冤罪と闘う人々の物語である。 15年前に端を発する復讐劇でもある。 父の冤罪を証明するために、被告人　日高英之はわざと自白したのか？ 日高の無罪を証明するために　動く人々の 真摯さが心地良い。 法廷における検察官と弁護士の駆け引きも 背後に見え隠れする　ある意図のおかげで、 長さを感じない。現代日本の冤罪の闇を 描ききった法廷ミステリーだった。

下巻に入っても　清正と行長の闘いは続く。 生理的にあわない二人は　対立し、憎み合う。 秀吉の朝鮮出兵から　関ヶ原まで…二人の 対立を軸に　歴史がたどられる。 朝鮮出兵を終わらせるために。行長夫婦が 仕組んだ企みの真偽はよくわからないが、 キリシタン大名としての生き様が著者らしい 視点で丹念に描かれている…そんな歴史本だった。

秀吉麾下の武将　加藤清正と小西行長の物語である。キリシタンを絡ませながら、相容れぬ清正と行長の心情を巧みに描いていく。 上巻は　朝鮮出兵における　二人の思惑の ぶつかり合いまでを　描く。

第171回(2024年)芥川賞。 会社の部として、週末に六甲登山を楽しむ人々の物語である。 不穏な社内情勢と　登山の爽快さの対比が 際立つ。ひとり我が道を行く　妻鹿さんの 存在感が抜群で、際立つ。地味なテーマだが、 山を愛する人たちの　穏やかな物語だった。

夫殺しに纏わる法廷ミステリーである。 弓岡奈緒子という女性は何故夫殺しを 自白したのか？一体何を隠しているのか？ 原島弁護士は　何を証明しようとしているのか？ 法廷ミステリーとしては、定番だが、 事件の背後にある人間ドラマを丁寧に描いている、そんな作品だった。

柳生一族の暗闘を通して、徳川家の裏面史を描く。どこまでが真実かはわからないが、 柳生一族の物語としては、薄暗く面白い。 秀忠から　家光の時代に　柳生という 陰で生きた人々の日々が　闊達に今に甦る。 時代小説の楽しみ満載の昔ながらの剣豪たちの物語だった。

昭和45年の「黒い霧事件」で球界を永久追放された池永正明投手　復権運動　35年の物語である。昭和の時代のプロ野球界の闇が 丹念に描かれる。 輝かしい球歴から　将来の大投手間違いなしと 思われた逸材が、先輩からなぜ　100万円を 受け取り、返せなかったのか…そして まるで生贄のように　永久追放という 重い処分を課せられたのか？ ひどく重い貴重なプロ野球界のノンフィクションだった。

冤罪と闘う人々の物語である。 15年前に端を発する復讐劇でもある。 父の冤罪を証明するために、被告人　日高英之はわざと自白したのか？ 日高の無罪を証明するために　動く人々の 真摯さが心地良い。 法廷における検察官と弁護士の駆け引きも 背後に見え隠れする　ある意図のおかげで、 長さを感じない。現代日本の冤罪の闇を 描ききった法廷ミステリーだった。

第6回サントリーミステリー大賞読者賞。 同級生の女の子の自殺の謎を追う著者お得意の 青春ミステリーである。 やや軽過ぎで、出来過ぎな展開だが、 軽快で楽しく読める。設定も陳腐だが、 書きっぷりも気持ち良い…まさに青春ミステリーだった。