大多数の国民が理解も指示もしていない安全保障関連法案が代議制民主主義のルールを示したとして成立した。大多数の憲法学者が「憲法違反」とする法案が成立したことは民主主義の死に等しい。有権者のわずかに17.4%の得票に過ぎない政党が総議席の61.3%たる291議席を得るという「仕組み」が国民の意思と乖離した安全保障法制を成立させる議会を作ったのである。直接民主主義を可能にする技術が徐々に生まれつつある。
「戦後世代=都市住民=新中間層」である。戦後世代は、個人の生活に入り込むことを嫌うわりには、「福祉化」の名の下での行政サービスの拡大、および「危機管理」の名の下での「経済の計画化」を期待・支持する矛盾した傾向を有し、それが官僚統制型の管理国家を黙認する結果をもたらしつつあるのである。
一九七二年の米中国交回復に向けたニクソン訪中まで、米国の対中政策は台湾支援で迷走する。その間隙を突いて、米国の支援を一身に受けて復興・成長の流れに入ったのが日本であった。「もし蔣介石が本土の中国を掌握し続けていたら、日本の戦後復興は三〇年遅れたであろう」という見方は的確である。戦後の米国のアジア戦略において、中国への投資・支援が優先され、日本に回る余地は限られたであろうという意味である。
六月に行われた英国のEU離脱を巡る国民投票において、英国の若者、たとえば二〇歳代の若者の六六%はEUに留まることを支持した。四三歳が分岐点で、それ以下の若者の過半はEU残留を支持、それ以上の年齢層においては離脱派が過半を占めたという。
オバマ政権の八年が終わろうとしている。オバマ政権は「イラクの失敗」と「リーマンショック」が成立させたといえる。イラク統治の失敗と消耗にいらだっていた米国民は、イラク戦争に反対していたオバマの「イラクからの撤退」という主張を支持した。イラク戦争後が生んだ黒人初の大統領は「いい人」なんだけれど、「きれいごと」と「建前論」の繰り返しで、米国の世界における主導力を失わせた「弱腰な指導者」というイメージが米国民の中にできあがっているといえる。
皮肉なことにトランプとヒラリー双方の政策が一致している点を注目したい。実は、二人ともオバマが進めてきたTPPに対しては見直しか反対であった。また、証券と金融の垣根を作るグラス・スティーガル法の復活を掲げ、「金融規制強化」に踏み込むことを主張した。つまり、新自由主義からの決別を語ったのである。つまり、「資本主義改革」(格差と既得権益の解消)に触れざるをえないほど、資本主義の変質は深刻であり、米国の民主主義が機能するかどうかの試金石ともいえる注目点なのである。
「金融資産の保有状況を見ると、貯蓄の58%、有価証券の72%は60歳以上の世帯によって保有されている。(中略)高齢者にとって保有する株が上がることへの関心は尋常ではなく、「株を上げること」につながる政策誘導を支持する心理がアベノミクスに向かうという」(p138)をいう分析をしているが本当にそうだろうか?一部の富裕層が有価証券をもっているだけではないのか?また、有価証券率と自民党応援率などは比例しているのか?
人口の四割を高齢者が占めるということは、有権者人口の五割、また若者の投票率が低いままだと、有効投票の六割を占めるということを意味する。21世紀の日本社会が抱える高齢社会の課題は、戦後日本が都市に集積させた都市新中間層の高齢化である。かつての都市中間層は高齢化し、二極分化している。持たざる層は貧困化し、持てる層はひたすら株価の上昇を願ってマネーゲーム製作に暗黙の支持をしてしまっている。
生まれてから大学卒業までの22年間を大阪で過ごしました。その後、自動車業界で4年半企画職をしていました。2022年9月から北京大学大学院で社会学について学びます。元気な時は分厚い本を、元気がない時は新書を読みます。分野を問わず、なんでも読みます。
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大多数の国民が理解も指示もしていない安全保障関連法案が代議制民主主義のルールを示したとして成立した。大多数の憲法学者が「憲法違反」とする法案が成立したことは民主主義の死に等しい。有権者のわずかに17.4%の得票に過ぎない政党が総議席の61.3%たる291議席を得るという「仕組み」が国民の意思と乖離した安全保障法制を成立させる議会を作ったのである。直接民主主義を可能にする技術が徐々に生まれつつある。
「戦後世代=都市住民=新中間層」である。戦後世代は、個人の生活に入り込むことを嫌うわりには、「福祉化」の名の下での行政サービスの拡大、および「危機管理」の名の下での「経済の計画化」を期待・支持する矛盾した傾向を有し、それが官僚統制型の管理国家を黙認する結果をもたらしつつあるのである。
一九七二年の米中国交回復に向けたニクソン訪中まで、米国の対中政策は台湾支援で迷走する。その間隙を突いて、米国の支援を一身に受けて復興・成長の流れに入ったのが日本であった。「もし蔣介石が本土の中国を掌握し続けていたら、日本の戦後復興は三〇年遅れたであろう」という見方は的確である。戦後の米国のアジア戦略において、中国への投資・支援が優先され、日本に回る余地は限られたであろうという意味である。
六月に行われた英国のEU離脱を巡る国民投票において、英国の若者、たとえば二〇歳代の若者の六六%はEUに留まることを支持した。四三歳が分岐点で、それ以下の若者の過半はEU残留を支持、それ以上の年齢層においては離脱派が過半を占めたという。
オバマ政権の八年が終わろうとしている。オバマ政権は「イラクの失敗」と「リーマンショック」が成立させたといえる。イラク統治の失敗と消耗にいらだっていた米国民は、イラク戦争に反対していたオバマの「イラクからの撤退」という主張を支持した。イラク戦争後が生んだ黒人初の大統領は「いい人」なんだけれど、「きれいごと」と「建前論」の繰り返しで、米国の世界における主導力を失わせた「弱腰な指導者」というイメージが米国民の中にできあがっているといえる。
皮肉なことにトランプとヒラリー双方の政策が一致している点を注目したい。実は、二人ともオバマが進めてきたTPPに対しては見直しか反対であった。また、証券と金融の垣根を作るグラス・スティーガル法の復活を掲げ、「金融規制強化」に踏み込むことを主張した。つまり、新自由主義からの決別を語ったのである。つまり、「資本主義改革」(格差と既得権益の解消)に触れざるをえないほど、資本主義の変質は深刻であり、米国の民主主義が機能するかどうかの試金石ともいえる注目点なのである。
「金融資産の保有状況を見ると、貯蓄の58%、有価証券の72%は60歳以上の世帯によって保有されている。(中略)高齢者にとって保有する株が上がることへの関心は尋常ではなく、「株を上げること」につながる政策誘導を支持する心理がアベノミクスに向かうという」(p138)をいう分析をしているが本当にそうだろうか?一部の富裕層が有価証券をもっているだけではないのか?また、有価証券率と自民党応援率などは比例しているのか?
人口の四割を高齢者が占めるということは、有権者人口の五割、また若者の投票率が低いままだと、有効投票の六割を占めるということを意味する。21世紀の日本社会が抱える高齢社会の課題は、戦後日本が都市に集積させた都市新中間層の高齢化である。かつての都市中間層は高齢化し、二極分化している。持たざる層は貧困化し、持てる層はひたすら株価の上昇を願ってマネーゲーム製作に暗黙の支持をしてしまっている。