年齢を重ねるにつれ、自分自身の中で失いつつある純真な部分を小説を読むことによって水分補給しています。ほとんど文芸書しか読まないのですが、フィクションであるがゆえの心の広がりを期待しています。どちらかと言えば甘口書評だと思っていますが、自己に甘いのでせめて他人にも甘くしたいという気持ち(笑)とネットを通して多くの方と共感したいという思いが強いのだと思う。
2015年年間ベスト10
1 『世界の果てのこどもたち』 中脇初枝(講談社)
2 『ストーナー』 ジョン・ウィリアムズ (作品社)
3 『永い言い訳』 西川美和 (文藝春秋)
4 『低地』 ジュンパ・ラヒリ (新潮社)
5 『ナオミとカナコ』 奥田英朗 (幻冬舎)
6 『昨夜のカレー、明日のパン』 木皿泉 (河出書房新社)
7 『霧 ウラル』 桜木紫乃 (小学館)
8 『下町ロケット2』 池井戸潤(小学館)
9 『晴れたらいいね』 藤岡陽子 (光文社)
10 『絶叫』 葉真中顕(光文社)
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まあ表紙の犬の写真がとってもミステリアスでかつ洗練された文章も健在。しかしながら、読む前に抱いた期待の大きさからしてはまるで和彦の正体のように謎めいています。 読んでいく過程においては、やはり圭子は和彦に騙されているのではないかという疑念が絶えず読者サイドにあり、それは読み終えた今となっては読み続ける大きなモチベーションとなっていたのであろう。
一つの結論として圭子自身、かつて幼少時代に過ごした土地とはいえ北海道の片隅の町に東京から身を隠すように移り住むこと自体、風代りな人物というか自ら数奇な運命を選択しているのが、時には同情的な気持ちにもさせられるし、逆を考えれば和彦に惹かれるひとつの要素にもなっているとも考えられる。とにかく私自身は決して正しい読み方がどうかわからないが、圭子が和彦に惚れる必然性というか整合性を念頭に置いて読み過ぎてしまい、あんまりすっきりした気分で本を閉じれなかったことは後悔している。
少し否定的に書きましたが、恋愛小説というくくりで読めばそれなりの余韻に浸れ、そこそこ満足の行く作品ではないかと考えます。それと性描写をこんなに美しく書ける作家、他にお目にかかれません。北海道ならではの四季の移ろいの描写の確かさなど、うっとりと読ませてくれる作家として今回は少し留保をつけましたがこれからも追いかけて行きたいと思っています。
> 圭子が和彦に惚れる必然性というか整合性 友人たちと話した時も、やはりこの点が疑問だという意見が多かったです。身体の相性が良かった、というのも、一つの理由かもしれませんね。
最新作と比べるとやはり恋愛対象の相手に魅力が感じられないのが特長だと思います。こちらの方が大人の恋愛かもしれませんが、少なくとも優雅さは感じられませんでした(笑)