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みつ
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みつ
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下巻に入ってラマヌジャンのエピソードはますます希薄になっていく。この小説での彼の位置付けは、同性愛者にして無神論者、さらには大戦下の時局においてある種の戦争忌避者であったハーディが時代を回想する中の一挿話である。それだけに、高度合成数や分割数を巡り彼をも上回る大きな数の回答を導き出した(p38)マクマホン少佐とのその後の関わり、「この100年で最も偉大な数学者、ことによると、この500年で、かもしれない」(p216)とハーディが評した彼の数式のいくつか(自分に理解はできないだろうが)に触れてほしかった。
みつ

・p162に登場する「無限列車」のパラドクスは、「ヒルベルトの無限ホテルのパラドクス」として知られているもの。数十年昔、倉多江美の連作超短編漫画『一万十秒物語』(題名が稲垣足穂のパロディー)の一作で読んだ(パラドクスの解明は行わず)のも懐かしい思い出です。・終わり近く(p322)に現れる「タクシー数」のエピソードは、「繰り返し語られすぎた」とはいえ、「彼が惚れ込んでいたのは数字そのもの」(上巻p267)を示す(私でもわかる)格好の例でしょう。『博士の愛した数式』の「博士」が語る数字への愛を彷彿とさせます。

09/25 10:32
  • Aya Murakami
  • アン
  • 禿童子
  • みあ
  • 猫丸
  • 藤月はな(灯れ松明の火)
  • くたくた
みつ

・マクマホン少佐が語る「バベッジの解析機関」(p41)は、コンピュータの一種の原型のようなものでしょう。そこから、第二次大戦時にドイツのエニグマ暗号機を解読するためのマシンを開発したアラン・チューリングに連想が飛びます。彼も同性愛者で、そのことが(ハーディとも異なり)より直接の悲劇を生み出します。彼と周りの人を描いた映画『イミテーション・ゲーム』もよかった。・上巻のコメントで述べた映画の邦題中「奇跡」は「奇蹟」が正しいものです。藤月はなさんのレビューを拝読して気付きました。ありがとうございます。

09/25 10:43
  • Aya Murakami
  • アン
  • 禿童子
  • みあ
  • 猫丸
  • 藤月はな(灯れ松明の火)
0255文字
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みつ
さんの最近の感想・レビュー

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読書データ

プロフィール

登録日
2016/01/02(3374日経過)
記録初日
2014/12/29(3743日経過)
読んだ本
1127冊(1日平均0.30冊)
読んだページ
386564ページ(1日平均103ページ)
感想・レビュー
890件(投稿率79.0%)
本棚
13棚
性別
年齢
65歳
現住所
三重県
自己紹介

こんにちは。「読書メーター」で皆さんと交流できることを楽しみにしています。
 半世紀余り、手当たり次第に本を読んできました。愛読してきたのは、

・「モームの世界の10大小説」とその周辺
・いわゆる黄金時代の本格推理小説
・トーマス・マン
・ヘッセ
・プルースト
・チェーホフ
・O・ヘンリ
・ジャック・フィニイ
・マッカラーズ
・ジェイン・オースティン
・紫式部(数種の現代語訳「源氏物語」)
・夏目漱石
・寺田寅彦
・内田百閒
・中里介山(「大菩薩峠」)
・永井荷風
・谷崎潤一郎
・江戸川乱歩
・石川淳
・尾崎翠
・福永武彦
・北村薫始め「日常の謎」を扱ったミステリ
・恩田陸
・丸谷才一(いわゆる雑文を中心に)
・吉田秀和
・大島弓子(漫画家)
・新幹線網が張り巡らされる前の時刻表(宮脇俊三氏が健筆を振るった頃)
・和漢朗詠集
・新古今和歌集
・「折々のうた」他の詞華集
・歳時記


 感想文は遠い昔の学生時代から大の苦手で、これまで記録も投稿も断続的かつ一部に留まっていましたが、皆さんに触発され、以前読んだ作品も含め少しずつでも投稿していければと思っています。(追記。2020年10月頃、遅まきながら読書メーターに参加できる歓びを本格的に知ることとなり、読書のペースが上がるとともにほぼ全ての本に投稿するようになりました。)

 読書の他には、クラシック音楽(地味めのものを中心に)鑑賞と、筆記具(インク含む)集めが主な趣味です。

 これからに向けて「積読本」「読みたい本(再読したい本・・これがまた多い・・を含む。)」を徐々に整理していたら、まだまだ増えていくことに気付きました。残りの人生でどこまで読むことができるのか、時々不安になります。
 これからもお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

  (2020年11月28日に一部追加修正しました。)
  (2021年1月18日から19日にかけ、書き漏らしていた愛読する作者、近況を追加をしました。)
  (2021年3月7日に、愛読本としてマッカラーズを追加しました。)
  (2023年8月27日に、愛読本としてオースティンを追加しました。)

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