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kero385
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kero385
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この翻訳では、表紙だけに英語で「エルサレムよ、我汝を忘れなば」という副題が添えられている。これは当初フォークナーがこの小説につけようとした題で、この副題はハリーの最後の独白を予感させ、やはり主なる物語がハリーとシャーロット二人の物語であることがよく理解できる。いつも読んで思うのだけど、第五章(「野生の棕櫚」としては第三章)のウィスコンシン州の湖畔での場面は、どこかエデンの園を思わせ、その後の話しは、その楽園を取り戻そうと足掻くが結局、その足掻きが更なる喪失を呼ぶ「人間の生」の残酷さを思い知らされてしまう。
kero385

初めて読んだ時から変わらず、いや歳を重ねたからこそより切実に、ハリーのあの最後の独白が自分の胸に響く。「野生の棕櫚」の悲劇に、「オールドマン」が対旋律として喜劇を奏でるが、どちらにも通奏低音として響いているのは、不条理の運命と、それを耐えしのんで生きなければならない人間の姿、そしてそれをかろうじて支える「記憶」。

12/15 00:46
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kero385

8月に「ポータブルフォークナー」を読んで、フォークナーの作品を最初から順番に読もうと読書計画を立てた手前、7月に冨山房の全集版で読んだし、「オールドマン」も「ポータブルフォークナー」で読んだので、飛ばして、次の「村」を読もうかなとも思ったのだが、順番に読むとまた他の作品との関連なども浮き彫りになり、やはり飛ばさずに読んでよかった。「八月の光」で明確に出てきた、「耐え忍んで生きる」というフォークナーの大きな主題が、全面的に展開されたのが「野生の棕櫚」だとつくづく思う。

12/15 01:04
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読書データ

プロフィール

登録日
2024/10/21(118日経過)
記録初日
2023/02/04(743日経過)
読んだ本
104冊(1日平均0.14冊)
読んだページ
34145ページ(1日平均45ページ)
感想・レビュー
67件(投稿率64.4%)
本棚
0棚
自己紹介

2024年10月に参加したばかりですが、よろしくお願い申し上げます。

ここしばらくは、学生時代好きだったフォークナーを読み直しています。

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