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2024年11月の読書メーターまとめ

どみとる
読んだ本
9
読んだページ
2771ページ
感想・レビュー
9
ナイス
97ナイス

2024年11月に読んだ本
9

2024年11月にナイスが最も多かった感想・レビュー

どみとる
前巻で読者をドン引かせる外道ぶりを披露し目下更生中の武松が「同じ闇」を嗅ぎ取ったという公孫勝。色白・無表情・3年間の獄中期間・・・一体どんな過去を秘めているのだろう。そんな彼の作った致死軍の活動も本格化し、その手段を選ばぬ残虐非道ぶりに食傷気味になる。だからこそ、それを率いる石秀の苦悩になんだか安心してしまう。安心といえば史進の師範:王進の存在感。精神力・戦闘力ともに圧倒的な存在として描かれる彼が、梁山泊には加わらず独立し、でも皆の道標を示す北極星の如く鎮座するこの安心感。読者にとっても大切な拠り所だ。
が「ナイス!」と言っています。

2024年11月の感想・レビュー一覧
9

どみとる
間違いなくこれまでで1番面白い巻だけど、好きだったあのキャラもこのキャラも死んでしまった。遼に潜入した魯智深(生きててよかった!)は何の成果もないままとんでもない怪我だけ負って柴進の待つ滄州に帰って来るが、この失うばかりの旅は梁山泊にとって後々どういう意味を持つんだろう?青蓮寺側のキャラの深掘りも進み、単なる敵組織に留まらない魅力を携えるように。予想外に面白かったのが清水辰夫の解説で、「端的に、劇的に」って感じの北方構文にちょっと疲れてきた身には清水の自虐&アイロニーの効いた文体に喉が潤う思いがしたよ。
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どみとる
香西はプラトン『饗宴』の逸話を紹介しながら、あらゆる議論や著述活動は未来永劫に自分(の考え)を生きながらえさせんとする《心霊的生殖》活動なのだと説く。相手を議論で打ち負かしたいというこの思いも、突き詰めれば永遠なるものへの執着だと判れば途端に虚しく思えてくる。とはいえ誰しもが持つ本能。故に人は時に詭弁を用いて自らの思考の正しさを受け入れさせようとする。内容はこれまでの焼き直し感が否めないが、「叙述に勢いと活気があるとその面白さがそのまま論理の信憑性にすり替わってしまう」などハッとさせられるものも。
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どみとる
異国で採用活動中の魯智深が出てこないので淋しい。この坊さんが作中でいかに掛け替えのない存在か実感するね。この巻では李富と馬桂の中年の性を何度も見せつけられ辟易するが(メイン読者たる中年男性へのサービスなのか?)、新たな登場人物たる穆弘と李俊の一本筋が通った人物同士の拮抗関係が好ましいし、宋江がせっかく釣った巨鯉を横取り(!)する李逵の無骨で無教養ながら純粋な姿がとても微笑ましい。素直に鯉を貸しにしてやる宋江もなんだか良いし、どうせ宋江は釣りやしないだろうとちゃんと食料を買ってきといてやる武松もとても良い。
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どみとる
論理的思考が持て囃されて久しいが、結局のところ人は感情で動く非論理的存在である。事実と意見は区別するのが論理思考の定石だが、《彼はワクチンに反対だ》という文から多くの人が何かを感じ取るように両者は簡単に区別できない。また裁判官と殺人犯が死刑反対をそれぞれ唱えたときに聞き手の受け止め方が異なるように、語り手は語られた内容の一部である。そもそも論理的思考は論者間の対等な人間関係を前提としてる時点で実用的ではない。であるならば、必ずしも論理的でないこの世界において論理のお作法から外れることの何が邪道だろうか。
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どみとる
レトリックは偽善的な解釈によって正当性を与えられて過ぎている―。その不当な市民権獲得を危惧する著者は、レトリックが本来持っていた狡猾で邪悪なポジションを取り戻してやるべく、付与された余計な正当性をひっぺがす作業にせっせと勤しむ。誰もが「正しい」と思う意見に弁論の技を凝らす余地はないから、レトリックは必然的に「正し」くない判断を論証しようとする、つまり詭弁を志向する。古代ローマにおいては知識で論破できてもなんら名誉ではなく、むしろ知識の助け舟なんか借りずに卓越したレトリックのみにより論証できること
どみとる
2024/11/17 14:56

こそが是とされていたそうな。確かに個々の弁明の力量を純粋に測りたいのなら、与えられた命題に対してめいめいが持っている知識の差は弊害でしかないかもね。

どみとる
2024/11/17 14:58

しっかしこの著者ほんとうに性格悪いな。プラトンとかヒュームとか偉人にもなんら臆さず矛盾点ついてくのみならず彼らの虚栄心まで暴いてしまう意地悪さが大胆不敵でめちゃめちゃ面白い。

が「ナイス!」と言っています。
どみとる
前巻で読者をドン引かせる外道ぶりを披露し目下更生中の武松が「同じ闇」を嗅ぎ取ったという公孫勝。色白・無表情・3年間の獄中期間・・・一体どんな過去を秘めているのだろう。そんな彼の作った致死軍の活動も本格化し、その手段を選ばぬ残虐非道ぶりに食傷気味になる。だからこそ、それを率いる石秀の苦悩になんだか安心してしまう。安心といえば史進の師範:王進の存在感。精神力・戦闘力ともに圧倒的な存在として描かれる彼が、梁山泊には加わらず独立し、でも皆の道標を示す北極星の如く鎮座するこの安心感。読者にとっても大切な拠り所だ。
が「ナイス!」と言っています。
どみとる
選択肢を誘導する問い、どちらを答えても相手の意のままになる問い、二項対立に見せかけて論点を巧妙にすり替えた問い...これらの前に我々はなんと無防備なことか。本書は狡猾な相手の巧妙な問いに隠された(ときに卑劣な)意図を痛快に暴く快作。意地悪な問いに正面から答える《answer》必要はなく、その妥当性に異を唱える《retort》ことも有用であり、議論の作法になんら反するものではないのだと。性格の悪さを隠そうともしない著者の不敵な筆致が実に良い。文学評としても一級で、特にイワン・カラマーゾフの考察など圧巻。
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どみとる
歴史小説に男女差別とか無粋なこと言うつもりはないんだけど、北方は男女の二項対立を使わずに男らしさ、強さ、猛々しさを表現することってできなかったのかな。青面獣楊志が賄賂の護送を命じてきた梁中書の声を「女の声」そのものって表現するんだけど、そういうなよなよしさや長いものに巻かれる風見鶏的性格を表す言葉なんてもっといくらでもあるでしょうに。あとは武松に凌辱された兄嫁の潘金蓮が犯人を明かさず「賊」と書いて自殺するんだけど、武松の名を出さないことで彼を守っただなんて加害者側が都合よく解釈しちゃいかんと思うぞ。
どみとる
2024/11/08 18:06

でも呼延賛の子孫の呼延灼とか楊業の曽孫である楊志が登場して興奮度が上がったのも確か。作品同士の繋がりを発見する面白みがあるのは北方作品の醍醐味のひとつ。

が「ナイス!」と言っています。
どみとる
楊家将の興奮冷めやらぬままうっかり手を出してしまった。舞台は宋末期。官は腐り、軍は威張り、民は困窮を極める中、熱き思いを胸に世直しの為に立ち上がった男達がいたー。村のゴロツキだった史進が王進による修行で心を入れ替え強くなったあとに陥る苦悩「では何のために強くなるのか?」という問いで不意に手が止まる。現代の若者の苦悩「何のために勉強するのか?」と同じではないか。現代の方の答えはもちろん《金》なんだけど、そうじゃないもっと道徳的で高次元な解を求めてみんな問い続けるんだろう。史進はどんな目的を見つけるのかな。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/11/04(2237日経過)
記録初日
2018/11/01(2240日経過)
読んだ本
160冊(1日平均0.07冊)
読んだページ
50436ページ(1日平均22ページ)
感想・レビュー
160件(投稿率100.0%)
本棚
0棚
性別
自己紹介

シルクロードを追い続けて今に至ります。
専攻はロシア文学

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