形式:単行本
出版社:新潮社
そこになんとなく格好良さがあって、ケンカしたり女を追いかけて旅をしているとそれだけで絵になる。これは実際そんなものなんだろうが、やや通俗的な印象があって物足りない。漫画家のつげ忠男作品に登場するアウトローたちもそういう格好良さがあるので、それと同じかもしれない。
そんな中ではアウトローではない人間が登場する後半の3編が良かった。 ●就職したばかりの巨大倉庫でフォークリフトを操りながら働く男の、ほのかな恋やリーダーへの親愛を描いた「通路にて」●平和な家庭生活を捨ててある娼婦を追いけけ回すことなってしまった男「君の髪はきれいだ」●過疎化した農村に残り、老いてゆく動物たちと暮らす老人「老人が動物たちを葬る」 この3編は気取らない素直な味わいを感じた。
「俺たちは旅する」は、初期のヤマシタトモコ作品のような感じ。喧嘩っ早い男が刑務所内で出会った人たらしのゲイと美人局をしながら旅をする話で、騙した相手からふたりで逃げるときや稼いだ金で豪遊するときの高揚感と、ふたりで並んで横になっているときの静寂の振幅がいい。ホモソーシャリティやブロマンスではなく、まさにBLといった風情の世界観。
「犬と馬のこと」、けっしてハッピーエンドでは終わらないってことですよね。厳しいけれど、それが現実なのでしょう。
読んでから5年近くなるんですね。細かいところは忘れていますが、独特な暗い、でも嫌いではない感じを覚えています。
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