形式:文庫
出版社:KADOKAWA/角川書店
正義は存在せず、人命は紙よりも軽い。壮絶なこの戦争に終わりはあるのか?捜査陣の中に、裏切り者がいる。選び抜かれたメンバーのいったい誰が?密かに捜査を進めたケラーは、驚愕の事実に対峙する。圧倒的な怒りの熱量で読む者を容赦なくうちのめす。21世紀クライム・サーガの最高傑作。
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そして、その後のアート・ケラーの行動。 第5部冒頭の陰惨な光景や、〝戦争”というのが全く誇張ではない戦闘描写など 上巻以上に圧倒されっぱなしでした。また、ケラーが学んだ〝悲劇の歴史”の描写、 ある村で起こった出来事は、人間の残酷さに底はないのか…と暗澹たる気持ちになりました。 『犬の力』を読み終えた時も思いましたが、まだ続きがあるの?と驚くばかりです。
前作「犬の力」はエンタメ性が強かったが、今回は社会性に富んでいて作者のメッセージ性が色濃く出ていたように思う。戦争や紛争、カルテルの勢力争いが結果夥しい数の殺戮、カルテルとは無関係の、何の罪もない多くの市井の人々が犠牲になった事は現実味を帯びていて中南米のみならず世界中で今もなお終わらない深刻な問題として暗く投影されていた。上巻の冒頭の謝辞にあった数多くのジャーナリスト達の名前にも挙げずにはいられなかった作者の思念と意図が読み取れる。
カルテルは器やその中身を変えながら決して失くなることはなく存在し続ける。読み終えてしばらく放心状態だった。哀しみなのか怒りなのかはっきりしない涙が出た。あまりにも沢山の人を喪ったのだ。命を喪った人、大切な誰かを喪った人、そして自身の心を喪った人…少年のように。退行していった心身が痛ましい。もう戻ることはないであろうと悟りながら、それでも祈るしかない。
前作「犬の力」は、麻薬戦争の現実を訴えながらも、やはりエンターテインメントだった。 しかし、今作は違う。作中で訴えられたメッセージからは、確実に血の臭いがしたのだ。 それは、現実に目を向けてくれ。麻薬に手を染めないでくれという願いだったと思う。 それを裏付けるように、上巻のエピグラフでは、カルテルに殺されたであろうジャーナリストの名が4ページに渡って羅列されている。 これは、単なるフィクションではないのだと。
『犬の力』を再読してて気づいたが、アートの執念は本巻で遂に遂に実ったわけだ。エルニー・ヒダルゴの件は凄惨の極致やったからなあ。
本作は三部作のうちの第二部。え?まだあるの?何があるの?どうなるの??と、この先の物語が全く想像できない。ここまででも圧倒的な読み応え。なのに、これ以上何があるんだろう?そんな作品を読むことが出来るワクワク感半端ない。
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