患者は病院でなく人の間に棲むことが重要であることが一貫して述べられるのが印象的。もう一点。かつてE. H. カーは『歴史とは何か』で「優れた歴史家たちは、・・・、未来というものを強く感じているものです。「なぜ」という問題とは別に、歴史家はまた「どこへ」という問題を提出するものなのであります」(p.160)と述べたが、著者は浦河における精神医療が「なぜ」このようなかたちをとるに至っているのかを描き出すとともに、浦河の、そして日本の精神医療は「どこへ」進んでほしいか希望を込めて語っている点もまた印象的だった。