った女中のような女だった。彼女は二人が動くのを待っていたが一向に動かず何時まで待ってもそのままなので二階に戻って連れの男に話すと、すぐにもう一度さっきの場所に行くと誰も居なかった。ありゃあすこに時々出るものだよ。
夢追人009
2023/05/19 09:04

かまわずにずんずん入っていきゃいいんだ。あいつは何もしやしないのだよ。彼女は翌日、その不思議な体験を知り合いに得意げに話して聞かせた。うーん、二人の関係は何だったのでしょうか。幽霊は黙して語りませんから永遠の謎ですね。まあ適当な当てずっぽうですが、この料理屋は今ではファミレスなんかになっているのかもしれませんね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
県立高校で働く図書館司書・星川駒子が出入りの書店員・針谷敬斗の鋭い推理の力を借りて高校生達の相談に潜む日常の謎を解明する推理の面白さと、より良い人間関係の向上を実感できる学校図書館ミステリーの秀作ですね。本書では凶悪な犯罪事件ではなく学校生活の中で起きる些細ながら見過ごしにはできないテーマに関する事件が巧みに描かれ著者の並々ならぬ情熱に感心しましたね。全5話は単独の話ですが読み進める内に内容が深まってさらに面白さが倍増するように思えました。本書で取り上げられる実際の名作本に読書意欲をかきたてられましたね。
夢追人009
2023/05/18 22:45

本書を読んで私自身は小中学で図書室に親しみましたが高校では疎遠になり全く利用しなかったことを思い出して反省しましたね。本書は日常の謎解きミステリーの面白さと読書の素晴らしさについて改めて実感させてくれる読み物ですので老若男女全ての方にお奨めしたいですね。また本書がシリーズ化されるのであれば、ぜひ続巻も読みたいなと思いますね。#NetGalleyJP

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
高校の入学式で出会ってすぐに恋人同士になった心優しい塩顔男子・佐藤日向と美少女・桜井萌の一生に一度のピュアな恋を描く心打たれる永遠のロマンチック・ラブストーリです。二人の恋は不純物一切なしのプラトニック・ラブで中々手も握れないほどの純情派なのですが、でもパートナーがどうすれば喜んでくれるだろうかと若い高校生なりに真剣に考えてネガティヴな事は思い浮かべずに大胆に実行するのですね。日向は親友のカワケンとフーヤンの力を借りて自分のできる精一杯を萌に捧げるのですが、運命の女神は残酷で本書は儚い悲恋物語なのですね。
夢追人009
2023/05/20 07:51

後半には涙腺が崩壊して号泣・落涙必至ですので、なるべく電車やバスの中では読まれませんようにと御忠告しますね。人生のベテランの大人の方も若き日のピュアな自分を振り返って懐かしい思いにかられる読書になるでしょう。#NetGalleyJP

夢追人009
2023/05/20 07:51

私の誤解により一部間違った内容を書いた事に気付きましたので、削除修正して再掲載させて頂きました。みなさま、誠に申し訳ございませんでした。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの無邪気な童話を読むと童心に帰れて心が和み、嫌な事も一切合切全て吹き飛んでしまいますね。草の中で虫たちが寄り合って相談し、合奏会をしてお月様に聞かせようと決まりました。スイッチョが「スイッチョスイッチョ」、オケラは「リーリー」、蟋蟀(こおろぎ)は「チンチロリン、チンチロリン」、鈴虫は「リーンリーン」と静かに合奏すると十五夜のお月様が感心してご褒美にと虫たちの大好きな露をたくさん草の上に撒いてやりました。そこへ轡虫(くつわむし)がやって来て自分を仲間外れにしたと腹を立て「ガチャガチャ」と騒いだ。
夢追人009
2023/05/18 08:57

みんな大声に驚いて逃げ出し、轡虫は大威張りで俺は夜鳴く虫の中で一番の大きな声なんだぞ!と自慢しながら尚もガチャガチャ鳴いていましたが、やがて通りかかった人間の兄弟に頭から網をかぶせられ虫籠の中へ入れられてしまいました。まあこういう乱暴者には終いにはお仕置きの罰が当たるものですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の43編目は昨日の作品と似た内容の好編です。車(しゃ)という男は貧乏でありながら酒ばかり飲む男で枕元にはいつも酒がおかれていた。ある夜目が覚めて横を見ると毛がもじゃもじゃの狐が寝ていて枕元の酒瓶が空になっていた。「こいつは俺の酒友だな」と車は笑った。夜中に狐は起きると儒者の冠を付けた秀才の姿になりお辞儀をして殺さなかった恩を謝した。車は疑わずにこれから毎晩来たまえと招くと狐は恩返しに酒代を得る数々の助言をして富裕にし車が亡くなると狐もとうとう来なくなった。人と獣の友情話は良いですね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夫殺しの容疑で刑事に取り調べられるヒロインのルビー。示される四枚の写真は彼女のすぐ近くで死んだ人間ばかりである。夫は糖尿病患者で不慮の突然死だったのだが、実は残りの3人は彼女が殺していたのだ!ヒロイン・ルビーの語りで進行するドラマは過去の記憶を今の瞬間に蘇らせライブ感覚で生々しい臨場感で読者に訴えかけます。そうですね、やはり本書はアメリカのドラマならではの大胆さで、この感覚は日本では考えられない独特なムードがありますね。彼女は悪人と判断すれば情け容赦なく瞬時に殺す冷酷な悪魔の顔と、ペットの犬猫を心から愛し
夢追人009
2023/05/17 21:18

臨床心理士として真摯に患者に向き合う天使の顔を同時に併せ持つ人間なのですね。潔癖な方には我慢できないでしょうけれど普通に幸せに生きる彼女に接すると、どうしても肩入れしてあげたくなるのが人情なのですね。本書にはミステリとして大きなサプライズはありませんが、最後の方で意外な仕掛けが炸裂する展開上の面白いトリックが楽しめます。彼女は果たしてどうなるのか?行き詰る展開のサスペンスに満ちた極上のドラマを最後の最後まで心行くまでお楽しみ下さいね。#NetGalleyJP

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
高校生でアイドルユニットの一員として活動した菜里子と幼い頃からアイドルに憧れて地元ライブで彼女を見に行った環の二人が成長して小さなデザイン会社の社長と新入社員の立場で再会する波乱に満ちたお仕事+人生を描いたダブル・ヒロイン小説です。菜里子はアイドルの過去を封印し、環は確信しながらも遠慮して言わない、ぎくしゃくした関係で最初は空回りなのが徐々に歯車が回り出し好機到来となりますが、薔薇色だけの甘い物語ではなく著者は終盤二人に予想外の悪夢の試練を与えるのです。上司と部下、親と子、恋人達と友人同士の関係について、
夢追人009
2023/05/17 20:36

本書は読者に人生の気付きと学びをもたらしてくれます。人生は挫折しても苦い経験から学んでもう一度やり直し過ちを修正して盛り返す事ができる。本書はまだ人生経験の豊富でない方々に進むべき道を示し勇気づけてくれる小説だと思います。#NetGalleyJP

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの掌編で今回は童話ではなく中々に不気味な雰囲気のダーク・ファンタジー物語ですよ。巨大な四角いビルディングは窓が残らずピッタリと閉め切られ、黄色い細い弦月がジリジリと沈みかかる時刻に私は宿直室のベッドの上で長くなって疲れて眠りかけていた。すると壁一重向うの部屋からスヤスヤと寝息が聞こえ、もう一人の私が寝ているのだと気配を感じた。私はガバと跳ね起きバッチリ目が覚め隣室を覗きたくなったが、私がいてもいなくてもどちらでも恐怖だろうなと躊躇した。だがやがて突然の決心に襲われて私は裸足で寝台を飛び降りた。
夢追人009
2023/05/17 08:59

私は宿直室を飛び出して隣室に向かう暗黒の廊下を突進すると、何かしら真っ黒い人間のようなものと衝突して二つの身体がドタ―ンと床に倒れてウームと気絶してしまった。巨大な深夜のビルディングが、アハアハアハ、と笑う声をはっきりと耳にしながら。ああ、さっぱり理由がわかりませんが気味が悪くて恐ろしいラストですね!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の42編目は全く怖くない話ですが、ぜひ沢山の人に読んで頂きたい本当に良い話ですよ。安永年間のことで伊勢大廟の近くの蓮台寺村に澤田庄造という評判の俳人が住んでいた。彼は独り者で、ある日の晩秋の夕に外に一匹の古狸が蹲っているのを見つけると逃げもせず嬉しそうに尻尾を振るので食物を与えると食べて帰って行った。狸は頻繁にやって来て頭を撫でても嫌がらず雪の降る夜には家に泊めてやった。この事は村の評判になり先生様の狸に悪戯するなよと皆は子供にも言い聞かせた。やがて庄造が風邪をこじらせ重態に陥った。
夢追人009
2023/05/17 08:15

自分の死期を悟った庄造は枕元にいる狸に「いよいよ別れなくてはならなくなった。私がいなくなったら、もう人に姿を見せずに田畑を荒らさぬようにしろよ」と言い聞かせて帰らせた。その夜、庄造は村人達に看取られて息を引き取った。それから数日後、庄造の墓前に美しい着物を着て一束の草花を持った女が蹲り肩を震わせているのを村人が見て「もし」と声を掛けた途端に姿が忽然と消えてしまった。それはきっと例の狸だったろうと村人達は言い合い、その行為に感心した事で狸には決して危害を加えまいという不文律をこしらえさせた。泣ける話ですね!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの平和で無邪気な優しい童話です。たいそうあたたかくなって、猫が金魚を狙っていると、それを見た犬が猫を狙い、坊やは空気銃で犬を狙って、お父さまは坊やを懲らしめようとし、お母さまがこの全部の様子を見てどうすればよいのかわからず心配していると…。突然近所で砲台のドン!という耳も裂けるくらい大きな音が全ての災厄を吹き飛ばし、いっぺんにハッピーエンドへと導きます。恐ろしい戦争を連想させるような砲台の大砲の音が逆に平和の呼び水になるという逆転の発想が面白い最後にホッとして心が安らぐ現代のおとぎ話でしたね。
るい
2023/05/16 08:26

今頃気が付いたのですが、この表紙の本は、kindle版で無料というものですか?

夢追人009
2023/05/16 08:31

Ruiさん、そうですよ。毎日茶色の表紙で書いている作品はみんな青空文庫で無料で読めますから気軽に読んで楽しんで下さいね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の41編目は法衣と書いて「ころも」と読ませる全然怖くはないけど奇妙な話ですよ。ある尼寺があり尼僧と親しい若い男が毎日寺へ遊びに来ていたが、ふっつりと来なくなった。尼僧が心配していると、ある日当人がひょっこりやって来て病気だったですと言い法衣を貸して欲しいと理由を聞いても入用なのですとだけ言って許されると嬉しそうに帰って行く。暫くして尼僧が寺の玄関に行くと先程貸した法衣があったので驚く。何も言わずに返したのを不審に思っていると若い男の家から使いが来て、男が長患いの果てに死んだと告げる。
夢追人009
2023/05/16 05:15

尼僧は先程の男が仮に姿を現したのだなと知った。男の家に行って母親に何か心当たりがないかと聞くと男の寝衣が後から後からと汚れるので浴衣を着せると同様に汚れ、昨日から女の寝衣を着せると男は非常に嫌がっていたとの事であった。まあ何ともはや理由のわからない話ですが、男は死んでしまい法衣が不要になったので返しにきた事だけは確かですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの健全で正常でまともなお話です。ある国で一番上手なお医者さんがある町に招かれて来た時の顛末です。作者はきっと何の憂いも心配もない非常に良い精神状態の時にこの物語を書かれたのでしょうね。でもまあこの医者の判断はあまりにも大雑把で呑気で大丈夫かいなと思わなくもないですね。英語だとワーキング・タウンでしょうかね。まあ「ゲゲゲの鬼太郎」の歌詞のように「お化けは死なない、病気も何にもない」や不老不死社会が究極の理想ですね。まあ中々に難しいですが夜更かしせずに夜は早くさっさと寝るのが健康の秘訣でしょうね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の40編目はシンプルな掌編で具体的な人名が書かれていますからノンフィクションなのでしょうかね?小説家の山中峯太郎君が広島市にいた頃の実体験談。山中君はまだ九つの時で、近くの女学校が焼け出されたので家人が裏の畑から見物している間、少年が一人で台所に立っていると悪寒を感じて眼を上げると頭上の天井からぶらさがる大きな足を見た。それは確かに人間の足ではっきり見えたが指が大人の腕ぐらいあった。呆然と見ているとニ三分も経った頃に足は煙のように段々と消えていった。子どもには強烈な思い出でしょうね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
蘇部健一さんのデビュー作でメフィスト賞受賞作の六とんシリーズの第1作で前々から読もう読もうと思っていまして今回やっと読み終えました。おバカなユーモアミステリで最初は真面目な謎が提示されて期待させますが、その内にズッコケて、しょーもなくろくでもない結末を迎えるパターンで前書きで著者自身が書いている様に阿保らしくて情けなくて腹が立って本を床に叩きつける人も確実に出るでしょうね。主人公は保険調査員の小野由一で、友人で名探偵の古藤と同僚のおデブな後輩・早乙女の二人が相棒です。全15編+理由不明の未完のエピローグ。
るい
2023/05/14 07:53

夢様、大爆笑のレビューですね。六枚のとんかつ 改訂新版 (講談社ノベルス) 新書中古商品 -¥29,980  って、凄い。わが図書館に単行本は未所蔵でしたが2002年の文庫本がありました。六とん4までありましたね。

夢追人009
2023/05/14 08:00

Ruiさん、コメントをありがとうございます。へー、そんなにレアーな本だったのですね。私が持っている本は数年前消費税8%の時にブックオフで108円で買いましたよ。まあ、それはともかく面白い内容ですので今後も多くの人に気楽に読んで欲しいですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんは愉快な動物童話を幾つか書かれていまして、前日に読みました「二つの鞄」もよく似たパターンの一種で仲の悪い者同士の掛け合いのやり取りがあって最後は人間が絡んでオチとなるのですね。豚が猪に向かって自慢をしました。私は食べる事から寝ることまで人間にすっかり世話して貰い御馳走はイヤという程食べるからこんなに太っている。人と喧嘩をしないから牙は必要ないし私とお前さんは親類だそうだが、こんなに身分が違うのかね。猪は話を聞くと笑って言いました。人間はただでいつまでも御馳走を食わせておく様な親切者じゃないよ。
夢追人009
2023/05/14 06:45

人の厄介になって威張るものは今にきっと罰が当たるから見ておいで」猪の言葉は図星で、豚は人間に殺されて食われてしまいました。まあ猪も遅かれ早かれ人間に狩られて鍋で食べられますから誠に二匹とも可哀想ですが仕方ないですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の39編目は少しも怖くない逆にお目出たい良い話ですね。製薬会社「わかもと」の事務所が寺院の一部にあり「あなたの所は、どうしてこんな所に事務所を置くのですか」と聞かれて「わかもと」が貧乏のどん底から寺に入ると、めきめき発展を遂げたので狭くもあり他に移転しようとしたら住職に留められここに入って失敗した者がないと翻意させられたと言い、やがて何千万円という資産を作り店はますます繁盛したので不自由だが、それで出ないのだと言う。この寺の中には福の神やざしきわらし的な存在がいるのかも知れませんね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
夢野久作さんの作品は「ドグラ・マグラ」を若い時に読んで以来で短い作品は全く読んでいませんでしたが、こういったユーモラスな童話風の作品もあるのかと意外でしたが中々に面白くよかったですね。お店に並んだ大小2つの鞄が擬人化されていて、大きな鞄は小さな鞄を中に入れられると馬鹿にすると、大きな鞄は人間に粗末に扱われ小さな鞄は大切に扱われる事で優越感に浸ります。大きな鞄は自分を投げ飛ばしたりする人間に怨みを抱いて、火事で小さな鞄が自分の中に入れられて運ばれた時に、自分の口をしっかりと閉じて小さな鞄を出すまいとします。
chisarunn
2023/05/13 13:21

巨大な鞄は高い擁壁を乗り越えて人間の街を破壊し尽くし…「進撃の鞄」のアニメが始まるよ!ちゃうやろ、「進撃の巨人」やろ!

夢追人009
2023/05/13 17:01

ええ加減にしな🦏!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の38編目は本当に呆気ない掌編ですね。そもそも炭取りというのが何なのか今ではよくわかりませんが、木炭を小出しにしておく入れ物で火鉢や炉に炭を継ぎ足すための道具だと言うことで段々と消えてゆくものがありますが、この話の存在と共に人々の記憶に残るのはいい事ですよね。母親を亡くした子供が二階で親父らニ三人と寝ていると階段を上がって死んだ母が上がって来る。子供の枕元に来ようとした母親の着物の裾が触れると炭取りの位置が変化して、一緒に寝ていた祖父らが皆一緒にうなされたという。これでお終いですよ。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
異端派の本格ミステリ作家・白井智之さんの第2作は、とても辛い読書でした。男女のどちらかがパートナーの肛門から体内に入ると結合人間になって手足が4本ずつになるなんていう摩訶不思議な事をよく考えるもので、それはまあ辛抱すればいいのですが、やはり命が粗末に扱われる点が読んでいる間中一番情けなかったですね。警察は存在感がなく殆どの人物が平然と無造作に殺人を犯し、メインの事件の殺人動機もよくわかりませんでした。真面目な人間もいますが、無能・無力な存在として描かれており要するにこの世界では正義は機能していないのです。
夢追人009
2023/05/12 18:00

そこは目をつむって読むと特殊設定ミステリとしては多重解決や意外性や波乱があって楽しめますが私は本書の謎解きに関しては、やや辻褄合わせの感が強く思われ、ごちゃごちゃとして全体的に整合性が合っているのか非常に判り難くて判断できませんでしたね。著者の流儀でアウトローの側から描く悪漢小説の立場なのでしょうけれど他の作品全てが悪の勝利で終わる非情な物語でもないでしょうから、気分を変えて再度以降の作品にトライしたいですね。そうですね残念ですが潔癖でノーマルで真面目な性格の方には本書を読む事を絶対にお勧めできませんね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の37編目はシンプルでドラマチックな心を奪われる話ですが唯一ラストは苦く惜しかったですね。土佐の大塚という侍は殺生好きで、いつも狩猟期になると銃を肩にして出かけて行った。その日は獲物に恵まれず灰色の兎を見つけて追う内にふいに地面に空いた穴から古井戸の底に落ちてしまった。彼が誰も助けに来てはくれまいと絶望し切腹しようかと思案しながら迷っていると上から赤い顔の大きな白サルが覗き込む。そして暫くすると何と藤蔦が穴の中へと降りて来たのだ。彼が蔦を握って待つと上から誰かが引っ張り上げてくれた。
夢追人009
2023/05/12 09:50

上に登り切ると大勢の猿がいて引き上げてくれたのだった。だが彼は礼心を忘れ先程見たサルのボスと思しき大猿を無情にも銃で撃ち殺してしまう。残忍な彼は大猿の死体を家に持ち帰り、庭の鉤に吊るして昼間の話を女房や女中に話す。すると行灯の傍らに白い大猿の姿が見えて彼は「猿が」と気味悪い声を出してひっくり返る。大塚はその夜から病気になり「猿が猿が」と叫びながらとうとう死んでしまった。この大塚家では代々猿ということを口にしなくなり、もし口にすると不思議な事があったという。残酷に恩を仇で返す所業を為した彼は自業自得ですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の36編目は実話のムードが濃厚な鬼気迫る名作ですよ。吉平(よしへい)は愛知県の江此間の海岸で目覚め、しまったと思った。村の油屋の娘・阿芳(およし)と心中を企てたが無意識に怖気づいて泳いでしまい自分だけ助かってしまったのだ。翌朝、女の死体が見つかり吉平は村に居たたまれなくなってニ三日の内に逃げ出す。吉田の旅宿に着いた吉平に女中は二人分の膳を出し奥様がいらっしゃったと言う。食事しようとすると蒼い手に触れられむくんだ顔でズブ濡れの着物を着た阿芳が立っていた。吉平が椀を投げたが壁にぶつかる。
夢追人009
2023/05/11 08:19

夜中の一時頃、吉平の目が覚めると阿芳が立っていた。彼は部屋にあった刀を手に取ると阿芳に斬りつけたが体をすり抜け襖に当たる。吉平は音を聞いて入って来た女中と主人を続けて刀で斬り殺すと主人の体に躓いて往来に飛び出し刀で串刺しになり絶命する。何年か後に吉平の姪が製糸工場の女工になり寄宿舎で叔父の幽霊を見てしまったので、すぐにお寺でお経をあげてもらうと以後出なくなった。江此間の海岸の自殺現場の土地は阿芳の怨霊を怖れ誰も手を付けなかった。阿芳の怨霊は明治の終り迄は有名で昭和二年に芝居が来た時5日連続で大雨が降った。

夢追人009
2023/05/11 08:20

芝居はめちゃくちゃになり、土地の人が阿芳の怨霊と結び付けたのだった。うーん、凄惨な誠に恐ろしい怪談噺ですよねえ。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の35編目は今も良く読まれているポピュラーなネタの元祖ですね。この話は割と長いですがストーリーは単純な繰り返しで劇的に大きな変化はありませんよ。明治三十四五年の頃に喜多村緑郎さんが道頓堀の旭座で吉原心中の芝居をやっていて泉鏡花氏の湯女の魂「汽車がトンネルに入ると女が傍らに見えたり汽車を降りると車夫がお二人さまでいかがですと言ったり一人なのに第三者には供があるように見えるという内容」で、とんだ屋の客が喜多村さんを店に連れて行って話をすると店の老女にも似た話の心当たりがあるとの事だった。
夢追人009
2023/05/10 08:24

四五年前に心斎橋の料亭・幡半にきた若旦那ら四人の一行に対して店の者が五人前の布団・お茶・料理を用意する。これは誰かに憑いていると一人が言い出したので、一行は翌日も和歌山の浜寺の料理屋・一力に行くとやはり昨日と同じ五人前を用意された。帰りに送ってくれた店の女中に聞くと銀杏返しに結った方がいらっしゃると答える。停車場で、とんだ屋の客の別の一行と会って少し安心し心斎橋で降りて料理屋・丸万の店に入ると同様に五人前を用意された。とんだ屋に行って話をし汽車で同行した一行に自分達は何人だったか聞くと五人と答えたという。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の34編目は怖い話でなく意外な人情ですよ。やや拍子抜けしますが落語のような好い話ですよ。小八という男が江戸から立山の亡者宿へやって来て主人に評判を聞いてきたから先月に25歳で死んだ女房に会わせてくれと頼む。主人は一両を手数料として受け取り明日、案内人と共に山の中の地獄へ行きなさいと言い、だが絶対に亡者に話しかけてはいけないと注意をする。小八が翌日案内人に連れられて行くと白い着物を着た女が現れたので彼は主人の注意を忘れ女に声を掛け追いかけて捕まえる。女は五十両で宿に売られた者だと話す。
夢追人009
2023/05/09 08:54

なあんだ、お前は亡者でねえのかと小八は落胆するが、俺と江戸へ行って暮らさないかと女を誘う。女は同意して主人に断らずに二人で立山から逃げる。宿の主人は小八の手荷物から彼の身元を突き止めると二人を追って江戸に行く。小八は家主を間に入れて宿の主人と談判するが解決しないので町奉行所の裁きを受ける。奉行は亡者商売の噂は聞いておると言い宿の主人にいかさまをやめて普通の商売に戻し亡者達を里に返してやれと命じ、小八に一両を返金させる。二人は和解し家主老夫婦の仲人により小八と元亡者の女は祝言の盃を交わし宿の主人も同席した。

夢追人009
2023/05/09 08:54

小八にはいつの間にか幽霊小八という綽名が出来ていた。まあこういうニッコリと微笑ましい人情話もたまにはいいですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の33編目は少し長めですがシンプルで最後にぞっとするオチが待ち受ける読む価値のある面白い話ですよ。新吉は雑踏の中で女の顔を見ては物色していた。最初は探す女が見つからなかったが遂に田舎から来た風情の若い女をつけてベンチに座ると話しかけて女が水戸から出てきて奉公先を探している事を聞き出す。新吉は私が世話をしてあげますと言って女を下宿屋へ連れて行き、女将さんに頼んで親子丼を拵えてもらい女に食べさせる。公園で女を誘拐した悪漢の新吉は外に出て清水家という怪しい店に女を渡す話をつけて帰って来た。
夢追人009
2023/05/08 08:46

酒を饗応され上機嫌の新吉が二階へ上がって部屋に入ると隅に置いてあった机が真中に出ていて、その上に先の女が首ばかりになって白い長手な顔をこっちに向けてにっと笑っていた。新吉は怖れて目がくらみ後退ると階段を踏み外して落下した。起き上がると戸外へ出て走り出し真っ暗な世界を走る内に、ふとバーのような入り口に白いカーテンの垂れたにぎやかな家が見えた。彼が中へ入ろうとすると左から黒い戸が移動して邪魔をした。行き過ぎたので隙をみて入ろうとすると今度は右から戸が来て、これが悪夢のように何度も繰り返されて結局入れなかった。

夢追人009
2023/05/08 08:47

新吉の体は公園裏を通っている電車の下になっていた。悪党が成敗されてめでたしめでたしですが、それにしても背筋も凍る何て恐ろしい結末なんでしょうね!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
第38回太宰治賞(2022年)受賞作で著者の野々井透(とう)さんは女性です。幼い頃にある事情により母を亡くし父と3人で暮らす春野(39歳)と五つ下の澄香の姉妹に突然、父が余命一年だと告げられ二人は相談して限られた時間を全うしようと話し合う。姉妹は男性との間に子孫を残す事を望まない主義であったので縁談は流れるが父はそれについて少しも責めたりしない。純文学という感じで文章が美しいです。ヒロインの姉・春野は時に胸がむるむるするという独特な表現の感情に駆られますが大きな激情には流されず淡々と日々は過ぎていきます。
夢追人009
2023/05/07 18:46

著者は死をテーマに扱いながらも決して重々しくはなく悲しみや切なさを感じさせません。本作は生真面目一本鎗でユーモアもありませんが生きる事に希望と勇気をもらえる内容だと思います。書き下ろし短編の「らくだの掌」も死をテーマにした作品ですが、こちらは砕けたユーモアが感じられて結末は少し寂しいのですが私は好きで、やはり読後に人生頑張らなきゃという気持ちが湧いてきますので今後の著者の作品に期待が持てると思いますね。#NetGalleyJP

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
八木詠美さんの待望の第2作で今回も惚けた奇妙な味わいのファンタジー小説に仕上がっていますね。ヒロインのホラウチリカはラテン語ができた事から博物館の古代ローマの女神ヴィーナス像と週一度のおしゃべり相手になる仕事を引き受けます。普段は冷凍倉庫で働く彼女は最後に思い切った決断をして行動するのですが、それは読んでのお楽しみとしまして、常識外れのエピソードで私が大好きなのはネット予約した美容院に行くと葬儀屋で死者の髪結い女性が手すきの時に生者に仕事をすると言う訳で、リカは髪のスタイルを聞かれ「いつもの」と答えます。
ロドパパ
2023/05/07 10:59

夢追人009さんの素敵な感想を読んで、読みたくなりました。読みたい半に登録させてもらいます。

夢追人009
2023/05/07 11:07

ロドパパさん、ありがとうございますね。本書はあまり人生で役に立つような有意義な本ではありませんが、ナンセンスな面白い本ですのでお気軽に楽しんでお読みくださいね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の32編目は非常にポピュラーな話で小泉八雲さん他多くの方が書かれているようで当然ながら細かい表現の違いだけで大筋は同じですね。この話の重要なポイントは、冒頭で木こりの頭の茂作と若者・巳之吉が雪女に襲われて年寄りの茂作は絶命しますが、若くて美男子の巳之吉は助けてもらうという場面で、教訓として何時の世も「イケメンは身を助く」という事が言えるでしょうね。また最後に雪女が巳之吉と夫婦になって十人の子を産んでから雪女の話を他言した巳之吉を許して去っていく場面も温かい人情が感じられて良いですね。
びわこっこ
2023/05/07 09:25

雪女は、何を例えたものでしょうか?

夢追人009
2023/05/07 09:31

うーん、中々に難しい質問ですね。教養がないから私にはわかりませんね。答になっていませんが、雪女の伝説は雪男イエティよりも歴史は古いのですね。それからウルトラマンの怪獣ウーのモデルは雪女で怪奇大作戦の最終回は雪女でしたね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の31編目は怖くない掌編で女心を感じさせる一編ですよ。禅寺の若い美男の僧が付近の若い女と関係している内に己の非行を悟ると共に大いに後悔して田舎へ行って修行する事にした。関係していた女はひどく悲しみ別れの日になると衣の腰に付ける一本の紐を持って来て「これを私の形見に一生身に着けて下さい」と渡した。女が腰に紐を巻き田舎の寺へ向かった僧は途中で宿へ泊った。夜中に目覚めると紐が這って来て寝床の中に入った。翌日鋏を借りて紐を断つと中には女の髪が詰めてあったという。実際ありそうに思える話ですね。
が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の30編目は中国の怪談が伝わった話で、風の寒い夜に三ノ町という所の農家に一人の旅僧が来て雨戸を叩き宿を乞うた。冷酷な亭主は知らぬ振りをしていたが旅僧が何度もしつこく粘るので遂に根負けして家に招き入れた。主人がこっそりと旅僧の様子を覗き見すると囲炉裏の燃え残りの火を右手の指五本に付けて赤々と室を照らし鼻の穴に拳骨を突っ込むと中から小人の人形が二三百人程出てきて鍬を手に水田を耕してできた米を鍋に入れ火で温め食べた。水を含んで吐き出すと蓮の花が咲き蛙が鳴いて合掌した。亭主は怖れ隣家で話す。
夢追人009
2023/05/05 11:38

「それこそ妖怪(ばけもの)だ。逃がすな」と隣家の者たちは棒や鍬を持って亭主に従う。部屋は元の姿に戻って旅僧は寝ていた。十五六人の男達が旅僧の手足と頭を掴んで抑えたが、目を覚ますとふっと抜けて、ひらひらと舞って酒の徳利に入った。皆で蓋をして持ち上げようとしたが重くて叶わず、ごろりと転がったので鍬で打ち砕こうとすると中から黒い煙が出て徳利は二つに割れ、旅僧の姿は忽然と消えてしまった。本作は怖いと言うよりもファンタジーみたいな話で、妖怪変化はとても人間の歯が立つ相手ではありませんね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の29編目は海の怪異の可哀想な話です。これは小説家泉鏡花氏の話である。房州の海岸に住む若い漁師の女房が夕飯の支度をしていると表に薄汚い坊主が来て家をじろじろと覗き込んだ。女房は握り飯をこさえて差し出し続いて銭を差し出したが坊主は一向に受け取ろうとしない。暗くなり海が時化て荒れてくると女房は不安になり漁から帰ってきた若い男たちに事情を話すと男たちは「怪しからん」と言って坊主を皆でさんざんに殴りつけ波打ち際へ投げ出した。夫が帰り女房が話をして夜寝ていると外から「おうい」と悲痛な声がした。
夢追人009
2023/05/04 08:28

「あ難船だ」と猟師は飛び起きて磯の方へ行くと目の前の岩に坊主が立っていた。猟師が「やい、何してるのだ」と聞くと坊主はぐしょ濡れの法衣中から手を出し漁師の家を指さした。猟師が振り返ると家から赤ん坊の泣き声と女房の悲鳴が聞こえた。「何しやがる」と坊主に掴みかかろうとしたが海へと姿を消した。猟師が家へ駆け込むと女房が冷たくなった赤ん坊を膝にして顔を変え目を引き攣らせていた。まあ若者たちから暴行を受けたのは事実ですが、この海坊主は最初から悪意を持って家にきたのだと思えてなりませんね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の28編目は正統的な怪談噺の秀作でクライマックスが迫力満点で楽しめますよ。行商人の独身男・甚九郎は突然やってきた旅の女に同情して泊めてやり段々と気心が知れて金三十両を示されて夫婦になる。だが隣に住む男が気になって家を覗くと恐ろしい顔をした女が油を飲んでいる姿を見てしまう。男は甚九郎に教えると何とか話を拵えて妻を郷里へ帰らせようとするが全く応じない。彼はもう殺す以外に手はないと悟って妻を旅に誘い山路の途中の小さな辻堂で弁当を食べようと誘って油断させ腰の脇差で女の胸元を突いて逃げ去った。
夢追人009
2023/05/03 10:19

気が付くと寺の門前に立っており中に駆け込むと六十前後の僧が彼を見て「その方は今山姑に会ったな」と直ちに見抜いて子細を聞く。僧は女の死骸を持って来させて額に鬼畜変体即成仏と七字を書いて首に血脈袋と数珠をかけて新しい棺桶に入れさした。「その方はこの棺を仏壇に供えて傍らで朝まで念仏するが好い。どんなに恐ろしい事があっても声を立ててはならん。もし声を立てると生命がなくなるぞ」夜中に雨が降り出すと死骸が棺から出て口が裂け額に牛のような角があった。死骸は彼に飛びかかろうとしたが、血脈袋と数珠に阻まれて果たせなかった。

夢追人009
2023/05/03 10:20

その内に朝になり死骸はバッタリ倒れてしまった。甚九郎はその住持の許で剃髪して僧となった。まあ最後は何とか無事に命が助かってヤレヤレで良かったですね。

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の27編目は力作・名作で今読んでも感動する落語のようないい話でしたね。本作は少し長めですが、ぜひ多くの方に読んで頂きたい逸品ですよ。今回も例によってストーリーを端折って書きますよ。お婆さんが死んだばかりのお爺さんの墓参りをしようと支度をしていると孫娘が訪ねてきて里芋をくれた。二人で墓参りをして夕暮れに家に帰ると椀に盛られた餅が五つばかり置いてあった。はて、誰がくれたのだろう?と首を傾げながらお婆さんは夕飯に孫娘のくれた里芋を食べて餅はもう腹一杯だから明日にでも食べようと後回しにする。
夢追人009
2023/05/02 17:50

まあ本当に手の込んだ詐欺を考えて儲けようとする悪党は昔からいたのですね。お婆さんは小食で毒餅を食べなくて命拾いしてよかったですよね。悪党は滅びて善人の勝利でバンザーイ!ですね。

あたびー
2023/05/02 20:30

バンザーイ!!

が「ナイス!」と言っています。
夢追人009
田中貢太郎さんの怪談噺の26編目はいつもと違って全7章と読み応えのある中編小説です。旅商人の新三郎が出かける間に家では女房のお滝と息子・新一、手伝の婆さんが留守を預かっていた所ある夜から悪い狐が忍び込んできてお滝に取り憑く。母思いの孝行息子・新一が勇気を出して狐に短刀で斬りつけ、寺の墓場で女の名前を書いた帳面を読む獣を見かけたりして中々元に戻らない母を心配しながら遂に殺して退治する物語ですね。欲を言えば狐との迫真の対決シーンとかがあれば尚よかったですが、最後まで気をもませる面白いサスペンス怪談噺でしたね。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/05/06(2264日経過)
記録初日
2018/01/20(2370日経過)
読んだ本
3025冊(1日平均1.28冊)
読んだページ
488888ページ(1日平均206ページ)
感想・レビュー
3025件(投稿率100.0%)
本棚
0棚
性別
血液型
A型
現住所
奈良県

参加コミュニティ1

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