ただ本書には、男性が己の性欲をコントロールできないということが「原罪」なのだと言い切る箇所があり、そういえば寿行的な性暴力の描き方には、レイプを愛情だと読み替えるような寝言は一切なく、それを通じて描かれていることは、「すべての性行為はレイプである」とするラディカルなフェミニズムの立場とほとんど変わらなかったことに気づく。本書もまた然り。娼婦を乗せた瀬戸内での舟の挿話なども強烈に印象に残る。
プロット自体は、西村寿行が一連のハードロマン期ののちに追究した「血の遡行」もののひとつ。ただし『血の翳り』などの生来犯罪者説系の作品ではなく、幕末から明治の激動を背景にする不幸な因果の連鎖ということで『修羅の峠』の系統。これがやがて、同時期を舞台とする叛乱の物語たる『虚空の影落つ』『牛馬解き放ち』などにつながってゆくことになる。その「不幸な因果」の軸には寿行的な性暴力があり、これをいつものパターンの繰り返しと見るか、この著者の揺るがぬ世界観・人間観と見るかが評価の分かれ目となるか。
ただ本書には、男性が己の性欲をコントロールできないということが「原罪」なのだと言い切る箇所があり、そういえば寿行的な性暴力の描き方には、レイプを愛情だと読み替えるような寝言は一切なく、それを通じて描かれていることは、「すべての性行為はレイプである」とするラディカルなフェミニズムの立場とほとんど変わらなかったことに気づく。本書もまた然り。娼婦を乗せた瀬戸内での舟の挿話なども強烈に印象に残る。
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プロット自体は、西村寿行が一連のハードロマン期ののちに追究した「血の遡行」もののひとつ。ただし『血の翳り』などの生来犯罪者説系の作品ではなく、幕末から明治の激動を背景にする不幸な因果の連鎖ということで『修羅の峠』の系統。これがやがて、同時期を舞台とする叛乱の物語たる『虚空の影落つ』『牛馬解き放ち』などにつながってゆくことになる。その「不幸な因果」の軸には寿行的な性暴力があり、これをいつものパターンの繰り返しと見るか、この著者の揺るがぬ世界観・人間観と見るかが評価の分かれ目となるか。