
ただ、全体的な通史としてのストーリーの綺麗さを優先した雑な記述が目について残念だった。靖難の変は燕王朱棣が南京政府に起こした反乱なのは事実だが、中原人の江南政府に対するカウンターとまとめるのは雑すぎるでしょう、等々。岡本先生の中国史本なので手に取ったが個人的にはイマイチ刺さりきらなかったかなー。テーマは面白いだけに少し残念だった。
歴史本はどうしても時代単位での細分化になりやすいが、本書はエリアごとの通史としたのは新鮮だったのでその点は良かったし、エリアごとの個性が特に出てくる五代十国について手厚いのも面白くてよかった。後書きにあった、「ひとつの中国」というイメージを日本人こそ信じてしまっていて、中国内の多様性を意識できていない、という警鐘は本書の意義だと思う。
ただ、全体的な通史としてのストーリーの綺麗さを優先した雑な記述が目について残念だった。靖難の変は燕王朱棣が南京政府に起こした反乱なのは事実だが、中原人の江南政府に対するカウンターとまとめるのは雑すぎるでしょう、等々。岡本先生の中国史本なので手に取ったが個人的にはイマイチ刺さりきらなかったかなー。テーマは面白いだけに少し残念だった。
強制収容等の当局による人権侵害の実態はカザフや日本に移住できたウイグル人から語られ悲惨さが伝わってくる一方、複雑な民族構成と強い漢族への経済依存の中で、中国共産党による強権的な支配が無くなって独立すれば解決するのかという問いに対して著者は暗い見通しを持つ。19世紀には沖縄で強い同化政策が行われ、琉球人は複数世代をかけて"日本化"しているが、それと同じことが新疆でウイグル人にされているのを目にしているのではないか、という側面も見えてくる。
現地のウイグル人の中にも強権的な共産党支配の中で小さな利益を最大化するという合理化を進める人も当然おり、ウイグル人全てが社会混乱を招く独立を望むわけではない。日本や欧米が19世紀に行った帝国主義支配がまさに今行われているという中で、現代自由民主主義の価値観から一方的に中国を非難するだけで良いのか?という問いはなかなかに苦しい。暗澹たる思いで終わる本ではあるが、現状の新疆の空気感を知れる良い本だった。
ノルマンディーから兄や親族を頼って複数のオートヴィル家の人間が南イタリアに来ても、力を付けられるのが怖いので放逐されて野盗まがいになり、独立してからも正面衝突や暗殺未遂などを平気で行っている。大領主となっても親族やかつての同輩は形の上で従っているだけで虎視眈々と地位を狙っており、代替わりが起きたら反乱祭りですぐに地位は転落してしまう。
安定した家督継承なんてものはなく、一族の中で最も力のある人間が認められているだけ、というのは中世のノルマン文化を感じられて非常に面白かった。まさにparadox社のクルセイダーキングスの世界だなという感じ。中世騎士物語を見ているようで、事実は小説よりも奇なりを地で行くストーリーで非常に面白かった。限定復刊されたのも分かる名著でした。
著者は唯物史観全盛期の戦後歴史学の研究者だけあって階級闘争史観も大いに含まれているが、それ以上に戦後知識人の責任感も強く感じた。歴史を見る目と現代を見る目はイコールであり、現代に対する課題や視座をもとに歴史研究すべきという著者の哲学が強く見られたのが朝鮮出兵に関しての章だったので、ここだけでも読む価値があったと思う。
それ以外でも一向一揆の権力構造や地方農村における武装権や領主権力の農村への行使等、藤木久志らしい論考も多くて非常に面白かった。講演録などは話し言葉でもあってフランクな内容も含まれており、気軽に一章ずつ読める良い本だった。
翻って選挙制度改革を考えると、当初目指した二大政党制による適切な政権交代と政党執行部強化による応答能力強化いう二つの主目的のうち、前者は既に成立し得ずに自民党一強の多党制になりつつあり、後者は官邸主導という形で実現した。個人的には昨今のデュープロセス軽視はまさに現行政治の帰結であると思え、現行選挙制度を維持する以上は適切な政権交代を実現する二大政党制が変わらず理念形とすべきではないかなぁと思う。連合の支持を受けていながら、頑なに立憲と対立して自民党の補完勢力になろうとする某政党への失望は大きいが……
ちなみに選挙制度に伴う政党政治について、昨今「穏健な多党制」というワードが聞こえるが、本書の著者は二大政党制と多党制の良いとこ取りである穏健な多党制は奇跡的なバランスの上に成り立つものであり、現状の日本ではかなり難しいし、極右政党・極左政党の勃興の中では楽観的すぎるという見解を示しているので参考までに。 https://koken-publication.com/archives/3857
積ん読は人生の選択肢を増やすと信じてる。小説は少なめ、人文系多めです。今までに読んだ本の登録は諦め、2020年に読んだ本からスタートします。漫画も大好きでよく読み、よく買いますが、登録が追いつかないため、登録しません。
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歴史本はどうしても時代単位での細分化になりやすいが、本書はエリアごとの通史としたのは新鮮だったのでその点は良かったし、エリアごとの個性が特に出てくる五代十国について手厚いのも面白くてよかった。後書きにあった、「ひとつの中国」というイメージを日本人こそ信じてしまっていて、中国内の多様性を意識できていない、という警鐘は本書の意義だと思う。