先月も皆さんの素敵なレビューを堪能しました。暖冬なれど寒暖の差が大きかった2月。そのせいもあってか体のあちこちにガタが来て、医院の待合室での読書時間が増えました。完全退職まで あとひと月。体調を戻して本にも臨みたいと思います。今月もよろしくお願いいたします。読んだ本の数:15冊 読んだページ数:4815ページ ナイス数:728ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/640905/summary/monthly/2024/2
みつさん おはようございます。 何時も、有り難うございます!🙋 筆記具コレクションをされる、みつさんは東京南青山に在る『書斎館』をご存知でしょうか? 私は万年筆を常用はしないのですが、万年筆・筆記具専門店の『書斎館』の品々を観るのが、とても好きなのです!🍀 上京の機会が在りましたら、是非ともご来店下さいね!💫 3月もどうぞ、宜しくお願い致します!✨ 宵待草
宵待草さん ありがとうございます。お薦めの『書斎館』は知りませんでした。きっとオリジナル文具が充実していて、時間を忘れてしまいそうな素敵なお店なのですね。数少ない上京の機会には、蔵前の『カキモリ』に寄るのがいつものパタンでしたが、万年筆インクはもちろん、一般メーカーの限定色ボールペンなども発売されるたびに買い込んでしまい、さすがに使う前のインクの劣化も気になってきたので、なるべく買わないようにはしているのです。でも文房具店巡りはなかなかやめられませんね。『書斎館』もいつか行ってみたいです。
mitu さん ありがとうございます。就職初日のことはさすがによく覚えています。この日にブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番のレコード(CD はまだ出回る前)を聴いたことも。
➡️中では『片恋』が小説としての展開もあり、一番読み応えがあった。作中登場する手紙が当時の候文で書かれ変体仮名も使われているので、とりわけ日本人の創作の印象が強い。p82で、女性の名を愛称のみで呼ぶ場合と父称を付ける場合の区別を二葉亭自身が注で解説している(前者は「美代」または「みいちゃん」、後者は「お美代さん」というようなものという趣旨)のはわかりやすい。アーシャの「厭な事(こつ)た」(p73)との伝法な言いっぷりは、『浮雲』のお勢が母親に対して話す場面を思い出させる。➡️➡️
➡️➡️男性からの「I love you」の翻訳として「月が綺麗ですね」をあてたという漱石(の都市伝説)に対して、女性の返しに「死んでもいいわ」というのがあるとよく引き合いに出されるのが、この作の科白(p84。「死んでも可いわ」と表記。原文の直訳は「あなたのものよ」であるとか)。
➡️商会の代表として、参事会員としてよき市民の堅実な生活を送るトーマスは、48歳にして早くも自分の死期が迫っていると感じる(p203)。若い日の回想の中に登場する、あずまやで熱中して読んだ本(p207)は、ショーペンハウエルの『意思と表象としての世界』らしい(自分は未読)。その後のトーマスの歯の治療の場面(ハンノの歯が悪いこともここまで何度も登場)がまた強烈な痛みを伴って迫る。自分の子供時代でも恐ろしかった治療は、さらに100年近く前はどのようなものだったか(麻酔はあったのだろうか)。トーマスの➡️➡️
➡️➡️これら心身の衰えが執拗に描かれた後であればこそ、突然とも思える彼を襲った出来事も身に沁みてくる。残りわずかのページでハンノの音楽への没頭ぶりが詳細に描かれ(弾いているのはベートーヴェンの『作品24』、すなわち有名ないわゆる『春のソナタ』、そして自作の幻想曲。p334)、トーマスと異なる人生を歩むこと、それによる一家の没落の予感を印象付ける。以下の場面転換が驚くべきもので、「没落」の本当の意味が淡々と冷静に目の当たりに示される。解説にもあるように、なるほど、その後のマンの様々な要素が示されている。
➡️もっとも、そこまで読んでも「いちばん透きとった物語」の意味(「逆ではないか」と思っていた)と父の残したメッセージの意味はまだ分からず、最後の最後でこの表題が腑に落ちるという見事さ。「予測不能の結末が待つ、衝撃の物語」との裏表紙の惹起文句を裏切らないどころか、この常套句では言い切れない作に仕上がっている。恐れ入りましたと言う他はない。
みつさんこんにちは。河出世界文学全集版(川村二郎訳 初版1989年)ではp74「ヒンツとかクンツとかいうよりはすてきよ。」とあります。ヒンツ、クンツってドイツでどういう名前なのかは良く分かりませんが…。
➡️のような浮き浮きした気分を感じさせる表題とは裏腹に、医学用語(それも昔の少年がこっそり調べる類のもの)の活字が頻出しつつ、管理人の部屋のひっそりとしたただずまいが印象的。少女時代の友人家族の過ちを‘描いた『仁志野町の泥棒』は、時間を経て心の痛みを感じ続けるのが渦中の家族よりも語り手である点が哀しい。伊坂『ルックスライク』はふたつの魅力的な物語が、ある種の殺し文句で思いがけず結びつく、いかにも彼らしい技巧を堪能できる。京都を愛した森見の『宵山姉妹』は、川端康成の浅草ものにありそうな世界に幻想を加える。
➡️➡️この中では一番多くを読んできた恩田陸は、『かたつむり注意報』で、また異なる予想不可能な顔を見せる。全十巻の読書を通じて背後にはまだまだ知らない短編の世界が広がっていることも感じることができた。読書の愉しみにたっぷり浸ることができる、こんなアンソロジーを今後とも切望。
➡️特に眼を見張るような冴えた表現があるというよりも、普段見過ごしがちになる表現に実はレトリックの工夫があることがよくわかる。その意味で「レトリックのいくつかのパタンは、私たちの思考法そのものに近いといえる」(p14)というのも納得。終わりの章で「はじめに」で述べた文に立ち戻り、そこでも多くのレトリックが使われていることに言及するのも、末尾の簡単な説明と例を掲載した「レトリック30早見表」も、この本の周到な構成を感じさせる。
➡️ありながらどこか切ない。堀江敏幸『ピラニア』は、題名から想起されるものとは異なる、信用金庫職員とあまり料理上手とはいえない街中華の店主の脱力感に満ちた、それでいて食欲をそそる物語。林真理子『年賀状』、新津きよみ『ホーム・パーティ』は、それぞれ小道具に潜ませた女性からの復讐を描く。辻原登『塩山再訪』は、静かな街の描写から蘇った少年時代の一言が目の前の同じ言葉と結びつき、不穏な空気を帯びる。重松清の『セッちゃん』は、中学生のいじめが題材。この転換は予想がつくが、それだけに少女の心の痛みが強く迫ってくる。
➡️走っていたとは、時は疾く過ぎる。佐藤泰志『美しい夏』は、貧しく苛立ちを隠せない青年と、生活を共にする女の閉塞感の漂う日々が主題。表題は反語的な意味合いを込める。高井有一『半日の放浪』は、退職後(それでも翻訳の仕事はたまに回ってくるらしい)の男が職場生活を送る周囲の中に取り残された心情が生々しい。フルタイムの再就職先をひと月後には去り、完全に無職になる自分に置き換えて、余計に身に沁みる。中島らも『白いメリーさん』は、都市伝説を探るライターの家族に襲う一種のホラー。題材の取り上げ方と展開がいかにも➡️➡️
➡️➡️この時期の空気を醸し出す。阿川弘之『鮨』は、討論会の帰りに車中で食べるように渡された鮨を持て余した男の物語。戦争もの(特に海軍大将の伝記的作)でしか馴染みのない著者が志賀直哉の弟子であったという意外な経歴も、この短編を読むと腑に落ちる。初読み作家、大城立裕の『夏草』は沖縄戦のさなか、米軍の包囲が迫り追い詰められた夫婦の死と生(性)が、手にした手榴弾を中心に異様な迫力で描かれる。開高健『掌のなかの海』はバーでの会話。ジョイスの『ユリシーズ』が「文庫一冊きり」(p304)というのは、どんな本なのか。
こんにちは。「読書メーター」で皆さんと交流できることを楽しみにしています。
半世紀余り、手当たり次第に本を読んできました。愛読してきたのは、
・「モームの世界の10大小説」とその周辺
・いわゆる黄金時代の本格推理小説
・トーマス・マン
・ヘッセ
・プルースト
・チェーホフ
・O・ヘンリ
・ジャック・フィニイ
・マッカラーズ
・ジェイン・オースティン
・紫式部(数種の現代語訳「源氏物語」)
・夏目漱石
・寺田寅彦
・内田百閒
・中里介山(「大菩薩峠」)
・永井荷風
・谷崎潤一郎
・江戸川乱歩
・石川淳
・尾崎翠
・福永武彦
・北村薫始め「日常の謎」を扱ったミステリ
・恩田陸
・丸谷才一(いわゆる雑文を中心に)
・吉田秀和
・大島弓子(漫画家)
・新幹線網が張り巡らされる前の時刻表(宮脇俊三氏が健筆を振るった頃)
・和漢朗詠集
・新古今和歌集
・「折々のうた」他の詞華集
・歳時記
感想文は遠い昔の学生時代から大の苦手で、これまで記録も投稿も断続的かつ一部に留まっていましたが、皆さんに触発され、以前読んだ作品も含め少しずつでも投稿していければと思っています。(追記。2020年10月頃、遅まきながら読書メーターに参加できる歓びを本格的に知ることとなり、読書のペースが上がるとともにほぼ全ての本に投稿するようになりました。)
読書の他には、クラシック音楽(地味めのものを中心に)鑑賞と、筆記具(インク含む)集めが主な趣味です。
これからに向けて「積読本」「読みたい本(再読したい本・・これがまた多い・・を含む。)」を徐々に整理していたら、まだまだ増えていくことに気付きました。残りの人生でどこまで読むことができるのか、時々不安になります。
これからもお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
(2020年11月28日に一部追加修正しました。)
(2021年1月18日から19日にかけ、書き漏らしていた愛読する作者、近況を追加をしました。)
(2021年3月7日に、愛読本としてマッカラーズを追加しました。)
(2023年8月27日に、愛読本としてオースティンを追加しました。)
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➡️もっとも、そこまで読んでも「いちばん透きとった物語」の意味(「逆ではないか」と思っていた)と父の残したメッセージの意味はまだ分からず、最後の最後でこの表題が腑に落ちるという見事さ。「予測不能の結末が待つ、衝撃の物語」との裏表紙の惹起文句を裏切らないどころか、この常套句では言い切れない作に仕上がっている。恐れ入りましたと言う他はない。