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2024年10月の読書メーターまとめ

みつ
読んだ本
21
読んだページ
6495ページ
感想・レビュー
21
ナイス
982ナイス

2024年10月に読んだ本
21

2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

みつ
新聞連載をまとめた『よみがえる鷗外』で、この本の著者は「鷗外は論戦魔で相手を徹底的に論難するが、それが済むとあとはさっぱりして長引かせない。(中略)鷗外が生涯攻撃し続けた相手は北里だけだ。」(p162)と書く。この本では三人称で書かれた北里の章と一人称(しかも自称は後年に至るまで「ぼく」)の鷗外の章が交互に現れる。前者は結核治療が、後者が脚気対策が「悪縁」となるが、特に北里の感染症への取り組み、鷗外の文学への貢献が広範に亘ることに改めて感服する。それだけに触れていることは実に多く、改行が頻繁になされる➡️
みつ
2024/10/23 18:20

➡️中で情報が次々に展開するので、読むのにはかなり時間がかかった。臨床で結果を出すことを第一とする北里と学理を重んじる鷗外、ふたりの病気への向き合い方は遂に合致することはない。ここでは北里の豪放磊落な性格が際立つが、それ以上に「大風呂敷」後藤新平が絡むと話が俄然面白くなる。最初と最後に鷗外の上司であった「妖怪」石黒子爵が登場し二人の物語に決着をつけるが、「あとがき」で著者が述べる評価で、もう一度反転させる。面白い本であるものの、両者の内面と葛藤にもう少し立ち入ってもらいたかったとの憾みも残る。

が「ナイス!」と言っています。

2024年10月にナイスが最も多かったつぶやき

みつ

先月は、娘の結婚相手のご家族との食事会が東京であり楽しい時間を過ごした後、帰りに東京駅の階段で足を踏み外し額から大量出血、救急搬送のうえ二十一針縫うという思わぬ出来事が。打撲の痛みも抱えつつで、読書ペースは落ち気味。今月は復帰の月にしたいと思います。9月の読書メーター 読んだ本の数:17冊 読んだページ数:6305ページ ナイス数:816ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/640905/summary/monthly/2024/9

mitu
2024/10/31 16:57

大怪我なさった後ですから、すんなりと以前と同じにはいかないですね。ご無理なさらず、くれぐれもお大事になさって下さい。

みつ
2024/10/31 17:05

ありがとうございます。こういうことがあると、無理がきかない年齢になったとつくづく思います

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2024年10月の感想・レビュー一覧
21

みつ
そえぞれに愛人を持ちながら「もし友達であつたなら却つて仲よく行つたかも知れない」(p72)と感じる夫婦を軸に、妻の父と若い愛人の古い日本文化を体現した世界を差し挟み、物語は進行する。妻の愛人は遂に登場しないが、主人公の従兄弟との闊達な会話からも関係は想像でき、義父の愛人と対照をなす。主人公が旅先で文楽の舞台を観た後外国人の愛人のもとを訪れるなど、日本的なものと西洋的なものの対比は幾度となく繰り返される。島における排泄物の処理や暗く汚れた風呂なども看過することなく描かれ、『陰翳礼讃』の世界にも直結する。➡️
みつ
2024/10/31 16:26

➡️◉この版では、文庫化にあたっても歴史的かなづかいのままとしており、谷崎の文章の息遣いをより堪能できた。息の長い、しかも明晰な文章は、主人公が感じている東西文化の違いや女性観など、読者に力ずくではなく納得させてしまうもので、まさに名人芸。◉解説によれば、小出楢重の挿絵もすべて収録。この洋画家の絵画となると厚塗りの絵の具のせいか独特の重苦しさがあるが、ここでは白と黒のみで描かれているからか、ぼってりとした筆致の中にも軽みを感じさせ、この小説世界とよく合う。

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みつ
先に読んだ『イメージ』(ちくま文庫)の文庫版あとがきにこの本の著者の名を見つけ、30数年ぶりに再読(当時は岩波新書)。西洋における写真の発明・普及と同時期の出来事である明治維新において、天皇制を国民に根付かせるため、国家がどのように天皇の肖像を利用したかを述べる。錦絵から写真へと天皇を撮す媒体は変わるが、明治天皇の写真は明治5・6年から後撮影されず、「御真影」もキョッソーネの画(明治21年作)を複製したものであるとのこと。元の肖像はなぜ写真でなかったのかが、「聖性」を与える方法との関連で詳細に考察される。
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みつ
たまたま図書館で見つけた本。ちくま文庫はこうした作家まで加えているのかと興味を持ち手にとった次第。高度経済成長の15年ほどの作家活動の間に多くの作を発表した当時の流行作家(1975年、45歳で没)。当時は男性優位でセクハラ、パワハラも当然の社会であったということか、その前提のもとで展開する物語は、小さな世界で権力者として振舞う者への復讐譚が多いがどれも爽快感は少ない。これよりも時代がさらに遡る獅子文六の諸作は、たとえ差別的表現が含まれていても楽しく読めるから、作風との相性が悪いという他はない。
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みつ
久々の鯨統一郎。原日本人、邪馬台国、柿本人麻呂、空海、信長、写楽、太平洋戦争の七つのテーマについて、ライターが歴史談義の中で異説を開陳するというしつらえ。かつての著者の作を読んだ時はもう少し面白かったはずなのに、というのが偽らざる感想。小説の形をとっている興趣が感じられないためか、驚きの説では根拠を示されているのもかかわらず、どこかトンデモ本の講釈を拝聴している気分になる。いくつかはなるほどそう来たか、と思える一方、驚きは少ない。世のフェイク・ニュースの蔓延のため、この手の本が楽しめなくなっているのかも。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
非常に密度の高い本。訳者による70頁を超える、いわば補論がさらに理解の助けとなる。「ルネッサンス以前は最も重要な感覚が聴覚であったのに対し十六世紀に視覚と順位の入れ替えがあった」とのこと(p230の要旨)。ほぼ同時期に油絵が登場し、絵画が個人所有されることの意味が述べられる。その後写真等の複製芸術、さらには広告の登場による「視る」ことの変遷が展開する。今回も気になった箇所を書き写していたらB5ノート30ページ近くになった。特に裸婦画の視線を手がかりに、見ることと見られることの関係を述べた箇所が印象的。▶️
みつ
2024/10/25 16:28

▶️本文7章中、文字のない、図版のみからなる章が3章挟まれてるのも特徴。この他にも図版が多いだけに、それぞれ小さく、モノクロなのはやむなしとはいえ残念。図版のみの章では後ろに「一覧」の解説があることを知らずに見ていたが、はからずも先入観なしに眺めることができた。中でp174、175の作者がギュスターヴ・クールベであることは、若い女性を描きつつも重苦しい存在感が強烈で、これだけは記憶に残っていた。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
新聞連載をまとめた『よみがえる鷗外』で、この本の著者は「鷗外は論戦魔で相手を徹底的に論難するが、それが済むとあとはさっぱりして長引かせない。(中略)鷗外が生涯攻撃し続けた相手は北里だけだ。」(p162)と書く。この本では三人称で書かれた北里の章と一人称(しかも自称は後年に至るまで「ぼく」)の鷗外の章が交互に現れる。前者は結核治療が、後者が脚気対策が「悪縁」となるが、特に北里の感染症への取り組み、鷗外の文学への貢献が広範に亘ることに改めて感服する。それだけに触れていることは実に多く、改行が頻繁になされる➡️
みつ
2024/10/23 18:20

➡️中で情報が次々に展開するので、読むのにはかなり時間がかかった。臨床で結果を出すことを第一とする北里と学理を重んじる鷗外、ふたりの病気への向き合い方は遂に合致することはない。ここでは北里の豪放磊落な性格が際立つが、それ以上に「大風呂敷」後藤新平が絡むと話が俄然面白くなる。最初と最後に鷗外の上司であった「妖怪」石黒子爵が登場し二人の物語に決着をつけるが、「あとがき」で著者が述べる評価で、もう一度反転させる。面白い本であるものの、両者の内面と葛藤にもう少し立ち入ってもらいたかったとの憾みも残る。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
ツヴァイクが伝記小説『ジョゼフ・フーシェ』を書くきっかけとなったとされる本作。その流れで約30年ぶり(前回は新潮文庫の復刊)で読了。このところ当時のフランス史を取り上げた小説を読んできたものの、それでもなかなか頭に入りにくい。ナポレオンの権力掌握期、元々ジャコバン派に属しながら、貴族の復権を目指すヒロイン・ロランスに忠誠を誓うミシュが既に不思議な存在。敵対するコランタンは、ロランスへの恨みを募らせる悪役ぶりが際立つ。結末は七月王政の時代に移り、タレーラン、フーシェを交えた密談の回想場面ですべてが明らかに。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
久々に鷗外の『大塩平八郎』を読み、もう少し詳しく知りたいと考え、こちらの本に。「あとがき」によれば、中公新書の乱シリーズの企画だったとか(そんなものがあったの?)。とはいえ「乱」の記述が始まるのは半分を過ぎてから。そこまでは与力としての三大功績や私塾『洗心洞』の設立、頼山陽が「鋭進にて折れやすい」と評した(p95)人となりが綴られてゆく。自分が知りたい3つの「なぜ」・・「蜂起の理由」「1日で鎮圧された理由」「市中に甚大な被害が生じてもなお町民が大塩を慕う理由」への解答は、詳細な記述に隠れてしまった感も。
みつ
2024/10/19 15:53

このほか、教科書にも取り上げられる有名な事件の歴史的意義、後世への影響といったあたりにも触れてほしかった。「歴史をわかりやすくし過ぎ」という批判も出そうだが、こうした視点を補強する形での実証的な裏づけという記述方法の方が、歴史に疎い自分には助かる。巻末の「現代語訳 大塩平八郎檄文」は興味ある内容。ただ、この文だけを読んで自らの命の危険を顧みず叛乱に参加する当時の人の気持ちは推し量れない。元の文だと効果は幾分異なるかはしれないが、やはり私塾で直接謦咳に接した門下生が中心になった理由も、このあたりにありそう。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
(今回も「つぶやき」欄に感想を書いてしまったので、こちらに若干手直しのうえ再掲します。) 没後百年を記念して、鴎外にゆかりの深い(あの読みにくい史伝三部作を連載)毎日新聞の月1回、計42回の記事をまとめたもの。歴史物を含む小説、史伝、翻訳小説・戯曲、詩、短歌のほか、音楽、美術、衛生学、脚気論争、家族など、各著者ごとにひとつのテーマ、ほぼ一冊の著書に絞る形で書かれている。「物語を生む力は高くない。」(p142)と評される通り、小説に関しては同時代の漱石の人気とは比すべくもないが、幅広い分野にわたる➡️
みつ
2024/10/17 18:29

➡️業績は鷗外ならでは。掲載される文には「しかるに」(p56)、「星霜」(p93)、「さりながら」(p98)と古風な言い回しも散見するが、これが文章の密度を高めているのも事実。これとても、鷗外の文体に知らず知らずのうちに影響を受けたがゆえか。◉印象的だった部分を書き出したら、B5ノートで20ページを優に超えることに。その中から ①睡眠時間は二時間で十分と語る話(p159)。②そうして時間を作ったとしても、ゲーテの『ファウスト』を多忙な軍医総監勤務と並行してわずか半年で訳し終える集中力の凄まじさ。➡️➡️

みつ
2024/10/17 18:40

➡️➡️③歴史小説の斬新さは、女性の斬新さにある。」「運命の逆境を己の英知で乗り越えてゆく」(p58)という視点。最近読んだ『安井夫人』の佐代の他、『澀江抽斎』の「五百(いお)」、『最後の一句』の「いち」の印象は鮮烈であるが、『ぢいさんばあさん』の「るん」(江戸時代の史実にある名だそうです。p74)は完全に忘れていた。基本的に著者ごとに異なる切り口で書かれているこの本でも、複数人が挙げているほど。この他にもまた読み直したい作、新たに読みたい作(特に翻訳もの)は多数。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
戦前初版の『阿部一族』とは異なりこちらは新しい岩波文庫。注なしの『阿部一族』の流儀で、70ページほどの注はできるだけ見ずに読む。表題作は有名な事件を扱った割には、鴎外らしくあっさりしたもの。「護持院原の敵討」は、敵討そのものよりも敵を追う話が主。若い女性も敵討の主体となり得るとのこと。戊辰戦争期フランス軍兵士を殺害した藩士たちへの切腹処分を詳細に描く「堺事件」は、フランス側の反応が興味深い。ギロチンを「人道的な」死刑器具と考えるのはこの辺りも原因か。「安井夫人」の妻は『澀江抽斎』の五百(いお)にも繋がる。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
『興津弥五右衛門の遺書』『阿部一族』は何十年ぶりかの再読。乃木希典の殉死が動機となって書かれたと言われる両作。やはりその背景なしにはなかなか頭に入らない作品。大正に入る時期に敢えて江戸時代を舞台にした作品を世に問うというのは、鷗外らしい距離の置き方というべきか。後者は殉死が許されなかった故に不満を募らせるというアイロニカルな物語で、史書からこれを取り上げた視点も独特。『佐橋甚五郎』の主人公像、家康像も面白い。1938年の初版で、今や注釈だらけの鷗外の文庫本に注が全くないのも驚き。これはこれで何とか読める。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
旅先の南米で主人公レイチェルは二人の男性テレンスとスン・ジョンに出会い、成長してゆく。「レイチェルはわたしの保護枠を超えてしまった」(p173)とは、叔母ヘレンの述懐。テレンスと婚約はするが、「わたくしは一人の人間の愛よりも、もっと多くのものー海、空を求めているのだ。」(p201)と、愛の成就よりも遥かなものを追い求める心情が明らかに。この巻の冒頭近くで「ほんの数年前までは一人で外に出てものを言う女性はいなかった。」(テレンスの言葉。p44)にあるように、ジェンダー意識も上らせる。それだけに終わりは意外。
みつ
2024/10/13 16:32

「もう一度階段を駆け上ろうと挑んでいたレイチェルは、自分の性の秘密を明かす機会をまたもや無視した。(中略)その秘密を哲学的に議論するのは後の世代の人たちに任せることにしていた。」(p182)。「・・・どこへ行きたいのかわからず、ただ盲目的に従い、人知れず多くの苦しみを受け、いつも不意打ちに驚かされ、何もわからないでいたのだが、あることが別のあることに繋がり、無から次第に何かが形成されていき、ついにはこの平穏、この静寂、この確かさに到達したのだった。人が人生と呼ぶのはこの道程だ。」主人公の独白。p221。

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みつ
(「読んだ本」のつぶやき欄に感想を書き込んでしまったため、こちらに再掲します。)上巻の印象は、「ヘンリー・ジェイムズ(この本の出版1年後に死去)の小説世界に新しい風を吹き込んだ」というもの。上流階級に属する若い女性が見知らぬ文化の国に旅立ち、新たに出会う若者たちと恋愛の予感を孕ませつつ延々会話を続ける、という点が共通する。前半は船上の出来事で後年の名作『ダロウェイ夫人』の夫妻も登場(主人公の叔母ヘレンによると、夫人は「とても素敵な方」、でも「頭は空っぽ」とのこと(p141))。夫の行動が主人公に影響を▶️
みつ
2024/10/11 17:34

▶️及ぼす。)。後半は降り立った土地で大勢の若者が加わる中、古代ギリシャの詩人ピンダロスの研究者を夫に持つ、彼らよりずっと年上のヘレンが、一層魅力的に描かれる。彼らのダンスパーティが終わり夜明けを迎える場面の美しさは、類を見ない。その後レイチェルがギボンの『ローマ帝国衰亡史』を手に取り読み始める場面がまた、清新の極み。「言葉がこれほど鮮明で美しいものであったことはなかった。(中略)これらの言葉全体が、世界がまさに誕生する頃に通ずる道へと導いてくれると感じられるのである。その道の両側にはあらゆる時代▶️▶️

みつ
2024/10/11 17:40

▶️▶️の人々や国々が並木のように立ち並び、そこを遡っていくうちにすべての知識が自分のものとなり、世界という本の第一ページまで手繰られていく。知識がいま自分の前に開かれていくという可能性に胸が躍り、レイチェルは読むのをやめ、微風がページをめくり、ギボンの表紙は静かに揺れて閉じられた。彼女は立ち上がって再び歩き始めた。」(p304〜305)

が「ナイス!」と言っています。
みつ
図書館では教科書も読めることを今更ながら知った。手に取ったのは、高校の学習指導要領が改訂されたことで加わった新たな科目。割り当てられる時間数は不明。教材となる文章約30篇に、「思考の扉」等のコラム、「評論読解へのアプローチ」「思考ツール」等の記事が加わる。考えをまとめるための方法の紹介が充実する一方で、多彩な教材は結構難しい内容を含む。新美南吉の『おじいさんのランプ』から人間と情報の関係に筆が及ぶ論考が最も印象的。アメリカでサッカーが不人気な理由から「資本主義の精神」を考察するものは、かなり独特な論法。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
気に入っていたら箇所を書き写していたらB5ノート25ページ程に達してしまった。著者が「はじめに」で「「理系知」と「文系知」の融合」(p10)と述べているとおり、「天文」「物理」「生物」に関し、最新の科学的知識とともに歴史や文学(短歌・俳句が多い)の話題も豊富。幾度となく「閑話休題」の文字が差し挟まれる語り口は軽快。巻末に挙げられた著書からも、寺田寅彦の世界と親近性を持つ。日本の気候(特に夏における昼の時間の変化)においてこそ朝顔が美しく咲く理由が一番印象的。なお、書名の問いに対する解答はなかった様子。➡️
みつ
2024/10/09 17:34

➡️◉以下の、すべてひらがなで示される十三章より構成。「すばる」「れんず」「なんてん」「あわ」「じしゃく」「ぶらんこ」「しんじゅ」「かつお」「ふぐ」「ほたる」「たけ」「あさがお」「ひがんばな」。◉「ふぐ」の章で、なぜ「紫式部は清少納言に手厳しい評価をくだしたか」について、『枕草子』で紫式部の夫となる藤原宣孝をあしざまに書いていることに端を発するとする視点が、(ここは他文献の引用であるが)集団ふぐ中毒と思われる災難と合わせ述べられるのが面白い。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
読み友さんに教えていただいた本。もともと1979年の『第三版 悪文』に基づく。もっとも、取り上げられる文章は、初版(1960年)当時のものが主であるらしい。本書に言う「悪文」は、「名文」の反対とも異なる。普通の文章に求められる「達意」の要件を満たさないもの、一読してわからないような文章とのこと。何となく読んでいては「わかったつもり」で見過ごしてしまいそうな点を具体的に指摘している。巻末に「悪文をさけるための五十か条」が該当頁と合わせて掲げられているので、未だに悪文から脱却できない自分も折に触れ意識したい。
きゃれら
2024/10/08 07:36

あら、判決文を読む仕事、でらしたんですね。あれ、なんで長い長い一文にしたがるんでしょう。自分で書いたことないからわからないのですが、もしかして「。」をつけなければ、わかりにくくても、文意があいまいにはならない、ということかなと愚考しています。箇条書きでいいのに、禁止されてるんですかね。

みつ
2024/10/08 17:06

きゃれらさん コメントありがとうございます。私も読むだけですので事情は不明です。普通の人には書ける文でなく、あの文章を書く前にいったん箇条書きにして思考を整理し、しかる後に一文にしたのではないかと想像することがあります。ひとつの完結した内容は句点で途切れさせてはいけない、という縛りでもあったのでしょうか。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
2021年10月の刊行。コロナ禍が続き、観光業界は大打撃を受けていた頃。疑問形の標題に対しては、それ以前からの鉄道旅を巡る環境の変化、駅弁大会を開催する百貨店の衰退から、解答の予想はさほど困難ではなく、本書での記述もあっさりしたもの(p206)。駅弁業界がどのように生き残りの工夫をしていたかを、冷凍駅弁、駅弁自販機などの取り組みも含め詳説する。最も読ませたのは、2020年に北海道の小駅、森駅名物の「いかめし」を引き継いだ若き三代目社長(バスケットボール番組のレポーターも務める女性)へのインタビュー。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
「全集未収録作品ほか」とある。筑摩書房版全集はわずか2巻で、所有するものの長らく積読状態でそちらに含まれるものもかなりありそうだが、照合はしていない。384ページの書物のうち245ページ以下が解説・解題・年譜となっている。収録作は高等女学校補習科卒業の頃1914年の短歌から1968年の甥に宛てた郵便書簡まで。中心は大正末期から昭和初期のもの(文章を発表したのは1940年が最後)。躍動する映画時評の文体がとりわけ愉しい。小さくはあってもモダンと古風さ、都雅と鄙が渾然とした作品世界の息遣いは、ここにも明らか。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
『メリー・スチュアート』、『マリー・アントワネット』に続き、ツヴァイクの伝記3作めを読了。毎回名訳に感心するが、それというのも原文が素晴らしいことがひとつの要因か。全てが明らかになった時点から歴史を再構成する著者の文は、多くの対句的表現を交えながら重厚にして華麗、緊張感を孕み個々の描写は生彩に富む。フーシェは、セント・ヘレナ島に流されたナポレオンが「完全無欠な裏切者」と呼び、フランス革命から王政復古の時代まで、何度かの失脚を得ながらも生き延びた陰謀者。この時代のもう一人の黒幕として名高いタレーランとを➡️
みつ
2024/10/04 13:30

➡️対比的に描きつつ、ナポレオンを「これら両者の才能を一身に兼備した完全な天才」と結論づける筆の運びなど、いかにもこの作者らしい。多くの競争者に打ち勝ってきた彼にして「ただひとつだけ学び落としたことがあった」(p387)と前振りをしたうえで、その具体的内容をその後で明らかにする記述方法も随所に現れ、読み手としてはこの巧妙な語り口にどうしても引き込まれてしまう。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
先月NHK Eテレで11回にわたり放映された番組のテキスト。「モンティ・ホール問題」、相撲の優勝決定戦における「巴戦」で有利となる順番、いわゆる「秘書問題」、公開鍵暗号など、よく取り上げられる話題も多いが、よくこなれていてわかりやすい。特に新たな発見があったのは「不定方程式」の回。いわゆる「油分け算」が不定方程式で解けるというのは納得。2回にわたる「数学的思考法」も、具体的な設問が興味を惹く。表紙には「オトナになって学ぶからこそ、おもしろい。」とあるが、中高生の段階で触れれば「数学嫌い」から脱却できそう。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
中学生の頃創元推理文庫で読んで以来の再読。メイン・トリックはともかくあまり記憶に残っていない。今回は戦後本格推理小説のはしりとして名を馳せた高木彬光の訳。古い訳のせいもあるのか訳者が惚れ込んでいるにもかかわらず、人物関係が錯綜していること、探偵フェル博士の言動が地味なこと、トリックで驚かせるための伏線が弱いことなど、他のカーの名作と比べると印象は弱い。むしろ併録されたハリス作「蠟人形」の、どこか乱歩風の猟奇趣味が面白い。解説で、作者がラジオ番組の英語講師(中学生の頃聴いた)と知り、これが本書の一番の驚き。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2016/01/02(3250日経過)
記録初日
2014/12/29(3619日経過)
読んだ本
1069冊(1日平均0.30冊)
読んだページ
361769ページ(1日平均99ページ)
感想・レビュー
832件(投稿率77.8%)
本棚
13棚
性別
年齢
65歳
現住所
三重県
自己紹介

こんにちは。「読書メーター」で皆さんと交流できることを楽しみにしています。
 半世紀余り、手当たり次第に本を読んできました。愛読してきたのは、

・「モームの世界の10大小説」とその周辺
・いわゆる黄金時代の本格推理小説
・トーマス・マン
・ヘッセ
・プルースト
・チェーホフ
・O・ヘンリ
・ジャック・フィニイ
・マッカラーズ
・ジェイン・オースティン
・紫式部(数種の現代語訳「源氏物語」)
・夏目漱石
・寺田寅彦
・内田百閒
・中里介山(「大菩薩峠」)
・永井荷風
・谷崎潤一郎
・江戸川乱歩
・石川淳
・尾崎翠
・福永武彦
・北村薫始め「日常の謎」を扱ったミステリ
・恩田陸
・丸谷才一(いわゆる雑文を中心に)
・吉田秀和
・大島弓子(漫画家)
・新幹線網が張り巡らされる前の時刻表(宮脇俊三氏が健筆を振るった頃)
・和漢朗詠集
・新古今和歌集
・「折々のうた」他の詞華集
・歳時記


 感想文は遠い昔の学生時代から大の苦手で、これまで記録も投稿も断続的かつ一部に留まっていましたが、皆さんに触発され、以前読んだ作品も含め少しずつでも投稿していければと思っています。(追記。2020年10月頃、遅まきながら読書メーターに参加できる歓びを本格的に知ることとなり、読書のペースが上がるとともにほぼ全ての本に投稿するようになりました。)

 読書の他には、クラシック音楽(地味めのものを中心に)鑑賞と、筆記具(インク含む)集めが主な趣味です。

 これからに向けて「積読本」「読みたい本(再読したい本・・これがまた多い・・を含む。)」を徐々に整理していたら、まだまだ増えていくことに気付きました。残りの人生でどこまで読むことができるのか、時々不安になります。
 これからもお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

  (2020年11月28日に一部追加修正しました。)
  (2021年1月18日から19日にかけ、書き漏らしていた愛読する作者、近況を追加をしました。)
  (2021年3月7日に、愛読本としてマッカラーズを追加しました。)
  (2023年8月27日に、愛読本としてオースティンを追加しました。)

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