読書メーター KADOKAWA Group

TSUYOSHI
さんの感想・レビュー

TSUYOSHI
新着
本書では国際情勢の大局的な動向を、大陸系地政学と英米系地政学という二つの異なる世界観のせめぎ合いとして描き出す。前者はいくつかの大国が支配力を行使する多元的な「勢力圏」の均衡を通じて世界の安定を志向するものであり、後者は主に海洋国家群が同盟ネットワークを構築し大陸国家の拡張を封じ込めようとするものだ。筆者は作中でそれぞれの地政学の当否を論じはしない。だが国際関係論の専門家として、英米系地政学を前提に成り立つ現行国際秩序に挑戦する大陸系地政学の拡張志向、特にロシアの行動への批判をにじませる。⇒(1/3)
TSUYOSHI

⇒ドイツ発祥の大陸系地政学は二度の世界大戦で野心を挫かれ、さらに実質的な継承者であるソ連が崩壊したことでその勢力に歯止めがかかったはずだった。しかし21世紀のロシアはこの世界観にそった言動を繰り返し、現行国際秩序への挑戦心を隠さない。実際に「勢力圏」維持のため主権国家への武力侵攻にまで及んだ。英米系地政学の枠組みの中にあってロシアのかかる言動を肯定することは、自分たちの安定と繁栄の基礎を自ら掘り崩すことと同義のはずだが、その撞着に気づかない言論人と取り巻きが多いことには閉口する。⇒(2/3)

04/02 21:36
  • ta_chanko
  • moto
  • 葉隠
  • 南北
  • yayoi
  • Shintaro
  • 夜間飛行
  • 高等遊眠
  • ばたやん@かみがた
  • skunk_c
  • 木漏れ日
  • tonpie
  • 夢追人009
TSUYOSHI

⇒終盤では、現代中国を地政学的にどう捉えるべきか、という議論が展開されており興味深い。中国は「一帯一路」構想にみられるように基本的にランド・パワー国家だが、近年はアメリカとの対決姿勢から南西太平洋地域への影響力行使に積極的で、シー・パワー国家としての側面も持ちつつある。こうした中国の拡張主義に対抗するのが、日米豪印の「自由で開かれたインド太平洋」戦略であると筆者は指摘する。現代日本が志向すべきは、こうした地域的な安全保障枠組みを強化し、英米系地政学に基づく国際秩序を維持することだと再認識した。(3/3)

04/02 21:37
  • ta_chanko
  • moto
  • 葉隠
  • 南北
  • yayoi
  • Shintaro
  • 高等遊眠
  • ばたやん@かみがた
  • skunk_c
  • 木漏れ日
  • tonpie
  • 夢追人009
0255文字
全2件中 1-2 件を表示

TSUYOSHI
さんの最近の感想・レビュー

オウム真理教の兵器開発

オウム真理教の兵器開発

dragoner
軍事ライターのdragonerこと石動竜仁氏(サークル名:ドラゴニア)の同人誌…続きを読む
読書について (光文社古典新訳文庫 Bシ 1-1)

読書について (光文社古典新訳文庫 Bシ 1-1)

アルトゥール ショーペンハウアー
ショーペンハウアーの主張は、知的選良による知的選良のための文章論、読書論とも解…続きを読む
関心領域

関心領域

マーティン・エイミス
トムゼンとドル。ふたりの親衛隊将校にとって、ホロコーストは日常の「業務」にすぎ…続きを読む
自民党が消滅する日 左傾化と迎合の病理

自民党が消滅する日 左傾化と迎合の病理

岩田 温
産経新聞や『正論』等の媒体に寄せた論考を一冊にまとめたもの。著者は自民党に対し…続きを読む
日本共産党-「革命」を夢見た100年 (中公新書 2695)

日本共産党-「革命」を夢見た100年 (中公新書 2695)

中北 浩爾
丹念に書き込まれた日本共産党の百年史。研究対象に寄りすぎるでも、突き放すでもな…続きを読む
米中戦争を阻止せよ トランプの参謀たちの暗闘 (PHP新書)

米中戦争を阻止せよ トランプの参謀たちの暗闘 (PHP新書)

村野 将
トランプ政権の安全保障政策は、ニュースメディアが報じる大統領の派手な発言に対し…続きを読む

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2016/08/24(3139日経過)
記録初日
2016/07/17(3177日経過)
読んだ本
413冊(1日平均0.13冊)
読んだページ
125515ページ(1日平均39ページ)
感想・レビュー
328件(投稿率79.4%)
本棚
5棚
性別
年齢
35歳
血液型
A型
職業
事務系
現住所
長崎県
自己紹介

読書の記録管理と、新たな本との出会いを求めて利用中。
本を読むのは好きな方ですが、速度が遅いのであまり数はこなせません。それに飽きっぽい性格なので、読みたい本に次々目移りしてしまい、中途半端な積読が書棚の奥で埃を被ることもしばしば・・・多読家の方々には本当に敬服します。
令和6年は、昨年も目標に掲げながら惜しくも届かなかった年間60冊の読破を改めて目指します。
読むジャンルは、主に日本近現代史関係と、政治学や政治思想に関する本です。小説(娯楽傾向の強いものよりも、歴史や政治が絡む本中心。最近は歴史改変メインのSFも読むようになりました)も読みます。
平成元年の生まれですが、昭和戦前期世代の作家ばかり読んでいました。その影響で現代の作家はほとんど読んだことがありませんでしたが、最近になってぼちぼち読むようになり、その面白さを知りました。少しずつですが数を増やしていきたいと思います。

参加コミュニティ1

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう