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八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

感想・レビュー
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ジャンズ
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映画は見たことがないけれど断片的な雪中行軍の映像が目に焼き付いていた。私の中では八甲田山=極寒の吹雪で人の命を奪った恐ろしい山のイメージがあり、この本のページを開くのが怖かった。時代は日露戦争直前。狂風、凍傷、200人もの死者....という言葉が読む前は先行していた。一人の上官の判断ミス(それでも下士官は暖を取るときに上官の為に尽くす)、連隊同士の競争、装備不足がこの本の芯となった。発狂して亡くなった人、自決した人、生き残った人、誰にとっても辛さしかない。
0255文字
te
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情景描写や心理描写が素晴らしく、物語にグッと引き込まれた。第五連隊と第三十一連隊の対比、軍隊の中での階級の差、自身の出身の身分の差など、様々な要因が交差しながら結末へと進んでいくストーリーに没入し読了する事ができた。実際の八甲田山雪中行軍遭難事故を元に著者が脚色してできた小説である。読み応えと共に、その壮絶さが十分に伝わるものであった。
0255文字
blue-brass
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28年ぶりの再読と言えど、31連隊の一員となりて行軍に加わり徳島大尉の指揮下にあるが如く本書にのめり込めり。とりわけ白眉なるは「さわ女」が案内の下り(P82)。隊員の牽かれし存在となりし銀幕の秋吉久美子演ずるいと愛らしき様、ほのかに思い出されて放映あらば是非にも視聴せん・・などと明治の人よろしく文語調で始めてみたが、慣れないことはもうやめよう。感想登録の段になって著者が「寒冷地における人間実験」と表現するこの遭難事件を手記にもとづいて書いた本があることを知った。「新たな真実」って何? 借りに行こうかな。
0255文字
櫻井愛
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天は我等を見放した、この台詞で有名な八甲田山の遭難事件を描く。以前に映画で観ていたので、その記憶をなぞりつつ読んだ。映画では歩5の神田大尉と31の徳島大尉の友情が厚く、神田大尉を応援しながら観ていたがこの本では前半は徳島大尉の有能さに惹かれながら読んでいた。後半は徳島大尉の懊悩に気持ちを曇らせながら読んだ。また神田(神成)大尉は作戦担当者だったが、教導団出身の平民将校で士官学校出身の将校に引け目を感じていたため、指導役の大隊長に作戦主権を奪われてしまう遠因があったりと、不穏な種を抱えていたのが辛い。
0255文字
木漏れ日
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遭難した青森第5聯隊と、競わせる為に別の隊・弘前第31聯隊がいた事、第31聯隊は全行程の踏破に成功していた事は知らなかった。その二つの隊の生死を分けたものは何だったのか。天候、隊を率いるリーダーのあり方、出自による差別意識など、色んな事が重なってしまったからか。急激な天候の変化、前を行く人の姿も見えないくらいの猛吹雪の中、雪・風・闇・寒さ・空腹等と闘いながら行軍を続ける隊員たちの描写の切迫感は、実際にあった出来事というのも相まって凄まじいものがあった。
0255文字
Kimi
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かの有名な八甲田山雪中行軍遭難事件をベースにした「小説」。司馬遼太郎や塩野七生らと同様、これを史実と思ったら見誤る。山口少佐無能説を前面に出してる。それが本当かはわからない。 史実はどうであれ、雪山の恐怖が染みてくる。凍傷、彷徨、脱げ出せない恐怖。これを道路も整備されていない明治の世に演習があったのは恐怖。
0255文字
雨耕T
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ネタバレ八甲田山のドキュメンタリー映画に大変感銘を受けていたのでいつか読みたいと思いつつも読みにくそうで避けていた。読んだらドキュメンタリー映画で映像を見ていたこともあり、読みやすくとても興味深かった。ドキュメンタリーではほぼ第五連隊のことしか描かれていなかったが、同時期に反対側からの雪中行軍に挑み無事生還した第三十一連隊のことも詳しく描かれていた。無事だった、としか知らなかったが、実は彼らもとても大変だったと知りました。
0255文字
yapipi
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45年ぶりに再読。若い頃は冬山遭難の悲惨さや軍上層部の無責任さに暗澹たる思いで読んだ。けど、再読してみると当時の帝国陸軍が置かれた状況から、この雪中行軍はほぼやむを得ない実験だったのだろうと思う。神田大尉は徳島大尉より無能だったわけではなく、与えられた環境下でベストを尽くしたように思える。なお最後に、45年前はなかった山本健吉氏の解説が加わっているが、これはしょうもないものだ。それはともかく、新田文学はとても素晴らしい、不滅だ!
0255文字
大嶋
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ネタバレ読む前に、覚悟の準備が必要です。九割九分の兵隊が死亡し、奇跡的に生還できた者も、重度の凍傷の為手足を切り落とさなければならない。この手足の切断も、四肢全てですよ。だるまなんです。生き残っても、読むに辛かったです。  また、凍傷は末端から発生しますから、腕の切断は免れても、十本ある指のうち八本を切断しなければならないだとか。物語に、好転する兆しが全くなかったことも、つらかったですね。よく、こんなに淡々と描けたものだと、関心さえしました。面白かったです。読ませていただきました。
0255文字
ヒデキ
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ネタバレ何とも救いようのない話だな。日露戦争になったらロシアの海軍が津軽海峡を封鎖するかもしれない。そうなったら、山間部を通って移動するしかなくなるから、冬の八甲田山を踏破する実験をする。その動機は、確かに国防を理由とするもので、だから簡単に非難する事はできないのだが。案内人を雇った徳島大尉の率いる少数精鋭の隊は踏破に成功し、案内人も拒んだ神田大尉の二百十人の隊は百九十九人の死者を出す始末となり。踏破に成功した徳島大尉も、日露戦争で戦死か。何ともやるせない。救いは、当時の新聞が事実をちゃんと報道した事だろうか。
0255文字
だいきち
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北海道の旭川が-41℃を記録した明治35年に起こった雪中行軍の話です。史実を基にしたフィクションとの事で、どこまで真実かわかりませんが、リーダーの判断とそれに従うしかない部下が引き起こした悲惨な話でした。現代のマネジメントにも通じる気がします。 Wikipedia3大文学と言われる、死の貝、羆嵐、八甲田山死の彷徨を読破しました。ヘタなミステリーやホラーよりも読み応えありました。おすすめです
0255文字
金吾
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◎何度読んでも、指揮や準備の重要性について考えさせられる話です。また責任のない者の発言に左右されるのも指揮する人間にとり避けなければならないことも伝わります。
0255文字
ハチコ
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ネタバレ事実を元につくられた青森五連隊の雪山での遭難悲劇。イメージよりずっと読みやすかった。 川に飛び込むような極限状態と凍てつく身体の描写、排泄さえ命取りになることに雪山の恐さを痛感した。救助隊の幻覚を見て、これで母親に会えると様々な方言で喜ぶシーンは胸が締め付けられる思いだった。神田大尉の軍人としての最期も読んでいて苦しく、指揮を奪った山田少佐に腹が立ったが部下に救われた命を自決で散らす結果もまたその時代らしく虚しい。
0255文字
ken
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物語の概要は何となく知ってましたが、これほどまで読みごたえがあり、迫力ある小説だったとは思いませんでした。厳しい自然に立ち向かう人間、踏破する者、破れる者が対照的に描かれているが、多くの人が指摘していますが、どちらがどうということなく公平に描かれている所が素晴らしいと思いました。極寒の中で次々と兵士が力尽きていき、応援隊や家族が助けに来てみんな大喜びするが、実は幻覚であったシーンで兵士の絶望感を思うと胸が苦しくなりました。読了後もしばらく重たい何かがお腹の辺りに残ったような感覚です。
0255文字
megane_de_noppo
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ネタバレよかった。まるでその場に居合わせたかのような描写が迫力を持って書き上げられている。冒頭から全編を通して感じられるどんよりとした暗さは、これから起こる惨事を読者である自分が知っているからだけではなく、当時の世相や登場人物の不安や日本軍内での確執などの表現の現れなのだろう。決して読後感が良いものではないが、一読の価値はある作品だと思う。
0255文字
いのふみ
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指揮権を奪った者、奪われた者、踏破した者に宿る冷酷さ、それぞれが持つ驕り、劣等意識、報道するメディア、熱狂する国民、それを忘れる国民、参加した者のその後の周辺人物と現実――。著者はそのどこにも与せず書いており、その眼は峻厳だ。
0255文字
3連複
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NHKラジオ山カフェにて特集番組あり興味高まり購入。
0255文字
Anne
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最近読んだ本の中で一番心揺さぶられたかもしれない。新田次郎の本の中でも比較的有名で映画化もしている。実話を元にした内容でありながら、真実ではないものも混じっていると賛否はあるよう。ただ、山と人間をメインで描きながら組織論に対する批判を織り交ぜた内容は、100年以上前の出来事でありながら非常に身近で、恐怖心を煽られた。頭が悪い人たちがリーダーであり続けること、リーダーになるべき人が潰される、同調を強いられるのはいつの時代も同じだ。
0255文字
Kunyarin
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今年も再読。読んでいると脳内で映画の芥川也寸志の音楽が流れる。映画も観たいが、現在どこも配信していないらしい。どこか配信してくれないだろうか。
0255文字
masaharu
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ネタバレ重々しい軍隊の話ではある。が、案内人や下士官などの人間模様が詳しく、おもしろい。しかし、なんと言っても、少佐が大尉に命令し、従わざるを得ない模様。そして、最終的にはその否を認め、自死する。そこに言い訳はない。判断を誤ったが、それを認める潔さ。そこが現代にはないように感じた。ただ、口止めをしても後から後から情報が出てきて、それを第三者が検証、批評する。そこは現代に通ずるところがある。失敗の検証を物語調にまとめたものとして読みやすく貴重だった。
0255文字
メグ
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パワハラの最たるものだと思って読んだ。山田大隊長は、身分下の神田大尉を馬鹿にしていて、何を言っても、文句をつけ、神田大尉の意見を取り入れなかった。それが、大惨事を産んだ原因かと思う。この話は、生死に関わるが、パワハラなど現代社会でも身近にあり得ることだ。 軍隊など、上のものの命令が絶対だった時代なので、今が民主主義の時代でよかったと、思った。こんな仕打ちは耐えられない。
0255文字
ねこぽん
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ネタバレWikipediaで遭難事故や航空機事故の記事を読み漁っていた時期があり、こちらも有名な出来事ではあるが改めてと思い購入。 丁度この寒い時期、物語であって欲しいと願いたくなる悲惨な出来事。2つの隊の動きや、それぞれの士官のやりとり、地元の案内人まで触れられて、プレーンに読みやすかった。 部下たちに守られ生き残った、全てを語ってから自死した少佐。しかし隊員の側にも少佐を持ち上げ煽るような動きが見受けられ、また自分の身を捨てても少佐を守ったこと。それは少佐の人柄なのか、軍隊とはそういう場所で時代なのか。
0255文字
mcbook
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☆4 問題を招いた少将や大佐、行軍に参加し命令系統の混乱を招いた少佐、その命令に従った大尉、問題認識(冬山)の甘さや準備不足(短い期間や情報収集不足)、一方で毅然とした対応と準備で行軍を成功させた大尉、これらが自分だったらと思うと果たしてどうだろうか。失敗は防げず、成功はおぼつかないかもしれない。 自分事として捉えると事故対応やリスク処理への参考になる本です。
0255文字
薩摩隼人
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ネタバレ■新田次郎は『アラスカ物語』に次いで2冊目の読了です。アラスカ~も本作品もそうですが、新田先生が描く登場人物のキャラクターと、対峙する事象や事件(史実)との関係性には、絶妙な"判りやすさ"があると感じます。アラスカ~のヒロインのネビロであったり、本作の山田大佐であったり。この登場人物のステレオタイプな判りやすさが漫画やアニメの様なので、カタルシスを抱きやすいと思います。というか、現代メディア作品のキャラ設定って、全部新田先生の模倣から確立されたのではないのか?とすら感じます。
薩摩隼人

■山田大佐みたいな勘違い上司って、現代日本にもまだまだ沢山存在していおると思います苦笑。そして、それに抗えないサラリーマン部下たちも沢山存在するでしょう・・・笑えないですね。■学生の頃、『リーダーシップとは?』みたいなテーマで、この作品の映画版を授業で視聴させられた思い出があります。二元比較論的な授業内容でしたが、今改めて本書読了すると、単純な二元論で比較議論する浅い内容の作品ではないのかなと感じています。

01/24 20:13
0255文字
メル
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無知ゆえ「八甲田山」という名前には何故か険しい雪山みたいなイメージこそありましたが、雪中行軍による遭難事故については全く知りませんでした。 静かな迫力とでも言うのか、この本の表紙のようにただただ冷たく暗く白い世界が一人また一人と命を奪っていく、恐怖小説のような趣もありました。また31聯隊と5聯隊の指示系統の違いはあれど、やはり明治の軍人・軍隊であるという特殊性もあって、生還したシーンでも爽快感や幸福感はなく、重苦しいものが残ります。 ここには雪山だけではなく人間の怖さも表れているように思いました。
0255文字
miyary 0088
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組織におけるヒエラルキーで誤った作用が起きたときの悲劇。 そして、案内人を通して頼ることの大事さ。 それ以上にこの惨劇が本を通じて知ることで、何ともいえない重い気持ちが残る。でも、読むべき本。
0255文字
さとぅま
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ネタバレ八甲田山の死の雪中行軍のときに、反対側からそれを成功させた部隊がいたこともしらなかったし、それに関わったたくさんの平民がいて、非常な無理と恐怖を強いられたことも知らなかった。しかし、解説にもあったが、第五連隊を貶めるために第三十一連隊を持ち出すのではなく、非常に中立的に最初から最後まで貫徹されているのが作品として素晴らしいものにしたのだと思う。まさしく日露戦争開戦前夜という状況で起こった悲劇であった。
0255文字
ユウユウ
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雪の世界に踏み込んだ際の描写に現実感があり、緊迫感と絶望感に押しつぶされそうだった。多くの場面で第31連隊と第5連隊の比較があり、何かがズレてれば全く逆の運命だったのがよくわかったが、雪山を正しく恐れていたことが命運も分けたといえる。 個人的に、田茂木野での31連隊扱いに少し不満を持ったが、7人の案内人の帰路も描写があったことで、31連隊の輝かしい実績とは裏腹に、雪中行軍に関わった全ての人が暗いその後を過ごしたと知り、自分もやや暗鬱な気持ちになった。舞台に近い場所に住んでおり、親近感とともに読めた。
0255文字
Maskman Jaguar
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悪天候時の雪山の恐怖や危険性が生々しく描かれてるほか、事前の準備不足や装備不足さらには知識不足が如何に失敗に直結するか、よく考えさせられた。軍隊故のプライドの高さ、上下関係など他にも様々な原因があるけど、やはり自然が相手、ましてや雪山となれば事前準備や装備をしっかり整えてから出発するものだし途中でも天候が悪化した時点で引き返さないと危険極まりないことを改めて実感できた。
0255文字
みじんこ
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ネタバレ当時の士官としての出身の違いと小銃の意味等初めて知った。第二章は何もかも嫌な予感しかしなかった。山田少佐と神田大尉の指揮系統の不統一等、問題はあったがそれでも死に際して責任は自分にあると思う神田大尉の思考は普通ではできない。善次郎の夢の件もあり神田大尉は助かると思っていた。徳島隊は案内人らのおかげもありうまくいったが、恩人たちに対して非情でもあった。寒中装備が見直されることになったのはよかっただろうが、誰もが不幸となり、精神論でどうにかなる、無謀な計画立案はその後の時代を見ると体質は変わらなかったと思う。
0255文字
ともひろかただ
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青森県・八甲田山に雪中行軍を敢行し、一大遭難事故となった実話をもとにした小説。遭難描写の恐ろしさもさることながら、士族出身の大隊長がノコノコ現場に顔出して指揮系統を混乱させるが人のいい庶民出身の中隊長は何も言えずに当然現場は混乱するという、現代日本でも通じるような糞上司描写、人間ドラマが秀逸。山岳要素、遭難サスペンス抜きにしても非常におもしろい! 案内人を軍の強権で脅すのは映画『剱岳 点の記』では案内人とともに登頂していたのと好対照。何かの上司になる人は変な自己啓発マネジメント本よりまずはこちらを読むべき
0255文字
いきもの
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バタバタと人が死ぬ。装備の差、準備の差、心構えの差も大きいけど、運もかなり大きいと思った。徳島大尉の案内人を切り捨てるやり口にモヤ〜っとしていたので、解説まで読んで少しスッキリした。映画では美化されていた部分だけど、ノンフィクション小説では美化できない部分だわね。
0255文字
サム・ライミ
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リーダー論や組織論は置いといて、極寒の極限状態の中で徐々に気が狂い死んでいく人々の描写が圧巻。映画も見てみたいけど探しても配信が無いのが残念。
ほのぼの

かなり昔、TVでですが映画を観ました。とても寒くなる映画です。🥶ご覧になる際は温かくして。😸

12/30 09:55
サム・ライミ

ほのぼのさん、羨ましいです!他の方の感想見ても結構映画も見てる人が多いんですよね。いつも家では石油ストーブにこたつの昭和スタイルでぬくぬくしているので、正月の深夜放送とかでやってほしいです。

12/30 19:06
0255文字
ロバ
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どんなに優秀でも超えられない身分の壁、科学的根拠がなく精神論で乗り切ろうとする体制。結局その後の戦争で多大な犠牲を払うことになる。危機管理という面でも参考になりました。
0255文字
砂希ちま
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子供のとき、「天は我らを見放した」がフレーズの映画があったことを覚えている。詳細についてはこの本で知った。敵が攻め込んできたわけでもないのに、日露戦争を想定とした訓練として、八甲田山を目指したとの経緯らしい。それで3桁の兵が亡くなるのだから呆れた。人が氷柱と化して死ぬ描写がリアル。猛暑、酷暑の頃に読めば涼しくなるかも。冬場は寒さが倍増します(笑)
0255文字
たーぼ
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日露戦争開戦前に雪山での行軍訓練を行うという、一見合理的にも思える陸軍の訓練で、199名もの死者が出た最悪の遭難事件。少数精鋭で行軍を成し遂げた徳島隊に対し、青森五聯隊は神田大尉と山田大隊長の指揮系統の乱れからあっという間に隊は窮地に陥ってしまう。厳冬期の八甲田山では人は呆気なく死ぬ。寒さと飢えで雪の中にバタバタと倒れて行く兵士の描写は心が凍るよう…それでも大戦前は軍は人命を重く見ていたのだな、と気付かされた内容でもあった。
0255文字
ning
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日露戦争の2年前に青森県で起きた、わが国最悪の遭難事故の記録。著者は気象学者でかつ登山家であり、雪山の荒れた天気と冷気の恐ろしさがひしひしと迫ってくる。正気を失い死んでいく兵士たちがあまりに悲惨だ。捜索隊の幻影をみて母親の名前を叫びだす場面はいたたまれず本を何度かおいたほどに。一方でこのような最悪の結果を起こす理由の冷徹な指摘がある。指揮系統の混乱、その場の感情に影響され合理的な判断を下せない。組織を壊滅させる大きな原因と、リスクを最小限にするリーダーの姿勢。現代でも読み継がれるのに納得の理由があった。
ning

ただ、徳島大尉が特別優れていたというわけではなく…。神田大尉も立派な人格だし、上官の専横がなければ結果をだせていたかもしれない。行軍の結果には運不運も大きく関わっていた。それでも組織をどこに向かわせるか、究極の目的は何か。指導者になるべき人は常にそれを意識すべきなのだろう。最後に徳島大尉が2丁の小銃を自分で処分するのは、そこまでするのかと現代に生きる自分は思ってしまうが…。細部にも責任を遂行する、それも指導者の在り方なのだろうな。

12/15 15:42
0255文字
isry 2@積本消化中
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ネタバレ初読みの作家さん。明治35年(1902年)厳寒の八甲田山にて、2つの部隊が雪中行軍を行うことになった。三十一聯隊は徳島大尉を筆頭に少数精鋭で踏破し、神田大尉率いる五聯隊は大所帯で指揮系統が混乱し、199人の死者を出してしまう。凄絶な環境下の中、運命を分けたのはリーダーの振る舞い。「山田少佐が暴走しなければ、ここまでの死者が出なかったのでは?」とたらればを言えばキリがないが、反面教師として語り継がれてるはずなのに、同じことを太平洋戦争で陸軍は何度も行ってきた。それにしても、これを映画化したことも凄い。
0255文字
敷島シットパイカー
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ストーブ焚いた部屋で炬燵に入りながら読んだのなんか後ろめたい
0255文字
ヤマコ
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史実としてあまりに有名な山岳遭難事件。あらましを知っているとはいえ、いざ読んでみるとあまりに無謀な雪中行軍に肝が冷えた。異常な大寒波の中、指揮系統の乱れや事前準備の怠りで壊滅した第五聯隊は、極限状態の人間の姿を映し出す。他方で八甲田山を歩き通した第三十一聯隊に栄光はない。時代背景があるとはいえ、軍人の振る舞いや言動で、多くの兵や村人が苦しんだ。本書から学ぶべきはリーダー論ではなく大自然の脅威だろう。タイトルを見ただけで氷となって彷徨う兵たちが頭に浮かぶ。
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