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2023年7月の読書メーターまとめ

新田新一
読んだ本
60
読んだページ
7633ページ
感想・レビュー
60
ナイス
453ナイス

2023年7月に読んだ本
60

2023年7月のお気に入り登録
11

  • やすらぎ
  • ピンガペンギン
  • 今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
  • えか
  • 愛の伝道師カロン@イケメンの罪は、イケメンであることですよっ
  • いこ
  • さり
  • もっち
  • デブ猫は美しい timão
  • ヴェネツィア
  • 毒兎真暗ミサ【副長】

2023年7月のお気に入られ登録
11

  • やすらぎ
  • ピンガペンギン
  • 今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
  • えか
  • いこ
  • 愛の伝道師カロン@イケメンの罪は、イケメンであることですよっ
  • もっち
  • さり
  • デブ猫は美しい timão
  • ヴェネツィア
  • 毒兎真暗ミサ【副長】

2023年7月にナイスが最も多かった感想・レビュー

新田新一
何度読んでも面白くて、夢中でページを捲ってしまう傑作。権力を手にするために悪事を重ね、歯止めが効かなくなる男を描いています。セリフが時代ががっており、プロットも分かりにくいところがあるのですが、読みだしたら止まらないです。一つ悪いことをしたら、次々と同じことをしてしまうのは、今の人間にも当てはまる面があります。結末近くでマクベスの「人の生涯は動きまわる影に過ぎぬ」というセリフがあります。この実存主義的な認識は、現代人の心にも響きます。シェイクスピアの普遍性を改めて実感しました。
が「ナイス!」と言っています。

2023年7月の感想・レビュー一覧
60

新田新一
本が好きなので毎日のように本屋に行っています。最近は店員さんと顔見知りになり、本について話すこともあります。だからこの本は、本当に面白かったです。夢中でページを捲りました。ユーモアがあって、噴き出すことも。大変だろうとは思っていたのですが、本屋さんの仕事がこれほど苦労の多いものとは思いませんでした。でも、新井さんの本にかける情熱に心を打たれました。その情熱はお客さんに伝わって、お客さんを幸せにしているはずです。利益を出すことと同じぐらいそれは大切なことではないか、と思いました。
いこ
2023/07/30 21:51

新田新一さん、びっくりした~。いきなり自分の名前があって!! そんなそんな、とんでもございません。こちらこそ、お読みいただきありがとうございました<(_ _)> 共読嬉しいです(*^-^*) 住んでるところが違っても、こうやって同じ本が読めて感想が言い合えるって素敵なことですよね♡ そんな意味でも、読メって本当にいいところだと思います。

新田新一
2023/07/30 22:00

いこさん、こちらこそ有難うございました。本当にそうですね。本を通してつながりができるところが、読書メーターの良いところだと思います。全く知らない本で、いこさんの感想をおかげで、この本を手に取ることができました。手元に置いて、これからも読み返したいです。本当に有難うございます。

が「ナイス!」と言っています。
新田新一
『透明なゆりかご』は産婦人科の話ですが、こちらは終末期病棟が舞台になり、人間の最期の苦しみや悲しみがリアルに描かれています。暗く重たい話が多く、読んでいると胸が詰まることが多いです。この巻では誤嚥を防ぐためのマニュアルを作成した女医のことが描かれている「カルテ28」が印象に残ります。一刻を争う誤嚥の処置。最も効率的な方法を作り出した女医がいて、その人は病院のスタッフに慕われていました。やがて自分が認知症にかかり、病院に入院してくるのですが……。ここに描かれている深い悲しみは、ずっと心の中に留まりそうです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
ヨーロッパを猫を連れて旅行したことが書かれています。猫の世話のために、どんなものを持っていけば良いのかといった実用的なことも紹介されているので、役立つ本だと思いました。黒猫のノロの写真が本当に可愛くて、猫好きの私は楽しめる内容でした。服の中からちょこんと顔を出している写真には、微笑ましいものがあります。いろいろなアクシデントが起こるのですが、それを乗り越える著者のたくましさに脱帽。世界中に猫好きの人がいて、猫を通したコミュニケーションができることが分かり、嬉しくなりました。
yabuhibi89
2023/10/28 10:54

はじめまして。黒猫ノロくんの最初の 本ですね。かれのつぶやきは、なかなか 名言。

新田新一
2023/10/28 11:51

yabuhibi89さん、ありがとうございます。続編があるのですね。いつか読んでみたいです。

が「ナイス!」と言っています。
新田新一
20億年間の人類の進化を描いた壮大なSF。第一の人類はすぐ滅びて、第二、第三と続き、最終的には冥王星に住む第十八人類まで描かれます。叙事詩的という言葉が似合う格調高い文章で描かれ、想像力を極限まで駆使した圧倒されるSFです。これまで読んだ小説の中で最高の一冊だと感じました。人間にとって今この時は、どんな意味があるのかと言った哲学的な要素が織り込まれています。普通の小説のような登場人物が出てこないので、冷たい印象を受けるのですが、最後まで読むと作者がなぜこんな形式で書いたか理解できて、深い感動を覚えました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
前半には最澄にゆかりのある土地の写真が収録され、後半は最澄の生涯や天台宗の特長が書かれています。前半の写真は美しく見ごたえがあり、眺めていると心が落ち着きました。根本中堂と呼ばれるお寺では、最澄が灯した火が今でも燃えているそうです。後半に書かれていることでは、最澄と空海の教えの違いを興味深く感じました。前者はあくまで正統的な仏教を打ち立てようとしましたが、後者は密教の確立にこだわりました。この二人に優劣はなく、どちらも偉大な宗教者だと思いました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
バスク語で書かれた小説。500ページ以上あり複雑な構成なので読みにくいのですが、読む価値はあります。主人公の一人が、もう一人の主人公がバスク語で書いた回想を紹介する形式になっています。ここで描かれていることは自分の故郷と言葉を失う悲しみです。主人公の一人はバスク語に深い愛着を持ち続けます。日本人が自分の故郷の方言を懐かしく思うのに似ています。訳者が本文中にバスク語と読み仮名を書いているので、発音しながら読みました。素朴な響きを持つ美しい言葉です。言葉に優劣はなく、どんな言葉でもその民族の宝だと感じました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
自分は子供の頃チューブだったという女性が主人公の物語。チューブは空っぽなので、何もしないで横たわっています。やがて彼女は自分の意識を持つようになるのですが、社会に適応すると言うより、自分の思うままに生きる方を選びます。本当に風変わりな小説で、こんな奇妙な物語はこれまで読んだことがありません。人間という存在はいったい何なのかという問いが、小説の中に織り込まれています。日本の文化が絶賛されており、日本人はくすぐったい気持ちになります。最後で主人公は再び無を経験し、生の儚さを実感します。この構成が見事です。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
島崎藤村の二つの作品が収録されています。「生ひ立ちの記」は自分の幼年時代を描いた作品です。この作品では生まれ故郷である信州と、その後姉のもとで暮らした東京の対比が鮮やかに描かれています。田舎と都会の両方で暮らした経験は、後の創作活動にも影響を与えたでしょう。『若菜宗』のような瑞々しい情感を感じる筆致に、心が洗われました。「芽生」には、自分の子供を次々と亡くした経験が描かれています。痛ましい経験であり、読んでいると胸が苦しくなりました。抑制された文章でありながら、深い悲しみが行間から伝わってきます。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
禅語の解説に、柴犬のかわいい写真が添えられた本です。禅語だけだったら、読みにくいかもしれませんが、犬の写真があるので楽しく読むことができました。眠っている時の写真やあくびしている時の写真など、眺めていると心が和みます。禅語の中には「一期一会」のように知っているものが多いのですが、この本で初めて知ったものもあります。60ページに出てくる「両忘」という言葉が味わい深いです。善悪のような二項対立を離れてみることを、指しています。この世の中には白黒をつけにくいものも多いので、この見方は生きるために役立ちます。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
面白い構成になった本です。前半は作者の長編に基づいた短編、後半は長編の抜粋になっています。作者のリン・アンドリュースは英のベストセラー作家です。短編ではイギリスで女性の参政権運動が、盛んになった時代のことが書かれています。主人公は婦人参政権運動の集まりに行った帰りに暴力的な男達に絡まれるのですが、真面目な若者が助けてくれます。リバプールの庶民の貧しい生活が、描かれ、男尊女卑の考えが支配的だった当時の社会の様子がよく伝わってきます。日本人にはあまり知られていないイギリスの社会の一面が良く分かる良作です。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
2020年の芥川賞受賞作。行替えが少なく読みにくい文章で、プロットも分かりにくくて多くの人に敬遠されそうな小説です。私は割合面白いと感じました。緻密な描写で一つ一つの情景が描かれるので、その場に居合わせたような心地になります。主人公の母の実家の草刈りが中心になるプロットですが、それ以外にも様々なことが並行して描かれます。父にカヌーで旅をするように言われ、途方に暮れる少年の話などです。この世にあるのは一つだけの時間ではなく、いくつもの時間があることが暗示される箇所に、ゾクゾクしました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
長崎の離島で逞しく生きている老女二人を描いた作品。老いること、生と死、この世の常識を超えた人間の絆など比較的短い長編の中に、重たいテーマが盛り込まれ読み応えがあります。海中に潜って漁をする80歳を超えた老女たちの強靭な心と体に、圧倒されました。こんな人たちが日本の土台を支えてきたはず。死んだら鳥になるという一種の信仰は切ないです。溺死も多い過酷な海の生活から生まれたのものでしょう。老婆二人がいるので、国境の守りになるという描写に痺れます。地に足つけて生きる普通人は強いのです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
破門された父の無念を晴らすべく落語家になろうとする女子を描く作品。いろいろな困難を乗り越えて、噺家への道を進む主人公を応援したくなります。この巻では、朱音は先輩から難題を出されます。若い女性には難しい花魁が出てくる落語をマスターすることでした。なかなか難しいのですが、朱音はその課題を乗り越えます。実際はこんな風にうまくいかないのかもしれませんが、朱音のやり方は、苦しい時にヒントになると思います。苦しいことは嫌ですが、苦しいことの中には、自分を成長させてくれる要素が隠れているのかもしれません。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
1巻が出た時から熱心に読んでいるコミック。産婦人科医で働く主人公を通して、女性の出産の光と影が丁寧に描かれます。中絶などの重たい話が多くて、読み飛ばすことはできません。赤ちゃんの死といった悲しいことも正面から描かれ、打ちのめされることが多いです。この巻では望まない妊娠に直面した大学生のカップルの苦しみを描いた「中期中絶」が、心を抉ります。流産を狙って自分の体を傷つけてしまう女性。人の命の重さを作者は静かに問いかけます。救いのない壮絶な結末です。でも真実味を感じました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
ドキドキはらはらする絵本です。動物たちと一緒に主人公のぼくが森の中を歩きます。遊び回っているうちに、服が汚れたのでそれを脱いでしまいます。そんな姿を見た熊が、君はおいしそうだね、と言うのですが……。熊が男の子の腕を噛んでしまう場面では、もしかしたらと思うのですが、ほっとする結末が待っていました。作者の生き生きとした絵が物語を引き立てます。お腹がすいたら、家に帰るのが一番です。子供の頃遊び疲れて、空っぽのお腹のまま帰宅したことを、懐かしく思い出しました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
徳川家康が本好きだったことが書かれています。そんなことは考えたこともなかったので、驚きながら新鮮な気持ちで読みました。残念な点は、家康がこんな時はこうしたので、現代のビジネスパーソンもそれを見習うべきと書かれていることです。時代が違うので、単純に真似をするのは難しいと思います。ただ、徳川家康が不遇な時代に、本を読むことで人生を切り開いていったという視点は勇気づけられました。一番の愛読書は『吾妻鏡』だったそうです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
王子ラセラスは桃源郷の幸いの谷を出て、外の世界で本当の幸福を追求します。名翻訳家の朱牟田夏雄の格調高い訳文を堪能しながら、楽しく読みました。ラセラスがたどり着く結論は平凡なものと言えますが、英国らしい中庸の精神が感じられて納得できました。多分人間は生きている間は、最上の幸福を実現するのは難しいのだと思います。後書きで訳者が作者のジョンソンの人生について触れています。苦労の連続で貧しさが続きました。彼の人生がこの物語には、きっと反映されています。それを考えると、この物語全体が味わい深いです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
ずっと能面をかぶっている女の子が主人公の物語。代々能面を受け継ぐ家庭の事情で、かぶることになっているそうです(15ページ)。本人は真面目で、人付き合いも良く、気配り上手な高校生です。まわりの目もあまり気にしません。かなり可笑しくて、何度も噴き出しながら読みました。特にお母さんが出てきたときは、笑いが止まらなかったです。お母さんは般若の面をかぶっています。花子さんに夜道で会うのは恐ろしそうですが、実際に会ってみれば、すぐ打ち解けそう。こんな風に感じさせてくれる作者の人物描写の巧さに、脱帽しました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
全編詩の形になっている個性的な物語。学校の授業で詩を書くように言われた主人公は、友達への想いをぎこちなく語り始めます。いじめのことが主題になっており、読んでいると胸が苦しくなりました。友達を傷つけてしまった主人公の心の痛みが、痛いほど伝わってきます。ただ、自分のもやもやした気持ちを言葉にすることで、主人公が変わっていく過程には清々しさを感じました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
読み始めた時、題の「アンゴウ」の意味が分かりませんでした。坂口安吾の「安吾」をもじったものなのかも、と思いながら読むと全く的外れだったことが分かります。この題のつけ方は巧いです。主人公は、自分の古本に書かれた数字を見つけて、妻と友達の密会の証拠だと疑い始めます。主人公の苦しさは読者に伝わり、重苦しい気持ちに。でも、結末まで読むと全く異なる真相が明らかになります。どろどろした大人の小説から童話的な物語に変わる絶妙なプロットを堪能しました。悲しい結末に作者の戦争への怒りが感じられます。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
ノーベル文学賞を受賞したバーナード・ショーの作品。この作品が受賞のきっかけになったそうです。ジャンヌ・ダルクの生涯が描かれています。本文の三割はショウによるジャンヌの生涯の解説です。歯切れのよい機知に富んだ文章で神聖化するのを避ける狙いが感じられます。戯曲の部分はほぼ史実通りで、十字架を持ちながら火炙りにされたことも書かれています。結末が印象的です。天国からジャンヌが蘇りたいと言うと、周りの人が慌てて止めます。ひたすら純粋で神の御心を実行する人物はこの世に合わない、という皮肉で悲しい結論です。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
『抒情小曲集』の一節「ふるさとはとおくにありて思うもの」で有名な室生犀星の詩集。前半に収められている子供向けの『動物詩集』は初めて読みました。どの詩にも流れている素朴な情感が好きです。故郷の金沢を離れて東京で暮らしている時の望郷の思いが自然な形で表現された『抒情小曲集』は、何度読んでも飽きることがありません。日本語の美しさと、日本語の中にある音楽性を味わうことができます。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
庶民的な酒場や食堂が立ち並ぶ日本各地の横丁を紹介する本です。懐かしい雰囲気のモノクロの写真が多く収録されており、眺めていると昭和にタイムスリップした心地になりました。都市計画などによって潰された横丁が主に外国人の間で人気が出て、復活してきたという記述が興味深いです。横丁では取り澄ました日本ではなく、馴染みやすい日本の雰囲気を味わえるのかもしれません。ここに出てくる横丁はコロナ禍で苦境に陥ったところもあるでしょう。それを乗り越えて存続してほしいです。
えか
2023/07/13 22:37

こんばんは、新田さん。たまに商店街復興のために“何とか飲み屋横丁”みたいなものを作って、ニュースになったりするけど、アレじゃないんだよね。自然発生的に、家賃も安いしお客さんも隠れて入りやすい、そんな条件で出来た飲屋街が雰囲気いいんだよね。上に飲み屋のお姉さん達のアパートがあったり、そういうお店用の仕入れ場所のお店や、お姉さん達ご用達の美容院があったり、そういった生活感抜きで、横丁だけあっても白けるんだよね。

新田新一
2023/07/14 06:53

えかさん、コメントを有難うございます。返事が遅れて、申し訳ありません。本当に自然発生的な横丁が良いですね。そんな場所に何回か行ったことがあります。良い雰囲気の中で飲めました。おっしゃる通り、そこに住んだり、そこで仕事をしている人の生活感が大切だと思います。

が「ナイス!」と言っています。
新田新一
主人公の中也は国際人材バンクに就職します。そこは外国人労働者のトラブルを解決する場所であり、いろいろな国の料理が提供されるレストランでもありました。面白くて、ためになるコミックです。怪しげな教会が弱い立場にあるアジアからの労働者を食い物にしているといった問題が、鮮やかに描かれています。同時に世界各地の美味しそうな料理が次々と出てきて、食欲をそそられました。例えば、口の中でほろっと溶けるフィリピンのお菓子ポルボロンなどです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
ラッパを吹く男の子が森の中へ入って、いろいろな動物たちと仲良くなります。一緒にお菓子を食べて、その後遊んでかくれんぼを始めると……。モノクロで静謐なタッチの絵が、郷愁を誘う素晴らしい絵本です。結末で男の子は現実の世界に帰ります。でも、ここに描かれた夢の世界は、どこかに存在すると信じたくなります。それがたとえ心の中であっても、童心を失わない人にとっては、心の拠り所の一つになるでしょう。
Fe
2023/07/14 09:27

新田新一様 続篇の『また もりへ』 https://bookmeter.com/books/448458 も、とってもいいですね~。

新田新一
2023/07/14 09:37

Feさん、コメントを有難うございます。続編があるとは知りませんでした。ぜひ読んでみたいと思います。

が「ナイス!」と言っています。
新田新一
H.G.ウェルズが1909年に発表した普通の小説です。主人公は叔父と共に「トーノ・バンゲイ」というインチキな薬を作り出し、莫大な利益を得ますが、やがて破産します。社会小説であり、風刺小説の面もあり、恋愛小説としても優れており、読み応えのある作品でした。自伝的な要素が含まれているそうで、仲の悪い母が死んだ時に主人公が涙を流す場面などには、実感が籠っていました。どうしても超えられない階級差のために、恋人と別れる結末近くの場面は切なくて、胸に迫りました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
『浮浪雲』は大好きな漫画で、以前『ビッグコミックオリジナル』を継続して購入していた時は、読むのを楽しみにしていました。数年前作者のジョージ秋山氏が亡くなった時は、寂しかったです。天衣無縫で飄々と生きる雲が主人公の物語。この巻もほろりとしたり、しみじみとした気持ちになる物語が収められています。3話の「つつがなく」が一番の好み。50歳になった油問屋の番頭が自分の人生を振り返ります。仕事ばかりで意味があったのかと悲嘆。彼を慰める妻の優しい言葉にじーんとしました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
2014年にノーベル文学賞を受賞したパトリック・モディアノの作品。モディアノの小説は本当に面白いです。さまざまな謎が出てくることが多いのですが、普通のミステリーと異なり、それが完全に解き明かされることはありません。この小説では、主人公が出会う魅力的な女性ジゼルの正体は結末まではっきりしません。主人公も宙ぶらりんの状態に置かれたままです。現実の世界では、物事の白黒をはっきりさせるのは不可能です、モディアノの小説はそのことを巧みに表現しています。大好きな街パリが、繊細な筆致で書かれているのも好みでした。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
今フランス語を勉強しているので、この本を図書館で借りて繰り返し読んでいます。Enchantee(はじめまして)のような日常生活で使う便利なフレーズが、多く載っています。難しい文法用語が全く出てこないのが素晴らしいです。語学の本は味気ないものが多いですが、これはリサとガスパールのかわいい絵が載っているので、それを見ながら楽しく勉強できます。今回読み返して、フランス語は英語にくらべて響きが良くて、洒落た表現が多いと思いました。
yomineko
2023/12/29 09:44

私も同様に頑張りたいです✨✨✨ロシア語は韻を踏むので、固有名詞さえ語尾が変化するのですが、それも美しく聴こえるためかと思うと仕方ないかなと(笑)色々な語学を知っていると、あ!勉強していて良かったなと思う場面が沢山ありますよね😊

新田新一
2023/12/29 12:25

固有名詞の語尾変化があるのですね。それは難しそうです。まあ、慣れるの一番良いのでしょう。本当に、語学は役立つし、楽しい勉強ですね。共に語学の勉強がんばりましょう。

が「ナイス!」と言っています。
新田新一
『しずかなおはなし』を書いたマルシャークによる絵本。『しずかなおはなし』の静謐な雰囲気とはだいぶ異なっています。小さな女の子が、自分の猫に無邪気に語りかけていきます。淡いタッチのパステル調の絵が綺麗です。とてもリズミカルな翻訳で、読み聞かせにぴったりです。自分が昔飼っていた猫のことを、懐かしく思い出しました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
季節の移り変わりを繊細な絵と物語で表現した絵本。作者は大学を出た後に渡米した人です。物語の中に日本の秋を代表する花の彼岸花がさりげなく出てきて、嬉しくなりました。きんいろあらしが来た後に、辺り一面金色になった野原で、バッタやカタツムリ、クモなどが冬支度として落葉の家を作る場面のほのぼのとした雰囲気が好きです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
人間の生の苦しみを力強い筆致で書いた二編。「カインの末裔」は北海道の厳しい自然の中で生き抜こうとする夫婦の物語。自分の中の荒々しい情熱に突き動かされて、苦しみながら生きている農民仁右衛門の姿が、心に突き刺さります。「クララの出家」は世俗的な喜びを断念して、修道者として生きる決意を固めた女性の話。「カインの末裔」とは対照的な静謐な物語です。でも彼女が経験する心の葛藤は、仁右衛門の苦しみと似た面があります。この2編から有島武郎は、人間の苦しみを凝視し続けた作家だと感じました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
戦争に対する強い怒りが感じられる詩集です。前半の実際の戦場での体験を書いた部分は、読んでいると胸が痛くなりました。惨たらしく殺される中国人や戦場で負傷したり、命を落とした日本兵のことが生々しい筆致で書かれています。この部分を読んで、戦争は残酷ものだと改めて思いました。後半は現代の日本への危機感が詩を通して表現されます。特に政治家への怒りが強いです。この詩集が出版されたのは2008年です。今の日本は、その時より悪くなっている気がします。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
題名の通り、アヒルが空を飛ぶお話です。ハトに空を飛べないことをからかわれて、しょげていたのですが、あるきっかけで飛べるようになります。ゴリラもゾウも飛べるようになって……。愉快な絵本です。長さんの明るくて、生き生きした絵が物語を引き立てています。結末が心に残るもので、ここを読むと人間も飛べるかも、と思ってしまいます。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
谷崎潤一郎の初期の短編は初めて読みました。文章が美しく、物語性もあって非常に楽しめる内容です。「少年」のように、人間のグロテスクな面も怯まず描くところが、この作家の強みだと思います。女装する男性を書いた「秘密」のユーモアも捨てがたいです。「母を恋うるの記」は、実際の母への想いを描きながら、根源的な母性への憧れを美しく、幻想的に描いており、一番の好みでした。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
父親も母親もいない女の子のお話です。彼女は優しい家庭にもらわれて、そこでクリスマスを迎えます。昭和風の古風で温かい絵が、昭和生まれの私には心地よく感じました。何も持っていない女の子が、みんなのために用意するプレゼントが良いです。これぞ心のこもったクリスマスプレゼントといった感じ。夜中に家へ来たサンタクロースも、そのプレゼントの素晴らしさに気づきます。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
高い杉の木の上に巣を作ったカラスと、一人の少年の物語です。カラスを捕まえようと思っていた少年は、カラスの知恵を知って、考えを変えました。結末が説教臭いのが残念ですが、どんな動物を必死に生きているという作者の訴えには共感できます。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
これまで読んだ本の中で一番風変わりな内容でした。主人公は『墓地の書』という本を書いているのですが、それは1ページで終わるものです。その後は主人公のぎこちない語り口で、チェコ社会のいかがわしい面が延々と語られます。絶えず死が身近にあり、あらゆる人があっけなく死んでしまうのが印象的。主人公が連発するしょうもない駄洒落が笑えます。例えば、「労働にはえあれ、公安のハエ野郎」、「殺し屋のおろし屋」、「首領、終了」など。作者は荒唐無稽な語りを通して、共産主義が押し付けてくる教条主義を、批判しているのだと思います。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
題名からして楽しくて、図書館で借りてみました。大当たり!表紙に描かれている美術館は、なんとなくルーブル美術館に似ている気がします。この春に行って、山ほどの絵や彫刻が展示してあるのに圧倒されました。ボンとハレトモが絵の中に入って、奇想天外な冒険を繰り広げます。例えば、「モナリザ」だったら、自分の着る服を決めかねているモナリザに助言するといった感じです。ルーブル美術館でいろいろな絵を見ながら、この絵にはどんな背景があるのだろうと思ったことを、蘇らせてくれる絵本でした。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
かなしみが人になって、男の子を訪ねてくる話です。題名に惹かれて図書館で借りました。後半のかなしみから目をそらさないで、かなしみに話しかけてみようと語りかけるところが好きです。かなしみも自分の一部であり、自分を形作っているものの一つかもしれません。「かなしみは よくきたねって いわれたかった だけかも」という文にじーんとしました。子供たちだけではなく、大人が読んでも得るところが多い素晴らしい絵本です。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
初代のワシントンから現在のバイデンまで、アメリカの全ての大統領を詩で書いたものです。詩というにはやや苦しいところがあり、詩情が欠けている気がします。でもリズミカルな言葉遣いになっており、韻を踏んでいるところもあって詩でないと否定することはできません。大統領になる前は弁護士だった人が多い、初期の頃は学歴の低い人が大統領になることもあった(12代のザカリー・テイラーなど)、全期間に渡って戦争の英雄(26代のルーズベルトなど)が大統領になることが多かった、といった興味深い歴史的な事実が分かりました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
モモはヨーク生まれの女の子です。3歳の誕生日に赤い長靴と雨傘をもらいました。雨傘を差してみたいのですが、なかなか雨は降りません。ついに雨が降った日に、彼女は喜び勇んで外出します。すれっからしの大人と違い、子供にとってはささやかな喜びが、大切なものになります。小さな子供の心の弾みが丁寧に描かれた良い作品です。結末近くに載っている大人になったモモの絵が、印象に残ります。子供時代を思い出して、幸せを噛みしめているような雰囲気に、心が温かくなりました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
「猿蟹合戦」の後日談です。裁判が起こり、蟹が死刑になってしまいます。格調高い文章で書かれていますが、かなり可笑しい物語で、読んでいて何度も噴き出しました。芥川龍之介と言うと、晩年の暗い『歯車』や『河童』が印象に残っていました。こんなユーモアのある作品も書いていたのかと驚きました。面白いだけではなく、風刺も効いていて特に蟹の死刑に対する専門家のコメントは、皮肉まじりに書かれています。例えば、僧侶は口当たりの良いことを言いながら、自分を誇示するだけです。芥川の人間社会への洞察の深さを感じました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
東方の三賢者に基づいた小説。主人公は偉大な人物が生まれることを察知し、ベツレヘムへ旅立ちます。ところが途中で思わぬ障害が起きて、イエスのもとに辿り着くことはできません。イエスが十字架に架けられる時に初めて、彼と出会えそうになるのですが……。小説を読んで久しぶりに泣きました。本当に素晴らしい物語です。キリスト教の愛の本質が描かれています。それは見返りを求めない純粋な愛です。主人公がイエスに贈るつもりの真珠の描写が美しいです。真珠は、彼が苦しめば苦しむほど輝きを増します。三賢者以外にも無名の賢者がいたのです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
詩人萩原朔太郎の随筆です。人間は冬に特に詩情を感じると書かれます。この意見には共感できます。雪や暖炉の火、クリスマスなど冬には詩情を感じるものが多くあります。これは洞穴で生活していた頃から続いているという見方は極端な気もしますが、面白かったです。後半は与謝蕪村の俳句を褒めて、蕪村の俳句の中にある冬の情緒を絶賛しています。「月天心貧しき町を通りけり」という私の好きな句が引用されており、嬉しかったです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
好きな作家の角田光代さんが訳されているので、読んでみました。淡く、柔らかなタッチの絵が素晴らしいです。ちっちゃいさかなちゃんが、大好きな猫のお話。きみがいないとお月さまもきみに見えるといった具合に、読んでいるとき気恥ずかしくなる愛の告白です。猫だったら、魚は食べたくなるのではと意地悪なことを考えました。でも、この素直な感情表現には、ほろりとします。深読みすれば、作者は自分と全く違う人を愛する喜びを、さりげなく伝えようとしているのかもしれません。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
シェイクスピアの『間違いの喜劇』です。この本はアーデン版と呼ばれ、詳しい注が載っています。生き別れになった双子の兄弟が紆余曲折を経て、再会する話です。双子の兄弟に双子の召使が絡んでくるので、非常にややこしい話でです。原文の方は分からない箇所もあったので再読が必要。注は面白いことが書いてありました。例えば、シェイクスピアも文法を間違えて、過去形のedを忘れたそうです。混乱の場面では韻を踏まない形式で書かれ、秩序が戻ってくる場面では押韻が使われると言う指摘が一番興味深かったです。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
坂口安吾が通っていた居酒屋の様子を描いたエッセイ。そこに集まる人々が酔っ払って、自分は偉いのだ、大臣だと気焔を上げる姿がユーモラスに描かれています。当時安吾は仕事がうまくいかず、くすぶっていたとか。それでも、酒場の人たちは彼を聖人とみなしていたそうです。酔っ払っていても、小説家として苦しんでいる坂口安吾の真摯な生き方を、その場の人たちは無意識に感じ取っていたのだろう、と思いました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
表紙の「やめて!」というセリフがまず心に突き刺さる絵本。小さな男の子が、手紙を書き終えてそれを投函に行きます。その時町は戦車や兵士が通り不穏な状態。自分をいじめようとした子にきっぱりと「やめて!」。小さいながら強い意志を持っているこの子を応援したくなります。最後のページには、この世界に対する痛烈な批判が描かれています。小さな子供さえも分かることを、どうして大人はごまかそうとするのか。ずっと読み継がれてほしい絵本です。
新田新一
2023/07/05 12:37

それは気づかなかったです。さすがです。図書館で見つかりますように。

毒兎真暗ミサ【副長】
2023/07/05 12:58

この子、勇気を出して出てきたんだと思います。ありがとうございます。

が「ナイス!」と言っています。
新田新一
石垣りんの詩は、何度読んでも良いです。心が揺さぶられます。文学で生計を立てるのではなく、銀行で働きながら家族を支えた勤め人としての矜持や哀歓が、行間から感じられます。後半に載っている人生後半の詩は、これまで読んだことがありませんでした。それらの詩では、広い視点から人間の存在を丸ごと描こうとしているように感じます。「おやすみなさい」と言う詩では、眠りの世界ではみんな平等と表現されています。この作品では、苦しいことが多い人生での救いが示され、詩全体に深い優しさを感じました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
破天荒なおばあちゃんが出てくる愉快な児童文学。銃を発射したり、牛乳にねずみを入れたりとめちゃくちゃな行動を取ります。でも読んでいくと、自分の信念に従って生きていることが分かってきます。主人公のわたしから見た田舎のアメリカの生活が郷愁を持って描かれていて、読んでいて懐かしい気持ちになりました。自分が夏休みに祖母の家に行っていたことを思い出します。祖母の深い愛情が分かる最後の章が感動的でした。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
踏み絵用のキリストの像を作るように、役人から命じられた青年が主人公の物語。江戸時代の話で、遠藤周作の『沈黙』と似た面があります。青年はクリスチャンの女性に恋をしているのですが、キリスト教には屈折した想いを抱いています。宗教と芸術、芸術と恋愛、政治と芸術といったいくつかの相剋が巧みに表現されており、その中で苦しむ主人公の姿に共感しました。芸術だけが青年を救います。私もこの世の中では芸術が一番の救いと思うので、作者の出した結論に賛成です。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
普通の絵本とは異なっています。少年の怒りや不安を巧みに表現した内容。眠れないケンタロウが夜に窓を開けて、自分の中にたまったもやもやしたものを、ものすごい勢いで吐き出す絵が圧巻。木の葉が散り、道行く人は飛ばされないように帽子を押さえます。ほのぼのとした絵本も良いのですが、こんな作品もたまに読むとかえって新鮮。反抗期が始まる頃の男の子だったら、楽しめるかもしれません。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
女の子が、毎晩聞こえてくるきれいな音楽で惹かれて、幸せそうな家族を見つけます。それは娘たちと父が住む家から聞こえてきたものです。その四人が演奏していたのです。やがて、音楽が急に聞こえなくなって……。読後物悲しさが心に広がる童話です。美しいもののはかなさを描いた童話ではないかと思いました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
アメリカの大恐慌時代を詩と写真で描いたものです。アマゾンのkindleで良さそうなものを探している時に見つけました。作者は大学の先生です。詩は淡々と書かれていますが、作者の悲しみや怒りが感じられました。写真に出てくる大人はみんな辛い表情をしています。特に子供のいるお母さんは悲しそうな顔のことが多いです。子供たちの表情が明るいのが救いでした。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
全く知らない作品だったのですが、表紙のきれいな絵に惹かれて本屋で購入。偶然知り合った二人の女性が料理を作って、食べることで仲良くなっていきます。全編カラーなので、本当にきれいな漫画です。特に青系統の色の使い方がうまくて、落ち着いた雰囲気があります。本格的な中華料理のレシピが載っているのも好み。特に素麵とチンゲン菜、卵、にんにくで作る酸湯素麵が美味しそうです。お互いが心に抱えている苦しみをさらけ出して、親しくなるプロットは説得力がありました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
何度読んでも面白くて、夢中でページを捲ってしまう傑作。権力を手にするために悪事を重ね、歯止めが効かなくなる男を描いています。セリフが時代ががっており、プロットも分かりにくいところがあるのですが、読みだしたら止まらないです。一つ悪いことをしたら、次々と同じことをしてしまうのは、今の人間にも当てはまる面があります。結末近くでマクベスの「人の生涯は動きまわる影に過ぎぬ」というセリフがあります。この実存主義的な認識は、現代人の心にも響きます。シェイクスピアの普遍性を改めて実感しました。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
どんなものでも、ひとつと言う見方に統一できることを教えてくれる絵本です。例えば、星は無数にあるけれど空は一つといった感じです。緻密で色鮮やかな絵が非常に好みでした。絵がこの絵本のテーマによく合っています。結論のページが心憎いです。ここを読んで子供たちは、自分とは何かと漠然と悟るでしょう。大人にとっても、ここは心に響く部分です。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
芥川龍之介のユーモアのセンスが生かされた作品だと感じました。歴史を研究する大学生が、汽車の中で西郷隆盛は生きていたと聞かされます。実際にそれらしき人物も出てきます。この短編は真実とは何かを問うものです。これを読むと、歴史上の真実とされていることの中にも、疑わしいものがあるのでは、という気になります。本当の真実はその場に居合わせた人しか分かりません。でも、芸術は虚構を通して真実に迫ることが可能です。芥川はそのことを十分理解しており、その思いがこの短編に反映されている気がします。
が「ナイス!」と言っています。
新田新一
奇妙な男女関係を描いた長編。大学生の幸二は西洋陶器店でアルバイトをしている時、その店の夫妻の争いに巻き込まれます。夫の女性関係に怒りを覚え、妻の力になろうとするのですが……。表面上は週刊誌に書かれる痴情のもつれのように見え、読み込んでいくと三島が表現しようとしたものが見えてきます。それは普通の男女関係を超えて、死によって結び付けられる人間の絆です。あまりに単純化された現代の男女関係に作者は幻滅しているようにも見えます。夫の「家にかえりたい」という言葉が象徴的。「家」はこの世界を超えた場所も表しています。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/05/25(1956日経過)
記録初日
2023/06/01(488日経過)
読んだ本
737冊(1日平均1.51冊)
読んだページ
119915ページ(1日平均245ページ)
感想・レビュー
737件(投稿率100.0%)
本棚
0棚
自己紹介

日本と海外の古典文学、SFとミステリー、漫画、児童書が好きです。どんな本でも丁寧に読んで、自分の言葉で感じたことを書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。

好きな本10冊

夏目漱石 『道草』
三島由紀夫 『午後の曳航』
山本周五郎 『さぶ』

ジョナサン・スウィフト 『ガリバー旅行記』
グレアム・グリーン 『情事の終わり』
J・D・サリンジャー 『ライ麦畑でつかまえて』

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?』

チェーホフ 『桜の園』
シェークスピア 『ソネット集』

参加コミュニティ1

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