随所に散りばめられた比喩の巧みさ、美しさにため息が漏れる　タイトルには亡くなった人々のことを決して忘れないという意志が込められているのだろうか　静謐で濃密な文章は読み終わるのが惜しいほどの、それ自体が芸術と言っていいほどの豊潤さに溢れている

なんとも不思議な、探偵が主人公の◯◯ミステリ　240ページの最後の1行なんてクリスチアナ・ブランド『カップの中の毒』を思い出した　仕掛けだけにとどまらず、普通の推理小説としての驚きも最後にある

100年も前にこんなに人を食った推理小説を書いてるんだからこの人もすごいなあ　この作品のいいところは最後6ページで明かされる衝撃の真相（？）に至る過程でしっかりとしたロジックが築き上げられていること　シェリンガムのキャラもいい

某作家の某歴史的名作とネタが丸かぶりだが、周到な伏線と大胆不敵な犯罪計画はこの作品の評価を独自たるものにしている　狂言回しの探偵や個性派揃いの容疑者たちと、キャラも立っている　これもまた一種の名犯人小説

新しい形の推理小説を書こうという意気込みがうかがえるものの、犯人の正体などは現代に読むとかなり分かりやすい　それでも遺書の扱いや手紙を出すタイミングの伏線など、センスは感じられる　プリンスに関わるドタバタは少し面白かった

ノンフィクション本はどこまで真相に近づいているのか、加害者と被害者がどんな状況で相対するか　いくつもの謎で引っ張っていかれ、気がつくと読み終わっていた　想像をはるかに上回る結果ではなかったが、読んでいる間は夢中だった

「意外性のある結末」のため統合性も現実性も妥協している、ある意味すがすがしいサイコサスペンス　確かにその狙いは成功しているものの、読み終わってモヤモヤが残る　それでも500ページ以上を一気読みさせる力量は大したもの

スピード感を重視した色気のない文章はあまり好みではないが、現代の事件から過去に遡って巨悪の存在がじっくりと浮かび上がってくる展開は抜群のリーダビリティがある　事件の真相は現実性に欠けるが、社会派ミステリとしてはよくできている

なんとなく釈然としないまま読み終わったが、小山正氏の解説のあとに読み返してみると、ああ、これは、いやでも、もしかして、、、などととめどなく思考（妄想）は続く　他の人の意見を聞いてみたい

随所に散りばめられた比喩の巧みさ、美しさにため息が漏れる　タイトルには亡くなった人々のことを決して忘れないという意志が込められているのだろうか　静謐で濃密な文章は読み終わるのが惜しいほどの、それ自体が芸術と言っていいほどの豊潤さに溢れている

生々しくて即物的な物語と、繊細で美しい文章のギャップが独特の雰囲気を醸している　淡々としているので分かりづらいが、全体を覆う不安と孤独は心胆を寒からしめるほどの逼迫さがあり、なかなか類を見ない作風の韓国文学の傑作短編集

囚人仲間二人と銀行強盗で一攫千金を目論み、彼女もできて順風満帆と思いきや、とありがちなストーリーだが、主人公二人に加え周囲の人々の造形が上手い　現代の作品と比べてどこか牧歌的な雰囲気の犯罪小説