本書を読んで、どうしても比較してしまうのが二作目の「向日葵の咲かない夏」ですが、解説を読むと暗いという評判が多く寄せられたみたいで著者はそれを気にされて本書では随分と路線変更された節がありますね。本書の我茂凰介（がもおうすけ）君は真面目な普通の小学生で健全その物の精神の優等生で、むしろ周囲の大人達がいかがわしい奴らばかりの印象で、途中では大人達が多かれ少なかれ精神を病んでいて誰を信じていいのか非常に迷わされるのですね。上辺はごく普通の態度に見えて実はまともではないのではと疑惑を抱かされ中々的を絞れません。

そして決め手を欠くままに凰介が身の回りで起きた些細な出来事の意味に気づいて自殺事件の真相を突き止め、思いも寄らない真実の悪魔の正体に気づくのですね。前半は捉え所のない曖昧な感じでしたが２００頁当たりから真実の一端が見えてきて更に二転三転するストーリーはミステリ大賞に相応しい見事な技巧の冴えだと思います。そして幕開けとは一変し不幸中の幸いのハッピーエンドで幕を閉じ読者は心癒されるのですが、唯一「向日葵の咲かない夏」の異常な世界観を愛する人にはあまりに健全過ぎて不満が残ると思いますので誠に小説は難しいですね。

大橋さんがじゃあ見せて下さいと近寄ると目が覚めるのだという。どんな絵なのか気になるといい悔しそうだったが、ある朝とうとう絵を３千円で買えたよと話してくれるが、残念ながらどんな絵なのかは全く覚えていないらしい。ボランティアの方は夢の話が現実にある筈がないだろうと思いながら近くのフリーマーケットを調べると、丁度その次の日に開かれる市が見つかってワクワクし大橋さんと行ってみた。大橋さんは急に立ち止まり犬の匂いがする、数年前に亡くなった盲導犬のラッキーの匂いだと断言する。次にベレー帽を被った画家に絵を見せられる。

何とその絵は数年前にラッキーと大橋さんが散歩している姿を描いた絵だった！その絵を大橋さんは夢と同じ値段の３千円で買って家に持ち帰る。すると大橋さんは急に白杖を持って一人で出掛けたいと話す。そして達者に歩く姿を見て驚き上手になった理由を聞くとラッキーが側に寄り添ってくれて危ない所があると膝をトントンと叩いて教えてくれるんですという。だがラッキーは今はもういないとの事で大橋さんが親切にしてくれるラッキーの霊に申し訳なくなり、ごめんね、もう大丈夫だから私の事は心配しないで、そちらでゆっくりしてねと話したという。

緩い球にタイミングを狂わされ景浦のバットが沈黙する。そんな時に個人タクシーの超スロー運転のお爺さんの車に乗ると追突事故に遭い軽い鞭打ちになる。だが首にコルセットを付けながらも景浦は緩い球には打席でゆっくり待てばいいと気づいて久々にライトへＨＲを放つ。『酔いどれ』大虎に来た評判の酔いどれ占い師の爺さんが、景浦は今期の１９号でプロで打つ本塁打の数９０本に達したのでもう打てないだろうよと断言する。景浦は今年もオールスターゲームに選ばれるが予言通りに２試合続けてフェンスぎりぎりで打球が失速して外野フライに終わる。

３戦目に景浦は代打に出て打席でよろけるぐらいに二日酔いになりながらも阪神・小林投手の速球を逆転ＨＲするが、一塁へ歩く途中で倒れて眠り代走を送られる。酔いどれ占い師は、あの男だけは日本で唯一人の悪夢の例外じゃと呆れる。『立てば歩めの』サチ子は大虎に来た生命保険のセールスマンに怒って断るが、景浦が阪急戦で頭部にデッドボールをくらって退場する。病院に行ってすぐに退院し帰って景虎が歩く姿を見るが視界に黒い影が映る。翌日には試合に出場し２２号ＨＲを打つが、またもやベースを回る途中で視界に一瞬黒い影が過ぎるのだった。

『夫の骨』夫の遺品を整理する妻が胎児の骨を見つけて後家の姑との仲を疑うが、実はさらに恐ろしい真実を知った妻は戦慄する。『朽ちない花』性格の悪い姉とフィアンセの男が結婚間近で失踪し闇金からの逃亡だったが姉は全てを読んである切り札を胸に秘めていた。『柔らかな背』夫を病で亡くした老妻が、我が儘な孫娘と暮らし東京に住む高校生の孫から金を無心されるが、痴呆の進む頭で対処するが真実は過酷だった。『ひずんだ鏡』妹にコンプレックスを抱く姉がお金を盗難され最後に気づく真実。『絵馬の赦し』娘の中学受験に悩む妻の隠された過去。

『虚ろの檻』別荘を管理するヒロインの隣に連れて来られた土佐犬は狂犬病なのか？だが意外な真実が明かされる。『鼠の家』妹が家出した事を心配する母の思惑と姉の私が知る意外な真実。『ダムの底』不倫妻と別れた夫が愛する娘を何としても守ろうと覚悟を決める。『かけがえのないあなた』莫大な借金を抱えた夫を自殺に見せかけて殺し生命保険金を得ようとする妻の完全犯罪。だが真相はさらに意外なものだった。著者は本書でユーモアを完全に排し過酷な運命に追い詰められた男女を描いており、クールながらも胸に強く訴えかけるものがありましたね。

音武田が遅れた理由は駅前で「水原は次はヘアヌード写真集をだすんじゃねーの」と言って侮辱した男と喧嘩して警察の事情聴取を受けていた為なのですよ。２００１年の札幌ドームでの開幕戦はメッツ―巨人でメッツ先発の青田は１回表を三者三振に切って取る。その裏、巨人先発の上原は二者三振で滑り出すが三番・円山に初球ストレートを読まれレフトへＨＲされる。続く４番・ 音武田への初球がインコースへきて審判はデッドボールと言うが音武田はファールだと譲らず続く２球目の内角球をレフト上段へ連続ＨＲする。音武田は死球を我慢していたのだ。

初回に２点を先制したメッツだが、２回表の巨人はクリンナップの松井・清原・江藤が３連続ＨＲしてアッという間に逆転する。途中で青空の給料がヒット１本５万円の出来高払いとなる。その後、円山、青空のＨＲ等でメッツが３点リードするが、７回に高橋の打球が青田の足を直撃して退場となり、清原がリリーフの水原が外して投げた外角のストレートをライトへＨＲして１点差に迫る。そして９回表、清原が再び水原と対し、ドリームボールを高々と打ち上げるが後一伸びが足りずにセンターフライに終わりメッツが１点差で逃げ切って開幕戦を勝利で飾る。

だが海外の仕事に出た時に彼女の父・七ノ瀬天山の側に居ながら暴漢から守れずに死なせてしまった事に責任を感じて素直に思いを言い出せず見守って来た。桜子は占いで災厄を告げるタイプで人気が出ず、美人の容貌が若い男を引き付けるがそれに反発して顔にベールを被って不純な動機の客を拒否したので、さらに客足が遠のき厳しい商売を続けてきた。そんな彼女が占った客の運勢が悪いとトラブルに陥るのを耕太郎は素人探偵のように調査して彼女の心配を解決してあげるのですね。『守りたかった男』では妻を殺した男の事件の意外な真相を暴き出します。

『翼のない天使』では仲違いした母娘の問題を解決して『ミツオの帰還』では過去のホームレス殺人事件の真相を暴きます。『水曜日の女難』ではファンと名乗る美女の問題に最後まで頭を悩ませ今度ばかりは苦い真実を知らされます。ラストの『桜の花が散る前に』では桜子の店舗兼住まいの立ち退きの問題が出て懸命に動きますが解決は難しいものの劇的な展開で二人にとっての幸せを掴むのですね。まあ著者にしては甘～い雰囲気の物語ですが、主人公・乾の桜子の為だけに必死で頑張る熱意と愛情が伝わって心揺さぶられますのでぜひ一読をお勧めしますね。

ドラキュラに命じられた子供が鬼太郎に毒サボテンジュースを勧めると飲んで眠る。目覚めると周りは毒サボテンの群れで髪の毛針で攻撃するが逆に針が刺さって倒れる。再び起きると浜辺で子供が海水で洗って鬼太郎を助けてくれたのだ。ドラキュラが南方の妖怪を集めて恐山に向かったと知った鬼太郎だったがふいに現れた妖怪綿に体を覆われ、咄嗟にちゃんちゃんこを脱いで飛ばす。ちゃんちゃんこの霊糸が分解してＳＯＳの文字を描くと目玉の親父が恐山の危機を察し日本の妖怪を集めて決戦に向かう。ねずみ男はミイラになった鬼太郎を拾い恐山に向かう。

子なき爺らが南方の妖怪を倒した所へ来たねずみ男が合流し、南方妖怪の血を鬼太郎に与えて復活させる。鬼太郎は全員で小笠原に着くとドラキュラを捕え妖怪樹に火を放って焼き殺す。翌朝皆で祝賀会をしているとドラキュラが隙を突いて蝙蝠に化けて逃げる。続いて妖怪樹の灰の中から無数の種が芽を出し化け物が襲い掛かる。しかも奴らは切っても切っても生えてくるのだ。きゃっほっほーと妖怪樹が勝利の歌をうたって一行に覆い被さる。だが、その時急に奴らがバタバタと倒れる。目玉の親父が根切り虫に頼んで地下の妖怪樹の根を切って貰っていたのだ。

おはようございます🌞最後の歌だけで、十分怖いです……😱

ももすけさん、コメントをありがとうございますね。本当にマジで怖いですね。実は、さらに恐ろしい鬼女伝説というのもあって、昔子供を鬼に殺された母親が自らも鬼と化して墓を掘り返して死んだ子供の死体を喰らった話がこの地方には伝わっているのですよ。著者はこのドラマを通して大昔の鬼女伝説の祟りが人間を狂わせて一連の残酷な殺人事件を行わせたと暗示しているかのようなのですよ。振り返ってみれば本当に全てが無意味な殺生なのですね。でも悲しみだけでなく著者は最後にヒロイン千鶴の未来に明るい希望の兆しを残してくれているのですね。

景浦はこの話に感動し５千円を出して買う。だが実は爺さんは客にホラ話をして壊れた瀬戸物を売る男だった。『命名』サチ子は昭和５６年１２月１７日あぶさんの誕生日の深夜に無事に男子を出産する。景浦はサチ子の了承を得て大虎で常連客の前で息子の名前披露の除幕式を行う。その名も「景浦景虎」である。命名の理由は景浦の景とおやっさん虎次郎の虎から一字ずつ貰ったのと景浦がファンだという越後が生んだ武将・上杉謙信の幼名から取ったのだと話し全員に祝福される。翌日の朝、大虎に阪神タイガース社長の小津正二郎氏が来店して祝い酒を渡す。

『気分は１０月』春のオープン戦、南海－巨人の客席は大入り満員になる。大阪球場でのこのカードは昭和４８年の日本シリーズ以来実に８年振りなのである。巨人は江川投手が投げ８回表まで巨人が３－１とリードする。８回裏に２走者が出て代打・景浦が告げられる。江川は去年オールスター戦で外角低めを打たれたのを記憶していて今度も同じ球で勝負その前にインハイで仰け反らそうと配球を決める。初球にインハイのくそボールが来ると景浦は驚いて振り抜きレフトへ逆転３ランＨＲを打つ。江川も景浦も内心でどうして悪球を打てたんだ？と首を傾げる。

第２章ではメイドとハカセが二人で世界樹の苗木の異変を調査すべく出掛けて内部で６人の少女と出会って複雑な密室殺人事件に遭遇する。２つのパートの物語で同時に活躍するヒロイン愛理、ハカセの名推理と共に二人の掛け合い漫才のやり取りは笑えましたね。著者は過去の書物で自分の名前をもじり星壊社ノンフィクションズとパロディで爆笑を誘います。人間によく似た古代人形とアシモフのロボット３原則の法則を利用したＳＦミステリーは面白かったですし、姫と愛理の百合シーンに胸キュンになりましたね。そして遂に終盤４１８頁では恐怖の展開が！

途中で出てくる愛理メモのナンバーが示す意味とラスト２頁前のメモナンバーからすると時系列は明らかでプロローグの姫と二人の少女との出会い、エピローグでの途中で筆跡が変わっていたという記述から真実は明らかだと思えるのですが、そうすると２１頁と６９頁のクリスタルの短剣の状態が矛盾すると思うのですが、まさか著者の書き間違いではないでしょうし、どなたか意味をお分かりの方は教えて欲しいですね。この物語の最後の結論は未来世界では人間かそうでないかは最早大した意味を持たない時代になっているという事ではないかなと思いますね。

国分寺球場での最後の試合、Ａクラスを賭けた広島戦で青田が投げ最終回に主砲・羅生門がサヨナラ満塁ＨＲを打って勝利する。最後の挨拶で岩田が感謝の言葉を述べ引退を発表するが、その時バックスクリーンに国立玉一郎ら９人の嘗てのメッツ戦士が集結して全員で岩田に引退を撤回するようにと頼む。鉄五郎は国立に強がりを言うが再び観客に向けて「札幌へ行って参ります」と言い直す。札幌に来た岩田と五利はバッティングセンターで本塁打をダントツで打ちまくる男・青空晴太の才能に驚き入団交渉すると頑なに断るのだが珠美が来ると即入団を決める。

『北のスラッガー』早稲田大学野球部主将の円山大地は４年前に札幌北野高校から入った時は無名だったがみるみる頭角を現し今や本塁打の新記録３０本を打ちドラフトで巨人と逆指名で入団する約束をする。だが彼はメッツが札幌に来ると聞くと気を変え岩田に入団させて下さいと頼みに来る。巨人には謝り断ったというが岩田は筋を通さねばと長嶋監督と話をするとメッツ入りを快く認めてくれて円山の入団が決まる。水島先生は札幌ドームの建設中に視察されてメッツの本拠地にする事を決意されました。また長嶋監督に鉄五郎をミスターと呼ばせていますよ。

彼の家は隣の県で随分と遠かったが仕方ないなと思い聞いた住所をナビに入力した。押井さんは運転していくと何故か入力したのは街中だったのに、どんどん街を離れ湖沿いに進むと小さな墓地に着いた。彼が寝ていた川北さんを起こすと「ありがとう」と何度も言って降りたが「いや、違うだろ、そこ、お墓だろ」と指摘しても全く無反応で墓地に入って行く。再び声を掛けようとした時、墓の裏から一斉に多くの頭がヌッと現れた。うわっと肝を潰した押井さんは急いで急発進して逃げた。翌日、大学で聞くと無事帰ったとの事で未だに訳が判らないのだという。

『ぬりかべや』横田さんのお祖父さんは足が衰え車椅子で移動していたが幸い寝たきりにはならず散歩する元気があった。ある日横田さんが散歩に付き添うと「ぬりかべや、ぬりかべがおるから進めん」と言い出して車椅子を止めさせた。そんなのいないよと言うとアカンと怒り目の前の写真を撮れというのでスマホで撮ると、首にロープを巻き吊り下げられた雛人形、アフリカ土産の様な面、人間より大きな猫が写っていた。どうしてぬりかべなの？と聞くと前に進めなくするのは全部ぬりかべちゃうんかと答え更に問うと知らんわと答えて暫く後に亡くなられた。

彼女は結婚されていますか？と聞いて答に残念がるが容貌が妻のサチ子そっくりなのだった。『刺客』景浦が４度目の夢の球宴に選ばれ試合前に疲れるからと打撃練習を断り食堂で酒を飲んで寝てしまうとセリーグの原選手らが呆れる。だが試合で景浦は代打に出て中日・小松投手の１５０キロの速球をＨＲし２戦目でも巨人・角投手のカーブに泳ぎながらＨＲを打つ。第３戦では巨人・江川投手の外角低めの速球をライトへＨＲして球宴で通算５打席連続ＨＲとなりＭＶＰで車を獲得する。巨人の王選手は同じ背番号９０の長嶋さんにタイプがそっくりだと気づく。

『最後の采配』シーズン終了後にパリーグの東西対抗戦が行われ、今期で勇退する近鉄の西本監督が西軍の指揮を執る。ベンチで西本監督は回想する。昭和４８年、阪急の監督の時に南海とのプレーオフでシーズン中は抑えた景浦に５試合で３ＨＲを打たれて敗れたのだった。近鉄に移り景浦をトレードで獲得しようとして果たせずこの試合で漸く念願が叶う。景浦は代打に指名されて日ハム・江夏投手から逆転２ランを放つ。西本さんは景浦に一杯どうですか？と誘われアホか試合中やど！と一瞬怒るが裏で乾杯し、試合が終わると東西両軍の選手に胴上げされる。

本書を読んで、どうしても比較してしまうのが二作目の「向日葵の咲かない夏」ですが、解説を読むと暗いという評判が多く寄せられたみたいで著者はそれを気にされて本書では随分と路線変更された節がありますね。本書の我茂凰介（がもおうすけ）君は真面目な普通の小学生で健全その物の精神の優等生で、むしろ周囲の大人達がいかがわしい奴らばかりの印象で、途中では大人達が多かれ少なかれ精神を病んでいて誰を信じていいのか非常に迷わされるのですね。上辺はごく普通の態度に見えて実はまともではないのではと疑惑を抱かされ中々的を絞れません。

そして決め手を欠くままに凰介が身の回りで起きた些細な出来事の意味に気づいて自殺事件の真相を突き止め、思いも寄らない真実の悪魔の正体に気づくのですね。前半は捉え所のない曖昧な感じでしたが２００頁当たりから真実の一端が見えてきて更に二転三転するストーリーはミステリ大賞に相応しい見事な技巧の冴えだと思います。そして幕開けとは一変し不幸中の幸いのハッピーエンドで幕を閉じ読者は心癒されるのですが、唯一「向日葵の咲かない夏」の異常な世界観を愛する人にはあまりに健全過ぎて不満が残ると思いますので誠に小説は難しいですね。

こんばんは。この本は復刻版ではなく２００１年の１月に出版された本でシリーズは全１２巻＋別巻１冊が出ていますよ。現在は書店では新刊は買えないと思いますので入手難とは思いますが、面白いですから入手できましたらお読みくださいね。

おはようございます🎵結構多いんですね！最近出版されたんですね！是非読んでみたいです。

でもさっき肉を腹一杯食べたばかりなのに。遂に自力で体を支えられなくなりドサッと倒れ皆も同様の状態なのを見る。八月なのにどうしてこんなに寒いのよ？やがて朦朧とした状態で周囲に大勢の人の気配を感じると共に気持ちが辛く悲しくなり、人々が「フンギ」と繰り返す声を聞くと意識を失う。朝、友達に叩き起こされ、全員が同じく死んだように眠っていたと知るが、何でこんな事が起きたのか未だにわからないのだという。昔、アイヌの集落の資源が尽きてしまい飢餓に襲われた為に新天地へ移動する事を決めて風の噂で豊漁と聞いた絵鞆半島に向かう。

アイヌの人達は集落中から集めた少しの保存食と神様に捧げ物をする時に使う家宝ともいう漆塗りのお椀「イタンキ」を持って行く。途中の集落に着いて絵鞆の様子を聞くと天然痘が流行り集落の人々は山に逃げて暮らしていると知る。だが彼らは引き返す訳にいかず一縷の望みに賭けて遂にウカオップ岬に着くと沖に座礁したクジラが見えた。皆は喜んでクジラが息絶えて流れつくのを待つが実はそれはクジラではなく鯨岩だったのだ。人々は待ち続けたが食料が尽き飢えと寒さで全員が死んでしまった。それがイタンキ浜の名の由来でフンギとは鯨の意味である。

布団の上には透けた可愛い女の子が！翌朝、心霊物件だー、チャンスと思いレポートをしようと決意するが数日は何もなく、少し経った夜中に今度は全身ぬめぬめした木の根で編み込んだような巨大な黒いが蜘蛛に上に乗っかられギャーッと叫ぶ。翌日オカルト仲間のＫ村に話すと羨ましがりブラックミラーというヴィジョンを見る道具を貸してくれた。夜中に見ると鏡の後ろに蜘蛛の化け物が映っていた。ギャーッ！彼は奴らと話してみたいと望んでいると夜中に金縛りが起き以前の女の子がいて指を握られ空中に指で「ゆうれい」と書くと上下に指が動く（肯定）

男の子と書くと左右に動いて（否定）女の子で肯定されコミュニケーションが成立した！それからある日童謡を幾つか適当に歌いながら寝ていると急に胸のあたりに激しい衝撃を感じる。何とか命は無事でホッとしてある事を思い付き次の時に空中に、さっちゃんと書くと凄い勢いで上下に手が振り回されたので彼女の名は「さっちゃん」、蜘蛛の方は適当に「妖怪・木霊蜘蛛」と命名した。その後、不動産屋に問い合わせたが人が死んだ事実はなく、法術師の方を呼んで相談したがお祓いはしないでおくと空飛ぶブタが現れ女の化け物が出ると蜘蛛が食べてくれた！

高嶺花子という女の子が好きなのは共通していた。二人は毎日会って宿題を半分ずつやって、将来の夢であるＳＦまんが家になる事を目指して協力して合作で描き始める。僕は次第に彼にライバル意識を抱いて体を鍛えようとジョギングを始める。或る日、向こうの世界へ行くと奴が花子さんと漫画の話をしながらいい雰囲気で歩いているのを見てしまう。やがて二人は次第に気まずくなり時々自分を見るのが辛くなるからそろそろお終いにしようと話し乾杯してお別れする。ある朝、僕は高嶺さんに間違えてＳＦ漫画の話をすると彼女はクスッと笑ってくれたのだ！

『山寺グラフィティ』僕はイラストレーターの卵で郷里に５年ぶりに帰って来た。幼馴染の女の子かおるは僕が高校を出たら絵描きを目指して東京へ行くと言うと私は一人娘だから離れられないと怒り翌年に短い人生を終えた。だが大人になった僕の前にかおるが何度も現れる。だが他の人には全く姿が見えないのだ。彼が子供の頃に一緒に行った故郷の洞穴に行くと色々なお供え物があった。彼女のおじさんが毎年供えてくれていたのだ。そろそろ結婚させようと彼女のこけしの横に僕に似たこけしを供えると、彼女が僕に似た男と二人で家に来て笑顔で立ち去る。

次にはバス停の前で降りたが誰もいないのに身振り手振りで話していたのだ。何だ、おかしい人なのかな」と思っていると同じく十分程度で戻り続いて橋の袂で降りて欄干にもたれながらしゃべっていたがやはり誰もいなかった。５分ほどで戻り最初の場所まで引き返して支払いを多めにくれたが何故か旧札ばかりだった。後で気づいたがあの男が降りたのは過去三年以内に死亡事故があった場所で一体彼はあんな所で何をして誰と話していたのか不思議で仕方なかったという。『フルート』Ｎさんが自宅で昼飯を食べていると不意にフルートの音色が聴こえてきた。

妻は向かいの中学生の息子さんだと言う。物悲しげなメロディーが恐ろしくて家から出てパチンコ屋へ行った。数時間後に負けて帰ると静かだったが妻がいないのでスマホにかけると向かいの家が大変で息子さんが朝、電車に飛び込んだのだという。朝に亡くなったのなら昼間のフルートは誰が吹いていたんですかねとＮさんは首を傾げた。『洞の夢』Ｙさんは近所の店の前に立つポプラの巨木の夢を見た。夢では彼が中程にある洞から長い髪の毛を引っ張り出していたが、後にある人から以前に洞の中に女の生首が突っ込まれるという事件があったと聞いたという。

着物姿の女の幽霊は何度も目撃されたし、未紀さんが１階にいる時に６階の１室からインターホンのブザーが鳴らされ、その四人部屋へ行くと空室表示の青で酔っ払いのイタズラだろうと言われたが後で他の部屋へ行く用事で通りかかると件の部屋のガラス越しに色白でほっそりした腕が見えてドアノブに苦労していた。妙だなと思いながら戻ると白い腕は消えて無人だった。また別の時には四階の空室を案内した客が「先客がいたよ、困るじゃないか」と言って戻って来た。女の人が一人でカラオケしていたんだと言われ見に行くと無人だが人がいた気配があった。

人手が不足し近くのビデオ屋からスタッフを借りて部屋の片づけを頼むと３分も経たずに戻ってきて「見ちゃいました、もう無理です」と言うので事情を聞くとガラス越しに白い着物を着た長い黒髪の女の人がボーッと立っていて声を掛けて入り一瞬目を離すと消えたと言い引き止めたが帰ってしまった。彼女が辞めて二年後店長から電話があり経理担当の女性社員が飛び降り自殺したと知らせてくれた。衝動的な自死と推測されたが不可解にも全ての道路側の窓が閉められていて何処から飛び降りたのか不明だったのだ。事件後、経営不振に陥り店は潰れたという。

おやっさんは、なんやてー孫やてー！と仰天し、サチ子は今日診て貰ってわかったの、予定日はあぶさんの誕生日の１２月１７日よと言う。おやっさんは店を飛び出し夜の１２時なのにベビー用品の店に行き大口の買い物やでーと叫ぶ。さて、南海ホークスは新たに外人のブレイザー監督が就任しますがペナントレースで５強１弱と馬鹿にされる苦しいスタートとなります。景浦はオープン戦でロッテの新人・愛甲投手から初ＨＲを打ちながら一塁ベースを踏み忘れて幻の一発に終わります。しかし開幕の日ハム戦では苦手の木田投手から逆転満塁ＨＲを打つのです。

『笹だんご』南海は開幕１５試合で５勝１０敗と借金５で景浦も１３打席で２本塁打と苦しんでいた。試合後残ってマシーン相手に必死で特打ちした景浦は西武戦でサヨナラ３ランを放つ。スカウトマン岩田鉄五郎は、それでええんやホームラン以外に打とうと思うなとうなづく。『指定席』景浦は日ハム戦の前日に元南海の佐藤ミチ投手夫妻の店「酒アンジェラ」に行きカラオケで「マイウェイ」を歌う。肘を痛め野球解説者の仕事をする佐藤の前で景浦は代打ＨＲを打つ。♪俺達には愛する野球があるから信じたこの道を私は行くだけ全ては心の決めたままに～！

マルが抵抗して叫び女が倒れてきて気を失った。気が付くと朝で足元に猫の毛が落ちていてマルは消えていた。死んだ友達は目の周りを飢えた猫に食い尽くされていたのだと聞いた。不思議な事に十匹の猫は全部姿を消し行方不明になったという。『猫カフェ』我妻俊樹：絵美子さんは友人に誘われて猫カフェに行ったが全く楽しめなかったという。どの猫も神社の狛犬に似て臭いも嫌だったが友人や客達は可愛いと触れていた。気分が悪いからと店を出て踏切の前に行くと花束やお茶やビスケット菓子が供えられており周囲をさっきの小さな狛犬がうろついていた。

すると後ろから友人がバランスのおかしい笑顔をつくって仁王立ちし絵美子さんに向かって白く尖った歯をむき出して言った。「おまえらがなあ、みんな悪いんだけど、でもな代わりに死んでくれたんやで」そう唸るようにつぶやくと友人は灰色の水状のものを嘔吐し始め前のめりに路上に倒れて失神してしまい彼女が呼んだ救急車の中で気がついた時には自分が何をしたかまるで覚えていなかったという。猫カフェは或る日突然店を閉めていた。飼われていた猫達に原因不明の急死が相次いだのが原因らしく僅か二日で十数匹いた猫が一匹に減ってしまったそうだ。

『縁戚』大阪ガメッツが１５連敗の不振にあえぎ火浦監督にファンが生卵をぶつける。火浦は辞めようと考えるが親会社の縁戚関係の紹介で投手がやってくる。元日本人の米国籍の若者ジェットが火浦の構えるミットに速球を投げ込むと凄い威力に突き指する。実は彼は何と岩田鉄五郎の孫の武司だった。鉄五郎は怒り狂うが、武司はいきなりメッツとの初戦に先発する。だが武司はスピードこそ速いがノーコンでストライクが入らずメッツ打線に打ち込まれ１０点を取られる。試合には敗れるが、武司はメッツの青田投手から打席で場外ホームランを打つのだった。

そして２週間後のメッツの本拠地試合で武司は外野手で先発し青田から先制２ランＨＲを打ち１点リードの９回二死満塁のピンチにリリーフ登板して青田を空振り三振に打ち取る。鉄五郎は敗れたが内心で孫の快投を喜び微笑むのだった。『一郎二郎』火浦は阪神の打撃コーチの王島をプライベートで呼び出して実は俺とお前は双子の兄弟なんだと打ち明け実はおふくろが死にかけているんだと告げる。王島は野村監督から代打の選手兼任でやってくれと頼まれて了承した夜の試合途中で抜け出し危篤状態の母の病室へ駆け付け火浦と共に母と話をして最期を看取る。

蟹の縦歩きのトリックとタイトルの波形の声のトリックが素晴らしい切れ味ですね。『宿敵』八十二歳の男・須貝が隣に住む同い年の瀬川と昔から張り合って生きてきたが、車の運転で不安を覚え遂にしくじって意地を捨て免許証の返納を決意する話。隠されたライバルの秘密に気付く仕掛が巧みですね。『わけありの街』ある刑事の日記に記された男の通り魔殺人事件の物語で、被害者の母親が自ら犯人の手掛かりを求めて動き、ある駆け引きを打つ話で他者への思い遣りの心に感動しますね。『暗闇の蚊』母親が獣医の息子・渉が年上女の罪に気付く切ない物語。

愛犬と携帯電話の手掛かりがお見事ですね。『黒白の暦』食品会社の部長・秋穂と次長・理花の女性同士の事業統括部長の後任を巡るライバル争いの物語ですが競争心とは真逆の相手に勝ちを譲ってあげる態度に心が洗われますね。『準備室』役場の幼馴染の二人主査と主任に階級が別の茂木と原谷の物語で、セキセイインコが真似る人の声が重要な役割を果たします。『ハガニアの霧』著者の作品ではスケールの大きなグァム島を舞台にした名画と誘拐事件の物語。偶然発見された世界的名画を狙った何者かが息子を誘拐するが…裏切りを許す主人公に感動します。

父がスーツケースをそのまま兄に見せると「道理で体調が悪かったわけだ、いつも猫の声が聞こえて自分がどうかなったと思ったよ」と笑い写真だけを抜くと首はまとめて浩一の墓に入れた。その後異常は起こっていない。それから浩一は体に猫の首が噛み付いた姿で彼の前に何度か現れ恨めしそうな顔で睨んだが腹が立って一度怒鳴りつけると現れなくなったという。『触れぬ神に』動物が大好きな浅野さんは七歳の誕生日に見つけた捨て猫でナナと名付けられ浅野さんにとても懐いた。小学５年生の夏に浅野さんは宿題の為に近所の河原に行って野草を見つけた。

犬の遠吠えが聞こえたので探すと深い穴の底に犬がいた。ここは子供がきてはいけない場所なので大人に知らせられず、また自力で助ける事も無理なので行き詰ってしまった。悩んだ浅野さんはとりあえず餌をあげ始めた。主として給食のパンを与えた続けたが上手く近くに落ちない事も多く犬は悲しげに吠えた。何日かパンが上手く落とせない日が続くと犬は飢えて睨み動かなくなった。怖くなり家に帰るとナナが逃げた。気を失い目覚めると体を縛られ見知らぬお婆さんに犬がとり憑いていると言われ一週間お祓いすると縄が解かれナナが寄ってきたので泣いた。

桜木は治療を兼ねて彼女に同行し、赤痣病の療養施設・狗島愛心園を訪れ従姉で園長の仁菜と会うが、やがて島の人喰い煙突んと呼ばれる場所で施設の元園長の伯父の首なし死体が発見され、続いて従業員の手足を切断された凄惨な死体が見つかるのだった。今回は前回のような心理的なトリックはありませんが、普通の本格推理小説として楽しめましたし、殺人動機・真犯人の正体・島の忌まわしい過去の歴史が絡んだ人間ドラマ・若きヒロイン陶子の特異な病の事情と盛り沢山の趣向で読み所満載でしたね。そうですね、でも本書はそれ程売れなかったのですね。

私が考える売れなかった理由は、探偵の魅力がパンチに欠けた事が大きいと思いますね。今の時代はキャラの個性が大事ですから、飛び抜けて笑わせる面白さ等の個性が際立って目立たないと駄目なのですね。それから全体的に一昔前の踏襲で新味に欠ける面も大きかったのでしょう。やはり何か図抜けた現代性が感じられないと今は難しいのでしょうね。また長編の形式や本格派の探偵小説は著者には不向きだったのかもしれませんし、まあ運もなかったのでしょう。でも本作は昔ながらの古典的探偵小説として素晴らしい秀作ですのでぜひ一読をお勧めしますね。

『赤い糸』大虎のサチ子が朝起きて気分を変え化粧しようとして「柄やない女らしくなんてうちの人生やない。大虎で一生終わるんやさかい」と気を滅入らせ店の外へ出ると本日休業の札が下がりスーツ姿の景浦がやってくる。景浦が今日は休業にして欲しい話があると頼み、サチ子がそうそう休んでられないわ、近頃はあちこちつぶれてるのよと怒ると、７２０万の給料を一生預けたいんだ、いやかいサッちゃんと聞き婚姻届けを出して、うんと言ってくれるまで何日でも待つよという。サチ子は一旦部屋に戻るが遂にあぶさんに抱きつき結婚してあげると答える。

『誓酒』あぶさんとサチ子は故郷・新潟で結婚式を挙げ、大阪に帰ると新居に移り住み、おやっさんの部屋も用意して同居を申し出るが「儂はあの店を守るからええ」と言って断られる。カコちゃんは景浦の部屋をもらい最初は安武ホンマに結婚するんかとしょげていたが結婚式に出て諦める。景浦は大虎に顔出しするのが遅くなり飲む量も減ってすぐに帰るのでサチ子が心配して昼間に練習を見に行くと景浦が必死の形相で打撃練習していた。藤原選手に「あぶは結婚したから成績が落ちたと言われて君を辛くさせんようにと考えとるんや」と教えられて納得する。

祖父の死によって遺産を独り占めにしようと企んだ男が皆殺ししようと少年と父が暮らす家に乗り込みますが…。内気な少年が初恋の彼女に告白しようとして中々叶いませんでしたが最後に成就するものの…ホラーらしいありきたりでない結末が待ち受けています。私は受賞作よりもアブノーマルな形ながらも心を打つ親子愛が描かれた２作目をお奨めしますね。本書を読んで著者はこれでもかと血みどろ残酷ホラーを書き続けて悲しい不幸な結末にして幕を下ろすタイプの作家さんではないなと思いましたので今後とも他の作品も探して読んでいこうと思いますね。

青田のいないチームは１８－２とボロ負けして甲子園を去ります。まあ青田の態度は褒められたものではありませんが、もしプロであれば勝利に貢献した事で賞賛されるプレーですし私はこの監督のやり方にも問題があると思いますね。青田は夏の間も野球から完全に離れるが秋のドラフト会議でメッツが指名し交渉権を得る。だが青田は岩田に俺は女と年寄りのいるチームは嫌いだと入団を頑なに拒み続ける。青田は最後に俺の球を受けてみろといい岩田に５球を投げ捕球されたが「あばよ」と別れる。数日後、水原が青田家に来て岩田が肺炎で入院したと告げる。

もう一度だけ会って下さいと頼まれた青田は病室で岩田が最初の一球で突き指していたのを我慢して残り四球を取っていたのを知って気持ちが動きメッツに入団すると態度を変える。青田が一人で投球練習をしていると旅の男が来て球を受けさせてくれと言い年の暮れ迄１月間、通算三千球を捕球する。最後に自分は元メッツの捕手の横田だと名乗って去るが翌年に横田は広島カープの打撃コーチ補佐として入団する。青田はオープン戦で福岡ダイエーホークス相手にふてぶてしい態度で投げ味方が８つもエラー（岩田の指示による）しながらも５回をゼロに抑える。

物語はスランプ中の作家に手紙が送られてきて始まります。「読者が犯人」という魅力的な最後の不可能トリックのアイディアを二億円で買って欲しい。作家は親友に手紙の話を打ち明けながら、次々に送られてくる第２、第３の手紙を読みますが、やがて自宅に刑事が訪ねてきて、手紙の送り手の名前、香坂誠一の失踪事件を告げて協力を依頼してきます。やがて事件は東京で起きた麻薬の売人殺しにも関係する事が明らかとなります。まあ、読み終えてこれは一度限りのトリックだなと思いましたし、もし文章を削ぎ落せば短編でも書ける内容だとは思いました。

でも、この大胆な発想が素晴らしいですし読者を飽きさせずに興味深い話題の連続で読ませる才能には脱帽しましたし、私は著者を全面的に信頼できる作家だなと確信しましたね。一見難解なようですがズブの素人にも解り易い表現で書かれた文章にも感心しましたし、ぜひ他の作品も読んでいろんなミステリーの技巧を尽くした作品に触れたいと思いますね。それから巻末の島田荘司さんの解説も懇切丁寧でミステリー史についてとても勉強になる堂々たる読み物でしたね。本書を読んで罪悪感を抱く必要はないですが一度限りの壮大なペテンを楽しんで下さいね。

『夫婦徳利』４月に大虎のサチ子に親友の女性が両親の形見の夫婦徳利を預け２０万円を貸して欲しいと頼みサチ子は応じる。７月の末に景浦が大虎に行くと親友の女性の亭主が怒鳴っていた。サチ子が夫婦徳利の１つを誤って割ってしまったので百万円を弁償しろと言うのだ。男は質屋に入れておけば無事だったのにと妻を責めると景浦は違うな、３ヶ月過ぎて質流れだといいもう片方の徳利を落として割る。８０万円弁償しろという男に景浦は下宿まで行こうと連れ出すが途中で男が反省しもういいと言って帰ってくる。サチ子はあぶさんの気魄勝ちやわと話す。

『景武者』阪急―南海の試合前の食堂で景浦と阪急・今井投手が甲子園の高校野球を見ていると新潟県代表の選手が物干し竿バットに酒の代わりに水しぶきで景浦の真似をしていた。だが惜しくも敗退し、その夜の試合で代打の景浦は一死満塁で今井投手と対し初球からスクイズしたが外されて三塁走者がアウトになる。今井は敬遠策に出て外にボールを投げるが景浦は外角に飛びつきライトへ逆転３ランを放つ。大虎ではあぶさんの景武者高校生がＴＶを見て感激し、僕にはサチ子さんみたいな恋人がいませんから作ると言い参考にサチ子の３サイズを聞いて帰る。

現在１９９９年の今月９月に世界の終焉が予言された状況で私立探偵の南深騎（みき）と幼馴染の女・菜美の事務所に少女・黒鴣瑠華（くろくるか）が訊ねてきてフランスから持ってきた屋敷「クロック城」に出没するスキップマンという幽霊を退治して欲しいと依頼し二人は引き受ける。やがて事務所にＳＥＥＭという世界を守る為に結成された少々荒っぽい連中が来るが客を上手くかくまって翌日大雨の降る中をクロック城へと向かう。城の正面には３つの大時計が設置され中央が正しい時間、左が過去で１０分遅れ、右が未来で１０分先の時刻を表示していた。

到着した夜に慌ただしく二人の首無し死体が左右（過去・未来）の館で発見され２つの首が中央の現在の館に置かれた不可能犯罪が起きる。本作の犯罪自体は凄惨ですが残酷味は薄くシンプルで単純明快なメイントリックは誠に美しいなと思えますね。二転三転の真犯人の心理描写はやや解り難い面もありますが、この物理トリックは例えば「本陣殺人事件」に比肩する古典的名作級の完成度の高さだと思いますね。謎解きの他にも手に汗握るサスペンスも味わえて飽きずに楽しめました。唯一学校の屋上から飛び降りた菜美が無事だった理由が知りたかったですね。

数年後に最初の物件の前を通りかかるとパトカーが沢山停まっているのを見た。後にそのマンションに住んでいた住人が殺人事件を起こしたと知る。男は何とＬ氏と同姓同名で年齢も資格も職業も同じだったのだ。あの部屋に違いないと確信し、やっぱり罠だったんだろうとＬ氏は首を振った。『腹化け』昔、Tさんが工場の社員寮に住んでいた時に同僚が子狸を捕まえてきて数人で飼った。小さい頃はよかったが大きくなるにつれ面倒になり寮母に任せた。ある晩珍しく肉が入った鍋が出て毎日続く。庭を見ると狸がいないのに気付く。おばさんが料理したんだな。

俺達に食べさせようとして餌をやってたんだなと全員で笑った。だが次の日から、おかしなことに腹が減らなくなり飯が食いたくなくなる。毎日力仕事をしているのに考えられない事だが、そういう状態が一週間ほど続いた。皆があまりにもご飯を食べないので、おばさんは青くなって責任を感じていた。その後二週間すると手足がむくんでいるのに気付き、それから仕事中に全員が卒倒するみたいにバタバタと倒れ始めた。Tさんも意識を失くし気付くと病院で同僚達と栄養失調で皆入院した。狸が殺され食われ腹の中で化けて出て皆の腹が化かされたんだろうな。

だが、彼はブルペンではいいのだが本番では全く駄目で開幕後も打たれ続け敗戦処理に回される。二軍落ちが決まった最後の試合で岩田がリリーフに出るが２回で２５失点のメッタ打ちをくらう。それを見た宣英は感動して自ら申し出て登板し力一杯の球を投げ込む。『ふたり勇気』水原勇気の家へ訪ねてきた茶髪娘はメッツの元主砲・国立の娘・珠美で野球を両親に反対されて家出してきました、投球を教えて下さいと頼む。水原は彼女の素質と実力を認めて伊豆で２か月間合宿する。そして秋のドラフト会議でメッツは珠美を１位指名し女性プロ選手２号となる。

二人が国立家に挨拶しに行くと国立夫人が水原の頬を平手でぶつが、水原は来年のオープン戦を見に来てくださいと言う。翌年のオープン戦ダイエー相手に珠美は１回を投げてドリームボールで三者三振に仕留める。試合後にきた両親に珠美は変化球を投げる為に指の間を切った事を打ち明け漸く許しを得る。『帰って来た北の狼』大阪ガメッツが成績不振の為に監督が解任され新監督に元メッツ投手の火浦健（背番号９０）が就任する。火浦はメッツ戦で選手に指導しメッツ抑えの珠美のドリームボールを打ち砕く。だが水原コーチが新球を開発してリベンジする。

漸く正しい方向に進むと主人の頭を踏んで怒られ何処へ行くのと聞かれると「どこでしたかなあ、まだ聞いてなかったようですなあ」と言い「ははははは」と笑う。そこの店はクビになったが夜強烈な南京虫が出て常に寝不足だった為のしくじりだったという。次の製販屋でもジンク版を運ぶ仕事を頼まれると餅屋に寄り道して外にポイと置いて食べた後で忘れたり、続いて場所が解らず一時道端に置いて聞きに帰り戻ると消えていたりで結局そこもクビになる。園芸学校に応募すると５１人中５０人が合格なのに何故か落ち無試験の職工でも文句を言いクビになる。

新聞配達では塗りたてのコンクリートの場所に新聞を入れたり近道をしようとして野井戸に落ちて新聞は泥だらけで怒られたりで、日本工学学校に入ると授業中に居眠りと屁をして立たされ意気投合した生徒と夜怪しげな盛り場に飲みに行き夕刊を配るのを忘れて、どちらも同時にクビになる。次に大阪夜間中学に入ると制帽をかぶってこなかった、答案用紙にアーメンと書き、次にＳＦまがいのクジラ小説を書いてフマジメだと三度怒られる。家では大食いで、しくじるのを恐れて学校をサボって家で本を読んでいると遂に召集令状が来て戦地へと旅立つのだった。

途中の新幹線で偶然に同じ場所に行く心理カウンセラーの桜木静流と出会って同行し、三人はレンタカーで縁切り寺・篭山寺へと向かうが、そこで私たちは奇怪な連続殺人事件に遭遇するのだった。第３章の終盤に探偵役の桜木静流の正体が最初に名乗った身分ではなく、己の好奇心の為に他人の秘密をのぞかずにはいられず目的の為なら平気で犯罪行為にも手を染める「窃視症探偵」である事が明かされます。しかも、それだけでなく最終行ではそれまでの世界がひっくり返るような衝撃の真実が明かされるのですね。本当にこの事実を知って頭が爆発しましたよ。

でもまあ４章以降は、そういうもんなんだと頭を無理矢理納得させて、どうにか読み進みました。まあとにかく訳の解らない事の連続で首なし死体や焼死体等々の３つの死体の謎に対し真犯人と殺人動機について名探偵・桜木が関係者に対して高速で明快に謎解きをしていきます。不可能犯罪や特異な犯罪動機ではないですが中々に論理的で巧く練られたミステリだと思います。でも若干性急でうまく行き過ぎな部分はあると思います。著者は元々漫画原作者で小説第一作とあって少し構成が不十分な面はありますが実力は確かですので読む価値はあると思いますね。

『鉄扉』福島県のとある廃墟に四人の男子学生が忍び込んだ。郊外に佇む３階建てのビルだったが、いざ入ると全くの期待外れで全てが大した事も無かったのだが帰ろうとして一人が地下へ降りる階段を見つける。すると一人が「ごめん、俺パス」と何か空気が嫌すぎると言うので残りの３人で降りた。意外にもドアが開き中に入っても何もない。だが振り向くと鉄扉が勝手に閉まっていた。おーいと呼ぶが返事はなく実はパスした男は一人先に帰っていた。暫く後ドンドンドンと扉を叩く音と共に「おーい、そこに誰かいるのか」と声がして三人はホッと安堵した。

すみません、僕達うっかりここ入っちゃって何か鍵閉まっちゃったみたいで閉じ込められちゃって開けてもらっていいですか？と申し訳なさそうな声で相手にお願いした。「あーそうかーちょっと待ってろー人呼んでこようかー」と声がして、その後延々と同じ事ばかりを繰り返し聞いてきた。こいつ頭のおかしい奴なのか？と腹が立ち「あの、この扉、今すぐ開けてくださいよ！」すると「いやあ、それは無理だよお、お前らはあ、そこで死ぬんだよお」その瞬間、大勢の人間の笑い声が響き延々と続いた。三人は震え上がり漸く前を見ると扉が開いていたという。

『決着』南海ー巨人のオープン戦で巨人の長嶋監督が山岡をリリーフに送ると南海の広瀬監督は景浦を代打に送る。初球、キャッチャーはインコースが強いからとアウトコースのサインを出すが、インコースへ来て三塁線のファールになる。２球目も外角のカーブのサインだったが同じくインコースへ来て景浦はレフトへ逆転３ランＨＲを打つ。コントロールの甘さが二球も出てはと捕手が嘆き、投手コーチは山岡を一軍候補から外す。広瀬監督は「即戦力どころかもうニ、三年かかりそうな投球やないか、二年後の山岡とならやるけどな」と話しトレードは流れる。

『オープンリーチ』景浦はオープン戦で阪神の小林投手から７号ＨＲを打って近鉄のマニエルと並ぶ。景浦は記者からの質問に「今年はホームラン王を取ります」と答えるが広瀬監督は「あぶのバカ当たりの結論は…ある日突然や！」と結ぶ。マニエルが記者に「ホームラン王の条件は４０本の内１０本は逆方向にもっていけるパワーがいるんだ」と笑って話していると景浦が阪神の江本からライトスタンド上段に８号を打ったと情報が入る。マニエルは試合で力んで二打席連続三振してクソッタレとこぼし遂に酒しぶきをやると西本監督が「おまえな…」と呆れる。

『侍』日米オールスターゲームに出場する景浦が食堂で酒を呑んでいるとピート・ローズら３人の選手が見に来て試合前に酒を飲むとは不謹慎で、日本プロ野球はこういう男をプロとして認めたうえ野放しにしておくのか、なるほどこれじゃいつまでたっても大リーガーの足下にすら追いつけんと言って馬鹿にする。試合ではジョージ・フォスターの１３０メートル弾等で大リーグ選抜チームが６－０とリードする。９回裏に代打・景浦が１５０メートル弾を打ち途中でゲロを吐くと外人達が度肝を抜かれ「サムライダ～、ハラキリノサムライダ～！」とぶっ魂げる。

『９０と９０』スポーツ新聞N１が「９０番が９０番に熱烈求愛」右の代打陣の不足に悩む巨人の長嶋監督が日米オールスターでの景浦の豪快な一発を見てすっかり惚れ込んでしまったとトレード話をスクープ報道する。景浦は大虎に来て年内に契約更改を済ませ７２０万円だと言って正月休みを故郷・新潟で一緒に過ごそうとサチ子を誘う。故郷で景浦は両親からサチ子との結婚を聞かれると考えた事もないよと答える。景浦はサチ子と二人で雪の降りしきる万代橋から日本海を眺めてサチ子をコートで温かく包んであげてサチ子の「近すぎて」の言葉に狼狽える。

次の試合に何と武藤がベンチ入りしていた。鉄五郎が先発し１点リードで迎えた９回裏二死一塁で三村はわざと２－３まで見送り水原がリリーフに出ると武藤が代打に指名される。岩田が捕手と交代してカーブのサインを送ると水原は拒否する。私はドリームボールを投げます。絶対に打たせません。自らの引退を賭けると宣言する。水原の投げたドリームボールがホップして落ちて揺れてスクリューボールに変化する所を武藤がアッパースイングでジャストミートしてレフトへ高々と打ち上げサヨナラホームランする。武藤は試合後に引退するが水原は辞めない。

武藤はこの試合まで打倒ドリームボールに向けて１０時間連続で素振りをする等の血のにじむ努力を続けてきて最後は悲願が叶い吹っ切れた顔で引退していくのですが、何処か寂しげな表情なのは、本当はこんな形でなく古巣メッツで水原とバッテリーを組みたかったからでしょうね。そういう意味では誠に悲運の男ですが、最後に同僚からドリームボールの打ち方を聞かれると「プロだったら自分で考えろ」と拒否したのは立派でしたね。水原は岩田に私は野球が大好きだから辞めません！と明るく答えて物語は幕を閉じますが、続いて残りの１６冊を読みますね。

３戦目も日の本盛選手が好投し９回２死２ストライクで監督が水原に交代を告げるが、日の本は「水原、帰れ」と拒否する。暫く完投が無い為に投げ抜きたい気持ちから出た言葉だが監督に促され渋々従う。水原が投げた普通のカーブを王島が打つとライトへの逆転ＨＲとなり日の本の勝ちが消えて連勝が止まる。試合後のロッカールームで日の本が不満を爆発させ鉄五郎と言い争い殴り合う。岩田はグラウンドで４番の国立が代表して水原の球を打つ舞台を作り国立は水原の球を軽々とＨＲする。これを見た記者の山井がドリームボールは存在しないと記事を書く。

次の試合から二軍の小仏監督が指揮を交代し水原は登板せず火浦が完投勝利を飾る。広島の武藤は２軍戦で三振するが古葉監督は１軍に昇格させる。広島球場でのメッツ戦でメッツリードで迎えた９回裏２死２ストライクになると小仏監督は今度は水原をマウンドに送る。広島は武藤を代打に送り水原と勝負するが水原の投げた球は普通のシュートで武藤は三振する。試合後、武藤は監督から自由契約を通告され、もう一打席チャンスを下さいと頼むがオーナー命令だと拒否される。次の中日戦から五利監督と鉄五郎が復帰し水原はフォークで打者を三振に打ち取る。

『ミスファイア』母親がモンスターペアレントと呼ばれる学校に何かと苦情を言いに来る生徒の家が放火に会い、その標的にされていた女教師が近所で目撃されて疑惑の的になる。森島は同僚の彼女を信じて最後に仰天の真相を暴く。『やわらかい甲羅』校外実習で行った自然公園から中国産の珍しいカメが姿を消した事件と教室でのイジメ問題に森島は立ち向かう。『ショパンの髭』厳格な女教師の音楽の授業で音程を外して歌う男子生徒の謎を森島は探る。『家族写真』３年生の教師が授業中に居眠りをして生徒が野放しでゲームで遊ぶ事態に森島が立ち上がる。

『悲しい朝には』裕福な家庭の女生徒の不登校問題の複雑な事情を森島が探る。『グッバイ・ジャングル』バイク事故を起こし入院した森島が復職し未解決の女生徒の問題の意外な真相を知る。森島は友人の薦めで一旦はアルバイトを１年で辞めて新たな勤め先に就こうとしますが直前で心変わりして再び教師の道を目指します。彼は学校にいる間、上からの理不尽な干渉に遭って苦労しますが出来るだけ抵抗して何よりも生徒の幸せを第一に考えて行動するのですね。彼ならば今後も学校の抱える難問題を解決してくれると信じますし続編を切実に読みたいですね。

後ろに奇妙なぬっぺらぼうも続き鬼太郎は目に見えない巨大な何者かに上から踏まれ村の家が破壊される。アリランの歌を口ずさんだ鬼太郎は顔がお爺さんになる。ぬりかべが見えぬ敵と戦い腹の部分をぶち破られると鬼太郎が素早く糸で腹を縫ってやる。鬼太郎は敵を待ち伏せ大気に腐った息を吐くと大量の銀蠅が集まり巨大なぬっぺらぼうが姿を現す。敵が疲れて寝転がると何万匹もの朝鮮ひるが来て体を食い敵は土と化す。鬼太郎は小さいぬっぺらぼうを追求し若さのエキス（不老長寿の薬）を手に入れ村人達に飲ませ元の若さを取り戻し日本への帰途に就く。

『妖怪軍団』ねずみ男がゴミ箱をあさっていると南方から来た二人の妖怪が近付き「妖怪解放軍」と名乗り南方では妖怪の残り物を人間が食べていると話す。妖怪アカマタはねずみ男にのり移り鬼太郎の体から生気を全て吸い取るが腹が爆発し破れて倒れる。鬼太郎は復活し次に襲い掛かって来た木の妖怪やし落としにつるべ火を呼んで燃やして退治する。ねずみ男の腹の破れを縫ったが具合が悪く目玉の親父が口から体内に入ると臭いおならが出て親父が肛門から出てくる。ねずみ男の意識が戻り親父は悪いガスを抜いたのじゃ臭くて気が狂うと茶わん風呂に入る。

そして何とこの晴れ舞台で景浦は４打席連続ホームランを達成して巨人・王選手の日本記録に並ぶのですね。広瀬監督は阪急ファンの報復を恐れて完全警護でアパートに泊まり込む念の入れようで迎えた翌日の日本新記録がかかった第一打席に景浦は山口投手の初球を打つと何とファールが左頬を直撃して倒れ退場となります。景浦は入院し５０日の出場停止となりますが、再び故郷・新潟での西武ライオンズ戦の１打席目に森投手からホームランを打って新記録を達成します。だが４回までに土砂降りの雨が降り出して試合中止になり惜しくも幻の一発となります。

そして再び新記録のかかる川崎球場でのロッテ戦、村田投手の切れ味鋭いフォークボールにバットが空を切り空振り三振するのです。誠に悔しいですが私は著者の水島先生が日本記録の王選手の偉業に敬意を払われてタイ記録に留めたのだろうと思いますね。『飛ばし屋カーニバル』３年連続オールスターゲームに出場した景浦はセパ対抗ホームラン競争に選ばれる。セリーグが阪神・掛布５本、広島・山本４本、巨人・王５本で計１４本となり、パリーグが日ハム・柏原２本、西武・田淵３本の後で景浦は投手に日ハムの高橋を指名し１０本を打ってセに打ち勝つ。

山井は特ダネ記事を伏せ、やがて水原が１軍に復帰するとチームのムードが良くなって大洋、中日を３タテして６連勝する。広島の古葉監督は東京でのメッツ戦から武藤捕手を１軍に昇格させ、武藤は初戦に火浦から代打の初打席で逆転打を打ってメッツの連勝を止める。２戦目はメッツの１点リードで広島は９回表に二死満塁と攻め武藤を代打に送って２－３と粘る。だがそこで水原の登板が告げられ、捕手も鉄五郎と交代する。水原はボーリングの投法で体を反らして投げボールは低めからホップしてさらに変化し武藤は空振り三振に倒れ水原はセーブをあげる。

翌日の第３戦目、武藤は２軍落ちとなり先に広島へ帰る。そして試合は再び９回表１点差二死１，２塁２－３のカウントで水原が登板し打者・衣笠と対する。昨日と同じフォームで投げたボールはしかし普通のカーブだったが衣笠は戸惑い空振り三振する。水原と鉄五郎は、まんまとしてやったりときひひひと笑う。続いて阪神を迎えての初戦は火浦が好投し同じく１点差で迎えた９回表に２死２ストライクで水原が登板する。打席には力動玄馬が立ち水原は同じフォームから投げ込み外に逃げるシュートボールで空振り三振に打ち取り一球のみの三連投で勝利する。

広島の打者が打席でウインクして来ると水原は近めにくそボールを投げ込む。球道が定まらない荒れ球に打者は的が絞れず凡打を繰り返して７，８回と三者凡退に抑える。だが広島の古葉監督は水原の投球を分析してパターンを見抜く。９回裏、各打者にストライクを狙い打ちさせてヒット２本で二死１，２塁まで攻めると水原がフォークボールを暴投して帯刀が後逸し二走者がそれぞれ進む。満塁策で打者を敬遠した後の次打者に対し水原の初球はワンバウンドで帯刀が後ろを向くと三塁走者がホームに突っ込むが帯刀が振り向いてタッチアウトで試合終了となる。

古葉監督は女狐に騙されたと悔しがり水原は初勝利を上げる。続く甲子園球場での阪神戦、初戦メッツが勝利し星を５割に戻した第２戦メッツは７回表に３点を奪って逆転し、その裏水原が登板し２回をゼロに抑える。９回裏２点リードで先頭の４番田淵はバットを短く持ってピッチャー返しでセンター前へヒットする。続く三人が全て強烈なピッチャー返しで３連打して水原は女故にか恐怖から本能的に逃げてしまい降板する。１点差で鉄五郎が登板するが掛布選手に逆転サヨナラ満塁弾を打たれ敗戦となり翌日も先発するが同じ作戦を取られ水原は２軍に落ちる。

一人前の大人だと、笑わせんじゃない。義兄の言葉に自らの思い上がりを反省した満はパンチパーマを丸坊主に変えて心機一転、一から出直すのですね。二人が朝早く大雪の舞う中をランニングしていると薄着の爺さんから馬鹿にされる。爺さんは草相撲の横綱で腹を立てた満が何度も勝負を挑むが地面に叩きつけられ、景浦も土俵際まで追い詰めながら驚異の粘りの二枚腰で残し逆にぶん投げられる。二人は爺さんが何と鉄下駄を履いて鍛えているのにも気付く。『さすが大物』大虎のおやっさんがすっかり気弱になり店を畳もうと思うと店にきたあぶさんに話す。

昔店の名は小虎だったのを阪神に江夏と田淵が入団してから大虎に変えたのだが田淵の西武への移籍が決まって落ち込んでいるのだ。景浦はオープン戦で田淵捕手に「代打は大変ですな」と話しかけられ「インコースのシュートきます」と言い、その通りの球が来てＨＲすると「おめでとうさん」と祝福されたと話す。ある夜、景浦は阪神のユニフォーム姿の田淵を大虎に連れてくる。おやっさんは感激し西武ライオンズ・田淵と大きなサインを壁に書いてもらい田淵は背番号２２のユニフォームをおやっさんにプレゼントして常連客のがんばれの声に送られて帰る。

少女の部屋に頻繁に架かってくる無言電話と犯人の見えない圧力。また同時刻に若い女が殴殺される事件が起き、数日後にまたもや前の被害者の同居人の女が殺される。一連の複雑怪奇な殺人の連環に警視庁捜査一課の貴島刑事が挑むのだった。著者の仕掛ける広義の密室トリックは今回も素晴らしい出来で、的確に読者を錯覚と迷路の道に誘い込みますね。著者の流儀はいたってシンプルで実現不可能なものは一切なく最大限の効果を生むのですね。今回の要注目は犯人の鬼気迫る心理描写で「死者の花嫁」の章では上品さが却って恐ろしさを倍加させていますね。

そして次の章では更なるもう一つの裏の真相が明かされ、エピローグではこれでもかとばかりに超自然の領域の可能性が示されるのですね。さて、前作に続いて登場した刑事・貴島柊志は日常の暮らしの中からふとした事でヒントを得て閃きを得る直感型の名探偵なのですが、まさきとしかさんのパスカルこと三ツ矢刑事ほどの変人ではないにせよ何となく孤高を貫く独善的な所があって過去に何らかの経緯がありながら自分の胸の内を完全にはさらけ出さない性格が少し残念に思えますね。でもシリーズはまだ２冊残っていますので必ずや真実を確かめたいですね。

それぞれの世界では両親も友人達も名前が異なるだけでみんな瓜二つなのですね。当然、これは親には内緒なのですがオチで未来の変てこなアイテムを現代に持ってきて親がそれに戸惑ったまま終わるという無責任なギャグがあって笑いましたね。『人力飛行機』みきおの友達が人力飛行機を発明したと言って木の上から飛び降りるがうまく行かずに落下して怪我をする。その後みきおが未来へ行くと新製品のフライングクリームを教えられ手に塗ると大空に浮かび上がり自由に空を飛び回って遊ぶ。みきおは一つもらって帰って家に置いておくと見つからなくなる。

ママの鏡台で見つけて友達を大勢呼び木から飛び降りるが墜落して怪我をする。家の中ではママが宙に浮かんでおり、みきおはどうやら化粧品と間違えたらしいやと気付く。『万能型自動はん売機』みきおは切手のコレクションに飽きて友達に買ってと頼むが５００円と言われて断る。未来に行くと家に「万能型自動はん売機」が届いていてカタログから選んでボタンを押して実物大プラモ飛行機を出し組み立てて飛んでいると後で返品不可で３０万円もすると聞いて蒼くなる。現代に帰ってミキオに切手を見せると５０万円の価値があると聞き何も説明せずに譲る。

でも来る者があれば去る者ありで、この日でメッツを自主退団する村田選手が挨拶にきます。５年間がんばった結果限界を感じた末の決断で、武藤は素っ気なく早く出ていけと言いますが、練習の後で一番風呂に入らせ水原に背中を流してやれと命じます。だが、メッツは左投手が一枚欲しくて中日にトレードを申し入れ見返り選手に武藤と新聞が報じる武藤は無視しその夜、妻と息子のいる自宅で寝ると水原が落ちる球で巨人の王選手を三振に打ち取る夢を見る。彼は水原と１軍で黄金バッテリーを組んでドリームボールを完成するんや！と朝から水原に抱きつく。

武藤の中日へのトレードは流れる。水原はまず武藤からランニングと筋力トレーニングでバーベルを持ち上げさせられ厳しくしごかれる。同時にフォークボールを投げる為にボールを挟む練習を命じた武藤は夜に今度は張本選手が三振する夢を見る。だが今度は武藤と広島とのトレード話が報じられ、岩田鉄五郎が２軍にきて水原の指導方針について武藤と衝突し激しく怒鳴り合う。翌日、武藤は１軍の火浦投手と四打席勝負して広島への移籍が決まる。水原は武藤が去る間際にドリームボールの投げ方について聞くが、もう俺は敵だから教えられるかと拒否される。

カコちゃんは喜んで景浦の部屋に女の子の人形やぬいぐるみを置きピンクレディーのポスターを壁に貼って自分好みに模様替えする。サチ子が朝方に訪ねて行くと部屋がガラリと変わり景浦が布団をかぶって寝ていて女と一緒なのではと誤解して声をかけずに蒼褪めた顔で引き返す。大虎に雑誌の取材で記者がきて豪打のスタミナ源を聞かれた景浦が、恋女房がいますと答えてサチ子が狼狽するが次に「酒ですよ」と言ったのでホッとする。記者はパワーの秘密がある筈だと疑うが、朝・酒、昼・素うどん、夜・酒で打つ姿にモンスターやと呆れサチ子は真実を知る。

『鬼の霍乱』大虎の親父が仮病で寝込み景浦に厨房を手伝わせると皿を割り手を切ってしまい翌日の試合でセフティーバントで出塁する。サチ子は安堵し親を叩き起こす。『ふられ安』ライオンズとの九州遠征３連戦で景浦には雨男のジンクスがあり小倉で１，２戦が雨で流れる。博多では深刻な水不足に悩んでおり大勢の市民が景浦に向けて雨神様どうか雨を降らして下さいとお祈りにくる。博多での試合で景浦は６回表に逆転満塁ＨＲを打つがホームを踏むと同時に豪雨が降り出し不運にもルールによってＨＲが幻と消え５回までのスコアでチームも敗戦となる。

これを左へ回すと外の景色が変わるんだといい面白がった爺と婆がどんどん回すと外からマンモスの遠吠えが聞こえて鬼太郎は窓から二人を外へ放り出す。鬼太郎が石臼を素早く右に回すと縄文・大和・徳川と過ぎて昭和に帰って来た。これはタイムマシン時間旅行機で鬼太郎は妖怪を先祖流しにしねずみ男を救出する。『おどろおどろ』鬼太郎の家にプラモデルの飛行機が送られてきて組み立てて乗ると無人島へと運ばれ仲間の妖怪達が集まっていた。ねずみ男が飛行機が落下するのを見て家を訪ねると、中にいた巨大な鬼の首みたいな妖怪おどろおどろに捕まる。

体に髪の毛が巻き付いて霊界輸送機に放り込まれる。てんとう虫にねずみ男の危機を教えられた鬼太郎が件の家に着くと油断した所を捕まり機械に放り込まれる。中には他に大勢の子供達がいてプラモの飛行機で運ばれたらしい。ちゃんちゃんこの妖力で外に出た鬼太郎が妖怪と対すると子供が現れ「あれは僕の父で毛生え薬の研究の途中で自分を実験台に薬を飲むと妖怪になり人間の血を吸わないと生きられなくなったのです」と話す。鬼太郎は血を吸いにきた妖怪から逆に血を吸って倒し霊界輸送機を逆に回して子供達を救い出し怒る息子を後に残し一行は去る。

東京に帰った道尾は真備と助手の凛を再訪して事情を話し怪奇な謎の調査を依頼する。本書は仏像に関する蘊蓄が豊富に書かれていて勉強になりますし重くはなく軽く読み易い文章で快調に読み進められますね。唯、関係者の口が重くてやや事件の核心に迫るのが遅い嫌いはありますね。事件は駐車場に書かれた「く」の文字と千手観音像に血痕の付着が認められた事で警察が呼ばれて更に仏師がもう一人姿を消して、ますます五里霧中となります。終盤クライマックスでは真備が積極的に動き出し真犯人の正体が二転三転するスリリングな読み心地が味わえますね。

私は残念ながら犯人の正体を見抜けませんでしたね。怪奇現象のトリックについてはありがちな事で、わかってみればどうしてこんな単純な仕掛に気付かなかったのだろうなと思いましたね。細部にきちんと伏線が張られ全て余す所なく答が示されるのは前作「背の眼」と同様で著者の律義さを感じました。１６６頁の手掛かりは横溝正史の有名作を思わせますし終盤では森村誠一ミステリの要素も感じましたね。唯一今回は心霊面の要素が皆無だった点が残念ですが、でも過去が影を落とす忌まわしく凄まじい情念を湛えた人間ドラマには深く胸を打たれましたね。

その裏沢村は打席の水原を四球で歩かせ、わざと塁間を走らせてスタミナ切れを狙う作戦に出る。まあこれは卑怯な作戦ですが、阪神としてはプロの面子で小娘に易々と負ける訳にいかず綺麗ごと抜きで汚い手も仕掛けるのですね。メッツは国立の適時打で１点を追加するが二回り目に田淵にど真ん中に失投して同点２ランＨＲを浴びる。スタンドでは犬神総裁が見守り水原が勝てば女性選手を認めると話す。メッツは次の回に奮起し沢村に連打を浴びせ４点を奪う。そして５回裏、勝利投手の権利がかかるマウンドで水原は遂に阪神打線に捕まり連打で２点を失う。

二点差リードの二死満塁で迎えるバッターは四番の田淵だ。１，２球と帯刀のリードが冴えて左右に散らし２ストライクと追い込む。３球目はワンバウンドとなり帯刀が懸命に止める。次のボールを打ちに行った田淵はフォークボールに気付き途中でバットを引く。判定はボールで帯刀と鉄五郎はスイングしていると抗議するが審判は認めない。そして５球目ど真ん中のストレートを田淵はレフトへ逆転満塁ＨＲを放つ。水原は６回も続投するが沢村に３ランＨＲを浴びて降板する。だが試合後に犬神総裁がベンチに来て「負けたよ」と紙を残し協約に特例を認める。

だがミットは内角で村田が投げたインコースの直球を景浦は体を開いて右中間へ流し打ち三塁打とし二者を返して一点差に迫る。ノムさんはいつの間にあの打ち方を覚えよったんやと驚く。『燃える軍団・火の玉投手』景浦の義弟・満が二年目に１軍に昇格し南海戦２点リードの二死満塁にリリーフ登板すると景浦が物干し竿バットに酒しぶきで登場し、景浦は満の球威を感じる為に手袋を外す。初球は外角球をファールし二球目は外角球を見逃して追い込み次は一球ウエストかと見せて内角にズバッと速球を投げ込むと景浦が打つがバットをへし折られ三振となる。

『故郷からの連発』麻衣子の父のヤクザの親分・勘助が亡くなり景浦が弔問に行くと刃と刻まれた杯と共に激励の手紙が渡される。勘助の妻は麻衣子と景浦を結婚させようと煽り景浦は麻衣子と息子を幸せにすると決め試合で力んで三振する。景浦は杯の刃の下に心を書いて忍の字に変える。麻衣子は景浦に家族３人大阪を離れて引っ越し京都で誰にも頼らずに暮らすと伝える。景浦はプレッシャーから解放され故郷・新潟での日ハム戦に代打で出て今期初ホームランを打ち守りに入って２打席連続ホームランを放つ。義弟の満は爪を剥いで投げられない状態だった。

著者の友人女性「青ちゃん」が昔インディーズ・バンドのボーカルをしていた時、自宅に気持ち悪い行商のお婆さんが「家庭円満の福招き”夫婦姫だるま”」を売りにきた。母親に任せると、すぐに買ってしまい結局青ちゃんの部屋に置く事になってその後父母がやたら喧嘩する様になる。他にも同県の近辺で「だるま屋敷」の噂を聞いて友人の車に乗って行くとお札がびっしり貼り付きだるまが一杯ある家があった。友人は、だるま婆あが出てきたヤバい目が合ったと言って速攻で逃げたが私には誰の姿も見えなかったのだ。更にその辺にだるま神社もあるという。

青ちゃんは気味が悪くなり姫だるまをガレージにしまうと別の日にバイクを兄貴が持ち出したと思ったら「単車による事故発生、バイクは大破」とニュースが流れ兄は幸い命は無事だったが入院し父母の仲は更に悪くなる。青ちゃんは「兄貴は私の身代わりになったのかも」と罪悪感に駆られ酷い欝になる。ふとガレージを見に行くと何と人形の髪が片側だけ伸びており人形を捨てるとその場所に父の車が突っ込む事故が起きる。彼女がこの話をＭＩＸＩに書くと情報が寄せられ、女の姫ダルマがボロボロ泣いていて母が投げ捨てると直後に半身不随になったという。

『前進セヨ』二十代の頃、森さんは男６人で沖縄旅行に行き学生時代の頃のバカ騒ぎをやりたいのと大坂から引っ越していった友人に会おうと考えた。いきなり知らせずに友人Ａに会いに行くと喜んでくれて刺激を求めて皆で夜に肝試しに行く事になった。七人はＯ御嶽（うたき）へと向かう。御嶽とは神聖な場所で面白半分に行ってはならない場所なのだがＡは来て２年経つのによく理解していなかった。歩いていると、ずず、ずずと引き摺る様な音がして足元を見ると日本兵が匍匐前進で坂を上っていたのだ！全員で逃げたが何故かＡだけは見えなかったという。

『たのしいよぉ』著者が前にアパートのオーナーの下で働いていた時に柿森さんという人に頼まれてしばしば猫の死骸を始末していた時期があった。柿森さんの妻はスナックで働くホステスだったが急に何の連絡もなく店に来なくなり、スナックのママが言うには幽霊がいるから嫌だって、実は二年前に店で働いていた子が自殺して、その子がトイレにいて店で着ていた紫色のドレス姿で「こっちは楽しいよ、おいでよ」と手招きするらしい。数日後柿森さんの妻が亡くなりママは連れていかれたのよと言う。柿森さんが猫の死骸を見つけたのはその後からだという。